雷鬼が兄鬼と爆散させて少し経った時、残っていた兄鬼は頚から下を再生させている途中だった。
雷鬼は直ぐ様立ち上がり、善逸の刀を取ろうとした時、廃屋の上にいた蝴蝶しのぶが飛び降り、自身の刀で兄鬼の頭を刺し、付着していた『藤の花の毒』で止めを差した。
「駄目ですよ安心しきっては。人喰い鬼は陽光に晒すか日輪刀で頚を斬らないと」
しのぶは雷鬼に向けて注意をしていた。雷鬼は頭だけ変身を解き、
「いや面目無い。俺の烈雷の刃も日輪刀と同じ素材で造られているらしいんだが、あんたに指摘されたことをすっかり忘れていたわ」
後頭部を掻きながら平謝りしていた。
「先程から見ていましたが、貴方がお舘さまが仰っていた音撃の鬼ですか❓」
「そのお舘さまってのは誰か知らねぇが、音撃の鬼ってのは当たってるぜ。それと俺の他にも後四人はいるぜ。その内の二人はあんたと同じ鬼殺隊員だ」
しのぶと雷鬼は互いの情報を交換した後、しのぶは善逸と蜘蛛にされた人を治療して森の中へ消えた。
雷鬼がしのぶと出会っていた頃、時を同じくして風鬼が爆散させた父鬼が再生を開始していた。伊之助と玄弥は刀が折れて頚を斬れない状態であり、どうするか迷っていると父鬼の再生は終了。
父鬼は玄弥に向けて攻撃しようとするが、
「水の呼吸 肆ノ型 打ち潮」
突如現れた義勇によって頚を斬られ、灰に帰した。
「人喰い鬼は日輪刀で頚を斬るか、日の光に当てなければ死なない」
義勇は刀を鞘に納めながら風鬼に言った。
「えぇ心得ていますよ。俺は貴方が来るまでの時間稼ぎをしたまでのこと。玄弥たちにはちょっと荷が重かったみたいだからね」
風鬼は頭だけ変身を解き、さっきまで動かなかった理由を話した。
「(左右違う柄の羽織…、なるほど)貴方が冨岡義勇さんか」
義勇はまだ名乗っていないにも関わらず、自分の名前を言い当てられ、双眼を細くした。
「そう睨まないでいただきたい貴方の名を知っている理由は貴方の特徴を教えてくれた鬼殺隊員がいたからですよ」
風鬼の答えに義勇は思い当たる節が一つあった。
「(炭治郎が)いるのか❓」
「誰のことを言っているのかわかりませんが❓」
風鬼の質問に答えること無く、義勇は風鬼たちの前から消えた。
一方炭治郎と響鬼は他の二組からさほど離れていない所にいた。
ある程度進むと、悲鳴が聞こえそこに向かうと、先程自分たちを見下ろしていた少年の鬼、塁と風鬼たちから逃げていた女の鬼がいた。
よく見ると、女の鬼の横の地面には血が付いており、塁の手から出ている糸には血が付いていた。そう、塁は女の鬼の顔を自身の糸で切っていたのだ。
「何をしているんだ…、仲間じゃないのか…❗」
「誰…❓見せ物じゃないんだけど。…仲間❓そんな薄っぺらなものと同じにするな」
「僕たちは"家族"だ。強い絆で結ばれているんだ。それにこれは僕と姉さんの問題だよ。余計な口出しするなら刻むから」
炭治郎は見かねて怒りを露にしたが、塁は済ました顔で返した。
「強い絆で結ばれているなら信頼の匂いがするはずだ。けどお前たちからは"恐怖"と"憎しみ"と"嫌悪"の匂いしかしない」
「そんなものは絆とは言わない。紛い物…、偽物だ❗」
炭治郎が塁の絆を否定した所に皆さん大好きサイコロステーキ先輩が現れた。彼は刀を抜いて塁に襲い掛かるが、上半身を文字通り"サイコロステーキ状"にバラバラにされ、下半身が塁の側に転がった。
「何て言ったの❓お前…、いま何て言ったの❓」
塁から発せられる殺気に当てられ、炭治郎は脂汗が額から流れる。けど気持ちを持ち直し
「何度でも言ってやる。お前の絆は偽物だ❗」
炭治郎が言い終わると同時に塁が指先から伸びる糸で攻撃した。炭治郎と響鬼はそれを避け、左右から塁に迫るが、再び糸が迫り距離を取った。互いの攻防が続く中、炭治郎は塁の糸に顔や服を切られていたが、響鬼だけは無傷だった。
「お前は一息では殺さないからね。うんとズタズタにした後で刻んでやる。でも
「取り消さない❗俺の言ったことは間違ってない❗おかしいのはお前だ❗間違っているのはお前だ❗」
炭治郎は塁の糸を掻い潜りながら迫る。けど塁も炭治郎に向けて糸を放つ。炭治郎はその糸を壱ノ型水面斬りで斬ろうとするが、逆に刀が斬られてしまった。
そこに塁が糸で追い討ちを掛ける。炭治郎は死を覚悟し、響鬼は助けようと駆け出す。が、炭治郎と響鬼、塁と塁の姉は眼を見開いた。
箱の中にいた禰豆子が兄の炭治郎の危機を感じ取り、箱から飛び出し、炭治郎を庇い自分が傷ついたのだ。
炭治郎と響鬼は禰豆子を担ぎ塁から距離を取る。姉鬼は禰豆子の気配から鬼であることを察し、塁はわなわなと震えていた。禰豆子は血肉を喰らう代わりに寝ることで傷や体力を回復させる珍しい鬼である。なので傷の再生が他の鬼に比べて遅いのである。
炭治郎と響鬼は禰豆子の傷の再生を待っていると、塁が炭治郎たちを指差し、『兄妹か❓』と質問し、炭治郎がそれを肯定する。すると塁は『本物の絆だ…❗、欲しい…❗』と禰豆子を欲していた。
姉鬼はそれを聞いて自分が捨てられると思い塁にしがみつく。が、塁は姉鬼の頚と右腕を糸で斬り、『山の中をチョロチョロしている奴らを殺したら許す』と言って、姉鬼は右腕をくっ付け頚を持って塁から離れた。
「坊や、話をしよう。僕はね、君たちの"絆"を見て感動したんだよ。でも君たちは僕に殺されるしかない」
「でもね一つだけ回避する方法がある。"君の妹を僕に頂戴。大人しく渡せば命だけは助けてあげる"。悪い話じゃないだろ❓」
塁の提案に炭治郎は
「そんなことを承知するはずないだろう❗それに禰豆子は物じゃない❗自分の想いも意思もあるんだ❗お前の妹なんてなりはしない❗」
禰豆子を渡さない決意を述べるが、塁は引き下がらなかった。炭治郎は折れた刀を塁に向けて
「ふざけるのも大概にしろ❗恐怖でがんじがらめ縛りつけることを"家族の絆"とは言わない❗君のその根本的な心得違いを正さなければ欲しいものは手に入らないぞ❗」
塁の絆を完全に否定した。塁は『君を殺して奪い取る』と、炭治郎は『その前にお前の頚を斬る』と啖呵を切った。すると塁は前髪で隠れていた左目を見せた。そこには
「十二鬼月である僕に…勝てるならね」
"下伍"と刻まれていた。
「戦うのはお前だけじゃない。俺も一緒だ」
響鬼はそう言って炭治郎の右肩に自身の左手を置いた。炭治郎が響鬼を見ると、顔は笑っていたが、『怒りの匂い』が強く濃く漂っていた。
「君はだれ❓僕たちの話の邪魔しないでよね。これ以上邪魔するなら刻むよ❓」
「やれるもんならやってみな。だが、そう簡単にはいかないぜ❓」
響鬼は炭治郎から手を放し、右手に持っていた音角を鳴らし、額へ近づける。そして自身の身体を紫の炎が包み、炎を振り払うと鬼の姿へと変身していた。
「君も鬼だったんだ。僕と家族にならない❓」
「お前の質問の答えは"これ"だ。ハアッ」
塁は響鬼の姿を見て勧誘するが、響鬼は口から火を出す『
「それが君の答えなんだ。じゃあいいよ。君も刻むから」
「死ぬのはお前だ十二鬼月。俺たちがお前を地獄に送ってやる」
塁は鬼火を回避し距離を取った。今此処に炭治郎&響鬼VS塁の火蓋が切って落とされた。
先に仕掛けたのは塁だった。塁は右腕を引くと、禰豆子が塁の下へ引き寄せられた。だが響鬼は腰の後ろにある『
「いくら血鬼術でも所詮糸は糸。俺の術でも対応はできる」
落ちてきた禰豆子を響鬼は抱き止め、烈火剣の先を塁に向けた。
「炭治郎❗禰豆子ちゃんは俺が守る❗思い切りやれ❗」
『全集中 水の呼吸
炭治郎は響鬼に言われ、回転が増すごとに斬撃が強くなる技を繰り出し、塁の糸を斬る。だが、塁は自身の指を血色に変え、
『血鬼術
触れた物を瞬時に切り刻む糸を繰り出した。その瞬間、炭治郎は走馬灯を見た。炭治郎は幼い頃、父の
『炭治郎、この耳飾りと神楽だけは途切れさせず継承していってくれ。
「(❗❓炭治郎の呼吸が変わった❗❓)」
それを思い出した炭治郎は父から教わった呼吸をすると、響鬼の眼には刀から伸びている"水の竜"が
『ヒノカミ神楽
すると炭治郎の刀は先程よりも硬くなっていた塁の糸を簡単に切り裂いた。炭治郎はそのまま刀を塁の頚目掛けて振るうが、またもや塁は糸を使って妨害しようとする。
『禰豆子、起きて。
響鬼に助けられた禰豆子は貧血で少しの間気を失っていたが、"母の幻"が禰豆子に語りかけ、眼を覚ますと炭治郎の危機が眼前にあった。
禰豆子は自身の手を塁に向けると
『血鬼術
開いた手を握り締めると同時に塁の糸が燃え広がった。塁の糸には禰豆子の血が付着していたため、糸に火がついたのだ。しかも炭治郎の刀にもいつの間にか禰豆子の血が付着しており、塁の頚に届いた刀の威力を加速させていた。
「俺と禰豆子の絆は誰にも引き裂けない❗」
そして遂に炭治郎は塁の頚を跳ね飛ばした。