ここは"ときと屋"。鯉夏花魁が自室で身支度を整えている最中、彼女は手伝いをしてくれていた女の子たちを食事に行かせた。そして鏡を覗いていると
「鯉夏さん、不躾に申し訳ありません。俺は"ときと屋"を出ます。お世話になった間の食事代などを旦那さんたちに渡していただけませんか❓」
炭治郎が鬼殺隊の服と自身の羽織を着た状態で鯉夏の後ろに現れ、金を包んだ紙を差し出した。
振り向いた鯉夏花魁は炭治郎の格好を見てその事を聞く。炭治郎は『訳あって女性の姿でしたが男です』と答えた。
「あ、それは知ってるわ。見ればわかるし…、声も。男の子だっていうのは最初からわかってたの。何してるのかなって思ってはいたんだけど…」
だが鯉夏花魁には会った時から見抜かれていた。
「事情があるのよね❓須磨ちゃんを心配してたのは本当よね❓」
「はい❗それは勿論です❗嘘ではありません❗いなくなった人たちは必ず助け出します」
それを聞いた鯉夏花魁は安心し、明日嫁ぐことを炭治郎に話した。だが"ときと屋"に残る人やいなくなった人たちのことが心配でも調べることが出来なかった歯痒さが残っていた。
「それは当然です、どうか気にしないで。」
「……私はあなたにもいなくなってほしくないのよ炭ちゃん」
鯉夏花魁はそう言うと、炭治郎は笑って部屋から消えた。
「炭ちゃん、あなたが"先に"出会っていたら、あなたに嫁いでいたかもしれないわね」
炭治郎がいなくなった部屋で鯉夏花魁は静かに独り言を呟いた。
「何か忘れ物❓」
鯉夏花魁は背後に気配を感じ、それが炭治郎だと思い振り返る。そこには
「そうよ。忘れないように喰っておかなきゃ。アンタは今夜までしかいないから。ねぇ鯉夏」
炭治郎では無く、蕨姫花魁、否、"上弦の陸・堕姫"がいた。
屋根の上にいる炭治郎は急いで伊之助の所へ向かおうとすると、"鬼の匂い"を嗅ぎとった。
日が落ちた頃、荻本屋にいる伊之助は炭治郎を待っていたが、我慢の限界が来てしまい、伊之助は天井裏に頭を突き出す。
「ねずみ共、刀だ❗」
伊之助が叫ぶと暗闇から二匹のねずみが刀を持って現れた。そのねずみは上半身がやたらとムキムキになっており、一匹につき刀を一本持って"二本足"で歩いていた。
このねずみの名は『ムキムキねずみ』。宇随の使いであり、特別な訓練を受けた知能が高い"忍獣"である。
(ネーミングそのまんまじゃねーか)by作者
刀を受け取った伊之助は服を脱ぎ自身の隊服に着替え、最後に猪の頭を被り、
「行くぜ鬼退治❗猪突猛進❗」
意気揚々と部屋を出た。それを見ていた女性は震えていた。
一方善逸と雛鶴がいた"京極屋"では、旦那の後ろに宇随が現れ、クナイを首筋に当てながら善子(善逸のこと)と雛鶴の居場所を聞いていた。
「善子は消えた。雛鶴は病気になって
"切見世"とは、最下級の女郎屋である。客がつかなくなったり病気になった遊女が送られる場所である。
宇随は更なる情報を聞き出そうと"優しく"声を掛ける。すると
「蕨姫と言う花魁だ。日の当たらない北側の部屋にいる…❗」
それを聞いた宇随は音も無く姿を消した。そして蕨姫の部屋に潜入するが、蕨姫は居なかった。そこで宇随は雛鶴がいる切見世へ向かった。
一方炭治郎は鯉夏の部屋へ戻ると、堕姫が鯉夏を"帯に取り込んで"いる所だった。
「来たのね、そう。何人いるの❓一人は黄色い頭の醜いガキでしょう。柱は来てる❓もうすぐ来る❓アンタは柱じゃないわね。弱そうだものね」
「柱じゃない奴は要らないのよわかる❓私は汚い年寄りと不細工を喰べないし」
鯉夏の状態を見た炭治郎は鯉夏を放すよう叫ぶが、堕姫は怒り、残っていた帯で炭治郎を攻撃、外へ弾き飛ばした。炭治郎は落ち着きながら堕姫の"異能"である帯を見極めていた。
「生きてるの、ふぅん。思ったより骨はある。目はいいね綺麗。目玉だけほじくり出して喰べてあげる」
炭治郎は肩紐が千切れた箱を置き
「禰豆子ごめん。肩紐が千切れた、背負って戦えない。箱から出るな。
禰豆子は箱の中から炭治郎を心配する。そして互いに飛び出し
『水の呼吸 肆ノ型 打ち潮・乱』
炭治郎は刀、堕姫は帯で"斬り合った"。炭治郎は鯉夏が取り込まれている帯を斬り、互いに着地した。
「(空中での身の
炭治郎が堕姫と戦っている時、宇随は嫁の一人である"雛鶴"を見つけ出していた。
雛鶴は蕨姫が鬼と気づいていたが、向こうも雛鶴のことを怪しんでおり、身動きが取れなかった。そこで彼女は"宇随から万が一の時の為に渡された毒"を飲み、病に罹った"ふり"をして"京極屋"を出ようとしていた。だが蕨姫こと堕姫は別れ際、彼女に"いつでも始末できるように"帯を渡していた。
宇随が到着した時には、その帯が雛鶴に襲い掛かっていたので、宇随は持っていたクナイで帯を壁に縫い付けた。そして解毒薬(しのぶ改良版)を飲ませ、切見世を後にした。
宇随は炭治郎の加勢に向かうため、戦闘箇所へ急いでいた。が、不意に進路を変えた。そしてとある場所の地面に鬼の気配を感知した。そして宇随は自身の二本の刀を握って刃を出すと
『音の呼吸 壱ノ型
刀を地面に向けて"振り落とした"。
宇随の二本の刀は"爆薬"が仕込んである特注品で、触れる度に爆発が起きるのだ。
一方炭治郎は堕姫との戦いで刃がボロボロになっていた。堕姫は『その刀を打った奴は碌な奴じゃない』と罵ったが炭治郎は否定する。
炭治郎は"自分の体が水の呼吸に適していない"のを悟っていた。
「(俺の体は"ヒノカミ神楽"の方が適しているんだ。でも強力過ぎる故に連発が
「(燃やせ、燃やせ、燃やせ❗心を燃やせ❗)」
『ヒノカミ神楽
炭治郎は堕姫が放った帯を斬った。堕姫は炭治郎の太刀筋や呼吸音が変わったことに驚く。そして炭治郎は堕姫に接近し
『ヒノカミ神楽
二連撃の斬撃を繰り出した。だが堕姫は一撃目を回避、帯を炭治郎の頚に差した。
『ヒノカミ神楽
だが炭治郎は忽然と姿を消した。
幻日虹は高速の捻りと回転による回避特化の舞である。視覚が優れている者ほど残像をくっきりと捉えてしまうのだ。
炭治郎を見失ってしまった堕姫は誰が見ても隙だらけであり、
『ヒノカミ神楽
炭治郎の刃が堕姫の頚に迫った。
「遅いわね、欠伸が出るわ」
だが、堕姫は既に"炭治郎を捉えて"おり、帯で炭治郎をまた弾き飛ばした。炭治郎は受け身を取ろうとするが、できず地面を何度もバウンドする。起き上がろうとするが、それもできない。
何故なら、ヒノカミ神楽の連続使用の反動が来ていたからだった。堕姫は炭治郎の頚を斬ろうと近寄る。だが炭治郎は寸前で回避。再び刀と帯の斬り合いになる。
炭治郎は斬り合いの中、自分の"体温を上昇"させようとしていた。それには理由があった。
以前蝶屋敷で体温を計った時、なんと体温が三十八度もあったのだ。しかも三日連続で。体温を計ったきよはしのぶに言おうとした。だが炭治郎はそれを止めた。その理由は『
炭治郎は何度もきよにお願いし、きよは『少しだけですよ』と了承した。
炭治郎は弾き飛ばされながらも堕姫に喰らいついていた。
「(戦えてる、上弦の鬼と……。"ヒノカミ神楽"なら通用するんだ。いや、
「(二度と理不尽に奪わせない❗もう二度と、誰も、
炭治郎は"ヒノカミ神楽の呼吸"を使って堕姫に迫る。
「ふふっ不細工は頑張っても不細工なのよ」
迫る炭治郎に堕姫は不気味に笑った。
「(炭治郎君、"ヒノカミ神楽"を連続で使用している…。恐らく、体温を上昇させているのでしょうね)」
炭治郎と堕姫の戦闘を少し離れた場所からしのぶは見ていた。彼女は炭治郎が"ヒノカミ神楽"を連発しているのを見て、体温を上昇させていることを見抜いていた。
なぜしのぶが"体温の上昇"と"ヒノカミ神楽"の二つを直結できたのか❓その理由は簡単である。実はきよが炭治郎に"内緒"で彼女に話したからである。当然しのぶは炭治郎に"絶対安静"を言い渡そうとする。だが言っても聞かない炭治郎には"馬の耳に念仏"であるのを知っていたので、様子を観察することにしたのだ。
「(まぁ硬い決意をした彼の顔は格好いいですけど。)炭治郎君、もし貴方に"何か"あれば、カナヲだけじゃなく、アオイや私も正気ではいられなくなりますからね」
しのぶは聞こえないと分かっていながらも呟き、炭治郎への加勢のチャンスを伺っていた。