千寿郎の爆弾発言から数分後、炭治郎とカナヲは『後で天元をシメる』と言う形で落ち着いた。因みに噂を流した天元当人は、ド派手なくしゃみをしていた。
そして二人は千寿郎と共に彼の部屋を後にすると、
「おぉ二人とも、千寿郎の相談は終わったか❗❓」
杏寿郎が待ち構えていた。二人は同時に頷くと
「それは良かった❗千寿郎の悩む顔をこれ以上見るのは耐え切れんかったからな❗千寿郎に笑顔が戻って良かった❗二人に相談をお願いして助かった❗」
二人の肩を軽く叩きながら、感謝の礼を言った。
「では炎柱の稽古を伝える❗内容は『一対一の模擬戦』だ❗一人ずつ戦い、先に十連勝した者が次に進める形となる❗全集中の呼吸は使っても良いが、技を使った場合は失格と見なし連勝記録も零に戻る❗」
杏寿郎の稽古は模擬戦だった。しかも技の封印付きだった。
「稽古に入る前に竈門少年、君に『あること』をお願いしたい❗以前やっていた演奏をここで披露して欲しい❗鬼屋敷の最初の稽古の時に天元殿と一緒に見て以来、ここに来た時にお願いしたかったのだ❗」
杏寿郎は炭治郎に鬼屋敷でやった演奏を依頼した。炭治郎はそれを承諾。『どうせなら隊士がいる所でやった方が良い』と思い、炭治郎はそのことを杏寿郎に伝える。杏寿郎は願っても無いことだったのでそれを承諾。炭治郎は茜鷲を飛ばし、戻ってくるのを待った。
暫くして茜鷲が戻り、炭治郎はその情報を読み取る。そして茜鷲を外し
「師匠たちから了承の返事が来ました。けど、今から出立しても到着が明日の朝になるとのことです」
炭治郎は響鬼たちの返事と何時出来るのかを伝えた。
「よもや❗❓できれば今すぐと思っていたのだが、致し方無し❗演奏して下さるだけでも良しとしなければ❗」
杏寿郎は残念そうに言うが、それも致し方無しと思い、納得した。
炭治郎たちの稽古は明日からということでその日は炎屋敷で炭治郎が『せめてものお詫び』と言って彼が料理を作り、その料理を味わった。
そして翌朝、炭治郎は響鬼たちと一緒に道場で演奏の準備を行い、終わった所で隊士たちを呼び、並ばせた。
「諸君、これより『鬼柱・竈門炭治郎』とその師匠の方々による演奏を聞いてもらう❗」
杏寿郎の言葉を皮切りに隊士が背筋を伸ばし、正座して演奏を待った。杏寿郎は炭治郎の方を向き、頷く。炭治郎は頷き返し、
「師匠、お願いします❗」
そう言って演奏が開始された。そして約五分の演奏が終わり、一同は皆に向かって礼をする。すると、隊士たちは拍手しながら立ち上がった。
「とても良い演奏だった❗これで皆も気合いが入っただろう❗ではこれより中庭に移動し稽古を開始する❗」
杏寿郎も拍手を送り、隊士たちに稽古の開始を告げた。隊士たちは中庭に移動し散り散りとなり、稽古を始める。
「竈門少年、君の相手は俺が「ちょっと待て」❗❓、父上❗❓」
一緒に移動した炭治郎の相手を杏寿郎が勤めようとした時に、待ったが掛かった。それを掛けたのは杏寿郎の父の『元炎柱・煉獄槇寿郎』だった。
「少年よ、お前さんの演奏とても良かった。お陰で燻っていた儂の心に火が付いた。お前さんのその耳飾り、『日の呼吸』の使い手か。稽古だからと言って優しくはせんぞ❗」
「はい❗お相手、よろしくお願いします❗」
槇寿郎と炭治郎は事前に千寿郎が用意していた木刀を持ち、互いに構えた。
「ではこれより、『元炎柱・煉獄槇寿郎』対『現鬼柱・竈門炭治郎』の模擬戦を行う❗どちらかが一本取った時点で終了とする❗審判は俺、『炎柱・煉獄杏寿郎』が勤める❗では…、始め❗」
杏寿郎の掛け声で模擬戦が始まった。最初は槇寿郎の勢いに押された炭治郎だが、すぐに持ち直し、五分の戦いとなった。そして
「一本❗それまで❗この模擬戦、『元炎柱・煉獄槇寿郎』の勝ちとする❗」
炭治郎の胴に槇寿郎の木刀が当たり、杏寿郎が終了の合図を出す。そして炭治郎と槇寿郎は互いに一礼をした。
「炭治郎、大丈夫❓」
カナヲは炭治郎を心配し駆け寄る。炭治郎は叩かれた箇所を擦りながら『大丈夫』とカナヲに言う。それを見ていた槇寿郎は
「あの二人、まるで昔の儂と瑠火みたいじゃないか」
かつての自分と他界した妻の面影を重ねてしみじみしていた。
「少年よ、お前さんの攻撃はまだ荒い所がある。ここでしっかりと研ぎ澄ましていくが良い❗」
「杏寿郎よ、後のことは頼む。儂はちと、あの者たちと昔話をしてくる」
槇寿郎は炭治郎にアドバイスをし、杏寿郎にこの場を任せ道場へ向かった。
道場では、響鬼たちが楽器を片付け終わり、帰路に着こうとしていた。
「久しいな、お前さんたち。息災でなによりだ」
「「「槇寿郎殿❗❓」」」
響鬼たちは突然の来訪者、槇寿郎に驚いていた。実は響鬼、風鬼、雷鬼の三人は、柱の引退が間近であった槇寿郎に産屋敷家&おやっさん経由で彼から手解きを受けていたのだ。
「お前さんたちに手解きをしてからもうかれこれ十年以上経つか」
「確かにそれぐらいは経ちますね。槇寿郎殿、瑠火さんのこと、心中お察しします。彼女のご冥福をお祈り申し上げます」
「お前さんに言われたら瑠火も喜ぶだろう。どうだ❓線香の一つでも立てていかんか❓」
槇寿郎の薦めで響鬼たちは仏壇の前まで移動する。すると、仏壇には『炭治郎のおはぎ』が供ええられていた。
「おはぎは瑠火の好物でな。お供えさせてもらったよ」
槇寿郎は蝋燭の火で線香に火を点け、それを刺し、鐘を鳴らす。そして四人は仏壇に手を合わせた。
少し経った後、響鬼たちは槇寿郎にお礼を言って炎屋敷を去った。
「瑠火よ、これからの時代、儂のような老いぼれじゃ無く、あやつらのような若者が引っ張っていくのだな…」
門前で響鬼たちを見送った槇寿郎は空を仰ぎ、涙を流した。炎屋敷からは炭治郎たちを含めた若者の声が響いていた。