アズールレーン ダークサイド 悪意に満ちた死神   作:ヴィランコマンダー

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諸事情により、三ヶ月以上も更新が遅れた作者でございます。

大変長らくお待たせいたしました!

これからも更新が遅れる可能性が高いです。

しばらく離れていたので文章が変と思われますが、どうぞゆっくりお楽しみ下さい。


殺伐と破壊

 そこは地獄だった。

 硝煙の混じった黒雲が大空を埋め尽くし、ほぼ全ての建物は獄炎を纏うように燃え盛り、地面や壁等の辺り一面に赤い液体が付着し、耳を劈くほどの音量を持つサイレンと合唱するように醜い者達が発する阿鼻叫喚。

 怪物はその地獄の中を歩き続ける。

 

「ひぃっ……!? ば、化け物ぉっ……!?」

 

 ふと、左側から鳴き声が耳に入った怪物は何気なくそちらに顔を向けると、そこには酷く怯えた様子で視線を向ける人間が居た。

 

 ──煩い、目障りだ。

 

「ぎゃっ……!?」

 

 怪物は目の前の人間に過剰に反応しており、気がつけばそれの頭を掴んで持ち上げ、軽く力を入れただけで人間の頭はトマトを握り潰したように潰れてしまった。その際に内蔵された赤い液体が飛び散る。

 頭を失った身体は糸の切れた人形のように脱力し、地面に崩れ落ちるさまを見届けた怪物は思った。

 

 こいつは死んだ。

 自身の手で一つの生命を──してしまった。

 だが痛みも、悲しみも、辛みを感じない。

 寧ろ、清々しい気分だ。

 

 その内心は人間に対する嫌悪感と排除した事による爽快感。

 怪物はそれを感じ、再び歩き続ける。

 

「おい、居たぞ! こっちだ!」

 

 その声が聞こえたと同時に、背後からドタドタと地面を蹴る音がいくつも響き、何匹もの迷彩柄の服を着た人間が集団で獲物を狩るように隊列を組んで黒い飛び道具を怪物に向けた。

 音に気づいた怪物はゆっくりと振り返り、人間達が居る場所を凝視する。

 それに反応したのか、人間達はビクッと肩を震わせた。

 

「なんなんだよこいつは!?」

 

「セイレーンの新型、なのか……!?」

 

「お、俺達が勝てる訳がない……!」

 

 人間達はそれぞれ怪物の姿を一言述べた。

 彼らにとってあまりにも異質な存在であるが故に、思わず口に出してしまったのだろう。

 

 そんな事は怪物にとってはどうでも良かった。

 今のところ人間達を凝視したまま動きを見せていないが実際は──煩い、邪魔、目障りと言った憂鬱が徐々に溜まり、それが動力源となって動くのも時間の問題であった。

 

 しかし、それが一匹の人間の一言によってコンマ数秒にまで縮まる事となる。

 

「クソッ! あの時KAN-SENを──しなければ、俺達が出る必要は無かったんだ……!」

 

 直後、怪物の左半面の血のような赤眼が悍ましく光を放ち、身体からはどす黒いオーラが湧き出し、奥深くに潜む"何か"がぐらぐらと震わせるように蠢き出した。

 

 ──お前、今なんて言った?

 

「ひっ……!?」

 

 怪物の発した低声はこの世の者とは思えぬ程に恐ろしく、小動物が大型の肉食動物に恐怖するように人間達は後退りをする。

 一部は恐怖のあまり涙を流しながら震える手で飛び道具を怪物に向け、絶望した表情で戦意を喪失した者も居る。

 はっきり言って壊滅的な状況だった。

 

 異質なまでの殺気を向けられた事によって人間共の絶望した眼差しと怯えきった行動。

 そんなものは怪物にとってどうでもいい。

 一匹の人間が口にした一言を耳に入れた瞬間から、彼等の運命は既に決まっていた。

 

 ──滅亡しろ。

 

 そうして、怪物は腰に装着された白いバックルの上部のボタンに手をかけた。

 

【悪意】

 

 バックルから負の感情が籠められた低声が死刑宣告を下すように発し、即座に右手で押し込むようにバックルの右側面を叩く。

 

【パーフェクトコンクルージョン ラーニング1】

 

 握りしめた拳が赤黒く禍々しいオーラを纏い、今まさに死刑を執行するように目にも留まらぬ速さで人間共の前に高速で移動しながら大きく振りかぶった。

 

【パーフェクト コンクルージョン】

 

 たった一発の放った拳が直撃し、それが周囲の建物すらも巻き込む程の巨大な爆発を引き起こした。

 人間共は悲鳴を上げる事も抵抗する事もなく、肉片も残らず塵と化し、爆発によって建物は消滅し、焦土と化した地を踏む怪物はただその場で佇み人間共が居た場所を凝視する。

 

 また生命が消滅した。

 次は複数のそれが肉片も残らず一瞬で消え去った。

 だが、悲しみは感じない。

 それ以前に、何故悲しむ必要があるのだろうか。

 

 かつて、彼女達が命を懸けて庇護した人類。

 侵略者という脅威が去った直後、奴等はいとも容易く彼女達を──した。

 その時から、奴等は下等生物に成り下がった。

 もはや人間共によって腐敗したこの世界など、存在し続ける価値はない。

 彼女達の死を悲しまない奴等と同じく、自身もまた、奴等の死など興味もない。

 寧ろ滅びるべき種族だ。

 

 ──だから、この世界を。

 

 怪物は歩き出す。

 ()()()()()()()()()この地獄を彷徨いながら──。

 

「もう、やめてくれ……。『指揮官』……!」

 

 どこからか少女の声が誰かを呼んだ。

 それが怪物の耳に届いた直後、彼の身体は凍りつくように停止した。

 それは怪物にとって二度と聞くことがないと思っていた少女の声が、脳に衝撃を与えたからだ。

 凍りついた身体からすぐに復帰し、即座に背後を振り返った。

 

「指揮官……」

 

 そこで目にしたのは、黒のミニスカートと白のノースリーブの上からマント状に羽織った漆黒の上着にマフラーを着用した、灰色がかった白髪の短髪の女性が瞳に涙を浮かべ、悲痛な表情で怪物を見つめていた。

 

 ──っ!?

 

 怪物に動揺が走る。

 かつて、この世界を救う為に侵略者と戦ってきた少女の一人。勇敢で正義感が強く、数多くの戦功や勲章を獲得した英雄。

 そして、彼が今までずっと会いたがっていた少女()の一人だった。

 

 怪物は思わず嗚咽の呻き声を発し、少女へと手を伸ばす。

 指先から腕まで震えるその手は、暗闇の中でたった一つの光が差し込み、今まさにそれを掴もうと必死だった。

 

「指揮官……!」

 

 少女は怪物が自身に手を伸ばしたのが分かると、悲痛な表情からほっとした笑みを浮かべて手を伸ばし、ゆっくりと彼の方へと歩を進める。そして怪物も同様の行動を取った。

 

 怪物と少女の距離は目と鼻の先。

 行き場を失った彷徨う亡霊の如く呻き声を発しながら緩歩する怪物と、彼の帰りを待ち侘びた美女。

 異質ではあるが感動の再開──かのように思えた。

 

 いや、違う。

 自分の知っている彼女ではない。

 彼女がこんな所にいる筈が無い。

 

 怪物は突如として足を止め、少女に対して一気に警戒心が高まり、後方へと飛び退く。獣のように姿勢を低くし、目の前の彼女に襲いかからんばかりに攻撃態勢を作り、殺気の籠もった視線を向ける。

 

 目の前に居るのが先程と同じ人間であれば即座に排除していただろう。

 だが、彼女には襲いかからず攻撃態勢のまま一歩たりとも動かず、僅かに手足が震え、微かに躊躇しているようだった。

 

 分からない。

 わからない。

 ワカラナイ。

 

 突如として現れた少女の存在に困惑を隠しきれず、その一言が思考を埋め尽くす。

 先程まで少女との接触を自ら望んだ筈が今は只、警戒に値する人物に変わっていた。

 

 有り得ない。

 ありえない。

 アリエナイ。

 

 怪物の思考が正常に機能していない中、殺気を向けられた少女は戸惑い伸ばした手が枯れたように下がり、悲しげな表情を浮かべた。

 明らかに彼女は彼の事を知っているような素振りを見せているが、それでも警戒するのには理由があった。

 

 何故なら、怪物の知る少女は()()()()()()()()()からだ。

 

 なら何故、彼女は此処に居る?

 分からない。

 お前は一体……。

 

 ──お前は、誰だ……?

 

 その一言で、少女の瞳に浮かんだ雫が地へと滴り落ちた。

 

  ◇

 

「……まだ目覚めないか」

 

 廃坑の内部に存在する黒鉄の狭隘な一室には、病院で使用されるベッドで眠る大鳳と、側で彼女の様子を見守るように佇む青年が居た。

 

「ごめん、ごめんな……!」

 

 彼は切歯扼腕しながら、謝罪を繰り返す。

 片方の握りしめた手のひらは血に濡れ、硬い床にポタポタと滴り落ちる。

 それは自身に対する怒りと後悔が混ざっていた。

 

「もう二度と、失わせない、傷つけさせないと誓ったんだ。なのに俺は、俺は……!」

 

 彼は自身の手のひらの痛みよりも大鳳が傷ついた事をなによりも痛んでいた。

 まるで過去に彼女を失ったような口振りで後悔しながら。

 

「所詮、過去は過去だな……」

 

 そう呟き、片膝をついて大鳳の頬にゆっくりと手を伸ばす。

 彼女の頬はふわふわとした弾力性があり、二回ほど撫でた後に手を離して立ち上がり、フードを被って部屋を退出した。

 

 その後、青年が向かった先は縦長の広々としたコンクリートの広場。その広さは学園の施設である体育館に匹敵する程の空間。それ以外は何もない虚無の空間でもある。

 

 此処は青年が使用している実験場。

 何の実験か、それは今から青年がする事だ。

 

「……テストプレイだ」

 

 そう言って、右手に何処からともなく銀を基調とした物に、その中心部に黒と金の円型の門を模したベルトのバックルを取り出し、腰に装着した。

 

【サウザンドライバー】

 

 それは"ザイアサウザンドライバー"と呼ばれる滅亡迅雷フォースライザーと同様、仮面ライダーに変身する為のアイテムである。

 

 装着後、パーカーの右ポケットから黒に金を合わせた長方形に、二本の角を持つサイに酷似した哺乳類の絶滅種アルシノイテリウムが描かれたデバイス──"アウェイキングアルシノゼツメライズキー"をバックルの左側の凹みに挿入した。

 

【ゼツメツ Evolution】

 

 するとバックルから輝かしく豪華な待機音が虚無の空間に色をつけるかのように奏でる。

 次に右側のポケットから黒に金を合わせた長方形にコーカサスオオカブトが描かれたデバイス──"アメイジングコーカサスプログライズキー"を取り出すと、それを両腕と共に前に突き出してボタンを押す。

 

【BREAK HORN】

 

 プログライズキーの表面が展開され、ライダモデルと呼ばれる、キーに内蔵された生物のデータイメージが表示された。

 最後にキーを持った右腕と前に突き出した左腕をゆっくり左右に広げ、あの言葉を口にする。

 

「変身」

 

 そして、プログライズキーを右側の凹みに挿入した。

 

【パーフェクトライズ】

 

 中心部の黒と金の円型の門が開門し、そこから銀のコーカサスオオカブトとアルシノイテリウムが解き放たれた。

 コーカサスオオカブトは弧を描くように周囲を飛び回り、アルシノイテリウムは暴走列車の如くドタドタと周囲を猛スピードで駆け回った。

 

【 When the five horns cross, the golden soldier THOUSER is born】

 

 周囲を駆け回り続けた二体の生物達は瞬時に、左右に円形のエフェクトが出現した彼の周囲に引き寄せられ、黄金に輝くアンダースーツが形成されてからはそれぞれがパーツとなって次々に装着される。金、銀の鎧が頭部に装着され、五本の角となる。そして紫色の複眼が顔になると金の波動が発生し、周囲に拡散した。

 

 そこに居るのは青年ではない。

 黄金に輝くアンダースーツに脚部、膝部、胸部、肩部に装着された銀のアーマー。紫の複眼に銀と黒の五本の角を持つ戦士。

 

 ──仮面ライダーサウザー。

 

【 Presented by ZAIA 】

 

 その直後、ビィー、ビィーとサイレンの音が響き渡り、天井から巨大な赤い物体が落下してきた。それが床に付いた直後、ズシンと実験場が大きく振動した。

 

 それを一言で表すならば、全身が金属で構成されたティラノサウルス。漆黒のボディに血のように赤いアーマーが装着され、上下の顎は鋭利な歯が多数並び、手足の爪が鋭く光を放っている。

 金属の肉食恐竜が、サイレンの合図で姿を現した。

 

「グルルゥ……」

 

 ティラノサウルスの赤眼が彼を捉えた。

 その眼は逞しく、強靭な眼をしていると同時に、その奥には獰猛さや残忍さが混じっており、目があっただけで相手を恐怖のどん底へと叩き落とすような絶対強者の雰囲気を漂わせていた。

 

 そんな強者の眼に直視されているサウザーだが、怯えも震えもせず平然とした様子で目を合わせたまま無言でその場に佇んでいた。

 

 ティラノサウルスが鈍重そうな足取りでサウザーへと緩歩する。ズシン、ズシンと地響きを立てながら徐々に接近し、口を大きく開閉しながら目の前の獲物を捕食しようと襲いかからんばかりに唸り声を上げる。

 対するサウザーも自身に近づく巨体に向けて歩き出した。その途中で右腕を横に真っ直ぐ伸ばした。すると右手から金の粒子が集中し、それが物体を形成し始めた。

 

【サウザンドジャッカー】

 

 それは剣と槍を合体させたような見た目に、中心部にエネルギーを溜めるゲージのようなパーツが内蔵され、黒の握りに輪状の形をした柄頭。サウザーと同様のカラーリングをしたその武器の名は”サウザンドジャッカー”と呼ばれる、サウザーの専用武器である。

 

 それを手にした直後、ティラノサウルスは足を止め、天を貫くように身体を反らせ、耳を劈くような咆哮を放つ。同時に、サウザーはサウザンドジャッカーを構えながら一気に駆け出した。

 

「グルルゥアァァッ!」

 

 ティラノサウルスは咆哮を放った直後、向かってくるサウザーに噛み砕こうと口を大きく開き、彼に襲いかかった。あの鋼鉄の鋭利な牙に噛み砕かれれば無事ではすまないだろう。

 

 サウザーは寸前でティラノサウルスの足元にスライディングで回避、サウザンドジャッカーで斬りつけた。

 だが、鋼鉄の身体を持つ恐竜は斬りつけただけでは傷一つつかなかった。

 

 背後に回ったサウザーは脚部を集中して狙い、連続で斬りつける。だが、それでも傷はつかない。

 

 ティラノサウルスは自身の下にいるサウザーを鬱陶しく感じたのか尻尾を巧みに利用して薙ぎ払う。

 

 サウザーは反撃を瞬時に感じ取り、連撃を中断して後方へと飛び退いた。

 尻尾による反撃は凄まじく、風圧だけでコンクリートの床を奥深くまで抉る程の力量を持っていた。

 当然、尻尾そのものに直撃していればひとたまりもなかっただろう。

 

 サウザーは駆け出し、再び脚部を斬りつける。

 何度やっても傷はつかない。無傷のままだ。

 脚部が駄目なら、別の部位を攻撃して弱点を探り当てるのが効率的だろう。

 だが、何故か彼は集中して脚部ばかりを狙う。

 ただ単に斬りつけているようにしか見えない。

 

「グルゥァッ!」

 

 ティラノサウルスの反撃が来る。

 尻尾による薙ぎ払いだ。

 

 サウザーは足元に前転で回避し、再び斬りつける。

 

 攻撃しては回避し、攻撃しては回避のヒット・アンド・アウェイ戦法だ。

 だが、いつまでも通用するとは限らない。

 

「グルルルゥゥォォォォァァォッ!」

 

 痺れを切らしたティラノサウルスは激怒し、巨大な咆哮を上げる。

 壁や床は大きく振動し、耐えきれずサウザーは吹き飛ばされてしまった。

 瞬時にサウザンドジャッカーを床に突き立て、受け身を取った事で態勢を整える事が出来た。

 吹き飛ばされた後も、焦りも怯えもせず無機質な声で呟く。

 

「脅威的な戦闘能力だ。俺が作り出しただけの事はある」

 

 ティラノサウルスに対するサウザーの評価は、高評価。

 この機械生物は彼が自ら作り出した金属生命体だ。

 

 世界で最も硬いとされる、ダイヤモンド、ロンズデーライト、ウルツァイト窒化ホウ素等の物質を凌駕する程の特殊な物質で構成され、銃弾は勿論、戦車の砲弾や戦闘機の機銃、核兵器ですら傷一つつける事すら敵わない、まさに金剛不壊の存在。

 見境なく目に映る者全てを喰らい、潰し、敵味方関係なく暴虐の限りを尽くす獰猛さや残忍さを持つ。

 ティラノサウルスの異名は──狂竜。

 

「グルァァァッ!」

 

 ティラノサウルスは、次は自分の番だと言わんばかりにサウザーへと駆け出す。その鋼鉄の身体からは思えない程に遠距離から高く跳び上がり、襲いかかった。

 

 一度目の攻撃よりも更に速度があり、常人では避けることも防ぐことすら許されず一口で食されてしまうだろう。

 

 にもかかわらず、サウザーは避けることも防ぐこともしない。

 否、何かのタイミングを待っているかのように佇んでいた。

 

 ティラノサウルスとの距離は今まさに捕食される寸前。

 空中からサウザーを丸呑みにしようと口を大きく開き、助かる見込みはゼロに等しい。

 このままいけば間違いなくティラノサウルスの圧勝だ。

 

 捕食されそうになっている当の本人は、只々その場にぽつんと佇んでいる。

 自身の身が危険だというのに構えを解き、無防備な状態でティラノサウルスを凝視する。

 

 絶望して生きるのを諦めたのだろうか。

 

 否、そんな筈はない。

 それならば最初にティラノサウルスを()()()()()絶望している筈だ。

 あれだけ戦っておいて、今更止めるなどありえない。

 

 ──予測通りだ。

 

 直後、ティラノサウルスの脚部に亀裂が入り、その後すぐに小規模の爆発を起こした。

 そこはサウザーが集中して攻撃した部位であった。

 

「グルォァッ!?」

 

 爆発の影響によってティラノサウルスの身体が傾き、サウザーの隣に逸れた。

 物凄い勢いで床に擦れ合い、その摩擦によって床が削れ、ついには壁に突進する形で衝突した。

 

 サウザーが集中して脚部を狙っていたのはこの時の為。

 ある程度ダメージを与え、ティラノサウルスを過剰に動かすことで自然決壊を待っていたのだ。

 だからサウザーは足元だけを集中すると同時に痺れを切らせる為に苛立ちを与えていたのだ。

 

 本来、ティラノサウルスの装甲は核兵器ですら傷一つつかない。

 

 だがそれは、彼の持つ"ライダーシステム"には無関係だ。

 

 ライダーシステムとは、仮面ライダーに変身する為の原理、アイテム等を指す。

 滅亡迅雷フォースライザーやサウザンドライバーがそのシステムの一つであり、一般的な銃や核兵器等とは威力や性能の次元が違う。

 

「予測通りとはいえ、テストは失敗か。改良が必要なようだ」

 

 サウザーは左腰のベルトに装着された"プログライズキーホルダー"と呼ばれるホルダーから、赤みがかったピンクのプログライズキーにライオンが描かれた、ダイナマイティングライオンプログライズキーを取り出し、上部のボタンを押す。

 

【BURST】

 

 それをサウザンドジャッカーに内蔵されたスロットに装填した。

 

【Progrisekey confirmed. Ready to break】

 

 変身時と似たような待機音が流れ、サウザンドジャッカーの剣身が赤みがかったピンクのエネルギーを纏う。

 そして柄頭を引っ張ると、エネルギーがゲージに吸収された。

 

【サウザンドライズ】

 

 最後に、サウザーは壁に衝突したままのティラノサウルスに向けて構え、握りに付いたトリガーを引いた。

 

【サウザンドブレイク】

 

 サウザンドジャッカーを振るった直後、両側面からエネルギー状のガトリング砲が出現し、それが回転しながら弾丸を連続発射。ティラノサウルスへと無慈悲に襲いかかった。

 

 弾丸の雨はティラノサウルスの身体全体に直撃し、最早こうなってしまえば回避は到底不可能。

 ガガガ、と装甲を叩き続ける音が延々と続き、やがて装甲に火花が散り、所々に小規模の爆発が次々と起こる。

 そして最後は、爆発四散するのだった。

 

【ザイアエンタープライズ】

 

「っ……」

 

 サウザンドジャッカーがその電子音を発した途端、サウザーはビクッと身体が硬直した。

 持つ手が震え、仮面越しでも分かる程に動揺していた。

 

 ザイア"エンタープライズ"──という言葉に。

 

 途端、サウザーはサウザンドジャッカーを投げ捨てた。

 それは拒絶による放棄、耐えられなかった自身への怒りから。

 

「……戻るか」

 

 ドライバーに挿入された二つのキーを抜去し、サウザーから変身を解除して元の姿に戻った青年。

 何処か孤独を感じさせながら、彼は出口へと足を運んだのだった。

 

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