エンティティ様といく!   作:あれなん

50 / 58
〖19〗鶺鴒鳴

 

 

普段通り朝食をもりもり食べ、学校の制服で家を出る。途中にある公園の駐輪場に自転車を止め、精一杯辛そうな声を出して高校に休みの連絡を入れた。

空いているマップで制服から鞄に詰めこんでいた私服に着替える。昼食用のお弁当は散々悩んだ末、エンティティ様に食べてもらった。

どうしてズル休みというのはこんなに楽しいのだろうか。少しばかり罪悪感もあるが、それ以上にわくわくと胸が弾む。

 

しかしまだ始まるまでには大分時間がある。鞄を枕代わりに二度寝をキメようとしていたが、エンティティ様から数学の問題集を渡される。最近学校が始まって忙しいと理由を付けてサボっていたことにどうやら気が付いていたらしい。少女は渋い顔をしながら筆記用具を取り出した。

 

 

 

 

交流会は呪術高専の東京校と京都校の生徒が競い合う恒例行事だ。2日に渡って開かれ、通例では1日目は団体戦、2日目は個人戦が行われる。

 

1日目の団体戦は指定された区画内に放たれている2級呪霊を先に祓った方が勝ちというものだ。因みに2級呪霊以外にも呪霊は複数放たれている。

 

東京校は乙骨と吉野は海外任務のため不在、菜々子と美々子は体調不良で見学だった。折角の交流会なのに見学なんて、とデリカシーを生まれ持っていない五条が口にしたが、菜々子に”そこまで言うならお前の股の間にマイナスドライバーで新しい穴抉じ開けてやる”と地獄の底から這い出てきたような声で凄まれると流石に口を閉じた。

そのため急遽欠員分を埋めるため東京校の1年生も参加することとなる。先日やられた分をやり返すいい機会だと1年生はやる気十分だ。五条と虎杖のサプライズも無事に終え、様々な策略が巡る中、全員がスタート位置に着く。

 

京都校の学生は楽巌寺学長の虎杖抹殺の指示によりほぼ全員で虎杖を狙う。しかしその思惑は果たされることなく、一進一退の攻防が続いていた。

 

異変があったのは暫く経った後だ。高専のアラートが鳴り響く。その鳴動は周囲の山々にも反響する。先ほどまで切り結んでいた恵と加茂は周囲を警戒した。

 

「ッ!加茂さん!」

 

恵の咄嗟の声に弾かれるように加茂は身を屈ませた。頭上すれすれを何かが風切音と共に通り過ぎる。2人は襲撃者を見た。体格が良く背は天井に届きそうなほど高い。唯一黒い衣を纏っていない頭部の皮膚は爛れ引き攣っている。その者から発される威圧感で指先が僅かに震えた。目の端で何かが蠢いている。それは鞭のようにも見えた。その触手が先ほど加茂を襲ってきたものの正体らしい。

 

距離を取るついでに加茂の術式で攻撃する。全て命中したが痛がる素振りさえしていない。注意するべきものは触手だけではない。その巨体から繰り出される拳は壁や柱を易々と木端微塵にしていく。加茂は自身の足元に転がってきた壁だった(・・・)ものに目を遣る。その腕に掴まれたら最後、自分の身体もそう(・・)なってしまう。遠距離攻撃に切り替えるがあっという間に距離を詰められた。

 

「―――一旦引く!」

 

「はい!」

 

2人は大きく開いた壁の穴から外へと飛び出した。

 

 

 

 

「あーりゃりゃ、どういうことこれ」

思わず五条は声を上げた。

 

区画内に放たれている呪霊には呪符が貼られ、消滅と同時に教員たちが待機している部屋に通知が行く。教師たちは冥冥の術式で生徒たちの様子をモニタリングしていた。

突然、的として放っていた全ての呪霊が祓われ、アラートが高専中に響き渡る。どうやら異変が起こっているらしい。夜蛾が生徒の安全と避難をするよう指示を出す。

 

夜蛾以外の五条、夏油、庵、楽巌寺は屋根の上を駆ける。帳が下りきる前に五条は無事に帳の中に入ることができた。

 

「ギリセーーーフ!!!」

 

「……普通に入れるけど」

 

帳の中に入れなかったはずの夏油が平然と帳の中に入ってくる。首をかしげる。襲撃犯の目的が見えない。普通なら外からの侵入を拒む帳を下ろすはずだ。

 

「ホントだ。こんな帳下ろしてどういう……あっはっはっは……入れなくなっちゃった……」

 

「―――あんた馬ッ鹿じゃないの!?」

 

まだ帳の外にいた庵が思わず叫ぶ。どうやら襲撃犯の目的は五条だったらしい。折角帳の中に入れたというのに自分から外に出てしまった。正に飛んで火にいる夏の虫だ。

 

「どうにかするから先行ってて…」

 

帳の外に五条を捨て置き、夏油、庵、楽巌寺の3人は走り出した。

 

夏油は上空から、庵と楽巌寺は地上から生徒を探す。庵と楽巌寺の前に立ち塞がる者がいた。身なりは術師と同等だが、口元は卑しげに歪んでいる。何度もこの手の輩を見てきた楽巌寺にはすぐに分かった。

 

「呪詛師か……歌姫、先に行け」

 

「はい……えッ」

 

庵が足を向けた方向に赤いドレスを纏った者が突如現れる。それは次の瞬間には反対側にいた呪詛師の背中を切りつけていた。その動きは目で追うこともできないほど速い。

 

「仲間割れか…?」

 

怪我を負った呪詛師は出鱈目に呪具を振り回している。それを横目に2人は先を急いだ。

 

 

 

 

 

狭い校舎内を脱出したが先ほどの大男が恵と加茂を追う。2人を追うように重い足音が響く。その巨体に似合わず動きは早く、2人は振り回されていた。恵の式神で足止めをし、その隙に離脱しようと試みる。

 

2人がいる場所に誰かが飛び込んでくる。狗巻だ。狗巻は2人の姿を捉えると逃げろと指示を出す。それと同時に恵たちがいる建物を覆い尽くさんばかりに木々が伸び、襲った。

 

呪霊の攻撃を上手く躱した3人は情報を共有する。どうやら恵と加茂が遭遇した大男以外にも襲撃者はいるようだ。

目の前に目から枝を生やした呪霊が立ちふさがる。前に五条が言っていた呪霊の特徴と一致する。狗巻はこの木の呪霊から逃げてきたらしい。呪言師の狗巻も交じり3人で攻撃を仕掛けるがダメージには至っていない。反対に狗巻はもう限界が近かった。

 

木の呪霊の背後に影が突然現れる。それは土煙の舞う中、呪霊の肩を殴りつけた。呪霊の右肩が粉砕され、接続部を失い右腕がぼとりと地面に落ちる。倒れ込む呪霊に何度も拳を振り下ろす。呪霊がそれを防ごうと木々を生やすが絶え間なく降り注ぐ拳に、徐々に身が削られている。

 

飛び散る木片を避けつつ狗巻を2人がかりで担ぎ起こす。校舎はもう元の姿を留めていない。地鳴りに似た音を聞きながら3人はその場を離れた。あちこちで噴煙と耳を劈くような音が響いている。

術式で空を飛んでいた西宮を見つけ、狗巻を安全地帯に移すように加茂は指示を出した。

 

 

 

 

 

瓶が割れ、辺り一帯に色のついた煙が立ち込めている。西宮は煙が届かない上空に逃げたはいいが、先ほど少し吸い込んでしまったため身体が重く、酷く視界がぶれた。投げつけられる瓶を避けようとして意識の無い狗巻を落としそうになる。それを支えたのは使役呪霊に乗った夏油だった。

 

「先生、狗巻君が…」

 

「ここは任せて。先に皆と合流するんだ」

 

その夏油の言葉に西宮は頷くと先を急いだ。残された夏油は使役呪霊を出す。象のような着ぐるみを纏った者にそれらを嗾ける。しかし煙の中では呪霊の動きが遅くなり、瞬く間にナイフで切りきざまれていく。遠距離攻撃をしようとすれば煙を焚かれ視界が悪くなり精度に欠けた。

 

「少々やりにくいな」

 

夏油は別の方法を考えざるを得なかった。

 

 

 

 

 

目から木を生やした呪霊が虎杖と東堂の前に飛び出してくる。先ほどまで繰り返し響き渡っていた音が止んでいた。おそらくそこから逃げてきたのだろう。

呪霊は体中にダメージを負っていたがすぐに回復し、虎杖たちの攻撃を往なすほどの力は十分あった。しかしその中であっても虎杖は東堂の指導によって呪力を理解し、黒閃を会得する。

 

「大丈夫かブラザー!」

 

無問題(モーマンタイ)!」

 

 

木の呪霊とは異なる気配を感じ、咄嗟にその場を飛びのく。ペストマスクを付けた男が棍棒をついさっきまで虎杖がいた場所に振り下ろしている。これで2対1が1対1になった。

眉を顰める虎杖に対し東堂は落ち着くように諭す。ペストマスクの男は棍棒で殴り掛かってくる。時折電流が放たれるが男の前方にいない限り問題はない。もし位置してしまったとしても東堂の術式がある。そのため自然と木の呪霊の方に注意がいっていた。

 

突如全身を電流が駆け巡る。指先にチリチリとした感覚が残り、全身の筋肉が強張った。ペストマスクの者の嗤い声が響く。攻撃を受けたのは虎杖たちだけではない。木の呪霊も同様にダメージを受け、相性が悪いのか半身を黒く焦がしている。

 

 

 

 

 

五条は帳の外でどうしようかと考えあぐねていた。視界の端に人影が映る。

青みがかった肌によたよたと歩く姿、言葉にならない唸り声。五条は1発でその者の正体が判った。

 

「……ゾンビじゃん…」

 

それは覚束ない足取りではあるが確実に五条の方に向かってきた。

 

「ちょっと待って!マジで!5秒でいいから!ストップ!………ウェーイ!!」

 

記念撮影とばかりにゾンビと肩を組み、スマホで写真を撮る。撮り終えるとそのまま首をへし折った。バランスを失ったゾンビは地面に転がり音を立てながら消えていく。

 

「写真に写るってことは呪霊じゃない…でもって死体も残らないってことは……どういうこと?」

 

そんなことを考えていると帳が上がる。どうやら五条が帳を壊す前に誰かが術者を倒したか基を壊したらしい。五条は上空から区画全体を見下ろした。ほとんどの者が会場の中心部に集まってきている。

 

「皆集まってんじゃん。違うな、集められた(・・・)のか」

 

取敢えず木の呪霊とペストマスクの男に苦戦している虎杖と東堂を助けようと術式を放つ。木々が轟音を立てて消え失せ、五条の術式によって一面が紫色に染まった。

 

風が吹き、土埃が晴れる。木の呪霊の姿は既にない。しかし削れた山肌に立つ者がいる。ペストマスクの男だ。先ほどと何も変わっていない。五条の術式が不発だったわけではない。現に襲撃者の周囲にあった木々は消し飛び抉れている。

 

「耐えたというより避けたに近いかな。それでも避けるなんて意外とやるね」

 

ペストマスクの男は五条に視線を遣った。しかし男はくるりと方向を変え、五条に向かってくるでも、虎杖たちに襲い掛かるでもなくどこかに歩いていく。

 

「ちょっとどこ行ってんの?僕ここにいるんだけど…おーいここまできて放置プレイってひどくない?」

 

何度か攻撃を仕掛けるが興味がないと言わんばかりに歩き続ける。男がどこに向かっているのかわかり、五条たちも後を追った。

 

 

負傷した生徒たちを守るように夏油たちは襲撃者に対峙していた。象の着ぐるみを着た者、顔が爛れた大男、赤いドレスを纏った者。それぞれ特級相当だ。しかし夏油が使役する呪霊の攻撃も、楽巌寺の術式もその者たちには効いていない。むしろ術式をわざと食らい楽しんでいる者さえいた。術式が効かないのならと接近戦に切り替えるが、それすらダメージには繋がらない。ジリジリと追い詰められている。皆自然と会場の真ん中に集まった。

しかし止めを刺すわけでもなく、かといって逃がす気もなさそうだ。目的が見えない。

 

何かが近付いてくる。ミノタウロスのように人身牛頭をしている。赤い角は天を向き捻じれ、黄金の鎧には所々血が付いている。その者の後ろから平然と歩いてくる者がいた。

 

「これで大体全員揃ったかな」

 

少女はそう言いながら、皆が集まっている方向に近づいてきた。ミノタウロスが肩に担いでいた三輪を地面に降ろす。空気が一気に緊張り詰める。どんな状況でも余裕を見せてきた五条や夏油の目つきが一変していることに生徒たちは動揺した。

 

「高専を襲撃した理由はなんだ」

 

建物の被害は甚大だ。しかし不思議なことに死者はいない。捕らえられていた生徒たちは気を失っている者もいるが生きている。その理由がどうにも夏油は理解ができず、眼差しに緊張を漲らせながら訊ねる。

 

「えっ、五条さんに誘われたから来たんだけど…」

 

 

「…………………アッ………えへっ……」

 

 

 

 

 

 

「6月頃に会ったとき、サバゲーとかバトルロワイアルみたいな行事あるから飛び入り参加してもいいよって言われて…折角誘われたんだし1回は参加した方がいいかと…」

 

「日報にはそんなこと一言も書いてなかったが」

 

「サプライズの方が楽しいって言ってたからそうした方がいいかなって…」

 

「生徒たちを襲った者たちに見覚えがない」

 

「皆にもいつもと違う服に着替えてもらったから…そっちの方が雰囲気でるし…あとは新人さんが1人増えたからお披露目しようと思って…」

 

「新人さんって…そんなアイドルグループみたいなことある?」

 

思わず夏油が口を挟んだ。

 

「普通にあるけど。エンティティ様による厳正な審査と事前調査もするし」

 

「…」

 

少女の言葉に夏油は脱力し、夜蛾は次の質問を続けた。

 

「帳を下ろしたのは…」

 

「?、サイレンが鳴ったのは多分私たちのせいだけどそれ以外は私たちじゃない」

 

「あの呪詛師と木の呪霊はなんだ」

 

「えっ、対戦相手と的じゃないの?高専の生徒 vs 卒業生の呪霊狩り大会かと思ってたんだけど」

 

「違う。仮に呪霊狩り大会ならなぜ生徒たちを襲った」

 

「私たちが参加したら三つ巴になるでしょ?的の呪霊狩るより対戦相手の数を減らしていった方がよくない?」

 

「良いわけないだろう」

 

節約のため28℃に設定されていた休憩室の空調設定を誰かが18℃まで下げ、空調が唸る音が部屋を満たす。全員がその音を聴きながらぐったりとしていた。

高専の学生はもちろん、偶々高専にいて巻き込まれた呪術師もいる。幸い家入に治療され怪我は残っていないが皆疲れていた。壁に凭れている恵はまだマシで、汚れることも気にせず床に寝そべっている者も多い。

夜蛾は少女に経緯を聞くと、深いため息を漏らした。五条は生徒たちに縛りあげられ、炎天下の中、木に逆さ吊りにされている。その姿は休憩室の窓からよく見えた。

 

「……今度からはこちらに先に連絡をしてくれ」

 

「なんか大騒ぎになっちゃったみたいでごめんね」

 

眉をハの字にして謝る少女に夜蛾は脱力した。夜蛾の代わりに夏油が答える。

 

「いや、全ての元凶は悟だから…」

 

「夏油せんせー、あの馬鹿の写真と携帯番号、出会い系の掲示板に載せていい?」

 

菜々子がそう言うと方々から意見が飛び出す。

 

「ついでにバイでドMですって書いといて」

 

「あいつにそんなメンタル攻撃効かないだろ。あのまま一晩放置しておいたらどうだ」

 

そんなことを話しあっている皆の視線に気が付いた五条がどういう風に解釈したのか、まだまだ楽勝とばかりに屈伸しだし、更に火に油を注ぐ。

 

「誰かジンギスカンキャラメル持ってないか?」

 

「寮の談話室にあったぞ。ついでに自販機の上に放置されてる缶でまだ中身入ってるのあったから飲ませたらどうだ?カルピスあたり超おすすめ」

 

「寮に行くなら冷蔵庫にある生肉も一緒に持ってきて」

 

「真依、射撃の的に使えよ」

 

「嫌よあんなの。それよりここの保管庫にはファラリスの雄牛置いてないの?」

 

「……夏油先生、あの人の財布持ってない?」

 

そう2人に訊ねたのは美々子だ。鳥刺し事件で苦しんだ1人でもある。夏油は確かに五条が生徒たちに簀巻きにされる前にスマホなどの貴重品を五条のポケットから拝借していた。一応スマホや鍵は高専の備品だからだ。

 

「あるけど何するんだい?」

 

「あいつの金で打ち上げ」

 

「!、ザギンでシースー!」

 

「ビフテキ!」

 

「鉄板焼きの店がいい。伊勢海老食べたい」

 

「予約してないとこの人数難しくない?」

 

「……うっわ、パラジウムカードかよ……誰かカードの暗証番号知ってる奴いるか」

 

「俺、知ってますよ」

 

交流会前の険悪さは既にない。東京校だけでなく京都校の学生からも意見が出ている。

 

「……お詫びとしては微妙だけどジュース飲む?」

 

高そうなお店の名前がぽんぽん飛んでいる中で言うのは少し恥ずかしいが、一応詫びはしておこうと、少女はお中元で家に届いたジュース缶のセットを影から取り出した。真希がオレンジの絵が描かれた缶を手に取り言う。

 

「あいつの前で飲んでやろうぜ」

 

流石に炎天下の中で逆さのまま放置されるのはさすがの五条もダルいらしく、冷えたジュースとおいしそうに飲んでいる生徒に囲まれると鮮魚のように跳ね回った。

 

「えー、いいなー、僕もジュース飲みたーい!」

 

「ほら皆、車用意できたみたいだから行くよ」

 

夏油が生徒たちに声を掛ける。

 

「えっ、傑!待って、皆どこ行くの!?」

 

「焼肉。―――悟、今月のカードの請求額楽しみにしてて」

 

「待って!!僕も!行く!!!」

 

 

皆で叙々苑に行った。

 

 

 

 

 

じゅうじゅうと焼かれていく肉を前にしているにも関わらず加茂は自身の食欲が失せるどころか吐き気を催していた。原因はわかっている。目の前の少女が原因だ。昔蜘蛛の巣が張っている床下から見えた姿より成長しているがそれでも西宮と同じかそれより小さい。人間とは思えない。呪霊ではないなら妖怪かも知れない。世界は驚きに満ち溢れている。そうでなければ未だ鳥肌が立っていることの説明が付かなかった。同じテーブルの東京校の双子がなぜそんなに目の前の少女に楽しそうに話しかけることができるのか理解できない。

 

教員たちは話し合うことがあるのか1つのテーブルに固まっている。隣のテーブルの東堂と虎杖は競争でもしているのかと思うほど騒がしい。真依は文句を言いながらも真希と同じテーブルについていて動きそうにない。

 

「―――おい、なぜ1度にそんなに大量の肉を焼く」

 

「ミスジ嫌い?もしかして野菜食べたかった?追加で注文する?」

 

「そう言うことではない。食べきれる量を焼けと言っているんだ」

 

「あ、エンティティ様、これ焼けたよ」

 

少女はそう言って食べごろになった肉をごっそり皿に入れ、たちまち肉の山ができていく。影から蜘蛛の脚のようなものが伸び、瞬時に皿の肉をすべて掻っ攫ったのを見て加茂は気が遠くなった。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。