「(なんだあの男、猪の皮を被って…、日輪刀を待ってる❗しかも刃零れした奴を二本も)」
障子を突き破って現れた猪男に炭治郎へ驚きつつも、日輪刀を持っていることを見逃さなかった。
「さァ化け物❗❗屍を晒して俺がより強くなるためより高く行くための踏み台となれェ❗❗」
猪男は刀を振りかぶり鬼に迫るが、鬼は両肩の鼓を数回叩き部屋を回転させるが、猪男は怯む様子は無く、振り回されたてる子を踏みつけにしていた。それを見た炭治郎はてる子を踏みつけていた猪男の足を振り払い、てる子を抱き締め猪男に説教を始めた。
だがそれが悪かったのか、猪男の標的が鬼から炭治郎に変わり、猪男は炭治郎に向けて刃を振るった。炭治郎はてる子を庇いながら避けるが、猪男は執拗に追いかけ回す。ところが今度は鬼が腹の鼓を叩いた。すると二人の間を『何か』が通りすぎ、床の畳が"裂けていた"。
鬼は何度も両肩と腹の鼓を叩き炭治郎と猪男を攻撃するが、その途中、鬼が叩いていないにも関わらず鼓の音が鳴り、炭治郎とてる子は別の部屋に移動していた。
炭治郎は血の匂いを嗅ぎとり、廊下を見ると他の人が鬼に喰われており、既に死んでいた。炭治郎はてる子を連れて死体がある方とは反対側へ進み、襖の一角に立ち開けると一人の少年が鼓を叩こうとしていた。その少年は"柿色の着物を着ていた"。
一方善逸は残された少年の手を引いて屋敷内を徘徊していたが、不意に少年が声をかけると、善逸はかなりびっくりして愚痴愚痴と少年を責めていた。しかも大声で。それが仇となったのか、二人の後ろの軒下から炭治郎が出会った鬼とは"別の鬼"が這い出てきた。
善逸は少年を連れて逃げるが鬼は追いかけながら善逸たちに舌を伸ばし攻撃する。けど善逸は少年を庇い右側の部屋に飛び逃げた。その時に鬼の舌は隣にあった水瓶を縦に割った。善逸は逃げようとするも、震えが膝にまで達し動けないでいた。善逸は少年だけでも逃がそうとするが、少年は善逸を置いて逃げようとはしなかった。するとそこに先ほどの鬼が追いつき
「ぐひひっお前の
と言った瞬間、善逸の緊張が頂点を越えたのか、その場で寝てしてしまった。鬼は好機と捉え、舌で攻撃するが、何者かによって舌を斬られてしまった。すると善逸はいつの間にか起き上がっており、少年の前に立っていた。先ほどの鬼の舌を斬ったのも善逸だった。そして善逸は左足を後ろに引き、右手を刀に添える『居合い斬り』の構えを取ると、『シィィィィィ』と全集中の呼吸をし始めた。そして
『
高速の居合いで鬼の頸を舌ごと斬り落とした。
善逸は所謂"二重人格者"であり、普段は情けないナヨナヨした性格だが、戦闘中に気絶したりなどの意識が飛ぶと、普段からは考えられない程の強さを発揮するのだ。だが欠点はある。善逸は意識が飛んでいる時のことは全く覚えていないのだ。
その証拠に善逸は眠りから覚めると、"自分が斬った"鬼の頸を見てびっくりしており、更には自分と行動を共にしていた少年『正一』が倒したと勘違いする程だった。
善逸は正一に抱きつき感謝を述べるが、正一はかなり困惑しており、困惑し過ぎて考えるのを止めた。
一方猪男はと言うと
「チッまた飛ばされた。三日前からずっとこんな調子だ畜生。いい所で」
廊下をかなりの速さで駆けていた。どうやら三日間こんな感じだったらしい。
猪男が廊下の突き当たりに差し掛かると、横から太い腕が伸び猪男を捕まえようとするが、直前で身体を後ろに反らしバク転で距離を取った。そこから現れたのはまた別の大柄の鬼だった。
『我流
猪男は全集中の呼吸を使い、刀を抜いて鬼に向かって駆け出した。鬼も応戦しようとするが、二振りの刀に両腕を斬られ
「屍を晒して俺の踏み台となれ❗❗」
『
更には頸をも斬られた。そして猪男は鬼の胴体を踏みつけ、再び駆け出した。口癖なのか、『猪突猛進❗』と叫びながら。
その頃鼓の鬼は屋敷内を徘徊していた。
「"
その鬼の右の眼には"下陸"と刻まれており、その上にバツ印のような傷があった。
鼓の鬼は人肉をとある量しか喰えなくなっていた。それを知った鬼舞辻はその鬼の"数字を剥奪する"と言って眼にバツ印を付けた。
一方炭治郎の所はてる子が拐われた兄との再開をしていた。兄は手にしていた鼓を叩こうとしていた寸前で止まり、てる子を抱き締めていた。
少年は炭治郎に気づき
「俺は竈門炭治郎。悪い鬼を倒しに来た。さぁ傷を見せて。独りでよく頑張ったな」
自己紹介した後、怪我を治療しようとした。
炭治郎は事前に左近次から貰っていた薬を見せてから傷口に塗り、布を包帯替わりに巻きつけて応急処置を施した。
炭治郎は処置を終えると少年に何があったのか聞くことにした。少年はぽつりぽつりと話し始める。
鼓の鬼の他に二体の鬼がおり、誰が自分を喰うか争っていたこと。鼓の鬼が大柄の鬼の攻撃を受けて背中の鼓を落としたこと。その鼓を使って命からがら逃げ延び、今があること。炭治郎は鼓の鬼が言っていたことを思い出していた。
「"稀血"………、あの鬼はそんなことを言ってたが………」
「❗❗そうだそう…俺のことマレチって呼ぶんだ」
炭治郎が疑問に思っていた言葉に答える者がいた。
「カァーア❗❗稀血トハ珍シキ血ノ持チ主デアル❗❗」
炭治郎の鴉の『松衛門』であった。
「生キ物ノ血ニハ種類系統ガアルノダ❗稀血ノ中デモサラニ数小ナイモノ珍シキ血デアレバアル程、鬼ニハソノ稀血一人デ五十人、百人、人ヲ喰ッタト同ジクライノ栄養ガアル❗❗」
「稀血ハ鬼ノ御馳走デアリ大好物ダ❗❗」
それを聞いた少年『
鬼は何度も自分から生えている鼓を叩き部屋を回転、時々真空波を混ぜて翻弄させていた。
炭治郎は珠世の所で負った怪我がまだ完治しておらず、身体を動かす度に激痛が走っていた。通常なら痛みで動けないはずなのに、『俺は長男だから頑張れる❗』と意味不明な滅茶苦茶な理論で鬼の攻撃を凌いでいた。そしてふと、左近次が言っていたことを思い出していた。
「水はどんな形にもなれる。
その言葉を思い出した炭治郎は『身体を動かしても痛まない動き方』を思いついた。そしてそれを実行するために己れを鼓舞し始めた。
「頑張れ炭治郎頑張れ❗❗俺は今までよくやってきた❗❗俺はできる奴だ❗❗」
「そして今日も❗❗これからも❗❗折れていても❗❗俺が挫けることは絶対に無い❗❗」
炭治郎が己れを鼓舞している間、鬼は己れの過去を思い出していた。
この鬼は人間だった頃、小説家を目指しており、鬼になってからも小説を書き続けていた。だが、誰からも見向きされず、"
そして自分の作品を踏みつけた人を堂々真空波で斬り殺してしまったのだ。
それを思い出してしまった鬼は
『
今までよりもさらに速く鼓を打ち始めた。
鼓を速く叩いたことで部屋の回転がより一層速くなり、真空波も三本から五本に増えた。炭治郎は動くのがやっとの状態なので、顎下に真空波をかすらせてしまった。
真空波の性か部屋にあった机の引き出しから紙が数枚落ち、炭治郎は着地する際その紙を"踏まずに"着地した。
紙を踏まなかったことに鬼は驚き、また炭治郎も紙を踏まなかったことで身体を動かしても痛まない動き方を見つけた。
「(呼吸は浅く速く。その呼吸で骨折している脚周りの筋肉を強化する)」
「(そして爪の攻撃の前には
回転し続ける部屋の中で炭治郎は"爪の匂い"を感じ、即座に避ける。
『全集中・水の呼吸
着地時間と面積を最小限に抑える型で縦横無尽に動き回り、鬼を撹乱させた。そして
「君の血鬼術は凄かった❗❗」
鬼の頸を斬った。そして着地した後深呼吸をしてしまい、痛みがぶり返して蹲ってしまった。
「小僧…、答えろ…」
炭治郎は声がした方を振り向くと、先ほどの鬼の頸が崩れながらも声を発した。
「小生の…、血鬼術は………、凄いか………」
「………凄かった。でも、人を殺したことは許さない」
「…………そうか」
炭治郎の答えに満足したのか、鬼の頸は全て崩れ去った。そして炭治郎は残っていた鬼の身体に兪史郎から渡された小刀を投げつけた。この小刀は身体に刺さると自動で柄の所に血が溜まる仕組みとなっており、炭治郎が小刀を身体から引き抜くと、鬼の血が採れていた。
するとどこからともなく猫の鳴き声が聞こえ、炭治郎が振り替えるとそこには兪史郎の札を首輪から下げた三毛猫がいた。三毛猫の背にはかなり小さめの鞄が括り付けられており、炭治郎はその鞄に小刀を入れた。すると猫は歩きだし、ひと鳴きすると姿を消した。
戦いを終えた炭治郎は匂いで清とてる子を追い、襖を開けながら名前を叫ぶと、鼓が消えて混乱していた二人から手痛い洗礼を受けた。そして炭治郎は清をおんぶして屋敷の外に出ると
「刀を抜いて戦えこの弱味噌が❗❗」
猪男が善逸を蹴っていた。
善逸は顔中血だらけで鼻血を出し、禰豆子が入っている箱を抱えながら
「炭治郎…、俺…、守ったよ……」
「お前が…、これ…、命より大事なものだって…、言ってたから………」
炭治郎に言った。
大正コソコソ噂話
善逸は元々黒髪だったが、修行中木の上に隠れていたら、雷に打たれて金髪になったらしい。
次回もよろしくお願いします。