「あなたは…、あなたの匂いは…」
「そう私は…、鬼ですが、医者であり、あの男鬼舞辻を抹殺したいと思っている」
所変わり鬼舞辻は連れていた女性と少女を車に乗せ、路地裏を歩いていた。そこに正面からゴロ付きが三人連れ立って歩いており、鬼舞辻は避けて歩いたが、一人がわざと手をぶつけ、難癖を付けて言い寄ってきた。
鬼舞辻はぶつかった相手を手で払い、壁に打ち付け殺した。そして一緒にいた大柄な男を蹴り上げ肉塊に、残った女性には己の指を額に刺し、そこから自分の血を大量に注入し絶命させた。
鬼舞辻は指を鳴らし二体の鬼を呼び出すと
「耳に花札のような飾りをつけた鬼狩りの頸を持って来い。いいな❓」
と命令した。
その頃炭治郎は響鬼たちの下へ戻り、禰豆子に箱に入ってもらい、その箱を担いで店を後にしようとするが、響鬼に呼び止められ、理由を説明すると響鬼も共に行くと言い出し、一緒に待ち合わせ場所に向かった。
指定の場所に着くと、先程の女性の鬼に付き添っていた青年が待っていた。炭治郎は『匂いで辿れる』と言ったが、青年は
「目眩ましの術をかけている場所にいるんだ。辿れるものか」
と全否定した。しかも響鬼を指差し『その男は連れていかん』と言い放ったが、
「少年、
と言ってきたので、青年は響鬼を睨み付けるが、響鬼は涼しい顔で青年を見ていた。そして青年は深くため息を吐くと、踵を返し、歩き始めた。響鬼と炭治郎は互いに顔を見て、早足で青年の後を追った。
しばらく歩き続け、たどり着いた場所は一件の建物だった。だが、よく見ると建物の至るところに何やら札のような物が貼られていた。
青年は玄関をくぐり、先程の女性の鬼のいる所へとやって来た。
そこには割烹着を着物の上に着ている女性、珠世とその横に先程鬼にされた男性に噛まれた女性がベッドに寝ていた。
炭治郎はまず助けてくれたお礼を言い、その後食人衝動の事を気にしていたが、青年に殴られ珠世は青年を注意した。そして珠世は自己紹介と青年、
「珠世さん、ご無沙汰してます」
「響鬼さんもお元気で何よりです」
響鬼と珠世が顔見知りであることにびっくりした炭治郎と兪史郎はそれぞれに話を聞くと、以前珠世が一人で薬草を採りに向かった山で妙な男女に出くわしたそうだった。そしてその後ろには六尺は有ろう巨大な蜘蛛がいた。
珠世は手に入れた薬草の籠を放り投げ、一目散に逃げ出した。だが、男女はその姿を怪人に変貌させ、珠世を捕まえようと追いかけ、後一歩の所で捕まりそうになったその時に鬼となった響鬼が助けたとの事だった。
「そして響鬼さんは私を追っていた二人を倒し、更には追いかけてきた化け蜘蛛をも倒してしまったのです」
二人の出会いに炭治郎と兪史郎はポカンと口が空いたままだった。
「お~い二人とも~。…ダメだこりゃ、気ぃ失ってやがる。しょうがない」
響鬼は二人の目の前で勢いよく両手を叩き、二人を正気に戻した。珠世は二人が正気に戻った事を確認した後、自分の身体と兪史郎について説明した。
炭治郎は『兪史郎は珠世が二百年掛けて成功したただ一人』に驚きながらも珠世に『鬼を人間に戻せるか』を問いただした。珠世は『人間に戻せるが、薬はできていない』と答え、炭治郎に二つの依頼をした。
一つ目は『禰豆子の血を採血すること』
二つ目は『たくさんの鬼の血を、特に鬼舞辻に近い鬼の血を採血すること』
だった。一つ目はどうにかなるが、二つ目が厄介だった。鬼舞辻に近いと言うことはそれだけ強く、採血は難しいと言うこと。けど炭治郎はその依頼を承諾した。その理由が
「禰豆子だけじゃなくもっとたくさんの人が助かりますよね❓」
だった。珠世はうっすら微笑むと炭治郎は頬を染めた。だが直ぐに兪史郎が睨みをきかせ炭治郎を怯ませた。その光景を響鬼はクスクスと失笑を洩らしていた。
だがそんな緩やかな空気は脆くも崩れ去る。
「❗❓まずい、ふせろ❗❗」
兪史郎が珠世を、響鬼が炭治郎と禰豆子を庇った瞬間、『何か』が部屋の壁を突き破り、中を縦横無尽に動き回った。その正体は毬だった。その毬は建物の外にいる少女の鬼
「キャハハッ矢琶羽の言う通りじゃ。何も無かった場所に建物が現れたぞ」
「巧妙に物を隠す血鬼術が使われていたようだな」
「それにしても朱紗丸、お前はやることが幼いというか……、短絡というか…、儂の着物が塵で汚れた」
矢琶羽は朱紗丸に文句を言っているが、朱紗丸はそれを無視し、毬を投げつけた。すると毬は縦横無尽に跳ねるが『突如軌道を変え』、兪史郎の頭を吹き飛ばした。そして炭治郎は珠世の前に立ち日輪刀を構えていた。
朱紗丸はもう一度毬を投げると
『全集中・水の呼吸
水の呼吸の中でも最速の突き技を繰り出し、毬を串刺しにした。だが、毬が震えるとそのまま炭治郎にぶつかった。
そんな中、頭を吹き飛ばされた兪史郎は頭を再生させながら珠世に言い寄った。どうやら兪史郎は鬼狩りと関わるのは最初から反対だったようだ。
だが朱紗丸はお構い無しに着物の上をはだけ、さらし姿になると二本だった腕が六本になり、その手全てに毬が握られていた。
更に自分は『十二鬼月』と名乗り、毬を全て投げつけた。炭治郎は迫ってきた毬を斬るも毬はその場に留まり、再び炭治郎を襲った。けれど斬られた毬は威力が落ちており、大怪我を負う程では無かった。
その間も毬は珠世と兪史郎を襲い、全身穴だらけになっていた。
炭治郎は助けようとするが、自分に襲い掛かってくる毬の対応で精一杯だった。
「私たちは治りますから気にしないで❗❗」
「おい間抜けの鬼狩り❗❗
「そうしたら毬女の頚くらい斬れるだろう❗
兪史郎はそう言うと建物に貼っていたのと同じ札を炭治郎の額に張り付けた。すると札を通して毬から矢印が伸びているのが見えた。
「兪史郎さんありがとう❗俺にも矢印見えました❗師匠、敵は木の上にいます❗」
響鬼はそれを聞くと兪史郎から札を受け取り、額に貼ってから跳躍し、木の上にいた矢琶羽に一太刀ならぬ一蹴りを入れた。
『水の呼吸
炭治郎は響鬼の動きに同時に動き、参ノ型を使い朱紗丸の腕を斬り落とした。そして珠世に鬼舞辻に近い鬼か聞くと「恐らく」と答えたので
「では必ずこの二人から血をとってみせます❗❗」
と啖呵を切った。
大正コソコソ噂話
兪史郎は珠世のこと好きかと聞かれると顔を真っ赤になって黙り込むらしい。
次回もよろしくお願いします。