第57話
玄弥が鬼の名を襲名した後、買い出しに出ていた炭治郎と伊之助が戻り、玄弥の襲名を聞き喜んだ。その夜は玄弥の襲名を祝い、天ぷらが振る舞われた。そして食後の甘味として炭治郎特製のおはぎが出されると、禰豆子を除く女性陣は目を輝かせた。
女性陣は我先にとおはぎに手を伸ばし、その味を堪能した。その中には実弥の姿も合った。
「浅草にある和菓子処のおはぎも美味ェが、炭治郎のおはぎもイケるぜェ」
「なんだお前さん、ウチらが経営する店に行ったことがあるのか」
実弥の独り言を聞いた風鬼が実弥に質問をした。
「えぇ。いろんな店のおはぎを食べましたが、あそこのおはぎが"二番目"に美味しかったですね。一番は炭治郎のおはぎに塗り替えられましたけど」
風鬼の質問に実弥は答える。すると炭治郎は嬉しそうに頬を指で掻いた。
「こんなので良ければ暇な時にでも作りますよ」
「すまねェ」
炭治郎の優しさに実弥は頭を下げる。そしてふと目線を玄弥の方に向けると、禰豆子が"口移し"で玄弥におはぎを食べさせていた。これには実弥はもちろん、炭治郎も目が点になり、呆気に取られてしまった。
「相変わらず玄弥と禰豆子ちゃんは仲良しだねぇ」
風鬼は二人の桃色空間を見ながら玉露を啜っていた。すると
「炭治郎…、私もしていい❓」
炭治郎の隣に座っていたカナヲがモジモジしながら玄弥たちの方を指差し、炭治郎にしてもいいか聞いてきた。そこに
「カナヲ、あなたは甘露寺さんの所でやったでしょう❓ここは私に譲りなさい」
同じく炭治郎の隣に座っていたしのぶが横槍を入れてきた。しかもアオイもやりたいのか、おはぎを一口頬張ると
「ん~♪」
炭治郎に向けて口を差し出した。
「神崎様、あなたはそれを飲み込みなさい❗ここは私かなたがします❗」
対抗心を燃やしたかなたがアオイを押し退け、自分の食べかけのおはぎを差し出そうとした。
「「「かなた(様)はもう少し自重しなさい(して下さい)❗」」」
あまね、しのぶ、カナヲに注意された。
「決戦の前夜だってのに、緊張感が無いねぇ~」
響鬼は風鬼同様にお茶を飲んでいた。
「風鬼さん、アンタから聞いていたが、驚き過ぎて思考が追い付かねェわ」
実弥は風鬼を見ながらおはぎ(四個目)を口にしていた。
そして鬼屋敷で一騒動あった翌日の夜、産屋敷邸の庭に一人の男性が現れた。
皆さん大好き『ワカメ頭のブラック企業社長』の鬼舞辻無惨である。
「(今誰かに悪口を言われた気がする…)」
…まぁ彼の直感はさておき、無惨の目の前には布団で寝ている耀哉とその横に妻のあまね。そして庭には娘のにちかとくいなが鞠で遊んでいた。
「……やあ、来たのかい。…初めましてだね、鬼舞辻……、無惨…」
「…何とも醜悪な姿だな、産屋敷」
今ここに『
「私が醜悪…か。私が醜悪なら、君もまた醜悪だね。何故なら、私と君は"同じ血筋"だからだよ」
「そんなことはどうでもいい。禰豆子は何処だ❓」
耀哉の皮肉を一蹴した無惨は禰豆子の居場所を聞き出そうとした。
「……禰豆子の居場所を聞いてどうするつもりだい❓」
「知れたこと。"太陽を克服"した鬼、禰豆子を取り込み、私は太陽を克服し"完全な生命体"となる。さぁ無駄な問答はここまでだ、禰豆子は何処だ」
無惨は尚も禰豆子の居場所を聞き出そうとする。が、
「ふふっ禰豆子は渡さないよ。君なんかに禰豆子は渡さない」
耀哉は頑なに禰豆子の居場所を言わなかった。すると無惨は土足で屋敷の中に入り
「貴様の言い分などどうでもいい。早く禰豆子の居場所を教えろ」
耀哉に詰め寄った。すると
「君の願いは叶わないよ。何故なら、君は何度も何度も、"虎の尾"を踏み"龍の逆鱗"に触れているから。本来なら一生眠っている筈の虎と龍を起こした。彼らは常に己の爪と牙を光らせている。君のその喉笛を貫くために」
「それに君が死ねば全ての人喰い鬼が滅ぶんだろう❓」
耀哉の懸念に無惨が少し動揺した。
「空気が揺らいだね…、図星かな❓」
「それに私をここで殺しても無意味だよ。何故なら、"
耀哉がそう言った瞬間、産屋敷邸は『爆発した』。
産屋敷邸が爆発する少し前、鬼殺隊の柱"全員"が鴉の案内で産屋敷邸に向けて全力疾走していた。
メンバーは恋、蛇、霞、炎、水、風、蟲、そして鬼。
柱全員が視界に産屋敷邸を捉えた瞬間、屋敷が木っ端微塵に吹き飛んだ。
その光景を見ていた恋、蛇、霞、炎の柱は呆然となった。だが、水、風、蟲、鬼の柱は未だ燃え盛る炎を見て"ニヤリと笑った"。
ゴウゴウと燃え盛る爆炎の中、一つの影があった。
「ぐっ、産ッ、屋敷ィィッ❗」
そう、耀哉が"
「(浅はかだった、まさか奴がこれ程までの"覚悟"を持っていようとは❗しかも爆薬の中に恐らく日輪刀と同じ素材の
「(まぁいい、もうすぐ再生が終わる。しかし、奴が言っていた『私はここにはいない』とはどういう意味だ❓)」
すると無惨の周りに"肉の塊"のような物が集まっていた。
「(これは…、肉の種子。まさか、血鬼術❗❓)」
肉の種子は一瞬にして無数の棘となり、無惨をその場に固定した。
「ぐっ(固定された❗❓一体誰の血鬼術だ❗❓しかも私の中で更に細かく枝分かれして抜くことができない❗❓)」
「(だがこんなもので私を止められると思っていたら大間違いだ。即座に吸収して自由を得る❗)」
無惨は自分を拘束した棘を吸収しようとする。その時、"腹に違和感を感じた"。そこに目を向けると、珠世が自分の腹に手を入れていた。
「珠世❗❓何故貴様がここにいる❗❓」
「あなたを倒すためですよ鬼舞辻無惨。あなたを倒すためなら、どんな卑劣な手を使っても構わない❗」
「それに先程、私の拳を吸収しましたね❓私の拳の中には、『鬼を人間に戻す薬』が握られていたのですよ❗どうですか❓薬、効いてきましたか❓」
「鬼を人間に戻す薬だと❗❓そんな物、できるはずは……」
「できたのですよ❗私"だけ"でしたら無理でしたが、鬼殺隊の皆さんや猛士の皆さんが協力して下さったおかげで完成したのですよ❗」
無惨は動かし辛い左腕を無理矢理動かし、珠世の頭を鷲掴みにした。
「ふんっ、逆恨みも甚だしいな珠世。お前の"夫と子供"を殺したのは誰だ❓その後も大勢喰い殺したのは誰だ❓私か❓いや違う。珠世、お前自身だ❗」
無惨は珠世の頭を握り潰そうとして力を込める。
「そう、私はお前のせいで夫と子供、更には大勢の関係無い人々を喰い殺してしまった❗私の罪は決して赦されるものでは無い❗けど、こんな私を"母として"慕ってくれる人がいる❗"妻にしたい"と言ってくれる人がいる❗」
「だから私はこれからも生き恥を晒す❗生きて罪を償う❗」
珠世は頭から血を流しながらも自分の罪を認め、償おうとする。そして
「
珠世が叫ぶと、無惨の後ろに行冥が姿を現した。
「心得た❗鬼舞辻無惨、覚悟❗南無阿弥陀仏❗」
行冥は自身の刀❓である鉄球を振るい、無惨の頭を吹っ飛ばした。