幽霊見える系男子と夏油さん(幽霊)   作:あれなん

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【4】手紙は確かに届いた

 

 

 

「マジかよ、傑いんのか…」

 

 

悟は1階の割った窓の修理をするように電話でどこかに伝えた後、頭を抱えた。靴は言われてすぐに脱いでいた。

 

 

 

 

「……傑、どんな感じ?」

 

「すごく怒ってます」

 

 

 

確かに怒っている。腕を組んで仁王立ちしている。

色々なことを考えに考えつくしてここ2週間+1日過ごしたのだ。その集大成ともいえる手紙を皺くちゃにされ挙句の果てに、代筆してくれた少年に危害を加えるといった暴挙に怒り心頭だった。存外この少年を気に入っていることも要因かもしれない。

 

その少年の返答に、少年のベッドに寝っころがっていた悟は更に掛け布団にくるまってまんじゅうのように丸まっている。触れることのできる体があるならば、悟のケツの1つや2つ蹴り飛ばしてやりたかった。

 

被害者と加害者が入り混じる3角関係(1名幽霊)という妙な状態に終止符を打ったのは間違いなく加害者である悟だった。

 

 

 

「なんかお腹すいたしどっか食べに行かない?もっと話も聞きたいし」

 

「…口調がさっきと違う」

 

「もともとこの口調だよ。さっきのは完全に頭に血がのぼってた」

 

その言葉にちょっと少年は引いているようだった。確かに先程の暴れっぷりと今とでは二重人格みたいにも見える。

 

 

 

 

 

 

 

入ったのは近所のファミレスだった。4人掛けのソファーの席に案内される。

悟に見えないとわかっていても気分的に少年の横のソファーに座った。

 

 

 

「割れた窓、あと1時間ぐらいで直るって」

 

 

『割れたじゃなくて割ったの間違いだろう?』

 

 

「あー仕事のときより疲れた気がする。あっ、店員さーん、デザートをここからここまで全部」

 

 

『まったくどの口が…こっちの方が疲れたよ』

 

 

 

つい癖で、悟の言葉に返してしまう。たとえ悟には届かないとわかっていても。

 

隣に座った少年がめずらしくくすくす笑った。

 

 

「?」

 

「いや、夏油さんと五条さんの掛け合いがおもしろくて…」

 

「――どうせ傑のことだから「こっちの方が疲れたんだけど」とか言ってるんでしょ」

 

 

「『大正解』」

自分と少年の声が重なった。

 

 

 

 

そんなことしているうちにテーブル一面にデザートが並べられた。

 

 

「好きなの食べなよ」

 

そう言って注文した本人は一番近くにあったパフェを食べ進めている。見る見るうちに吸い込まれていく様はまるで掃除機だ。ある意味やけ食いに近いのかもしれない。

 

少年は一番近くに置かれていたガラスの器に入れられたアイスクリームを手に取った。少年が半分も食べ進んでいないうちにもう悟は5皿完食している。

 

 

「首、…まだ痛む?」

 

「あぁ、大丈夫です」

少年の首には痣がぐるりとついている。肌が白いためよく目立つ。

 

「でも、よくわかりましたね。僕が手紙出したって」

 

「防犯カメラに映ってたからね。でも、消印が違うところだったからちょっと探すのに手こずったみたい」

 

「前は家の近所で出してたんですが、見つかってしまったので、ちょっと工夫してたんですが」

 

『なにそれきいてない』

「あれ?言ってませんでした?」

少年が視線を夏油に向けた。

 

 

「五条さんみたいに怒ってはいませんでしたが、泣かれていたのでなだめるのに大変でした」

 

『まぁ、普通そうなるよね』

 

 

「僕としては、死んだ人間から手紙が届いて、びっくりどころじゃなかったけどね。吐くかと思った。首絞めた張本人が言うのもなんだけど、もうやめといたら?危ないよ」

説得力がありすぎる。

 

『それを利用した側としてはなんとも言いにくいけど、私も悟の意見はもっともだと思うよ』

 

 

 

「やめませんよ。絶対に」

2人の説得に少年は遠い水平線でも眺めているかのように凪いだ瞳をしていた。

 

 

「まーいいや。それはまた後で。で、手紙の内容は本当の事なんでしょ?」

 

「はい」

『そうだね』

 

 

悟は大きくため息をついた。

 

 

「わかった、やるよ。けど、1つ傑に言っておくことがある」

 

 

少年の視線でどこらへん座っているのかわかったようで、視線が一瞬だけ交わった気がした。

 

 

『?、なんだい?』

 

 

「「元」なんて俺は思ってない。今も親友だ」

 

 

 

『――』

 

 

 

 

悟に自分の声が届かないことがこれほどもどかしいとは思わなかった。

 

 

 

 

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