炭治郎は(義勇除く)全ての柱稽古を終えて鬼屋敷へと戻っている最中だった。そして鬼屋敷の門が見えて来ると
「炭治郎君❗」
門前で待っていたしのぶが駆け寄り、炭治郎に抱きついたと同時にキスをした。炭治郎はしのぶの行動に驚きつつも、しのぶの歓迎を受け入れていた。
「あ~❗しのぶ様、抜け駆けはズルいですよ❗」
その時炭治郎の気配を感じたアオイが蝶屋敷から出てきてしのぶを引き剥がそうとした。
「アオイ、あなたは十分美味しい思いをしたじゃない❗❓私だけ炭治郎君とイチャイチャできてないんですから譲りなさい❗」
「それとこれとは話が別です❗それにイチャイチャ度合いなら私よりカナヲの方が多いじゃないですか❗」
しのぶはアオイの実力行使に抵抗し、遂には取っ組み合いの喧嘩に発展しようとした。そこに
「蟲柱様、神崎様。それ以上なされますと鬼柱様に"嫌われます"よ❓」
産屋敷耀哉の妻である産屋敷あまねがその場に現れ、二人を止めた。しのぶとアオイは動きを止め、炭治郎を見る。炭治郎は苦笑いを浮かべていた。
「「炭治郎君(さん)、ごめんなさい」」
二人は直ぐ様地面に座り、炭治郎に向けて土下座をした。
「しのぶさん、アオイさん、そんなに謝らなくても大丈夫ですよ」
炭治郎は屈み、二人の手を握り、許した。すると二人は勢いよく起き上がり炭治郎に抱きつき、頬にキスをした。その姿を見たあまねは咳払いを一つすると
「鬼柱様、この前は柱合会議の場所の提供、誠にありがとうございました」
炭治郎に近づきお礼を言った。炭治郎は『あれ位で良ければ』と言ってお礼を受け取っていた。
「あれ❓でも緊急の会議でも無いのに何であまね様が此方に❓」
炭治郎は何故あまねがここにいるのか疑問に感じた。
「そのことに関しましてはここでは些か話しにくい内容となります。『壁に耳あり』と申しますし。お話は中で」
炭治郎たちは自分が何処にいるのか把握し、そそくさと鬼屋敷の中へ入っていった。
あまねの誘導で屋敷内のとある一室に着くと、あまねは襖を軽くノックし、中へ入った。炭治郎たちはあまねに続く形で入室すると
「久しぶりだね、炭治郎」
全身を包帯で巻かれ、床に伏している耀哉がおり、その横に珠世が、その後ろに愈史朗が、更には耀哉の子供たち全員が耀哉の周りに、その後ろに義勇が座っていた。炭治郎たちは直ぐ様平伏し
「お久しぶりですお館さま。このようなお姿でお会いになること、深くお詫び申し上げます」
と炭治郎は挨拶をした。すると
「構わないよ。寧ろ私の方が君に謝らなくてはならないよ。いきなりお邪魔してしまい、申し訳ない」
耀哉の方が炭治郎に謝ってきた。
「いえ、お館さまが謝れることはありません。しかしどうして此方に❓」
炭治郎は何故ここに耀哉たちがいるのか聞くと
「それに関しては俺から話そう」
隣の部屋に通じる襖が開き、そこから一人の男性が現れた。
「初めましてだな竈門炭治郎君、いや、『音撃の戦士・輝鬼』よ」
男性が炭治郎の鬼の姿の時の名を言うと、炭治郎は警戒心を露にした。
「そう身構えなくとも良い。何故儂がそなたの名を知っているのか、それは儂が"猛士の長"だからだよ」
「えっ❗❓では貴方が師匠が言っていた『おやっさん』ですか❗❓」
男性ことおやっさんは炭治郎に自分が何者かを話すと、炭治郎は驚愕していた。
「その通り。しかし…、ふむ。あの時儂が授けた力を十二分に使いこなしているようだな」
炭治郎はおやっさんが言っていたことが分からなかった。
「お主が初めて『輝鬼・炎光』になった、あの『無限列車襲撃事件』の時だよ」
「えぇ~っ、あの力はおやっさんが授けてくださったんですか❗❓」
そう、炭治郎の強化形態である『輝鬼・炎光』になるためのアイテム、『響鬼眼魂』はおやっさんが炭治郎に授けた物だったのだ。
「まぁその話は追々するとしよう。要件は『何故ここに産屋敷の者がいるのか❓』だったな。それは至極簡単なことだ。"儂が産屋敷の者を連れて来た"からだ」
おやっさんの一言に炭治郎たちは驚愕した。
「ここまでに至る経緯を話そう。まず耀哉の坊主は『先見の明』と言う『予知能力』に近い異能を持っておる。まぁ儂も似たような能力を持ってはおるがな。坊主は先日、その先見の明で近々人喰い鬼の始祖である鬼舞辻無惨が産屋敷邸を襲撃することが分かったんだ」
「丁度同じ頃に儂の予知能力が同じ内容を写してな。それで坊主の所へ赴き、対策を互いに話したんだ。あろうことにこの坊主は『屋敷を爆発させて道連れにする』なんて言いおってな、病人を殴るのは後ろ髪引かれるが、坊主の頭に拳骨を落としてやったわ❗」
「そんで儂の力を使うことを条件にして、ここに匿ってもらうことにしたんだよ。序でにそこの水柱には、坊主たちの護衛をお願いしておいた。暇そうだったのでな」
おやっさんの説明に事情を知らない面々はポカ~ンとなった。
「そ、それでおやっさんの力と言うのは❓」
一足先に我に戻った炭治郎はおやっさんの力について聞いた。
「儂の力は『魂の一部を眼魂に宿す』というものだ。まぁ"百聞は一見にしかず"、実際にやって見せよう」
おやっさんはそう言うと、懐から"白い眼魂"を数個取り出し、その内の一個を耀哉の胸に置き、印を結んだ。すると、耀哉の体から"白い煙"のような靄が立ち上がり、それが眼魂に吸い込まれていった。
すると白い眼魂は火傷の痕のような模様が浮かび、おやっさんはそれを掴んだ。
「ほれ、この『空の眼魂』に坊主の魂の一部が宿ったぞ」
おやっさんが眼魂の上部を見せるとそこにはローマ字で『KAGAYA』と書かれていた。が、炭治郎たちはローマ字を読めず、頚を傾げていた。
「父上、お体の具合は如何ですか❓」
耀哉の息子である輝利哉が耀哉に質問すると
「大丈夫だよ、少し気だるさはあるけどね」
と答えた。
「無理も無いわい、魂の一部が欠落したんじゃから。まぁ儂がそれで済むようにしたんじゃがのぅ」
おやっさんの一言に皆が振り向く。
「魂が一部とは言え失われたんじゃ、体の方にも何かしらの違和感を感じても不思議ではない」
おやっさんはそう言いながら耀哉の魂の一部が宿った眼魂を懐にしまった。
「さてと、次は炭治郎、お前さんの番じゃ。先程同様、お前さんの魂の一部を眼魂に宿す。これは対人喰い鬼用の切り札となる」
「お前さんは知らんかもしれんが、儂ら音撃の戦士はお前さん以外人喰い鬼を倒した者はおらん。人喰い鬼には音撃は通用せんからの。しかし、お前さんは倒しておる。その違いは何なのか❓」
「それはお前さんが音撃を放つ時に"無意識に陽光と同じ力"を音撃に上乗せしてるからなんじゃ。そこで儂は考えた。『炭治郎の力を他の者に渡すことはできないのか❓』と。そして思い付いたのが『眼魂を媒体とした力の譲渡』」
おやっさんの説明にいまいち分かっていない炭治郎たちは更に頚を傾げる。
「つまり、『炭治郎の力を眼魂に宿し、それを他の音撃の戦士が使って力を宿す』と言うことじゃ。分かったかの❓」
そこまでの説明で漸く理解したのか、次々と納得した顔をした。しかし
「すみません。疑問なのですが、その力の譲渡を行うに当たって、鬼柱様に何かしらの"負担"のようなものはあるのですか❓」
耀哉の末娘のかなたが挙手をし、おやっさんに質問をした。
「確かに負担はある。楽して強大な力は手に入らん。じゃが、負担と言っても多少疲れるだけじゃ。命に関わる負担はさせん」
おやっさんはかなたの頭を優しく撫でながら言った。かなたはそれを聞き、頷くと
「善は急げじゃ、炭治郎よ早速やるぞ」
残っていた眼魂を炭治郎に見せ、炭治郎は頷いた。
そして炭治郎はおやっさんに背を向けた状態で座り、おやっさんは自分の前に眼魂を置き、印を結んだ。すると白い煙のようなものが立ち上ぼり、眼魂に吸い込まれた。
「ふぅ、完成じゃ」
おやっさんの一言で皆が眼魂を覗き見る。そこには色こそ変わりはしなかったが、上面にローマ字で『KAGAYAKI』と書かれていた。
「これぞ対人喰い鬼用の切り札、名付けて『輝鬼眼魂』じゃ❗」
高々と掲げた眼魂をおやっさんは懐にしまった。
そして産屋敷邸に残る人の選別をし、おやっさんはその人の魂の一部を眼魂に宿したことで、対無惨襲撃の対策の一つが終わった。
そしてこの日の夜は珠世とアオイの手料理が振る舞われ、皆はその料理に舌鼓を打った。
そして入浴の時間となった。女湯はぞろぞろと暖簾を潜っていくが、男湯の暖簾を潜ったのは炭治郎"一人"だけだった。輝利哉は父の耀哉の体を拭くために母のあまねと共におり、おやっさんは飯を食い終わって早々に義勇を拉致して鬼屋敷を去った。(現在、義勇は鬼屋敷へ戻っている途中である。)
炭治郎は久々の一人入浴で体を洗い、汚れを落とす。そして湯船に浸かる。久々の鬼屋敷の風呂でのんびりし、伸びをする。すると脱衣場から誰かが入ってきた。現在浴室は湯気が立ち込めており、シルエットしか分からなかった。炭治郎は最初、『輝利哉様かな❓』と思っていたが、炭治郎の鼻が『羞恥の匂い』を感じ取り、炭治郎は声をかける。
すると湯気から現れたのは輝利哉では無く、かなただった。かなたは頬を赤く染め、体を洗い、湯船に入り炭治郎の横に座った。炭治郎の心臓はバクバクと煩い音を鳴らし、炭治郎は頭の中が真っ白になっていた。
かなたはそろそろと炭治郎に近づき、意を決して炭治郎の腕にしがみつく。そこで炭治郎は悲鳴を上げた。その悲鳴は女湯の方にも聞こえ、珠世は緊急と判断し、しのぶに壁のすのこの所まで向かうよう指示する。
鬼屋敷の風呂の壁にあるすのこは、掃除をしやすくするために、外れる仕組みとなっているのだ。
しのぶは珠世がしたいことを理解し、壁にあるすのこを外し、その穴を使って男湯まで泳いだ。そして湯船から顔を出すと、顔を赤くした炭治郎と同じく顔を赤くしたかなたが炭治郎の腕にしがみついていた。
それを見たしのぶはかなたがしがみついている腕とは反対の腕にしがみついた。そしてしのぶの後を追うように続々と女湯にいたアオイたちが男湯に泳ぎ着くと、右腕にしのぶ、左腕にかなたを引っ付けた炭治郎が皆を見ていた。
アオイは直ぐ様炭治郎に近づくと、炭治郎の顔を掴み自分の豊満な胸に"押し付けた"。当然顔を塞がれれば息ができなくなり、炭治郎は息をしようともがく。しかし両腕を封印されている炭治郎はもがくことができず窒息寸前になる。するとしのぶがアオイの手をほどき、かなたが炭治郎を引っ張り炭治郎は九死に一生を得た。
その後しのぶとアオイ、かなたの三名はあまねの説教を受けていた。
そして就寝となり、炭治郎は自室で布団を敷き、床に着いた。
皆が寝静まった頃、炭治郎の部屋に入る人影があった。そしてその人影は炭治郎の布団に潜り込むと、炭治郎の腕にしがみついた。そして
「炭治郎様、私『産屋敷かなた』は、貴方様を心の底からお慕いしております」
その人影こと産屋敷かなたは、炭治郎の頬にキスをし、眠りに着いた。
そして翌朝、炭治郎を起こしにアオイが炭治郎の部屋に入ると、炭治郎とかなたが一つの布団で寝ているのを発見。悲鳴を上げる。その悲鳴を聞いた耀哉以外の全員が炭治郎の部屋に集まり、炭治郎とかなたはアオイの悲鳴で目覚め、慌てふためく。あまねがアオイに事情を説明するよう要求し、アオイは"見たまんま"を伝える。
…
……
………
かなたにあまねの雷が落ちたのは言うまでも無い……。