A「開門」→A「閉門」 成功
A「開門」→B「閉門」 失敗
※B5Fの時に偽夏は獄門彊を回収しようとして閉じています。しかし逃げる方向と逆方向に位置していた&顔を晒してしまった以上五条にもう不意打ちはできないと判断しその場からの脱出を優先しました。一か八かで回収用に呪霊も放っていましたが五条によって改造人間と同様瞬殺されています。
床は呪霊だったもので山ができ、辺りは呪霊の血で濡れている。軽い音を立てて持っていた呪具が壊れた。山ほど持ってきた呪具はもう半分を切っている。
雑魚ばかりとはいえこのままでは厳しい。獄門彊はまだ閉じていない。皆その範囲に入らないように注意を払っていた。
偽者を挟むように菜々子たちも呪霊と戦っている。しかし美々子はさきほど呪霊に吹き飛ばされ昏倒し、菜々子も体力の限界が近いのか少しずつ押されだした。できれば2人と合流したい。それは少年も同意見らしかった。
少年の襟首を掴み呪霊の放つ斬撃を躱す。壁を足場にそのまま呪霊の懐に入った。顎裏から一気に脳天に向かって短刀を突き刺し抉る。蛙が拉げた時のような音が短剣を通して伝わってきた。このまま獄門彊の傍を通れば最短距離で2人の元に行ける。しかし、偽者がその機をみすみす見逃すとは思えなかった。
菜々子たちに数体の呪霊が襲い掛かるのが見える。
『ッ!、菜々子、避けるんだ!』
空気を薙ぐ音が響く。菜々子に襲い掛かった呪霊の頭が吹き飛ぶ。胴体から離れた呪霊の頭が鞠のように床を転がる。頭を失ったことに気が付いていない身体は拍動に合わせて血を噴き出す。その身体を男は蹴り倒した。
「――伏黒さん、よくこの場所わかりましたね」
「匂いを辿った」
『犬かな』
「黙れ」
「伏黒さんが来てくれて助かりました」
形勢逆転とまでは言えないが目の前の呪霊に集中できるため大分楽になる。
男は呪霊を次々殺していく。三節棍で呪霊の胴体を薙いだ。
『……ちょっと待て!それ私の
「ハァ?元々俺のだろ、が!」
苛立ち紛れに男は偽者に攻撃を仕掛ける。三節棍を力任せに叩き込んだ。偽者は呪霊を次々に出し盾代わりにするが、男はそれらを軽く往なす。分が悪いと判断したのだろう偽者は呪霊に乗り、逃げの姿勢を取った。男がそれを追う。
身体置いて行け。その一心で2人に負けじと少年を小脇に抱える。突然一面が目を開けていられないほど明るくなった。轟音と共に屋根やコンクリートが塵と化す。粉塵が立ち込め少年と菜々子の咳が聞こえる。
「―――テメェふざけんな!オレまで消し飛ぶとこだったじゃねェか!!」
「めんごめんご!ちょーっとずれちゃった。次はきっちり中てるから安心して」
「ブッ殺す」
先程の紫の光はやはり悟の術式だった。2人のやり取りを聞きながら沖縄のハブとマングースの戦いを思い出した。
「なんであの2人あんなに仲悪いんですか」
『元被害者と元加害者だから』
「どっちがどっち」
『どっちもどっち』
「なるほど」
何がわかったのかは不明だが、少年は言い合いをしている悟に声を投げ掛ける。
「五条さんはこっちこないでください」
「えッ、僕汗臭い?もしかして反抗期きちゃった?」
「C-4もどきが開いてるんです」
「そっかぁ、あーよかった…って全然よくないんだけど。早く閉じてよ」
「それが…開けた美々子さんが気を失っていまして」
「殴ってでも起こせ、できねェなら俺がやる」
『あの子殴ったらお前を殺す』
「まぁ僕最強だから大丈夫でしょ」
「いえ、念の為離れてください」
「えーそんなに信用ない?僕がやればちょちょいのちょいなんだけど」
「五条さんの場合、無意識でも青春アミーゴしてしまうと1発アウトなので」
「青春アミーゴ」『青春アミーゴ』
意味は分かるが外聞が悪い。というか大分気恥ずかしい。
『君、その世代じゃなくない?』
「再放送で見ました」
粉塵に塗れてゆらりと影が現れる。偽者は脇腹を少し失い、右腕を力なく垂れ下げていた。あちこちから血を滴らせているがまだ生きている。自然と舌打ちが出た。
「………五条悟…なぜ躊躇しない、お前の親友だというのに」
「ガワが傑でも、中身が違うなら僕の親友じゃないさ。
それになにその艶髪。傑は自然乾燥派なんだよ。自分からドライヤーなんてするわけないだろ。一見几帳面に見えるけど結構雑だから。自室は綺麗にしてたけど任務で疲れて風呂入らずにそのまま寝たり、箱ティッシュ買うの忘れて寮の便所からケツ拭く紙パクって自室で使ってたし」
せめてトイレットペーパーと言ってほしい。
「汚ねェな、部屋に虫湧くだろ」
「そうそう!そのケツ拭く紙にGの卵ついてた時はもうホントスッッゴかった!夜中に叫ぶから全員飛び起きてさぁ」
「寝てる間に虫食ったからそんな
『青あの2人止めろ』
思い出したくもない記憶が掘り返される。人を擁護したいのか貶したいのかわからない。それに悟のように、風呂入った後着替えを忘れたことに気づいて寮内を全裸ダッシュする奴には言われたくない。
「お2人とも、夏油さんがもう止めてほしいそうですよ」
悟と男は少し顔を見合わせ、悟は懐かしの野々村議員の真似をし、男は舌を出しこちらに中指を立ててくる。高専時代はする側だった。久しぶりにされる側になって改めて思う。クッソ腹が立つ。
『誰だあいつら引き合わせたのは』
「わかりません」
『嫌がらせにも程がある』
近くにいたならばあの中指をへし折っていた。ここでは敵の敵は味方ではなく、”昨日の友は今日の敵”らしい。昨日どころか2時間も経っていない。
偽者は多くの血を流しながらもしっかりと立っている。偽者は憎らしげに言う。
「――――私の身体が欲しくないのか」
「………その言葉だけ聞くとかなりヤバい…」
一瞬間が空いて悟と男が噴き出した。確かにAVの中でしか聞いたことが無い。自分の顔と声がその言葉を紡ぐのを見ても羞恥心が刺激されることはなかった。今日1日で大分耐性がついたらしい。自らの目覚ましい成長ぶりに涙が出そうだ。
「五条さん、できればで結構なんですが、もし偽者さんを消し飛ばすなら半分ぐらい残しておいてください」
「えー…半分かァ……縦、横どっちがいい?」
「縦でお願いします」
「下半身でいいだろ」
悪逆非道とはこいつらのことを言うのかもしれない。
視界の端で菜々子が気を失った美々子を必死に起こす。美々子が薄く目を開き言葉を交わしているのが見え、安堵の息を漏らした。ジェスチャーで逃げるように指示するが、菜々子たちには幽霊は見えないため伝わらない。
偽者が大量の呪霊を出す。先ほどの比ではない、視界が全て呪霊で埋まる程の量だ。呪霊に紛れて逃げる気なのだろう。低級が殆どだが数が数だけに煩わしい。術式が使えないため1体ずつ地道に祓うしかない。祓っても祓ってもきりがない。菜々子たちの姿を捉えるどころか声さえ掻き消された。
「ッ!美々子さん!ちょっと待ってくださ…」
呪霊が見えない少年には美々子たちが何をしようとしているのかわかったらしい。制止の声を上げる。その声は呪霊の声に掻き消された。
空間が僅かに揺れる。
「―――開門」
少年が言葉を発するより偽者の方が僅かに早かった。