鬼滅の刃 清めの音(ね)を持つ鬼   作:レイファルクス

10 / 76
第10話

 

 

鼓の血鬼術を使う鬼"響劾(きょうがい)"が住む屋敷、"鼓屋敷(つづみやしき)"から出た善逸は炭治郎に会うまでの間、少し前のことを思い出していた。

 

 

善逸と正一は部屋が変わる時の勢いで屋敷の外に放り出されてしまった。このままでは怪我をすると思った善逸は正一を庇い、"頭から地面に落ちた"。そして気を失った善逸が目を覚ますと、目の前には涙を流しながら自分の顔を覗き込む正一の顔が目に入った。

 

 

正一が泣いている理由は、善逸が自分を庇って頭から流血していたからだった。

 

 

その時、屋敷の扉を突き破って現れた猪男の"声"を聞いて、あることを思い出した。

 

 

「あっ❗あいつ…、今声聞いてわかった。五人めの合格者…、最終選別の時に誰よりも早く入山して誰よりも早く下山した奴だ❗❗せっかち野郎❗❗」

 

 

猪男は善逸たちに目も暮れず、そばに置かれていた炭治郎の箱に気づくと

 

 

「見つけたぞォォォ、鬼の気配ィィィ❗❗」

 

 

箱に襲い掛かろうとするが、寸前で善逸が箱の前に回りこみ、猪男の前に立ち塞がった。猪男は箱の中に鬼がいることを言うが、善逸は持ち前の聴覚で既に知っていた。そしてその箱を背負っている炭治郎からは泣きたくなるような優しい音を聞き取っていたのだ。

 

 

「俺が……、俺が……直接炭治郎に話を聞く。だからお前は………引っ込んでろ❗❗❗」

 

 

そして時間は前話の最後に戻る………。

 

 

「威勢のいいこと言ったくせに刀も抜かねえこの愚図が❗❗同じ鬼殺隊なら戦ってみせろ❗❗」

 

 

猪男はそう言いながら箱を抱き締めている善逸を蹴飛ばした。炭治郎は倒れる善逸の姿を末っ子の六太を庇う禰豆子の姿と重ねていた。そして猪男は痺れを切らしたのか、自身の刀を逆手に持ち、善逸諸とも禰豆子を串刺しにしようとした。

 

 

その時炭治郎が猪男に駆け寄り、猪男の腹を殴ったと同時に肋骨を折った。

 

 

「なぜ善逸が刀を抜かないかわからないのか❓隊員同士で(いたずら)に刀を抜くのは御法度(ごはっと)だからだ❗❗」

 

 

「それをお前は一方的に痛めつけていて楽しいのか❓卑劣極まりない❗❗」

 

 

炭治郎に殴られた猪男は仰向けになり、咳き込みながら笑いだし

 

 

「ア"ハハハッそういうことかい悪かったな。じゃあ素手でやり合おう」

 

 

標的を善逸から炭治郎に変え、起き上がり炭治郎に迫ると、アクロバットな動きで襲い掛かった。炭治郎はその異様な動きに翻弄されながらも素手で応戦するが、猪男には掠りもしなかった。

 

 

「(攻撃が異様に低い❗これはまるで、まるで…、四足獣(しそくじゅう)と戦っているようだ………❗❗)」

 

 

炭治郎は今戦っている相手が人間ではなく、本物の猪と一瞬ではあるが錯覚していた。そして猪男よりも低く攻撃を繰り出すが、猪男は股を地面につけて回避、更には(しゃちほこ)のように反り、炭治郎の後頭部に踵落としを喰らわした。

 

 

猪男は身体が戻る反動で炭治郎から距離を取り、自分の身体の柔らかさを見せつけるかの如く海老反りになり、地に足を着けたまま股から顔を出し、足首を手で掴む離れ業をした。

 

 

炭治郎は猪男の身体を気遣うように言うが、猪男は聞く耳を持たず、再び炭治郎に迫る。そして炭治郎は猪男に頭突きを喰らわした。

 

 

「うわあああああ❗❗音❗❗頭骨割れてない❗❓」

 

 

善逸は頭突きの音を聞いてかなりびっくりしていた。

 

 

炭治郎の頭突きを喰らった猪男は数歩後ろによろめき、被っていた猪の頭がずり落ち、素顔が顕になった。その顔は美形で女性と間違える程だった。

 

 

「何だコラ…、俺の顔に文句でもあんのか………❗❓」

 

 

「君の顔に文句はない❗」

 

 

猪男は自分の顔に文句でもあるのか炭治郎に聞くが、炭治郎は文句はないという。更には顔を褒めるが猪男には挑発と捉えられ、勝負を挑まれる。けど炭治郎は勝負はしなかった。

 

 

「おいでこっぱち❗❗俺の名を教えてやる。嘴平(はしびら) 伊之助(いのすけ)だ。覚えておけ❗」

 

 

炭治郎は猪男こと伊之助の字をどう書くのか聞くが、伊之助は字は書けず、(ふんどし)に書いてあることを言うが、それっきり喋らなくなり、白目を向き泡を吹いて仰向けに倒れた。

 

 

「うわっ倒れた。死んだ❓死んだ❓」

 

 

「死んでない。多分脳震盪(のうしんとう)だ。俺が力一杯頭突きしたから………」

 

 

それを聞いた善逸は炭治郎の頭の固さに震えていた。その後炭治郎は自身の羽織を折り畳み、枕代わりとして伊之助の頭の下に置き、善逸から借りた羽織を布団代わりに伊之助の身体に被せた。そして炭治郎は清と正一、てる子と善逸を連れて鼓屋敷の中へ再び入っていった。

 

 

しばらくして気絶していた伊之助が目を覚まし、近くにいた善逸に勝負を挑むが、善逸はその場から逃げてる子の後ろに隠れた。そして炭治郎たちがしているのは何かを尋ねると、炭治郎が屋敷内にいる喰われた人を埋葬している所だったと伝えた。

 

 

炭治郎は伊之助にも手伝うよう言うが、伊之助は戦うことしか頭に無く、手伝わなかった。炭治郎は手伝わない理由を『傷が痛むから』とかなりズレた解釈をし、伊之助に休むように言ったが、

 

 

「はあ"ーん❗❓舐めるんじゃねぇぞ百人でも二百人でも埋めてやるよ俺が誰よりも埋めてやるわ❗❗」

 

 

伊之助はそう言ってものすごい速さで"屋敷の中へ入り、死体を持ってきては穴を掘って死体を埋め、また屋敷の中へ入り死体を持ってきては穴を掘って死体を埋め"を繰り返し、気がつけば屋敷内の死体は全て埋葬された。

 

 

そして山を下り清たちと別れる際に善逸が正一を連れていこうと駄々をごねるが、炭治郎の手刀を喰らい気絶。その後鴉の松衛門が『藤の花の香り袋』を渡し、清たちは帰路に着いた。

 

 

別れ際、何故か伊之助は周辺に生えている樹に頭突きをしていた。

 

 

「サァツイテ来イコノ私ニ❗カァア」

 

 

松衛門はそう言って炭治郎たちの先導をかって出た。その道中炭治郎は伊之助が自分と同じ山育ちということを知る。そして

 

 

「俺は隙を見てお前に勝つぞ❗」

 

 

炭治郎を指差して啖呵を切った。けど

 

 

「俺は竈門炭治郎だ❗お前じゃない❗」

 

 

と炭治郎は自分の名前を言った。しかしここで一つ問題があった。

 

 

「かまぼこ権八郎(ごんぱちろう)❗お前に勝つ❗」

 

 

伊之助は相手の名前を覚えるのが極端に悪く、勝手に変な渾名(あだな)を付ける癖があるのだ。

 

 

「誰なんだそれは❗」

 

 

「お前だ❗」

 

 

「違う人だ❗」

 

 

案の定伊之助は炭治郎の名前を間違え、言い合いに発展した。因みに気絶させられた善逸は炭治郎がおんぶしており、箱は前側に掛けていた。

 

 

松衛門先導の下、連れてこられたのは『藤の花の家紋』が門扉に書かれている家だった。

 

 

「カァアーッ、休息❗休息❗負傷ニツキ完治スルマデ休息セヨ❗」

 

 

炭治郎は松衛門が『休息』と言ったことに驚いていた。何故なら、初任務(浅草)から今まで負傷しながら戦っていたのだ。炭治郎はそのことを松衛門に言うと、松衛門は『ケケケッ』と笑って誤魔化した。

 

 

すると門扉が開き、そこからその家の主の老婆『ひさ』が現れた。ひささんは炭治郎たちが鬼殺隊とわかると家の中へと招き入れた。入る時、気絶から覚めた善逸がひささんを『お化け』と言って、炭治郎から拳骨(げんこつ)を貰っていた。

 

 

炭治郎たちが家の中に入った後、部屋の襖を開けると

 

 

「お召し物で御座います」

 

 

ひささんが既に三人分の浴衣を用意していた。着替えが終わり、別の部屋の襖を開けると

 

 

「お食事で御座います」

 

 

また既にひささんがおり、三人分の御膳(おぜん)が用意されていた。

 

 

「妖怪だよ炭治郎あの婆さん妖怪だ❗速いもん異様に妖怪だよ❗妖怪婆…」ゴンッ

 

 

善逸が全て言いきる前に炭治郎が再び拳骨を落とした。

 

 

そして食事が始まるが、伊之助の食い方が異常だった。伊之助は炭治郎と同じ山育ちだったが、親も兄弟もおらず食べる時は箸ではなく手づかみで食べていたのだ。

 

 

しかも炭治郎を挑発するために彼の御膳からも取るが、普段から自分の食糧を弟たちに分け与える炭治郎には効かず、更にイライラが溜まっていた。

 

 

するとそこに

 

 

「失礼します。鬼狩り様、これは鬼狩り様の物では御座いませんでしょうか❓」

 

 

ひささんが炭治郎の音角とディスクアニマルを持って入ってきた。

 

 

「あっ❗すみません。それは俺のです」

 

 

炭治郎はひささんから受け取り、懐にしまった。

 

 

「炭治郎、今のって…」

 

 

「俺の大事な物なんだ」

 

 

善逸は炭治郎の音角を見て炭治郎に聞くが、炭治郎ははぐらかした。その理由は"猛士のことは無暗矢鱈(むやみやたら)に話してはいけない"と師匠である響鬼から言われていたからだ。

 

 

「(さっきの鬼の装飾…、もしかして炭治郎は俺と同じ猛士の鬼❗❓)」

 

 

けど善逸には見抜かれていた。さっきの記述の通り、善逸も炭治郎と同じ猛士の鬼なのだ。だが炭治郎と違う所は"専用の武器は愚か変身用の道具を渡されていない"と言ったものだった。

 

 

猛士の鬼の弟子は師匠に認められると、個人専用の道具一式が渡されるのだ。炭治郎は2年の修業を行い、師匠から認められたので道具一式を受け取っているが、善逸は性格のせいか師匠の鬼からまだ認められていなかったため、道具一式を持っていなかったのだ。

 

 

そんなこんなで食事も終わり、また別の部屋の襖を開けると

 

 

「お布団で御座います」

 

 

ひささんが当然のように人数分の布団を敷いていた。

 

 

伊之助はここでも炭治郎を挑発するが、不発に終わる。そしてひささんは医者を呼んでおり、診察すると

 

 

「うん、重症」

 

 

軽い口調で言われた。

 

 

実は三人とも肋骨を折っており、善逸は二本、炭治郎は三本、伊之助は四本折っていた。しかも伊之助は炭治郎に頭突きされた所がコブになっており、炭治郎は伊之助に謝った。

 

 

善逸の骨折は伊之助が原因なのだが、伊之助は善逸には謝らず、炭治郎に言われ渋々謝った。

 

 

「……炭治郎、誰も聞かないから俺が聞くけどさ。鬼を連れているのはどういうことなんだ❓」

 

 

善逸は出会ってからずっと疑問に思っていたことを炭治郎に聞いてみた。

 

 

「❗善逸……、わかっててかばってくれたんだな………」

 

 

「善逸は本当にいい奴だな。ありがとう」

 

 

炭治郎が善逸を褒めると善逸は顔を赤くしてゴロゴロと寝転がった。すると箱から音がしてその音に驚いた善逸が騒ぎだし、炭治郎がそれを宥める。

 

 

そして箱から禰豆子が這い出て徐々に大きくなり、年相応の身長になった。善逸は禰豆子を見て言葉を失っており、伊之助に関しては既に寝ており猪の被り物の鼻から鼻提灯(はなちょうちん)を作っていた。

 

 

炭治郎は善逸に禰豆子を紹介しようとするが、善逸の目が血走っており、怨みの匂いも出していた。

 

 

「こんな可愛い女の子連れてたのか…。こんな可愛い女の子連れて毎日うきうきうきうき旅してたんだな…」

 

 

善逸は俯きながらぶつぶついい、そして

 

 

「俺の流した血を返せよ❗❗❗」

 

 

とうとう嫉妬が爆発した。炭治郎は善逸を落ち着かせようとするが、善逸には逆効果であり遂には自身の日輪刀を抜き夜明けまで炭治郎を追いかけ回した。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。