※偽者の渋谷事変での動き捏造
偽者さんの動き追っていたんですが、結構うろちょろしているんですよ…(19:00渋谷に帳が降りる→21:15東京メトロ副都心線渋谷駅B5 21:26→22:01東京メトロ渋谷~明治神宮駅→23:36宇田川交番)
Google先生と一緒にずっと考えていたんですが、すぐに帳の外には出ないだろうなと思いましてこうなっております。
伏黒は隠れていた。隠れると言ってもこそこそ物陰に隠れるような真似をしているわけではない。当人比だ。店員がいないコンビニでビールやハイボールを呷っている。
寝そべっていたベンチから飛び起きた際にビールを溢してしまい、風が吹くたびズボンが冷たい。生来暑がりではあるが、服が水気を含みべっとりと張り付く感覚は酷くイラつく。なので近くにいた呪詛師の頭をカチ割るがそれで服が乾くわけでも暖を取れるわけでもなくむしろ返り血が飛んできたため気分は更に落下した。
それでも見つかりたくない相手に見つからないようにするという理性はまだ有る。抱えきれないもやもやとした感情を発散するため、時折呪霊やら見覚えがある顔をぶっ殺したり蹂躙したり血祭りにしたりしながら隠れていた。
そうしてもうそろそろいいかと思い戻ってみれば人っ子一人いなくなっていたのであの糞ガキどもの薄情さに全身を怒らせる。怒りにまかせてベンチを蹴り飛ばしたせいで周囲にいた奴らの視線が集まったことも腹立たしい。探しに行ってもいいがそこまでしてやる義理もない。
かなり歪んだベンチに再び寝そべろうとしたとき、大きな破壊音とよく知った顔を見つける。思い出すだけでもイヤな気分になるあの禪院家のご当主サマだ。
「―――いいとこにサンドバッグいんじゃねェか」
「よかった。まだここにいてくれて」
少年のその声に偽者は顔を上げ目を細めた。一緒にいた特級呪霊たちとは別行動をとっているのかただ1人佇んでいる。足元には作業員”だったもの”だろうかいくつかの赤い水溜まりがあった。
「…どうしてここにいるとわかったんだ?」
「有志の方々の情報提供のおかげですよ。 状況によっては無駄に終わりそうだったので大まかにしか推測してなかったですが、想定していた場所の1つにいらっしゃったので助かりました。
先程の様子から察するに、直接五条さんと戦うことはしたくなさそうでしたので、どこかに隠れてやり過ごす、あるいはそのままどこかの道を強行突破するつもりだと思ったんです」
コンクリートに静かな少年の声はよく響いた。
「事を起こすと決めた時、きっと地図を確認したでしょう。どこから入ってどこで戦うのか、そしてどうやって逃げるのか。地の利はあればあるほど有利だ。目的が果たせてもそうでなくともきっとその場に留まることはしない。移動なら線路を使えばいい。渋谷駅を選んだ理由の1つでもありますよね。幾つか線が乗り入れているので選び放題だ。通常の地図に載っていない場所も一応調べておいたんです。他にも駅員専用の通路や、下水道、廃線にここのような工事中の場所も」
都内の多くの駅ではオリンピックに向けて工事が始まっている。特に主要な駅では大規模な工事が行われていた。それは渋谷駅でも例外ではない。工事用のライトはLED特有の白っぽい眩さで辺りを照らす。コンクリートや配線が剥き出しのところも多く、まだ完成には遠いだろう。
「…五条悟どころか他の術師も見当たらないけど。君、戦えるの?」
「いいえ、全く。なんで皆さん僕がなにかジュツシキ?を持っていると思うんでしょうか。僕、50m走20秒台なんですけど」
「君はおもしろいね。術師でもないのに不思議な力を持っている」
時間があるのか、あるいはいつでも殺せると思って余裕があるのだろう偽者が訊く。
「僕はむしろ偽者さんの体がどうなってるのか気になります」
「―――見たい?」
「はい」
そう言うと偽者は額の縫い目を開いた。
「おーー、すごい。傷が癒合してないということは頻繁に開け閉めされてるんですか」
人の身体に何してくれるんだと言う怒りよりも、少年のドアの開閉について訊くような気軽さに絶句した。
「それに切り離されてる前頭部と頭頂部、よく腐らないですね。夏場大変だったでしょう」
「それは秘密。で、追いかけてきてどうするんだい。私はてっきりDMM云々言ってた時、何かしようとしてるのかと思っていたんだけど」
「DMMではなくてFANZAですね。今年の8月に名称変更したので」
『今それやめて』
瓶の隅に執拗くこびりつくいちごジャムのような、ほんの僅かになってしまったプライドで口を動かす。数か月前から少年をイヤイヤ期が到来した子どもなのだと思い込むことしていた。自己暗示を掛けなければ確実に教育的指導をしていたし、もしこれが反抗期なら疾うの昔に後頭部を掴んで地面に叩きつけていたことだろう。自身の頭を洗脳することを考え付いた時は生前死後合わせても1,2を争うほど頭が冴え渡っていた。
その自己暗示は今まで立派に効果があった。ロードオブザリングの間にアウトレイジを流されたときも白昼堂々の墓荒しも温かく見守ってきた。しかし今日は流石に無理だ。隙があれば地べたでもいいから座って休みたいほど精神的に参っている。先ほど
「……まぁいい、取敢えず、」
偽者は呪霊を出す。少年の言葉を見事にスルーした偽者に思わず拍手しそうになった。どうやら面倒くさい人間の対処法を知っているようだ。
その身体から”本体”を引き剥がし100円均一のタッパーにでも移した後に弟子入りしてやってもいいかもしれないと思ったが、タッパーを振りまわして極意を吐き出させた方が早いことに気が付く。そんなことを考えている時点でもう完全に血迷っているのかもしれない。
偽者は呪霊を
縦に一直線に入った線から一気に青々とした血液と内臓が零れ落ち床に撒かれる。
「すみませーん、最後に1つ聞きたいことがあるんですけど」
偽者は少年の力を測っているようだ。先ほどのものより強い呪霊を出しながら偽者は片眉を上げる。青い血と臓腑が織りなす光景の中で淡々と話す少年は異様に映るかもしれない。
「……ジュレイ以外のものを見える人に会ったことはありますか」
「呪霊以外?」
「例えば――――幽霊、とか」
「興味がないな。君、本当に何しに来たんだ?敵意も向けてこない、攻撃してくると思ったらそうでもなくただ迎撃するだけ。そのくせに私を追いかけてきてそんなくだらない質問をする。目的はなんだ」
「目的。……目的ですか、うーん……時間稼ぎって言ったらどうします?」
偽者の動きが止まる。
「―――やった!」
息を切らした菜々子たちが奥から現れた。
菜々子が構えたスマホが偽者の姿を捕らえる。動きの止まった偽者に声を上げた。
「…開門」
美々子がそう告げ、獄門彊を偽者の足元に転がす。一旦別れる前、宿儺の指と獄門彊を交換させておいたのは正解だった。まだ美々子と菜々子の方が常識的な使い方をしてくれる。硬質な音が一面に響いた。
偽者の足元に亀裂が入り盛り上がる。コンクリートの中に呪霊を出したのだろう。偽者はまんまと菜々子のスマホの画角から逃れた。
「…この身体を返してほしくないのか?」
偽者の言葉に菜々子たちは唇を噛み、少年の口角は仄かに上がっていた。