比翼連理の飛翔伝   作:シュイダー

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盾が守るもの、槍が貫くもの、剣が収まるところ

 パチッと瞳を開く。

 目が醒めた瞬間から、赫昭の意識は微睡(まどろ)むことなくはっきりする。寝起きが悪いことなど、よほど疲労している時でなければまずあり得ない。酒も人並外れて強く、ほかの者が翌朝二日酔いになる量の酒を呑んでも、赫昭はいつも同じ目醒めである。二日酔いも経験したことはない。

 今朝の目醒めは、いつにも増してよかった。躰が、なにかを感じとっている気がする。どこか待ち遠しいという気持ちがあった。

 身支度を整え、部屋を出る。毎日というわけではないが、見回れるところは可能な限り見回るように決めていた。まだ早朝ということもあって、当直の兵士以外の人影は少ない。

 城壁の上に出た。空を見上げる。いい天気だ。遠乗りにはもってこいの日だろう。赫昭自身はそれほど趣味というわけではないが、いま現在、この長安を目指しているだろう二人は、二人の時間が合えばなにかとそれを行なっているほどに好んでいた。

 李岳と呂布が洛陽を発ったという報せはしばらく前に届いている。真っ直ぐ来るのであれば、もうすでに着いているころであるが、のんびり旅をしているようで、まだ二人は姿を見せない。

 そろそろ梅雨時になる。さすがにその前には来るとは思うが、ちょっと心配になってきた。

「っと、いけない、いけない」

 自分が心配することではない。いや友であり仲間である二人を心配するのはなにも間違っていないだろうが、逆に言えばそこまでの関係なのだ。二人には二人の歩調がある。李岳も呂布も、二人で穏やかに過ごすことをずっと待ち望んでいたようだし、二人で平穏を噛み締めているのだろう。

 胸が、ちょっとだけ痛くなった。赫昭にとって李岳は、敬愛する主君であり、仲間であり、友であり、同志であり、想いを寄せる男性であった。愛していたのだ、と思う。それを伝えることはしなかった。

 想いを伝え、李岳が赫昭の身を慮るようになったら、赫昭を死地に追い遣ることができなくなったら、自分はそれこそ後悔するだろうと思った。赫昭にとっては、李岳を守ることこそが本懐だった。

 『盾』として、この人を守り続けるという栄誉だけは、決して手放してなるものか。そう思った。そのことを後悔したことはない。近くに居れずとも、この方を守ることはできる。己の責務を全うするのだ。その決意のままに闘い続けた。

 曹操との最後の決戦の時、赫昭は遠く長安より、李岳に呼び戻された。李岳の指揮の下で再び闘う。待ち望んでいたことだった。

 そこで、李岳と呂布を見て、赫昭は己の役割を再び思い定めた。李岳の身と心を守る。彼のそばでそれを行なうのは、呂布に任せた。赫昭は遠くで、陰でそれを行なう。自然と、そう思った。

 李岳の心を守る。失えば、彼が壊れるであろうものを、守る。

 敬愛するかつての上司であり、李岳の母である高順。恋敵であるとともに信頼する友である呂布。

 この二人だけは、なにがあっても絶対に死なせない。そう思い定めた。

 二人への個人的な感情ももちろんあるが、それ以上に李岳の心を守りたいという想いがあった。この二人を戦で()くしたら、李岳の心が救われることは永遠になくなる。そう思った。誰が亡くなっても李岳は悲しむだろうが、それでも前に進むことはできるだろう。悲しみを力に変えることができるだろう。だが、この二人を失くしたら、李岳はきっと壊れてしまう。その確信があった。

 かつて、『丁原』が死んだと思うしかない事態になった時、李岳の精神は明らかに壊れかけた。なんとかギリギリで持ち直したと言えたが、無理をしていることは明白だった。どこか荒んでいると感じていた言動の荒み方が、加速していった。

 呂布が陣営に来てから、それはなくなった。正確には、反董卓連合との初戦、騙し討ちを受けたあと、李岳が昏睡状態になって目醒めてからであるが、その騙し討ちを受ける直前に呂布と対面したというのがなにかきっかけになったのではないか、と思っている。それに、呂布が来てから李岳がどこか明るくなったのは間違いなかった。

 李岳と呂布が互いを大切に想っていることも、呂布が李岳にとって特別な存在であることも、すぐにわかった。赫昭だけでなく、陣営の全員がそうだろう。なにせ、彼女が来た日の夜、二人だけで外に天幕を張って寝泊まりする、などということをやったのだ。初日だけであったが、李岳には大変珍しいわがままで、李儒などは妄想逞しくしていたほどだ。

 それに対し、目くじらを立てる者はいなかった。少なくとも、そのことに対する不満が赫昭の耳に入った記憶はない。李岳が普段から自分を押し殺して職務を遂行していることは、ある程度の立場以上の者はみんな知っている。そんな彼のちょっとしたわがままは、その内容もあってむしろ微笑ましいと見られるものだった。

 それから呂布は、常に李岳の隣にいた。職務内容を考えると実際にはそこまでではなかったのかもしれないが、あの二人の心は常に寄り添い合っていたのではないか、と思う。それを羨ましく感じたことは一度や二度では利かないが、では自分に呂布の代わりができるかというと、間違いなく無理だったろう。武はもちろん、在り方も。

 曹操軍との決戦の時に見た呂布の力は、怖気すら感じるものだった。李岳を苦しませる曹操軍に対して怒りと殺意のままに武を振るい、たったひとりで敵の戦線の一点を破壊した。人にかなう技ではなかった。さらには、曹操軍と孫権軍の武将、合わせて三人を同時に相手して圧倒し、なおも戦線を破壊していたのだ。怒りと殺意に呑み込まれた呂布は、後退の指示すら無視し、さらに殺そうとしていた。

 獣のように闘う呂布を赫昭が止められたのは、ひとえに李岳への想いあってこそだった。李岳の心を守る。その一心からだった。

 そして呂布もまた、その凄まじい力が李岳への想いゆえなら、止まったのも李岳への想いゆえだった。おまえまで死んだら冬至様がどうなると思う、という赫昭の叫びに呂布は理性を取り戻し、獣のように闘っていたことを悔いていた。

 果たして戦は終わり、司馬懿の企てによって李岳は終わらない闘いから開放された。当然ながら赫昭もまた、その企てに賛同した。李岳の指揮の下に闘うことが叶わなくなるのは寂しいが、彼の心を守るのが赫昭にとっての最優先事項。司馬懿の目的を考えれば、拒否することなどあり得ないことだった。

 ひと通り見回りを終えると、朝食のあと、書類仕事に移った。

 書類仕事は、昔に比べれば多少はよくなった。一枚の書面を読み解くのに半日かかっていたころが嘘のようだ、と思える程度にはなっている。それでも、やはり書類仕事は苦手だった。兵の調練や、躰を動かす方が性に合う。それでもやはり、仕事は仕事だった。苦手だからといって全部文官に丸投げするわけにはいかない。

 思えば、李岳が執金吾だった時は、それらを全部李岳に任せてしまっていた。非常に申し訳なく思う。穴があったら入りたくなるが、ほんとうに穴に入ると職務放棄になるので勘弁して貰うしかない。

 特にこれといったこともなく昼を回り、書類仕事がひと段落したため再び見回っていると、そろそろ夕刻になるというあたりで、副官が呼び掛けてきた。

「お二人が、参りました」

 その言葉に眼を見開き、頷いた。先導に従い、歩き出す。

 しばらく歩くと、見慣れた二人の姿が見えた。李岳と呂布。赫昭に気づいたのか、二人が軽く手を挙げてきた。思わず手を振って返していた。

 近づく。胸の鼓動が激しくなっていた。

 久しぶりに見る二人の顔は、特に李岳の顔は、いままでに見たことがないほど穏やかな顔をしているように思えた。

 これが、本来のこの人の顔なのだと、赫昭は感じた。傍らに寄り添う呂布とともに、穏やかに在る。これが、本来の二人なのだと、赫昭は感じた。

 かすかな胸の痛みと、それを打ち消すほどに大きな安堵を覚えた。

 これから二人は、長い旅を往く。困難は数多くあるだろうが、それでもこの二人ならきっと大丈夫だと、赫昭は思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 硬いもの同士がぶつかり合う澄んだ音が響き、片方が持っていた得物が宙に舞った。剣。陽の光を照り返し、クルクルと回りながら落ちてくる。張遼も含めて、二人の試合を見守っていた者たちは眼を瞠り、それを視線で追いかけた。交差した二人の間で、剣が大地に突き立つ。

 二人に視線が集まった。互いに背を向けるような恰好で、得物を振り抜いた姿勢で立つ二人、高順と馬超。高順の手に剣はなく、馬超の手に槍は残ったままだった。

 かつて潼関の戦いで、高順と馬超は一騎討ちを行なった。その時の決着を彷彿とさせた。

 違うのは、今回の勝者は、その時と異なるということ。

「勝った」

 二度、三度と呼吸する間を置いて、馬超が呟いたのが聞こえた。

 馬超は槍を持ったまま、ぐうっと拳を握り締め、溜めたかと思うと、思いっきり天に拳を突き上げた。

「勝ったぞおおおおおおおおーーーーーーーーーっ!!」

 馬超が吼えた。将も兵も関係なく、歓声が響き渡った。

「やれやれ、最後の最後にこうも見事に一本取られるとはな」

 言ったのは、高順だった。悔しさよりも、嬉しさの方が勝っているように見えた。

「まあ、これで私も安心して引退できる」

「おい、桂。まさか、最後に花を持たせようとか考えて、手を抜いたりとかしてないだろうな!?」

「馬鹿を言うな。全力でやったさ」

「ちゅーか、そういうのは立場が逆やろ。引退する方が手を抜くとかはやらんやろ」

 曹操との決戦で重症を負った高順であるが、傷はすでに癒えた。傷の深さと年齢もあって、以前ほど長く闘い続けることは難しいとのことだが、短時間ならばそれまでと変わらない動きが可能だそうだ。実際、今回の立ち合いも、張遼の目にはこれまでと変わらない動きだった。

 馬超が、高順を超えたのだ。高順を師と仰ぐ張遼としては、なんとも言い難い悔しさのような感情もなくはないが、嬉しそうな高順の顔を見るに、それを言うのは野暮というものだろう。

 張遼もまた、高順を超えて久しい。軍略においては、『陥陣営』と異名されるほどにすさまじい高順にはまだまだ及ばないと感じているが、個の武においては張遼が大きく超えた。馬超と張遼の実力は、そう大きく変わらない。自分で言うのもなんだが、総合的には張遼の方が馬超を上回っているだろう。馬超が高順に一度も勝ててなかったわけでもないし、戦績としては馬超が勝ち越していると言っていい。

 しかし、高順に対してこれほど見事に一本とったのは、張遼も馬超も一度あったかどうか。それを、ここで魅せてくるとは。

 そう思うと、血が滾ってしょうがなかった。馬超に負けてなるものか。

 師匠を超えることこそ弟子の務め。

 自分は、あなたのおかげでこんなに強くなれました、という感謝の気持ち。

 それを実際に魅せることこそ、弟子としての、師への恩返し。

「よっしゃ、桂様、次はウチと勝負!」

「おいおい、霞。私は翠とひと勝負終えたばかりなんだぞ。少しは老体を労れ」

「そうです。次は私です。母上に、娘として成長を見ていただきます!」

「珠悠。おまえもか」

「ふむ。では、その前に私がお願いしようか。引退前に、この『常山の趙子龍』の槍さばき、とくと目に焼きつけて貰わねば」

「ちょ、待てや、星っ、どさくさに紛れて順番抜かそうとすんなや!?」

「えーっと、一応、私も一本、お願いしようかなー。お姉様に負けてらんないし?」

「私も手合わせ願いたい。あのようなものを魅せられて、動かずにはいられん」

「す、すみません、私もお願いします。華雄さんから受け継いだ大斧を、見て欲しいです。すみません!」

「たんぽぽ、凪殿、藍苺まで。まったく。おまえらときたら。引退前に私を過労死させるつもりか?」

 言いながらも、高順は楽しそうだった。

 李岳の追放処分の話が出たあと少しして、とある医者が洛陽を訪れた。

 かつて死の淵にあった高順を救ったという、李岳が探していた名医、華陀。彼が洛陽に現れ、漢軍の主だった者や、体調がいささか気になる者たちに対して健康診断とやらを実施した。名医の名に恥じない腕前に、多くの者が助けられた。今後も定期的に健康診断は実施するとのことである。

 健康診断のあと、高順は引退することを表明した。

 火種はあっても、天下泰平と呼んでも差し支えないほどに情勢は安定した。これ以上、高順が闘いに身を置く必要はない。旅立つ李岳たちを安心させるためにも、高順は引退することを決めたようだ。

 李岳と呂布が旅立つまで、時々ではあったが高順は、李岳たちと家族水入らずで過ごす時があった。李岳と徐庶はもちろん、呂布もである。呂布は高順を、お母さんと呼んで慕っていた。呼んでいたのは、はじめて会った時からであるが、とにかくみんな心安らかに過ごしていたようで、翌日などはほんとうに高順かと思うほどに優しい表情を見せていた。

 ともあれ、李岳と呂布は旅立ち、高順もそろそろ引退を、と考えたようだった。

 張遼と曹操に高順がそれを伝え、せっかくだからという曹操の提案で、高順の送別会、兼、高順による最後の立ち合い稽古が開催された。高順は呆れながらもそれを受けた。場所は洛陽近くの野営地である。軍務もあるため希望者全員参加というわけにはいかなかったが、それでも高順に世話になった者の多くが、なんとかそれに参加できるよう調整していた。

 一番手は、馬超が強く希望した。傍目にわかるほどに闘志を漲らせていた。

 短くも永い対峙。

 場に充溢する闘気。

 勝負は、一瞬だった。

 馳せ違い、高順の剣が飛んだ。

 見事な、一戦だった。

 あの立ち合いを見て、心沸き立たない武人がいるものか。二番手は譲らん。

 そんな勢いで将兵問わず次々に立ち合いを希望し、途中から高順相手だけでなく希望する者同士での立ち合いも野営地のあちらこちらではじまり、気づけば夕刻。そのまま宴となった。李岳の送別会、というのもなんであるが、あれほどに盛大にはしない。高順が断ったし、財政を管理する陳宮も、さすがに年内でこれ以上派手にやるのは無理、と悲鳴を上げた。

 それでも、可能な限り食事と酒は振る舞われた。

 あちらこちらで笑い声が響く。

 張遼も、高順をはじめとする主だった者たちとともに食事と酒を楽しんでいた。

「しっかし、西かあ。いまさらですけど、ほんまに大丈夫なんでしょうか」

「なに、あの二人なら心配ないだろうさ。立場があった時とは違って、恋がいれば冬至は無理せんだろうし、恋もよほどのことがなければ冬至を心配させるようなことはせんだろう」

「とかなんとか言っちゃって、ほんとは心配なんでっしゃろ?」

 む、と高順が押し黙った。

「ええやないですか、母親なんですから。息子とその嫁さんの心配したって、誰もなんも言いませんて」

「母親だからさ。子どもが誇れるような、恰好いい親でいたいっていう見栄ぐらいある」

「それ、母親の見栄とちゃう気がするんですけど」

 どっちかっていうと父親の見栄やないですかね、それ、と張遼は呆れて言った。

 フッ、と高順が苦笑した。

「まあ、母親らしい真似なんぞ、ほとんどした憶えがないしな。私が教えたことといったら、剣ぐらいのものだ」

 少し自嘲しているようにも見えたが、誇らしいと言ったふうでもあった。

「おまえは、よかったのか?」

 高順が、静かに訊いてきた。

 穏やかになったなあ、と張遼は思った。昔はもっと苛烈だった、と思う。思い遣りはもともと強い人であったが、それを表に出さない人だった。

 ただ、失望したなどということは決してない。昔も恰好よかったが、いまはそれに親しみが増した。そう思う。

 高順の言葉に張遼は、愉快なものを聞いたと声高く笑った。

「心配だからって、あの二人についてくとかはさすがにできませんし。あの甘々な空気。苦ーいものが欲しくなってかないませんわ」

「そうか。そうだな」

 高順が優しく笑った。心の内を見透かされた気がして、それを誤魔化すように、張遼は注がれた酒をひと息に呑んだ。

 李岳についていく。それを考えたことがないわけではないが、それは駄目だろうと思った。

 李岳の隣には、呂布がいた。二人の間に割って入れる気はしなかったし、二人の邪魔をしたくもなかった。張遼は、李岳も呂布も大好きなのだ。

 李岳の心には、ずっと呂布がいた。

 匈奴の侵攻を止め、洛陽で暗闘を続けていた時から、李岳はある一定の線から人を踏みこませないようにしていると感じていた。

 信用も信頼もされていただろうが、心の奥底に張遼や赫昭を踏み込ませることはなかった。仲間や友としての線引きから踏みこませることはなかった。

 そこには、すでに誰かがいた。それは侵させないとばかりに、線引きが為されていたという気がした。そんな間合いのとり方だと感じた。李岳が『丁原』の死を受け入れ、この国を守ると張遼たちと誓い合ってからも、その一点だけは変わらなかった。

 呂布が陣営に加わった時、こいつがそうか、と思った。思うところがまったくなかったわけではないが、最初に真名を告げられたことで、それはひと欠片も残さず霧散した。張遼だけでなく、主だった将全員に告げられたのだ。

 会ったばかりの者に真名を預ける。すなわち無条件の信頼。それを受けて、隔意を持てる者などいるはずがない。口下手で無愛想だが、心優しい少女だとすぐにわかった。李岳が大切に想うのもわかる。武人としての対抗心はあったが、嫌うことなどできない、できるわけがない、と思うほどにいいやつだった。

 李岳は、呂布を特別大切にしていた。戦場でも常に呂布を気遣っていた。露骨なものはない。呂布の強さならもうちょっと無理ができるだろうなと感じさせる程度のもので、充分危険なところに投入する。それゆえに不満を覚えたことはない。

 むしろ、あの強さは、李岳の隣で彼を守るために振るって貰った方が安心する。なにかと無茶をしたがる李岳の身を守るのも含めて、ともに本陣にいて貰った方がいい、と思うこともあった。敵を叩き潰すのは自分たちの仕事だと、二人はそこで黙って見てくれていても構わないと、そんな気概で闘った。

 二人は、血を好まない。二人、方向性は異なれど誰よりも強いくせに、血に酔う趣味がない。そんな二人が無理に闘う必要があるのか。李岳の指揮下で闘うのは大歓迎であるし、呂布とともに闘うのもやはり頼もしくて大歓迎だ。だが、どうしても二人に闘って欲しいかと問われれば、悩み抜いた末に首を横に振るだろう。

 張遼は、血が好きだ。仲間の血は嫌だ。だが敵の血は大歓迎だ。敵が血を流すのはすなわち、仲間が流す血が少しでも減ることと同義だからだ。自分が血を流すのも厭わない。仲間を守るためならいくらでも殺し、自分が血を流す。(いくさ)(びと)である張遼の本懐である。

 そんな血なまぐさい自分が、安寧を望む李岳と呂布の旅についていっていいわけがない。

 きっと二人は、そんなことと気にしないだろう。張遼が気にするのだ。それに、張遼自身、そんな安穏とした旅に我慢できなくなるだろう。戦がしたくなる。闘いたくなる。きっと、穏やかな旅に()んでいく。それがわかっていて、二人についていくことなどできようか。

 張遼は戦人だ。闘うのが仕事であり、生きがいだ。乱世を望みはしない。無辜の民が死んでいくことなど求めない。仲間が死ぬのは嫌だ。だが闘わなくてはならないのなら、張遼は自ら望んで戦場に立つだろう。

 張遼は、老いさらばえ、躰の自由が利かなくなるまで戦場に立ち続けると決めていた。

 天下泰平に近づいたと言っても、火種はある。戦は起こり得る。その時は、神速の『槍』と謳われた自分がいの一番に駆け、敵を貫く。李岳と呂布、友たちとともに守り抜いた国を守るために闘う。

 いつか二人が戻ってきた時に、おかえりと言うために。

 二人と守った国は健在だぞと、胸を張って言うために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宴もたけなわ、曹操も途中から宴に参加し、歓談は続いていた。陳宮も一緒に来て歓談していたのだが、疲れていたのだろう、張られた天幕でひと足先に眠りに就いた。

「空想を楽しんでみましょうか」

 ふと思いついたように、曹操が言った。

「空想?」

 高順が訊くと、曹操が頷いた。

「麗羽との戦の前、冬至と恋が私の陣営内に来た時、そんな愚にもつかない話をしたのよ。ここであなたを殺せばいろいろと楽になるかしら、ってね。それに対する返答がそれ」

「自分も同じことを考えていた、とでも言ったかな、冬至は?」

「当たりよ。まあ、お互いにそのあと自分たちが滅亡するだけって結論だったけど」

 ともかく、と曹操は咳払いした。

「もしも冬至がいなかったら、天下はどうなっていたのかしらね」

 張遼が、いささか気分を損ねたように鼻を鳴らした。

「例え話にしても、あまり愉快な話題やあらへんな」

「他意はないわ。ただ、間違いなく天下の趨勢は変わったでしょう」

「ま、そらな。とりあえず、匈奴の侵攻でえらいことになってたやろうな」

「それに乗じて涼州も侵攻して来たりね」

「おい華琳、だからなんでうちをすぐに侵略させたがるんだよ!?」

「いや、常習犯だし」

「だから、言うなっ、たんぽぽ!」

 従妹の馬岱の言葉に馬超が叫ぶ。みんなで笑い出し、歓談とも議論ともつかぬものがはじまる。

 董卓はどうなっただろうか、反董卓連合が結局結成されていたら洛陽は保っただろうか、曹操は、袁紹は、孫呉は、公孫賛は、ひょっとしたら劉備あたりが台頭していたかも、などなど、歴史のもしもを語るという、さほど意味のない、しかしそれゆえにいろいろと考察しがいのある話でそれぞれの持論が展開されていった。

 李岳がいなかったらどうなっていたか。母親としては考えたくないことだが、ふっと思い浮かぶことがあった。

「巡り合わせ次第だが、恋のやつを娘として引き取るなどしていたかもな」

 高順がそう言うと、みんな眼を瞬かせた。

「娘、ですか?」

「以前、冬至と恋に聞いたのだが、恋は暮らしていた村を賊に襲われ、家族が散り散りになり、周りから疎まれ村を出て、流浪の末に匈奴にある野山に流れ着いたらしい。セキトも含めて、家族だという動物たちを養うために、冬至は結構無理していたと聞いている」

「それが、なにがどうして娘に?」

「冬至がいなかったら、匈奴で暮らしていくのは無理だったろう。あの当時の匈奴は、ごく一部を除いて漢人に隔意を持っていた。恋の性格では交流もおそらく難しかった。食料の調達、生活することすら、ままならなくなったろう。となれば、彼女が行く先は」

「晋陽の方、かしらね」

「ふむ。禄を得るために仕官してくる、と」

 曹操と趙雲の言葉に頷く。

「ああ。実際、冬至も最初、恋にそう提案したらしい。もっとも、冬至はすぐにそれを撤回し、冬至本人が世話するようになったそうだが」

 ふむ、と趙雲がなにか考える仕草を見せた。

「恋が仕官してきたら、どうしてましたかな?」

「間違いなく受けたな。そして、娘にしていたという話に戻る」

 もっとも、と軽く息をつく。

「私は冬至と違って、恋を闘わせることをためらわなかっただろう」

「あの武を見れば、誰だって同じことをするでしょう。僻地で逼塞していい才ではないわ」

(のう)(ちゅう)(きり)

 趙雲がボソッと言った。視線が彼女に集まる。

「匈奴で恋と会った直後、私も同じことを冬至に言っておりましてな。だが、彼は恋を闘わせることを決して肯んじなかった。駆け引きができない、闘争に向いてないとね。いまでもはっきりと思い出せる。人質でも取られれば、彼女はやりたくもない殺しをさせられるだろうと。錐を錐として扱える者がどれだけいるのか、辺り構わず振り回して傷つくのは錐ばかり、血を浴びるのも最後に折れるのも、ととにかく心配で堪らなかった様子」

「ベタ惚れやなあ」

「うむ。まったくだ」

「でも、もったいないわね。当時から凄まじい強さだったのでしょう?」

「ええ。その時に彼女が持っていたのはツルハシでしたが、それですら勝てるかどうかわからない、死を覚悟する必要がある、と思うぐらいには」

「ツルハシで、それほどまでに」

「む、昔からほんとうにすごかったんですね、恋さん」

「常山の趙子龍がそこまで言う腕前。華琳殿の言う通り、もったいないな」

 楽進、徐晃、高順が続けて言うと、趙雲がわずかに眉をひそめた気がした。

「思うのですよ、李岳という将軍は、呂布という武人を使いこなせていなかった、と」

 唐突に、趙雲はそう言った。

「ほう?」

「その心は?」

「言葉通りですよ。彼が彼女を死地に向かわせたのは、知る限りでは華琳殿との決戦のみ。それ以外は、激戦区ではあっても、彼女の力量ならまだ余裕があるところばかりでした」

「そうね。それ以外の戦場で冬至は、生きるか死ぬかという場面に恋を投入することはなかった。いえ、できなかった」

「然様。華琳殿や桂殿が呂奉先を配下にしていたならば、間違いなく李岳よりも使いこなしていたでしょう。李岳は、彼女を大切に想うあまり、彼女を死地に向かわせることができなかった。呂布を武器として遣うことができなかった。これは間違いなく、李岳という将軍の限界であり、弱点でした」

「ちょ、ちょい待ちや、星。そんな言い方」

「華琳殿や桂殿の下で闘う呂布は、あらゆる兵を斬り、将を殺し、陣を踏み潰したでしょう。『人中の呂布』の名に恥じぬ戦果を中華に轟かせたことでしょう。そして」

 趙雲が、皮肉げな笑みを作った。どこか冷たい笑みにも見え、それが自分たちに向けられているような気がした。

「そして、凄絶な死を迎えたことでしょう」

 外界と切り離されたように、この一角だけ音がなくなった気がした。高順も含め、ともに歓談していた者たちが息を呑んだ。背筋がヒヤリとした。その冷たい声音のせいか、言葉の内容のせいか、自分でも判然としなかった。

「いまは、冬至が懸念していた理由がよくわかる。華琳殿や桂殿だけでなく私もそうであったし、白蓮ですら恋の武力をもったいないと評した。呂布の強さはまさしく、振り回してみたくなるほどに良い錐だったのでしょう。ゆえに、思うのです。呂布はきっと、どこかの戦場で死ぬこととなっただろうと。言われるがまま、命じられるままに武を振るうことしか知らず、あるいは状況に流されて闘うことしかできず、望んでもいない殺戮をくり返し、いつしか心が(カラ)となってなにも感じなくなり、血を浴び続けてその身は手に持つ武器と同じく(あか)く染まり、誰からも恐れられ、疎まれ、ぬくもりを与えてくれる者も抱き締めてくれる者もいなくなり、心が凍りつき、壊れ、自らを滅ぼすような生き方をしていたのではないかと、私には思えてならないのです」

 考えすぎだ、と喉まで出かかって、しかしなにも言えなかった。周りの者たちも同じだった。趙雲と呂布は匈奴から出奔した時からの付き合いであり、付き合いの長さと深さはここにいる誰よりも上と言っていい。その言葉は、否定し難い説得力を持っていた。

「しかし」

 趙雲が、綺麗な笑みを浮かべた。慈しみに満ちた笑みに感じた。この乙女がこのような笑顔を浮かべることができるなど、高順は思ってもみなかった。

「しかし、そうはならなかった。恋は死ぬことなく、冬至とともに帰ってきた」

 ふふふ、と含み笑いを洩らす趙雲はやはり、楽しそうだった。

「恋という乙女を真に最強にしたのは、できたのは、彼女を大切に想う冬至という男だったからこそだと、最強の武人ではなく、ただひとりの女として大切に想う冬至という男だったからこそだと、私は思うのですよ。事実、あの決戦で冬至を守るために恋が振るった力は、まさしく人の敵うものではなかった。人の姿をした鬼や獣だと言う者もいましたが、私は彼女を龍と称します。人に化身した龍、とね。不敬かもしれませんが」

 『常山の昇り龍』と異名をとる乙女が、楽しそうに笑った。

「人に化身した龍は、しかし己が龍であることを忘れ、人の身には不相応な力のみが残った。されど(さが)は純粋無垢。如何ようにも染まり得た。世の大半の者は、その力を利用することしか考えられなかったでしょう。闘わせることしか考えられなかったでしょう。普通ならきっと、ただ暴れ回ることしかできない暴龍に成り果てていたでしょう」

 だが、そうはならなかった、と趙雲は言う。

「彼女のそばにいたのは、闘わせることなど考えず、ともに穏やかな日々を過ごすことだけを願った男。彼女を守るために自らが傷つくことを選んだ男。だからこそ彼女は、彼を守るために自らの意思で闘うことを選び、強くなることを望み、誰よりも強くなった。彼女を武器として振り回すのではなく、花のように大切に愛おしみ続けてくれた人のためだからこそ、龍はその真の力を発揮することができた。そして龍は人として、愛する男と添い遂げる。そう思うと、なんとも美しい物語ではありませんか」

 趙雲は、優しい顔をしていた。

 李岳、呂布、趙雲の三人は、公孫賛という共通の友を失う場に居合わせたという繋がりがあった。飄々としていて、おくびにも出さないが、趙雲は李岳と呂布の二人に対して、並々ならぬ想いを抱いているのだろう。

 不意に高順は、自分が言いようのない恥ずかしさのようなものを感じていることに気づいた。なにに対するものか、自分でもよくわからなかった。小さく(かぶり)を振った。

「意外ね。あなたがそんなふうに恋のことを語るなんて」

「泣き方も知らず、膝を抱えることしかできない。そんな姿を見ていますのでね」

 曹操の言葉に、趙雲がそう言って肩を竦めた。

「妹みたいなもの。私はそう思ってますよ。きっと、白蓮もそうだった」

「妹。姉さんがですか、星様?」

 徐庶が言った。徐庶は、李岳と呂布があずま屋に二人で移り住んだあたりから、呂布を姉上と呼ぶようになり、ともに冀州を回ってからは姉さんと呼ぶようになっていた。

 趙雲が、徐庶に頷いた。

「うむ。珠悠も、私を姉さんと呼んでくれて構わぬぞ?」

「それは謹んで遠慮しておきます」

「それは残念だ。それはともかくとして、皆も知っての通り、私と恋は匈奴の地より出奔した時からの付き合いなわけだ。彼女が弱かったころのことも、知っている」

「弱かったころ?」

「さっきと言っていることが矛盾してないか?」

「力はあった。だが、どこか儚く、脆かった。芯がなかった。本人もそれを自覚していて、私と白蓮を前に、劣等感を抱えていたよ」

 もっとも、と趙雲は笑った。

「彼女にはちゃんと芯があった。ただ単に、それを言葉にできていなかっただけだった。匈奴での闘いを終え、冬至の下にすぐに帰ることはできない、変わりたい、強くなりたいとはっきり言った。あの時の彼女の瞳は、忘れられない。それまで儚い光で茫洋としていた瞳が、はっきりとした力強さを灯したあの瞬間はな。蛹が蝶に羽化した、いや龍が目醒めたと、そう感じた」

 趙雲が遠くを見た。どこか寂しそうな、切なそうな、しかし嬉しそうな瞳だと、感じた。

 趙雲が腕組みし、生足が覗くことも気にせず翻すようにして足を組むと、不敵な笑みを浮かべた。いや、どちらかというと、李岳がたまに浮かべていた得意げな表情、ドヤ顔とやらの方が近いかもしれない。

「ま、なんだな。恋は私と白蓮が育てた、と言っても過言ではないだろう」

「ぷっ」

 本気か冗談か定かではない口調で趙雲が言うと、空気が弛緩した。誰ともなく笑い出す。

「確かに、過言じゃあらへんかもな。やっぱり、恋の世話は大変だったん?」

「おう。それはそれは。なんせ、冬至に捨てられた、と放っておいたらずっとそこで蹲っていたのではないかというぐらいでな。それほどまでに傷心中の恋をどうにか引っ張り、幽州まで連れて行ったわけだが、卒羅宇殿、冬至が世話になっていた部族の族長だが、彼から赤兎馬を渡されていなければどうなっていたことか」

「いい馬を見てちょっと気分が上向いた、とかかしら?」

「御明察です、華琳殿」

「単純なやつだなあ」

「お姉様が言えることじゃないと思う」

「確かに。翠様も絶対同じ反応しますね」

「たんぽぽっ、あと珠悠もっ、言うなっての!」

 顔を赤くした馬超が馬岱と徐庶に叫ぶと、また笑い声が上がった。

 そのあともしばらく歓談は続いたが、やがて曹操のひと声で宴はお開きとなった。

 月明かりのもと、高順は夜風に当たりたくなった。野営地を適当に歩き回る。

 周りに人影がないところで立ち止まり、なんとはなしに北の方を見た。

 匈奴の夫のところに身を寄せる。李岳たちにはそう話したが、不安が胸にあった。

 母親らしいことをなにもしてこなかった。妻らしいことも、してこなかった。いまさら、夫のところに身を寄せるのは、ひどく迷惑なことなのではないか。そんな気持ちが、ふとした時に胸を支配する。

「桂殿」

 声をかけられ、ふり向く。趙雲の姿があった。

「どうした、星」

「いやなに、なにやら思い詰めた様子だったので」

 いつも通り、趙雲は飄々としていた。

 思わず苦笑する。食えないやつ。しかし心の奥底には熱いものを持っている乙女。それでいて何気に人の機微に敏い。それが、高順の知る趙雲子龍である。

「星」

「なんです、桂殿」

「いまさらな気もするが、冬至と恋のこと、感謝する」

「さてさて、どれのことやら」

「それこそ、さまざまだな。おまえがいなければ、匈奴の侵攻を止めるための公孫賛殿の救援は望めなかっただろうし、恋も立ち上がることはできなかっただろう。ほかにも、戦場では私も含めて、おまえには何度も助けられた」

「なに、お互い様です。仲間ですからな。それに、もう二度と友は殺させない。そう誓いました。もっとも、その誓いも結局破ることになってしまいましたが」

 公孫賛、そして華雄のことを言っているのだと、わかった。

 大きく息をつく。夜空を見上げた。星が瞬いている。

「大きな戦は終わった。剣を置くと決めた。だが、心のどこかで迷っている」

「ほう?」

 趙雲は、興味深そうに相槌を打ちながらも、急かすことなく耳を傾かせていた。

 自分の半分ほどしか生きていない娘に語ることか、と思いながらも、ほかに語れそうな相手も思いつかなかった。張遼や徐庶、馬超といった者たちに対しては、年長者としての見栄のようなものが先に立ってしまう。腐れ縁の張燕にこういった悩み事を相談するのは、なにか負けた気分になるので抵抗がある。

 その点、趙雲は立ち位置が独特なのもあって、こういったことが話しやすく感じた。武芸者として対等の、自立してここにいる女性だからだろうか。

「私は、武芸一辺倒で来た女だ。冬至を産んでからも軍務から離れることができず、夫に任せっきり。たまに顔を見に行くことはあっても、それも頻繁にはできず、ある程度成長した息子に対してしてやれたのは、剣を仕込むことだけ。我が子が悲しむとわかっていて暗殺に向かい、相討ちで消息不明。生還しながらも、軍から離れることはやはりできず、なおも戦場で人を斬り続けた。こんな女がいまさら身を寄せて、なんとするのだろうな」

 言葉を紡げば紡ぐほどに、なんて勝手な女なのだ、と自嘲するしかなかった。

「剣は、いつか鞘に収め、置くべき物だと思います」

 趙雲が言った。

 見ると、やはりいつもの飄々とした笑みを浮かべていた。

「そして置いたからといって、ずっと置きっ放しにする必要もない。たまには手入れをするために鞘から抜く時もあるでしょうし、振ってみてもいい。ただ、抜きっ放しはよろしくない。きっと錆びてしまうし、場合によっては周りを傷つける」

 趙雲が、笑った。

「いいではありませんか。迷うということは、行きたいからでありましょう」

「それは」

「恋人がいたこともない私が言っても説得力はないでしょうが、帰るべき場所、帰りたい場所があるのなら、帰ればよろしい。帰りたくないのなら帰る必要はないとは思いますが、そうではないのでしょう?」

 天を仰ぎ、再び北に眼をやった。

「ああ、そうだな。私は、帰りたい」

 夫のもとに。そして話したい。私たちの息子は、為すべきことを為したぞと、気高きに(したが)い、立派に闘い抜いたぞと。

 これまでできなかった分、夫婦としてともに過ごしたい。身勝手であっても、その気持ちは抑えようがなかった。

「感謝する、趙子龍。おかげで、決心がついた」

「どうしたしまして。御礼は、メンマと酒で構いませぬぞ?」

「うむ。明日にでも贈らせて貰おう」

「おっと、まさか素直に返されるとは」

「感謝の気持ちだ」

「では、遠慮なくいただきましょうか」

 言い合いながら、それぞれの寝床に向かっていく。今夜は、ぐっすりと眠れるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 匈奴の地を進む。高順に同行するのは、李岳の友である香留靼と、匈奴兵の何割か。香留靼は一旦里帰りで、ほかは任期を終えて交代と、香留靼と同じく里帰りの者が混在している。軍縮に伴い、漢に常駐する匈奴兵も少しずつ減らしていくかたちである。

 息子の友人だからといって、香留靼と特別多く話したことはない。いい機会だと話してみると、会話の内容は剣や馬術、騎射をはじめとする武芸のことと、やはり共通の知り合いである李岳と呂布が中心となった。

「そういえば、香留靼。何度か如月、司馬仲達のところに面会に行ったと聞いたが?」

「ええ。どうしても認めて貰わなくちゃならないことがありましてね。認めて貰えないのなら、友好関係の破棄も視野に入れると半ば脅しもかけました」

「ずいぶん、思い切ったな」

「それだけの価値があることですからね」

 香留靼は肩を竦めた。

「外部の者には決して洩らさないって約束で、語り継ぐのを認めて貰いましたよ。あの二人を語り継がずに、誰を語り継ぐってね」

「冬至と恋か?」

 ええ、と香留靼は頷いた。

「冬至はわかるが、恋はなぜだ?」

「幼い(みなし)()を守るため、そして男の名誉を守るために無謀な決闘を受けた女ですよ。それに、子どもを守るのは女の務め、恐れず立ち向かった呂布の姐さんは女の鑑って、うちの部族じゃ語り草ですよ。ま、呂布の姐さんの方自体は、司馬懿殿はそこまで拘っていませんでしたが」

「恋を語るとなると、相手方の男も話さなくては、か」

「そういうことです。李岳の連れ合いってことでも語られてますから」

 李岳の話は多く、呂布の話は少なかった。呂布との付き合いはそこまで長いわけではないそうなので、それも当然といえば当然である。

 ただ高順は、なぜか呂布の話の方が聞きたくなった。

「ある日突然、女を連れてきたわけですからね。びっくりしましたよ。漢人ってこともあって、最初は身構えるやつも多かったですけど、すぐに馴染みましたね。とんでもない強さだけど、気性が荒いわけでもないし。あとは、特に塩山の件ですね」

「塩山があるのは聞いているが、なにかあったのか?」

「ただでさえ働きっぷりがすごかったってのもあるんですが、崩落が起きたんですよ。俺や李岳は注意して作業の指示をしてたんですが、焦って掘り進めた男がいて、岩盤にそいつが押し潰されそうになった。そこに、ツルハシ二本を手に飛び出したのが姐さんです。降ってくる岩をそれで砕いて、男を肩に担いで助け出した。誰に言われるでもなく危険に飛びこんで、見事助け出したってこともあって、一躍人気者です。本人はだいぶ戸惑ってたみたいですが」

「なるほどな」

「特に女勢から気に入られてましたね。針繕いや酪作りとか、手つきは怪しいけど一生懸命で、無愛想で口下手だけど話しかけられればちゃんと応答するし、山羊や馬なんかの動物の世話は率先してやるし、子どもに対しても優しいしで、女勢からはほんとうに可愛がられてました。歌や踊りを教えられたりもしてましたね」

「おまえもよく見てたんだな。好いていたか?」

「勘弁してくださいよ。ちょっといいかな、と思わなくはなかったですけど、そんな気持ちにはなれませんて。あいつ、すげえ睨んでくるし」

「冬至か?」

「ええ。本人は自覚してなかったんでしょうけど。自分の息子の嫁に、と勧めてくる女勢に対しては眼が笑ってない笑顔を向けてました。まあ、それも多いものではなかったし、疲れたようにそこから逃げ出してくる姐さんは結局、李岳の野郎の方に行くんで、なにがあったわけじゃありませんがね。ふとした時に、やきもち妬いてんなあと思わせるようなそぶりは見せてましたが」

 ハッハッハ、となにか愉快な気持ちになって笑った。

「やきもちか。あの冬至が」

「洛陽では、なかったので?」

「それどころではなかった、というのもあるだろうが、基本的に恋は冬至にベッタリだったからな。女同士で親睦を深める時はあったが。見ていると、自覚していたかはわからないが、恋がやきもちを妬く方が多かったな。なにせ、周りに女が多かった。好意を持っている者も少なくなかった」

「そりゃ羨ましい。男の夢ですね」

「奥方に言いつけるぞ?」

「そいつは勘弁。だけど、選ばれたのは呂布の姐さんか」

「冬至からすれば、選んだという意識もないだろうがな。恋以外には、ほんとうに仲間や友人としか思っていなかったという気がする。間合いというか距離のとり方が違った。踏みこもうとする相手には、牽制してるのかと感じる対応すらしていた時もあったな」

 高順が知る限りでは、多少踏みこめたと感じたのは董卓ぐらいだろうか。

 共犯者という意識がそうさせたのか、それとも静かに寄り添うという呂布に似た気質がそうさせたのかは定かではないが、とにかく彼女だけは多少なりとも踏みこむことができたのではないか、という気がする。ただそれも、呂布を特別に大切にしている李岳の気持ちを翻すほどには至らなかった。

「牽制っていいますと?」

「なんとなくそう感じただけだ。それとは別に、冬至が単身出奔して戻って来てから、冬至と恋の間の空気が変わった気はしたな。あのあたりから周りも、二人に気を遣う空気が強くなった気もする」

 徐庶などは、だいぶそれが顕著になった気がした。呼び方が変わったのはつい最近だが、それこそ義姉に対するような対応になっていった。高順も似たようなものだ。呂布からお母さんと呼ばれるのは、どこかこそばゆく感じた。両親のことはほとんど憶えていないらしく、冬至との仲がなかったとしても、やはり母と呼ばせていたかもしれない。

 呂布が、子どもが出来たと言った時、高順はほんとうに嬉しかった。息子と、娘同然に想っている二人の子どもである。嬉しくないわけがない。それとは別に、李岳が己の幸せや我が身の無茶を省みてくれるようになるのではないか、という期待もあった。自分は子どもが出来ても変われなかったが、それは棚上げした。

 ぬか喜びさせられた。高順たちが存命の内に二人が戻り、せめて成長した孫の顔を見せてくれることは、ちょっと期待してなくもない。

「そういえば、司馬懿殿はどうだったので?」

「さて。正直なところ、仕事はともかく、性格的な部分ではあの二人は噛み合っていない気がしたがな」

 香留靼が、あー、と納得するような声を洩らした。

「まあ、確かにあの性格は李岳とは合わねえでしょうね。あいつ、大人しい割には頑固だし。司馬懿殿もかなり頑固だなと感じました。ぶつかり合って、どちらも退きそうにない」

「そういうことだ。我が息子はあれでなかなかわがままだしな」

「ですねえ。なんせ、何度言っても、死ぬな、絶対に生きて帰れ、って言葉を撤回しませんでしたからね。死ぬ時は死ぬんだから、死ぬべき時に誇り高く死ねと言え、って俺が何回言っても、あいつはそれを拒否した。そのくせ、自分は危ない橋を渡るのをためらわねえから、周りは気が気じゃねえってもんだ。もっと自分を大切にしろってんだ、この石頭め、って何度思ったことか」

「総大将が危険な場所に飛びこむなという司馬仲達の言い分も、総大将が危険を冒さずしてどうするという冬至の言い分も、どちらも間違ってはいないのだがな」

「まったくですねえ。っていっても、匈奴の人間としちゃあ、李岳の言い分に賛同したくなるところですが」

「戦人としては私もそちらに同意したくなるが、母親としては司馬仲達に賛同したくなるのが困りものだ」

 だからこそ、呂布の存在はありがたいものだった。李岳が李岳である限り、どこまでも呂布はついていくだろう。どちらの意見をではなく、李岳を肯定する。

 盲信とは違う。彼女は、李岳が間違った道を選んだら、殴ってでも止めてくれるだろう。表に出すことのない、本人ですら気づけない心の奥底にある悲しみと苦しみすら見抜き、寄り添い、支えるだろう。それができる乙女だ。きっと、そんな彼女がそばに居てくれたからこそ、李岳は李岳であれたのだ。

 ふっと、頭に浮かぶことがあった。先日にも話題にした、もしもの話。

 李岳は、追放処分を受けたおかげで終わらない闘いから解放され、救われた。もし司馬懿が動かなかったら、李岳は暗闘を続けるしかなかっただろう。そうなったら、呂布はどうしていただろうか。黙って李岳を支え続けただろうか。それとも、李岳の幸せはここにはないと国を見限り、彼を攫ってどこかへ一緒に逃げただろうか。

 どちらもあり得る気がした。いや、むしろ後者の方があり得るのではないか、と思った。

 誰を敵に回しても、呂布は李岳を守るだろう。身分や立場などのしがらみは、彼女には関係ない。感情のままに動くのが呂布奉先だ。李岳が心の奥底で助けを求めれば、李岳を苦しめる元凶と判断すれば、彼女は国や皇帝とも闘うだろう。

 その場合、呂布は、国の重鎮を攫った裏切り者として、討たれていたかもしれない。そうなったら李岳は、この上ない絶望を味わうことになったのではないか。

「なにを馬鹿なことを」

 頭に浮かんだ想像を、高順は一笑に付した。

「どうしました、高順殿?」

「いや、馬鹿げたことが頭に浮かんだだけだ。冬至が追放されなかったら、苦しむ冬至を見かねた恋が、あいつを攫って逃げるなどという真似をしたんじゃないか、とな」

「笑えねえ!?」

「やりかねないよなあ」

「いや本気で姐さんはやるんじゃないですかね。まあ、そうなったら匈奴は姐さんにつきますが」

「恐ろしいことを言うなあ。その場合、また戦が起こりかねんな」

「やりたくはありませんが、姐さんがそんなふうに動くなら、本気で岳の野郎がやばくなっている時でしょうから、ためらいはしませんね。友のため、兄弟のためならどこへでも闘いに赴く。それが我らの誇りです」

「司馬仲達、ほんとうにいい仕事をしたな」

 本気の眼をしている香留靼の言葉に、高順は少し冷や汗をかいた。

 呂布が実際にそう動いていたかは想像でしかないが、説得力がありすぎて困る。

 それに呂布と匈奴に加え、かつての李岳軍の何割かも彼女たちにつくだろう。張遼と赫昭と陳宮と『永家』はまず間違いなく、ほかの者たちも場合によっては、そもそも高順も呂布につくことを選ぶだろう。

 自分たちが守り抜いた国と、矛を構える。想像し得る最悪の光景だ。

「まあ、あくまでも想像だ。実際には、司馬仲達のおかげで冬至は解放され、恋とのんびり二人旅だ。起こるはずがないことで気を揉んでも仕方ない」

「ま、それもそうですね。にしても、新婚旅行で遥か西へ、ってまたずいぶんと思い切ったもんだ」

「まったくもって同感だ」

 笑い声が重なった。

 とりとめのない話は続き、同行していた匈奴兵はそれぞれの集落に帰っていく。

 やがて夫、李弁と旧友である卒羅宇がいる集落にたどり着いた。夫と一緒に暮らすために来たと説明すると、彼は嬉しそうに笑った。

 卒羅宇は、香留靼を家に帰し、自身が案内を買って出た。家への道程はわかっているが、夫の様子について多少なりとも聞いておきたい気持ちはあったので、高順もそれをありがたく受けた。

「まあ、なんですかね。余計なお世話かもしれませんが、普通にしてりゃあ、何事もなく過ごせますよ。特に高順殿は武芸も並外れてますし、匈奴の連中も大歓迎です」

 香留靼はそう言って、家に帰っていった。

 卒羅宇と連れ立って進む。

「夫は、どうでしょうか」

「眼はもうほとんど見えなくなっているようなのだが、住み込んでまでの世話は本人に強く断られているので、食事の世話などはやらせて貰っているが基本的にはひとりで生活している。家の中のものは扱いやすいように整えてあるのでそれほど不便はないだろうが、鍛冶仕事だけはやめようとせん。作れる数は少しずつ減っているが、出来に関してはいまだ衰えず、いや、むしろ良くなっているのではないかと思わせるほどだ」

 夫らしい、と高順は思わず笑ってしまった。

 卒羅宇も笑い声を上げた。

「まったく、あいつらしい。いつまでも頑固で困る。さすがに、奥方が世話するとなれば断りはすまい。俺が言うことではないでしょうが、よろしく頼みますぞ」

「無論です。妻としても、夫の意思を尊重していただいた上でそこまで気にかけていただいていること、御礼を申し上げます」

「なあに、腐れ縁の偏屈者の世話などなにほどのこともない。それに、我らが誇り、我らが夢である李岳の頼みだ。断ることなど、匈奴の誇りにかけてあり得ぬことよ」

 照れ隠しのように、卒羅宇が豪快に笑った。言葉の裏に、李弁への友情がにじみ出ていた。指摘するような野暮な真似はしない。夫が匈奴の者として生きたのはきっと、この男との友情もあったからなのだろう、と高順は思った。

 卒羅宇は、かつて匈奴と幾度となく闘った丁原であると気づいていたようだったが、それについてなにも言うことはなかった。匈奴は、強き者、堂々と闘う者に対する敬意を持つ。そこに匈奴も漢人も関係ない。高順も、そこに負い目を感じることはない。感じるのは、彼らを侮辱するのと変わらないのだ。

 これからは、匈奴の一員として、夫婦で生きる。以前は心のどこかで、自分は漢人で、夫は匈奴の人間だということに、引け目に似た気持ちがあった気がした。自分の立場ゆえの悩みもあった。いまは、ない。この北の大地で生きるのに、漢人も匈奴も関係ないのだ、という気持ちになっていた。呂布がそうだったのだ。娘にできて、母にできぬはずがない。

 呂布について聞きたくなったのは、きっとそれを確かめたかったからなのだろう。

 やがて、夫の住む小屋がある山の麓が見えた。ここからはひとりで行くと言うと、卒羅宇は微笑んでゆっくり頷き、ためらうことなく帰っていった。

 山道を行く。岩肌険しい山の中腹に、夫の住む小屋がある。

 遠くにそれを望んだあたりで、高順は馬を止めた。止めてしまっていた。

 ほんとうに、いいのか。そんな弱気がまた、鎌首をもたげていた。ここまで来て、なにを弱気になっているのだと己を叱りつけるも、馬を進めることができない。

「まあた、考え過ぎてるねえ」

 どこからともなく、聞き憶えのある声がした。声の聞こえた方に顔を向ける。高順よりも高いところにある岩場に、その姿はあった。

「ホント、アンタたちは親子だねえ。どうしてこう、アンタも坊やも、他人のこととなると果断なくせに、自分のこととなると思い詰めるっていうか、悪い方に考えこむんだか。もうちょっと自分本位に考えても(ばち)は当たらないだろうに」

「紅梅」

 艶やかな衣装を身に纏った女。黒山賊の頭目にして、諜報組織『永家』の首領、張燕。

 高順にとっては、昔馴染みの腐れ縁である。

「なにしに来た?」

「アンタを笑いに」

 オホホホ、と張燕が高笑いを上げた。

「坊やにはかっこいいこと言っておいて、自分は踏ん切りがつかなくてこんなところで立ち往生。これが笑わずにいられるかってものだねえ」

「ぐぬ」

 オホホホホホ、と張燕がさらに楽しげに笑い、唐突にそれを止めた。

 フン、と張燕が鼻で笑った。

「人前ではかっこつけるくせに、自分だけになるとこれだものねえ。ホント、さっきも言ったけど、アンタら親子はそっくりだよ。だから、こうなるだろうと思って、背中を押しに来てやったのさ」

 ニヤリ、と張燕は笑みを浮かべた。

「好きなことをし、好きに生きる。それこそ人の生きる道さ。気高きに順えって、結局はそれと大して変わりゃしないだろ。自分がしたいことをしな」

「私がしたいことだと」

 そんなこと、決まっている。

 答えずとも張燕は察したのだろう、彼女は低く笑った。

「いくつになってもメンドくさい女だねえ、桂」

「おまえに言われたくないな、紅梅」

 張燕から視線をはずし、馬を進める。

「礼は言っておく」

 言うと、高笑いとともに気配は去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いっそ雁になれたら、いつでも羽ばたき、会いに行けるというのに。

 そう思ったのは、いつのことだったか。

 雁になることはできなかったが、こうして会いに来れた。

 粗末な小屋が見えた。頻繁には来れなかったが、それでも何度もここに来た。男に、夫に会いに。息子に会いに。

 長い道程を往った。後悔は多いが、そればかりではなかった。息子たちの力になれたことは、戦人であったからこそだ。その果てに来たのがここであれば、その道程に恥などない。

 小屋の前で馬を下り、静かに扉を開けた。

 男の背中が見えた。何年ぶりになるだろうか。愛しい背中だった。

 男が、なにかに気づいたような仕草を見せた。

「おかえり、桂」

 わずかの間を置いて男、李弁は言った。

「ああ、ただいま、枝鶴」

 声の震えをなんとか抑えようと努める。効果はあっただろうか。目頭が熱くなっていたが、熱い雫がこぼれ落ちるのはなんとか堪えた。

 李弁が、座っていた場所からわずかに横にどけた。近づき、彼が作った空間に腰を下ろす。

 男の肩に身を預けた。男は揺らがない。ぬくもりが伝わってくる。

 さあ、なにから話そうか。

 自分たちの息子が立派に闘い抜いたことから話そうか。

 息子に寄り添い、支え続けた伴侶のことから話そうか。

 息子が絆を紡いだ仲間たちと、その仲間たちとともに守り、作ったかけがえのないものから話そうか。

 きっと彼は、言葉少なに相槌を打つだけだろう。彼は静かに寄り添うだけだろう。

 それでいい。それがいい。それが、桂の愛した男の在り方なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 


 冬至と恋のイチャコラを書きたくてはじめたはずなのに、なぜこのようなものになったのか自分でもわからない。いろいろな意味で、ぽーさんや李岳伝ファンの皆様方に怒られやせんかと恐々としながらも、男は度胸と投稿させていただく。これはこれで、程度にでも思っていただければ幸いです。

 赫昭はかっこいい人。
 張遼はかっこいい人。
 高順はかっこいい人であり、かっこよくありたい人。
 個人的にはこういう解釈です。

 趙雲殿はちょっとキャラが便利すぎると思う。

 
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