アズールレーン ダークサイド 悪意に満ちた死神   作:ヴィランコマンダー

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つい最近アズールレーンを始めた作者です。

本命として執筆している作品が中々上手くいかず、半ば自棄になって書きました。

いつまで続くかどうか未定ですが、多分続かない可能性が高いです。

それでは本編をお楽しみください。


蠍の毒針は冷徹無比に肉を貫く

 昔話をしよう。とある青年の話だ。

 

 彼は碧き世界で不思議な力を持った少女達と絆を結び、共に未知の生命体との戦いを繰り広げてきた。

 そして、その戦いに打ち勝った。

 皆は喜んだ。終止符を打つことが出来た事に。

 しかし、青年は喜ばなかった。喜びたくなかった。その戦いを終わらせれば、少女達は自身の前から消えてしまう。それが嫌で仕方なかった。

 しかし少女達は消えなければならない理由があり、彼と共に戦えた事を誇りに思い、最後に言葉を交わし、別れを告げた。

 

 それを最後に、()()()青年の前に現れる事はなかった。

 

 彼は嘆き悲しんだ。

 彼女達が消えた事による孤独感。

 痛哭する彼の心は絶望に染まり、黒く塗りつぶされた。

 同時に、抑えきれない怒りが沸き立つ。

 青年は叫んだ。悲しんだ。涙を流した。そして怒り狂った。

 その時から、彼の中で"怪物"が誕生した。

 

 これは、負の感情が肥大化した青年の過去であり、その話の続きは今、動き出す。

 

  ◇

 

 青空を覆い尽くすほどの灰色の曇天。辺り一面に不気味なほど静寂が続く灰色の海。そんな海域にて、()()()()()()()()()()青年が居た。

 黒を基調としたパーカーにフードを被り、中から片眼だけが赤黒く、悍しく光る隻眼。その瞳の奥深くには、憤怒や憎悪が宿っていた。

 彼はパーカーのポケットに手を入れ、遠隔した軍港らしき建物を目視する。

 

「……最後は、ロイヤルだ」

 

 そう呟き、パーカーのポケットから黒を基調とした物に、黄色のレバーがついたベルトのバックルのような物を取り出し、腰に当てる。

 

【フォースライザー】

 

 当てた直後にバックルからベルトが伸び、腰に装着される。次にポケットから、紫の長方形に蠍が描かれたデバイスを取り出す。

 それを持つ手を顔の近くで構え、次に腕を広げるように右横へ持っていく。限界まで腕を伸ばし、扉の鍵を開けるように手首を回す。そしてデバイスの上部のボタンを押す。

 

【POISON】

 

 デバイスから不気味に毒の英語が発音されると、それをバックルの凹みに嵌め込む。

 それによって警告音のような待機音声と配置されたランプは赤く点滅し、そこから彼よりも巨大な銀の蠍が出現する。

 

「──変身」

 

 そう言い放ち、黄色のレバーを引くと蠍が描かれたデバイスの表面がこじ開けられる。

 

【フォースライズ】

 

【スティングスコーピオン】

 

 蠍は彼の居る方向に転換し、猛毒を持つ尾を心臓が存在する部位を目掛けて突き刺す。一瞬だけ彼の身体は紫の輝きを放ち、蠍が尾を刺したまま、海老反りで彼の背中に移動してぶら下がる。

 蠍が身体中にまとわりつき、メキメキと音を立てると紫電が発生し、砕け散る。彼から黒いゴムのような物が何かに引っ張られるように伸びており、それが勢いをつけて彼の身体に装着される。

 

 紫を基調としたアンダースーツに身体中の所々に銀の装甲が装着され、相手を睨むような黄色く鋭い複眼。その名は──

 

 ──仮面ライダー滅。

 

【Break Down】

 

 それが合図となり、滅は動き出す。

 自身の目的を果たす為に。

 

  ◇

 

 此処はロイヤルが建設した"セイレーン"を殲滅する為の軍事施設、母港。その広場では多人数の少女達"KAN-SEN"が集められており、彼女達から見て正面に設置された土台には、ふくよかな体型の男が苛ついた様子で言葉を発する。

 

「腕一本でも道連れにすればいいものを……、役立たず共が!」

 

 怒声を発しているのはこの母港のトップに立つ指揮官であり、その怒声を耳にした彼女達は怯えや恐怖、泣き出す者も居れば何もかもに絶望した眼差しで男に視線を向ける者も居る。

 

「おいサフォーク! 貴様の装甲の薄さが原因で撤退なんかしやがって! よくも貴重な燃料を無駄にしてくれたな!」

 

「ひっ……!? ごめんなさい……! ごめんなさい……!」

 

 胸元の開いたメイド服を着用し、桃色のセミロングに碧眼の瞳。頭には羊の耳のような髪飾りを身に着けた少女──サフォークと呼ばれた彼女は怒鳴られた事で必死に謝罪を繰り返す。その様子を嘲笑う様に指揮官はにやりと笑う。

 

「貴様には責任をとって貰おうか! その身体でな!」

 

 その発言によってサフォークは顔が真っ青になり、身体は小刻みに震え出す。それに構うことなく、指揮官は土台から降りて彼女に近づく。

 

「ま、待って……下さい……! サフォークさんは……!」

 

 サフォークと指揮官の間に、赤いフードを被ったおとぎ話に登場する赤ずきんのような服装に、薄茶色の髪と青紫の瞳の気弱そうな少女が入り、庇うように両腕を大きく広げた。彼女の両足は震えており、勇気を振り絞って前に出た事が分かる。

 

「クソッ、どけっ!」

 

 邪魔が入った事で指揮官は苛立ち、彼女の小柄な身体に躊躇なく蹴りを入れた。

 

「ぁっ……」

 

「ノーフォークちゃん……!」

 

「俺に歯向かいやがって、おい憲兵! このガキを連れていけ!」

 

 後ろに控えていた二人の憲兵が指揮官の命令に従い、先程の蹴りで気を失った──ノーフォークと呼ばれた少女に近づく。

 

「……お待ち下さい。ご主人様」

 

 止めに入ったのは美しい女性だった。

 透き通るような白髪に凛とした雰囲気を醸し出し、豊満な胸部を強調するような胸元の開いたメイド服を着用した女性の名は──ベルファスト。彼女は指揮官の前に出て、覚悟を決めた表情をしていた。

 

「今回の出撃でサフォークが大破に陥ったのはメイド長である私の責任です。責任は、私が取ります」

 

 なんと、ベルファストはサフォークとノーフォークの二人に魔の手が伸びない為に、自らを犠牲にして庇ったのだ。サフォークは目を見開き、少量の涙を溜めていた。

 

「ほう、貴様が責任を……」

 

 指揮官は眉をひそめるが、ベルファストの豊満な胸部をまじまじと見て凶相な笑みを浮かべる。

 

「良いだろう。では、貴様の妹にも責任を取って貰おうか!」

 

 指揮官がそう発言すると、別の二人の憲兵がKAN-SEN達の中に入り、ベルファストを幼児化したような容姿の少女を捕らえる。

 

「きゃっ……!?」

 

「ベルちゃんっ!?」

 

「おっと、貴様の相手は俺がしてやるよ!」

 

 ベルファストはベルちゃんと呼ばれた少女の元へ駆寄ろうとしたが、指揮官が行く手を阻み、彼女の腕を掴んだ。

 

「嫌っ、離して下さい……!」

 

 振払おうと抵抗するが指揮官の腕は力強く、彼女の力では振り払う事が出来なかった。

 

「抵抗すんじゃねぇよ兵器の分際で! おい、こいつを縛れ!」

 

 指揮官がそう命令すると、憲兵の一人が縄を持って駆け寄り、ベルファストの身体を素速く拘束した。

 すると、今まで控えていた一部のKAN-SEN達が危険を承知で飛びかかろうとしたが次の瞬間、彼女達から青電が発生し、絶叫の声を上げて苦しみ出す。それは彼女達の首に装着されたハートの悪趣味な首輪が原因だった。

 

 KAN-SEN達には首輪が装着されており、指揮官の命令に背けば自動的に電流が流れ出し、激痛を与える。それは抵抗や脱走、暗殺にも反応する為、抵抗する事が出来なかった。

 自らの力で首輪を破壊しようにも、特殊合金で作られた首輪は"艤装"を展開した彼女達では破壊出来ず、艤装の無い彼女達は一般的な女性と何ら変わらない為、破壊する事など到底不可能だった。

 

「ハッハッハッハッ! 所詮、貴様らは人間には逆らえないんだよぉ!」

 

 ベルファストを拘束した縄を握りながら勝利を確信し、笑い声を上げる指揮官に皆は、絶望した。自分達では何も出来ないのだと。

 

「ごめんなさい……。ベルちゃん……」

 

 そんな中、ベルファストは自身の妹を救う事が出来なかった事に絶望し、彼女の頬に一筋の涙が伝う。

 

 その時だった。

 突如として、無数の爆発音が大気や地面を揺るがす。突然の出来事に指揮官や憲兵、KAN-SEN達全員が何事かと周囲を見回す。

 その瞬間、ベルちゃんを捕らえていた二人の憲兵が吹き飛んだ。

 

「え……?」

 

 何が起きたのか、理解が追い付かなかったベルちゃんの横に、何かが佇んでいた。

 そこに居たのは、仮面ライダー滅。しかし、その存在を知らない彼女達にとっては人型の異形。否、人間かどうかも怪しいそれが、先程の二人の憲兵を吹き飛ばしたのだと予想した。

 

 すると、指揮官と憲兵達の様子がおかしくなった。滅を見た途端、顔は真っ青になり、身体は小刻みに震え、怯えと恐怖を混ぜた表情を浮かべていた。彼女達と立場が入れ変わったかのように。

 

「き、貴様は……『死神』……!?」

 

 指揮官が滅を”死神”と呼び、憲兵達が後退りをする。KAN-SEN達は、何故それに恐怖心を感じているのか疑問を抱いていた。

 滅はベルちゃんに近づき、膝をつく。左手を彼女の首輪まで伸ばし、指を弾く。

 その数秒後、ベルちゃんに装着された首輪は、ガチャンと音を立てて首から離れ、地面に落ちた。

 

 全員が唖然とした。KAN-SEN達に装着された首輪は決して外す事が出来ない代物なのだが、その人物は指を弾いただけで外れたのだ。彼女達から見て、只者でない事は明白だった。

 

「け、憲兵共! 死神を殺せっ!」

 

 指揮官は顔面蒼白になる程に焦慮に駆られ、憲兵達にそう命令するが突然、滅が右手に装備していた紫のアタッシュケースを縦に持ち、上部と下部が展開する。

 

【アタッシュアロー】

 

 滅が持つそれは"アタッシュアロー"と呼ばれるアタッシュウェポンの一つ。アタッシュモードからアローモードへと変形させて、矢を引くようにレバーを引き、憲兵達めがけてエネルギー状の紫矢を放つ。

 矢は一直線上に解き放たれ、憲兵達に直撃。広範囲の爆発によって肉片どころか灰すらも消滅した。

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」

 

 指揮官は情けない悲鳴を上げ、ベルファストを拘束している縄を手から離して尻餅を付き、後退る。それに合わせて滅も徐々に彼へ近づく。

 

「まっ、待ってくれ! 金なら払う! い、いくらでも払うから頼む! 命だけは……!」

 

 その途中で、滅の左腕に装備された蠍の尾を模した鎖、伸縮刺突ユニットが指揮官の心臓めがけて身体を貫く。引き抜かれると忽ち紫の粒子となり、消滅した。

 

「…………」

 

 次に滅は、ベルファストに向って歩き出す。

 それを間近で見ていた彼女は自身に近づく人物に、不思議と恐怖は感じなかった。例え、指揮官や憲兵達を数秒で殺害した人物だとしても……。

 

 彼女の目の前まで歩み寄った滅はアタッシュアローの上部と下部で彼女を拘束している縄を切断し、流れるような動作で左手を真上に上げ、指を弾く。

 KAN-SEN達全員に装着された首輪は次々と、ガチャンと音を立てて首から離れ、地面に落ちた。

 

「本当に首輪が外れた……!」

 

「あの忌々しい枷が……!」

 

「やっと、やっと外れた……!」

 

 KAN-SEN達は首輪が外れた事で表情が崩れ、ある者は隣の者と抱き合い、ある者は涙を流しながら喜んだ。

 

「ベルファスト姉さま!」

 

 ベルちゃんがトテトテとベルファストに駆け寄り、そして抱きつく。

 

「ベルちゃん……!」

 

 ベルファストはベルちゃんを抱き締め、涙を流す。

 

「ごめんなさい……! 私の所為で貴方を……!」

 

「いいえ、姉さまは悪くなんかありません! 姉さまが無事で良かったです!」

 

「ベルちゃん、ありがとうございます……!」

 

「うぅ……ベルファスト姉さまぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 今まで溜め込んでいたのか、ベルちゃんはベルファストの胸の中で泣き出した。この子は幼く、指揮官によって心に深い傷を負っていた。それを堰き止めていたダムが崩壊したのだ。ベルファストは自身の胸の中で泣くベルちゃんの頭を撫でる。彼女が落ち着くまで、ゆっくりと……。

 彼女の頭を撫でながら、自分達を助けてくれた救世主に感謝を述べようと、彼の居る場所を目視する。

 

 しかし、その存在は風と共に消失していた。

 

  ◇

 

 静寂に包まれた森林の最深部。闇の霧を抜けた先には、孤独にも放棄された廃坑が残っていた。そこに滅が現れ、内部へと入っていく。

 

 灯りは薄暗く、坑道はそのままの状態で残っており、錆びたトロッコにレールや地面に落ちたままの朽ちたツルハシ等、ある程度の物も一緒に放棄され、忘却された空間を、滅は歩き続ける。

 

 真っ直ぐに続く道の角を曲がると、そこは鉄の扉が存在しており、それだけは錆びておらず綺麗な状態だった。

 彼は鉄の扉に手を掛けて押し出し、入室する。

 

 所々錆びた空間に、天井には薄暗い光が灯るランプがぶら下げられ、机には画面三台のデスクトップが設置されている。

 滅はその場でバックル──"滅亡迅雷フォースライザー"からデバイス──"スティングスコーピオンプログライズキー"を抜去し、変身を解除する。

 

「これで俺のやるべき事は終えた。後は『KAN-SEN保護団体』とかいう無能な奴等に任せよう。奴等に任せるのは信用出来ないが致し方ない」

 

 そう呟くと、青年はデスクトップが設置された机に移動し、椅子に座る。

 

「俺が確認した限りでは幸いにも()()()()の彼女達に深刻な外傷は無かった。ヨークタウンと天城には悪化する前に治療薬を飲ませ、去り際にノーフォークに回復薬を飲ませた。今頃、怪我と病気は完治している筈だ。後はハッキングした監視カメラを使って彼女達に危害を加える人間達が来ないか監視するか」

 

 デスクトップを起動し、指の残像が見えるほどの異常な速度でキーボードを入力する。それを僅か数秒で終えた後、首からペンダントを外し、宝石のように優しく丁重に扱う。

 

「もう二度と、人間の身勝手さで彼女達を死なせない。迷わない。止まらない。彼女達の害となる人間もセイレーンも神も、俺が全て滅ぼす。あの時と同じように、()()()()()()()()()()()()()だけだ」

 

 そう決意する彼の瞳には悪意が宿り、"桜の花びらの中心に三つの勾玉が入ったペンダント"が"赤い光"を反射していた。

 

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