蕨姫花魁は善逸に手を掴まれている時、"少し昔"のことを思い出していた。
時は遡ること『炭治郎たちが遊郭に来る二日前』
蕨姫花魁の部屋で二人の女性が話をしていた。一人は蕨姫花魁当人。もう一人は京極屋の女将だった。蕨姫花魁は女将から説教を受けていた。その内容は『足抜けや怪我人、自殺者が出たことについて』だった。蕨姫花魁は自分が気に入らないと虐める傾向があり、怪我人などは蕨姫花魁が原因だった。
そして蕨姫花魁が人を見下す"仕草"をすると、女将は自分の小さい頃に聞いた話を思い出した。『自分が小さい頃、"姫"の名を持っていた花魁がいた』話を。
女将は蕨姫花魁の正体を追求しようとした。だが、蕨姫花魁は"自分の本性"を出し、女将を連れて部屋の外、つまり建物の上空へ跳んだ。
蕨姫花魁の左目には"上弦"、右目には"陸"と刻まれていた。そして彼女は女将を"落とした"。
そして周りが騒ぐ中、屋根の上を歩いて自分の部屋に戻った時、一人の男性がいた。
「無惨様…❗」
そう、鬼舞辻無惨が部屋にいたのだ。無惨は以前炭治郎が浅草で出会った格好をしていた。蕨姫花魁こと『上弦の陸』は無惨に声を掛けられ、頭を下げて平伏した。無惨は少し話をすると、立ち上がり
「"
そして時は現代に戻り、蕨姫花魁こと上弦の陸・堕姫は善逸を"殴り飛ばした"。そこに騒ぎを嗅ぎ付けた店主が堕姫に土下座した。堕姫も花魁の顔をして許した。そして旦那たちは人を動員して蕨姫の部屋を片付けさせた。
「(あのガキ、この感触からすると、軽傷だね。失神はしているけれども、受け身を取りやがった。一般人じゃない。鬼殺隊なんだろう。でも柱のような実力は無い)」
堕姫は笑いながら化粧を施し、炭治郎は濁った匂いを感じた。が、一瞬顔を傾げた。何故なら、しのぶの匂いが一瞬漂った感じがしたからだ。だが炭治郎はすぐに呼ばれてしまったのでその場所を移動した。
その後、『善逸がいなくなった』と女性の一人が旦那に報告するが、旦那は『足抜けだから放っておけ』と言われ、その話は強引に終わらされた。
翌日、炭治郎と伊之助は定期連絡のために屋根の上にいた。伊之助は身振り手振りで鬼がいたことを伝えるが炭治郎には上手く伝わらなかった。炭治郎は宇随と善逸が来るからちょっと待つよう言うと
「善逸は来ない」
宇随が音も無く屋根の上に座っていた。何故か『頬が痩けて疲れた』状態で。
「善逸が来ないってどういうことですか❓それになんでそんなに疲れているんですか❓」
炭治郎は善逸が来ないのと疲れている理由を聞いた。
「お前たちには悪いことをしたと思ってる。俺は嫁を助ける為にいくつもの判断を間違えた。善逸は今行方知れずだ。昨夜から連絡が途絶えている」
「
「疲れていることには触れるな」
宇随はそう言って姿を消した。炭治郎は『なんでしのぶさんも❓』と首を傾げ、伊之助が『階級が一番下』だからと思っているが、実際は伊之助の階級は下から四番目の"庚"だった。伊之助は階級を浮かばせ、炭治郎に見せる。炭治郎は"藤花彫り"のことはお館さまから聞いており、自分もやると、手の甲に"鬼柱"と浮かんだ。
炭治郎は『自分の調べている店の調査が終わるから待って欲しい』と言うと、伊之助は炭治郎を叩き始めた。
「ちょっ、伊之助、落ち着け❗宇随さんはずっと店の外で見張っていたから鬼がいれば対処しているはずだろ❓だけど宇随さんは"何も言ってなかった"。それに善逸も連絡が途絶えた」
「だとすると考えられることは一つ。"建物の中に通路がある"と俺は思う」
炭治郎の言葉に伊之助は叩くのを止めた。炭治郎はその推理に行き着いた理由を言うと伊之助もそれに納得する。
「俺は善逸も宇随さんの奥さんも皆生きてると思う。そのつもりで行動する。必ず助け出す」
そこまで言って炭治郎は一度、大きく息を吸うと
「鬼柱・竈門炭治郎が庚・嘴平伊之助に命令する❗この任務、俺と行動を共にし、そして必ず"生きて帰るぞ"❗」
炭治郎は柱として"最初の命令"を伊之助に言い渡す。伊之助は頷きながら
「お前がさっき言ったことは全部な、今俺が言おうとしてたことだぜ❗」
「それとお前は命令すんじゃねぇ❗命令すんのは俺だ❗俺が親分だ❗お前が子分だ❗間違えるな❗」
伊之助は炭治郎を指差しながらそう言って、荻本屋へ帰った。炭治郎は伊之助の行動にクスリと笑うと、ときと屋へと向かった。
「これでいいのか❓胡蝶」
「はい」
炭治郎たちがいた所から少し離れた所で彼らを見ていたのは『幼女趣味の人さらい地味柱』こと音柱・宇随天元、そして『鋼鉄の黒い魔蝶』こと蟲柱・胡蝶しのぶの二人だった。
宇随が疲れていた理由は炭治郎たちに合流する前までしのぶに実験…もとい協力を"させられそうになっていた"のだ。宇随はこれ以上は限界だと感じ、しのぶに任務の協力を要請。しのぶは
「私が言う"条件"を受けてくださるなら、良いですよ」
と了承した。しのぶが提示した条件は『この任務で炭治郎と一緒になる』だけだった。宇随はそれを承諾し、しのぶのオーラを仕舞わせることに成功した。
「胡蝶、お前は(色んな意味で)派手な奴だな」
「貴方ほどでは無いですよ」
宇随の呟きにしのぶはニッコリ笑っていた。