炭治郎がカナヲに勝った翌日、善逸と伊之助は炭治郎にどうして勝ったのか聞いた。炭治郎は身振り手振りで教えるが、二人には上手く伝わってはいなかった。そう、炭治郎は人に教えるのが爆裂に下手なのだ。そこでしのぶは助け船を出すことにした。
「炭治郎君が会得したのは『全集中・常中』という技です。全集中の呼吸を四六時中やり続けることにより、基礎体力が飛躍的に上がります」
しのぶは二人に向かって説明をしていた。何故か
「これはまぁ基本の技というか初歩的な技術なのでできて当然ですけれども。会得するには相当な努力が必要ですよね」
そう言ってしのぶは炭治郎から離れ、伊之助の肩に手を置くと
「まぁ
伊之助を慰めるように肩を何度も軽く叩いた。伊之助は当然怒り
「はあ"ーん❗❓できてやるっつーの当然に❗舐めんじゃねぇよ乳もぎ取るぞコラ❗」
しのぶはやる気満々になった伊之助を見た後、善逸の所まで行って
「頑張ってください善逸君。
善逸の手を握り応援した。善逸は顔を赤くして
「ハイッ」
とだけ返事をした。
それから二人は柵の上を猛スピードで走ったり、大岩に括り着けたロープを太い木の枝に通して引っ張って持ち上げたりと言った訓練をした。そして常中会得の訓練を開始してから九日後、二人の病院服はボロボロになりながらも、全集中・常中を会得した。
しのぶは相手をやる気にさせるのが得意な魔性の女ならぬ魔"蝶"の女だった。
善逸、伊之助が常中を会得してから数日後、炭治郎の下に一羽の鴉が舞い降りた。鴉からの情報を聞いた炭治郎は伊之助の所へ走った。
「伊之助❗もうすぐ打ち直してもらった日輪刀がくるって❗」
壺❓水瓶❓の上に箒を置き、その上で腕を突っ張りながら開脚をしていた伊之助を炭治郎は連れて行き、屋敷の外へ出た。すると丁度こちらに向かってくる人影が二人見えた。炭治郎はその人影に手を振ると、人影の一人がもう一人の人影に"何か"を渡し、こちらに走って来た。
姿が見える所まで来ると鋼錢塚が包丁を持ってこちらに突進していた。危うく刺されそうになる所を炭治郎は寸前で避け、鋼錢塚が炭治郎の方を振り向くと
「よくも折ったな俺の刀を❗よくもよくもォオ❗」
「殺してやるー❗」
憤怒と憎しみの匂いを出した鋼錢塚に炭治郎は一時間も追い回された。
そしてようやく落ち着き、屋敷の縁側に移動すると
「まぁ鋼錢塚さんは情熱的な人ですからね。人一倍刀を愛していらっしゃる。あ、私は
鋼錢塚の付き人の鉄穴森が鋼錢塚の性格と自己紹介をした。鉄穴森は伊之助の刀を担当することになり、彼の日輪刀を打ち、持参したのだ。伊之助は日輪刀を握ると
「ああ綺麗ですね。
刀身に色が乗り、綺麗な色を出した。すると伊之助は中庭に出て敷いている石を品定めし始めた。鉄穴森は伊之助の行動に疑問を感じ、声をかける。
すると次の瞬間、伊之助は刃に向けて石を振り下ろした。その行動に鉄穴森はもちろん、炭治郎と鋼錢塚も驚き、遂には綺麗な刃先はボロボロの刃こぼれ状態になってしまった。そして伊之助は満足そうにうなずくと、もう一本の刀も先程と同じようにボロボロにした。これを見た鉄穴森は
「ぶっ殺してやるこの糞餓鬼❗」
当然怒り狂った。伊之助に襲い掛かろうとする鉄穴森を炭治郎は体を張って止めた。そして帰る時には
「はあぁ~無いわ~❗あれは無いわ~❗」
と未だに怒っていた。そして鋼錢塚はと言うと、鉄穴森の怒りを見て自身の怒りが鎮火し、冷静になっており、鉄穴森を慰めていた。
とある夜、一人の女性が琵琶(楽器)を奏でると、一体の鬼が現れた。その鬼の左目には"下陸"と刻まれていた。そして女性が何度も琵琶を弾くと他の場所に次々と鬼が現れた。どの鬼も左目に下弦の鬼の印である下の文字と数字が刻まれていた。
そして琵琶の音が鳴り止むと、下弦の鬼五体が一ヶ所に集められ、目の前に豪華な着物を着た女性が立っていた。
「
女がそう言った瞬間、下弦の鬼五体全ては言われた体制になった。
そうこの女こそ姿や性別は違えど浅草で炭治郎が出会った鬼舞辻無惨なのだ。
下弦の肆である女の鬼は無惨とは知らず、礼をしなかったことを謝ろうとするが
「誰が喋って良いと言った❓貴様共のくだらぬ意思で物を言うな。私に聞かれた事にのみ答えよ」
無惨はそれを遮り、怒りを露にした。
「塁が殺された、下弦の伍だ。私が問いたいのは一つのみ。『
「より人を喰らいより強くなり私の役に立つための始まり。ここ百年余り十二鬼月の上弦の顔ぶれが変わらない。鬼狩りの柱共を葬ってきたのは常に上弦の鬼たちだ。しかし下弦はどうか❓何度入れ替わった❓」
そこまで言われ、下弦の陸は『そんなこと俺たちに言われても』と思った。だが
「"そんなこと俺たちに言われても"何だ❓言ってみろ」
無惨は陸の思考を読み、続きをうながした。
だが陸は言おうとせず、遂に無惨は怒りだし、左手を変形させ陸を捕まえた。そして捕まえた手から無数の口を出し、"陸を喰った"。下弦の参はなぜ殺されるのか考えていると
「私よりも鬼狩りの方が怖いか」
今度は肆の思考を読んだ。肆は必死で否定するが、その行動は無惨を更に怒らせるだけであり、肆も喰い殺された。下弦の参はここにいたら殺されるだけだと思い、無惨の前から逃げだした。参は逃げきろうとするが、既に無惨によって頚を"斬られていた"。
「もはや十二鬼月は上弦のみで良いと思っている。下弦の鬼は解体する。最後に言い残すことは❓」
残った下弦の壱と弐は無惨の発言に驚き、弐は『猶予をくれれば必ずお役に』と言うが、無惨は『具体的にどれほどの猶予が必要か❓』と聞いた。すると下弦の弐は『貴方様の血を分けて戴ければ必ず順応してみせます❗』と言った。
だがこれも無惨を怒らせるだけで、下弦の参の頚を放り投げ
「なぜお前の指図で血を与えねばならんのだ。甚だ図々しい。身の程を弁えろ」
無惨の発言に下弦の弐は否定するが
「黙れ。何も違わない私は何も間違えない。全ての決定権は私に有り私の言うことは絶対である。お前に拒否する権利はない。私が"正しい"と言った事が"正しい"のだ」
「お前は私に指図した。死に値する」
そして下弦の弐は殺され、残ったのは下弦の壱のみとなった。
「最後に言い残すことは❓」
無惨が下弦の壱に問いかけると『そうですね』と考えると、頬を染めて
「私は夢見心地で御座います。貴方様直々に手を下して戴けること。他の鬼たちの断末魔を聞けて楽しかった。幸せでした。人の不幸や苦しみを見るのが大好きなので。夢に見る程好きなので」
「私を最後まで残してくださってありがとう」
すると無惨は右手を変形させ、下弦の壱に爪のような物を突き刺した。そしてそこから何かを下弦の壱に流し込んだ。
「気に入った、私の血をふんだんに分けてやろう。ただしお前は血の量に耐えきれず死ぬかもしれない。だが"順応"できたならばさらなる強さを手に入れるだろう」
「そして私の役に立て。鬼狩りの柱を殺せ」
そして無惨は自分の耳を指差し
「耳に花札のような飾りをつけた鬼狩りを殺せばもっと血を分けてやる」
そして琵琶の音が鳴り響くと無惨の姿は消え、下弦の壱はどこかの町の一角に"落とされた"。そして下弦の壱の目に写ったのは、自分に向かってくる炭治郎の映像だった。
「うふ、うふふ。柱とこの子供を殺せばもっと血を戴ける…、夢見心地だ……❗」