咲良ユミの、最期で幸せなクリスマス

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この小説には巨神と誓女についてのネタバレが含まれています。
主なネタバレ誓女:ユミ、ユミ(クリスマスVer)、アイノ
主なネタバレ巨神:神曲の巨神


最高のクリスマスプレゼント

「「「「メリークリスマス!!!」」」」

 

 

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 最初は後輩、ヨシカワの一言からだった。

 

「ユミ先輩って、ご両親は東京なんっすよね……」

 

 ユミは今年の春に転校してきた同じ部活の仲間だ。

 東京からの転校生で明るくて楽しくて、いつもきらきらと輝いてる私とは違う子。

 彼女は単身、家族から離れてこの街にやってきたと聞いたのはいつのことだったか。

 

「そういえば……。咲良さんのご家族さん、年末年始はこっちに来るそうだけどクリスマスは仕事で間に合わないって言ってたね」

 

 そう言うのは部長——いや、元部長——の先輩。

 ユミは夏の演劇コンクールで倒れたまま、今もベッドの上の住人になっていた。

 倒れた当初のように酸素吸入は行っていないものの、状態は徐々に悪くなっているようで、時折暗い顔を覗かせるのを思い出した。

 

「ユミ、寂しいだろうな……」

 

 小さくヒメがつぶやいた。

 女神と巨神で「こんな顔したら面白そうじゃない?」と言いながらヒメに変顔をさせたユミと、その笑顔を思い出した。

 

 ——きっとユミは、今笑えてないんだろうな。

 

 

 

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 クリスマスの賑やかな空気と看護士のちょっと浮かれた声、病室の静けさで否が応でも私が孤独だと思い知らされてしまうようだった。

 

 ——いつからだっけ。友達が来なくなったのは。

 

 小さい頃から病弱だった。

 入院したと知ると友達も何回かは来てくれる。でも何度も入院してるうちに(ああ、いつものか)みたいな感じで来てくれなくなってしまって。

 今はアイノたちが何度も来てくれてる。だけどまたいつものように離れていってしまうのではないかと思うと怖かった。

 

 今年は両親からも離れて病室で過ごすクリスマス。

 仕事で忙しい両親が、あと3日はこちらまで来ることができないと聞いたのは先々週だっただろうか。

 転校はみずから望んだこととはいえ、(家族もいないクリスマスってこんな感じなんだ……)と切なくなってしまう。

 

 ——最期のクリスマスがクリぼっちとはね。

 

 寂しさを紛らわせるように今年のアルバムを開いた。そこには部活のみんなとの楽しい日々がきらきらと躍っていた。

 みんな一生懸命で、みんな楽しそうで。そんな中に私もいる。

 見ているうちに舞台の上で浴びたライトの熱と、雷のような拍手が蘇って身体を熱くした。

 

「幸せな、一年だったよね……」

 

 静かな病室の中に私の声が響いた。

 

 

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「ケーキよし、サンタ服よし、クラッカーはダメなんだっけ?」

 

 あれこれ準備していたヒメがこちらを見ながら言う。

 サンタ服は以前、幼稚園に出向いて劇をしたときに使ったものが部室からあったものを拝借したもので、ケーキは予約してあったホールケーキを受け取ったものだ。

 

「クラッカーは患者さんによってはびっくりしちゃってよくないって聞いたことあるし、病院は静かにしないといけないからね」

 

 部長の言葉で鳴らす気満々だったらしいヨシカワが「残念っす……絶対ユミ先輩好きだと思うんすけど……」としょぼくれてしまった。

 が、すぐに立ち直ってプレゼントの準備を始める。

 ヨシカワはどうやらおすすめの本をプレゼントするらしく、「これでユミ先輩もこっちの道に……」と小さくつぶやいているのが聞こえてきた。ヨシカワらしくて小さく笑ってしまった。

 

 私からのクリスマスプレゼントはクマのぬいぐるみ——ユミの持っているカメラにつけられるようになっている特別仕様だ。

 ちょっと、いやかなり高かった。だけどユミが好きそうなものなのは確かで、絶対に喜んでくれるはず。

 

 

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「準備は大丈夫? いくよ」

 

 小さな声が、ドアの向こう側から聞こえた。この声はアイノだろうか。

 舞台の上で何度も聞いた、あのよく通る声が静かな病室に響いた。

 

 すーっと音を立ててドアが開いた。

 

「「「「メリークリスマス!!!」」」」

 

 見知った顔たちが、私に笑顔を向けていた。

 真ん中にはサンタ服を着たアイノが、ヒメにヨシカワ、部長もいて、静かだった病室は一気に騒がしくなってしまって、看護士に「もう少しだけ静かにね」と注意を受けてしまうほどだった。

 

 ——ねぇ、アイノ。今までこんなに賑やかなクリスマスはなかったよ。

 

 病室に現れたサンタさんは私に、最高のプレゼントを持ってきてくれたんだ。

 友達と一緒のクリスマスっていう、最高のプレゼントを。


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