時は炭治郎たちが身支度している頃まで遡る。
場所は鬼屋敷。そこには宇随に"誘拐"されそうになったアオイとなほをしのぶ、珠世、愈史朗、響鬼に慰められていた。カナヲはアオイのことを心配していたが、任務に行かなくてはならなかったので、二人を軽く抱きしめた後、蝶屋敷を後にした。その際、
「鬼だけど、包容力がある珠世さんに頼っては❓」
と言われ鬼屋敷を訪問。珠世たちに事情を説明し、二人は珠世の包容を受けていた。
鬼に対してトラウマを持っているアオイはなぜ珠世は大丈夫なのか。それは宴の時まで遡る。アオイは珠世と愈史朗が鬼であることが分かると、顔を青くした。だが珠世は
「鬼が怖いのは分かります。ですが、私たちは決して貴女たちを襲いません。もし襲ったのなら、この頚を跳ねて構いません。口約束ではありますが、私たちは危害が無いことを行動で示します」
と言ったのだ。それからと言うもの、珠世たちの行動を見ていたアオイは有言実行をしている珠世を母親として見るようになり、愈史朗を兄として見るようになっていた。
因みにカナエ、すみ、きよの三人は蝶屋敷を留守にすることはできず、留守番となった。
「まったく、その音柱と言う奴はとんでもない野郎だな❗」
『珠世が全て』を心情にしている愈史朗は珍しくアオイたちの味方をしていた。
「炭治郎さんが言っていましたけど、『幼女趣味の人さらい地味柱』は相手のことを考えないゲス野郎ですね」
しのぶも『笑っていない笑み』を浮かべ、顔に青筋を浮かべていた。すると開いている窓から茜鷲が入ってきて、響鬼の手に収まった。この茜鷲は響鬼が炭治郎に屋敷の建築祝いで送った三枚の内の一枚である。
響鬼はディスクモードになった茜鷲を自分の音角で挟み、回して情報を読み取る。そして読み終えた茜鷲を音角から取り外すと
「どうやら炭治郎たちは遊郭へ向かうようだ」
茜鷲からの情報を伝えた。すると
「
しのぶが先程よりも濃く黒いオーラを出し、
「珠世さん、すみませんが二人のことをお願いしてもよろしいですか❓ちょっと"炭治郎君"の後を追いかけますので」
しのぶはそう言って部屋を出た。響鬼はため息を一つ吐くと、カナエたちにこのことを伝えるために部屋を後にした。そして蝶屋敷に入ると運良くカナエに会い、炭治郎のことや、しのぶのことを伝えた。
カナエは珍しく青筋を浮かべ、しのぶと同じジェスチャーをしていた。
「(カナエとしのぶちゃん、こういう時だけは姉妹だと感じるんだよなぁ)」
響鬼がしのぶのことを『醜女』と呼ばずに名前で呼んでいるのは、以前炭治郎が蝶屋敷にいる時に見舞いをした後、偶然しのぶに出会い、醜女と呼んだことを謝罪した。しのぶからは許してもらい、名前で呼ぶように言われたからだった。
そして時は善逸が"売れ残った"時に戻る。
荻本屋に引き取られた伊之助は化粧を落とされ、素顔が現れた。そして芸を仕込むため、移動していた。
一方善逸は京極屋で三味線を物凄い形相で引いていた。その理由は至極単純。京極屋に"棄てられる"ように置いていかれたからだった。
「(見返してやるあの男…❗アタイ絶対
(お前がなれるわけねーだろ)by作者
翌日炭治郎の方は荷物を鯉夏花魁の部屋へ運ぶようお願いされていた。炭治郎は大量の荷物を"一度"に持って運ぶ。頼んだ女性たちは驚いていた。そして鯉夏花魁の部屋の前まで来ると、二人の少女が話していた。
「京極屋の女将さん、窓から落ちて死んじゃったんだって。怖いよね、気をつけようね」
「最近は"足抜け"していなくなる姐さんも多いしね。怖いね」
そこに炭治郎が『足抜け』について聞いてきた。"大量の荷物"を置きながら。
『足抜け』とは借金を返さずに逃げることを言う。無論、捕まればひどい目に合う。無事に逃げきれる者もいるが、それは極少数である。殆んどは捕まってしまうのだ。
少女の一人が"須磨"の名を呟き、炭治郎はそれを聞き出そうとする。そこに
「噂話はよしなさい。本当に逃げきれたかどうかなんて…、誰にもわからないのよ」
鯉夏花魁が現れ、話を遮った。鯉夏花魁は炭治郎に荷物を運んでくれたお礼として菓子を幾つか渡す。それを見た少女たちは『自分も』とせがむ。だが鯉夏花魁はそれを咎める。炭治郎は鯉夏花魁に須磨のことを聞く。それを疑問に思った鯉夏花魁は炭治郎に『どうしてそんなことを聞くんだい❓』と質問をする。すると炭治郎は
「須磨花魁は私の…、私の…、姉なんです」
そう答えたが、その顔に問題があった。
炭治郎は正直すぎる性格なので、嘘をつく時は相手への申し訳ない気持ちが顔に出るため、ひどく顔が歪むのだ。
ひどく顔が歪む炭治郎に鯉夏花魁は『私も足抜けするとは思えない』と答えた。すると炭治郎の顔は元に戻った。
鯉夏花魁の話では、須磨の部屋から日記が見つかり、そこには足抜けをすることが書かれていたとのことだった。炭治郎は日記は偽装であることを見抜き、須磨の無事を祈った。
その頃、派手な化粧をし、鬼殺隊の格好をした宇随は屋根の上から遊郭を見下ろしていた。
「(今日も異常なし。やっぱり尻尾を出さねぇぜ。嫌ぁな感じはするが鬼の気配ははっきりしねぇ。煙に巻かれているようだ。気配の隠し方の巧さ…地味さ、もしやここに巣食っている鬼…、上弦の鬼か❓だとすると、ド派手な"
遊郭に潜んでいるのは上弦の鬼かも知れないと考えていた時
「こんにちは。綺麗な夕焼けですね」
と声を掛けられた。その声の主に宇随は覚えが有り、振り返りたくない気持ちを押さえこみ、まるで錆びたロボットのように動きながら振り返ると
「どうしたのですか❓そんな幽霊を見たような顔をして」
しのぶが宇随の真後ろにいた。しかもドス黒いオーラを"全身"から出していた。
「胡蝶、お前ぇ、何でここに」
「炭治郎君が放った茜鷲からの情報を、読み取った響鬼さんが教えてくださったんですよ」
宇随は何でここにしのぶがいるのか聞くと、しのぶは茜鷲からの情報を読んだ響鬼が教えてくれたと聞いて驚愕した。確かに炭治郎は藤の家で茜鷲を起動させ飛ばしていた。『まさかこんなことになるなんて』と宇随は後悔していた。
「さて宇随さん、"炭治郎君に何をさせているんですか"❓」
通常ならしのぶの言葉の"違和感"に気づく宇随だが、しのぶのオーラに当てられている現在、違和感に気づくことは無かった。
「胡蝶、とりあえず落ち着け。その体から派手に出ている
宇随は徐々に近づいてくるしのぶを落ち着かせようとするが
「私の体から一体何が出ているのですか❓
全く意味を成さなかった。そしてとうとう捕まり
「さぁ
それから、
この鬼ごっこの勝敗は当人のみ知る。