途中にある英語に関しては突っ込んではいけない、いいね?
第十二話
さぁ、フィーバータイムだ! 欲望の赴くままにヒロインに牙をむける一夏! 野獣とした彼を止めるものはなく、また一人、犠牲者が増えていく。新婚という設定ははたして彼を満足させるのか!?
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無機質な白色、水平線の向こう側まで、いや自分が宙を浮いているじょうたいなのでその表現もおかしい。とにかく、目に見える景色一体が真っ白になっている。
「……これは?」
「い……ち……」
微かに声が聞こえる、これは。
「……楯無さん?」
そうすると、何もない空間から彼女の姿が現れる。
「気が付いたみたいだね。よかった、君がいないとどうにもならなかったから」
そういって安堵した表情を見せる。しかし、ここは一体どこなんだ。
「俺達、さっきまで戦っていたはずですよね」
いや、俺は心臓を一突きされて、楯無さんはISごと切り裂かれていた。あの出血量からして恐らく致命傷だろう。そう考えると死後の世界ということになる。
「そうね、そこまで記憶がはっきりしてるなら助かるわ」
「……俺達は死んだんですかね」
死後の世界なんて考えた事なかったが、こんな殺風景というのは、あんまりだろう。これならまだ、閻魔様の元に向かう方がいくばくかマシに思える。
「死んだ……ねぇ。そう言えない事もないけど、一夏君が考えてる物とは違うわ。ここはあの世でもないし、ましてや天国や地獄といったものでもない」
あの世でもない、でも元の世界と言う事も出来ない。そんなものは俺は知らない。そもそも、こんな自分と周囲との輪郭もあやふやな空間を俺は知らない。
「いいえ、貴方は知ってるはずよ。ここは、貴方が観測される前に漂っていた、世界線の狭間と言われる空間なのだから」
「なん……ですか、それは?」
「あなたは元の世界とよく言っていたけれど、それを具体的に思い出してみて。どこか、噛み合わない記憶はない?」
噛み合わない気憶? そんなものがあるはずが。
「……デジャブ?」
時折、覚えのない光景を思い出す事があった。その時は単なるデジャブと忘れてしまうようにしていたが、あれが噛み合わない気憶なのだろうか。
「覚えがあるみたいね。それが、今あなたを形成している人格と噛み合わない気憶よ。例えば、自分や身近な人間の姿かたち、関係が違う気憶」
そうだ、確かに明らかに仲間と親しくなり過ぎていた記憶がある。
「それが、貴方を構成する時に掻き集められた世界線の気憶、その断片よ。実際には貴方の気憶以上のものが詰め込まれているのだけれど、思い出せるのが貴方の人格に沿ったものだけ。時折、何かのきっかけで別のものを思い出す事はあったとしても、自分の記憶と合致しないから、それを自分の気憶と認識することは出来なかったのでしょうね」
それがあなたのデジャブの正体よ、と楯無さんが言う。
「まてよ、じゃあ、俺は……」
「言ってしまえば、貴方はこの世界で生まれたもので、元の世界なんてものはないのよ」
この世界の人間でも、元の世界がある訳でもない。
「なんだったんだよ、俺は」
「でも、この状況は好都合なの。不安定なこの環境下なら、どの世界線に移動する事も出来る。移動と言うよりも、精神をリンクさせる様なものだけれど……」
怒りに身を任せて楯無さんに掴みかかる。
「ふざけるなよ、あんたはそれで良いかも知れないけど、俺にとっては……」
「いいことを教えてあげる。世界線を移動すればその先の自信とリンクする事が出来る。元々がほぼ同一の存在だし、上手く行けばその世界の住人になれるかもね」
そんな事をしてどうなる。いや、どうしたいということもないのだ。結局元の世界なんてものもなかったし、俺の目的なんてものは最初から存在しなかったのだ。
「……他にする事もないし、従えば良いんだろ」
「そうしてもらえると助かるわ、後は頼むわよ」
そう言って、手を解かれる。上下の感覚もないのに、何故か落ちていく様な感覚を覚えた。
気がつけば、俺は見慣れたIS学園を見上げていた。中に足を踏み入れても良かったのだが、特に用もないのだ、それより待たせている相手がいる。
「あんまり待たせると、また怒るからな」
彼女は、この町に新居を作ると言って聞かなかった。あまり豪邸を建てられると面倒なので、建てる家は要相談ということにすると、いつものメンバーが集まって馬鹿騒ぎしながら決まってしまった。なんだかんだ言って、きっちり住む事と景観を考慮した、良い住まいだと俺は思っている。あいつからすれば、こじんまりとして、狭いらしいが、日本らしいと呟いていたからそんなに嫌いでもないと思う。
「ただいま」
扉を開くと、灯りのないリビングが目に入る。どうやら少し出かけているようだ。
「晩飯を作っておくか」
買ってきた材料と冷蔵庫の中身を合わせれば、充分な量が作れる。二人分を作るのは得意だし、明日の朝食にも出来そうだ。
「シチューと白身魚のムニエルと……サラダも作れそうだな」
シチューは少し時間がかかりそうだが、久しぶりの連休なんだ。羽を伸ばしたって誰も文句を言わないさ。
シチューの味見をしているところで、玄関の開く音が聞こえる。エプロンをつけたままだが、迎えに行くとしよう。
「おかえり」
「ただいまですわ」
私服姿のセシリアが旅行鞄を持って玄関に立っている。そっと荷物を預かると、いつも通り靴を揃えて家に上がる。
「あら、今日はシチューですの?」
「あぁ、セシリアが帰ってくるから、これなら食べれるだろ?」
セシリアはそっぽを向いた。
「べ、別に好き嫌いなんてしてませんわ! ただ、初めて食べるから戸惑っただけですのに」
簡単に作れるということで、たこ焼きを準備したら具材を見た瞬間に拒否されたのは結構傷ついた。
「……一夏さんの作るものなら何でも、嬉しいんですのよ」
そういうと甘い口づけを交わす。まだ居間にも辿り着いていないのに、気が早いお姫様だ。
「食事の前に少し、シャワーを浴びようか」
浴室は少し広く、二人が入っても充分な広さだ。最初は大浴場を作るなんて言っていたが、なんやかんやで却下した。掃除する方の身にもなれということで、通常の浴室の1・5倍程、大き目の風呂桶と大人三人が丁度入れる程度の洗い場を設けている。これでも充分手入れは大変ではあるのだが、二人で考えたものだけあって思い入れも一塩だ。
「痒いところは、ございませんか~?」
どこか変な発音なのは、美容院で聞いた言葉をそのまま真似しているからだろう。
「それは頭洗うときだろ……」
ちなみに背中を洗ってもらっている最中である。中々機会はないけど、二人でこの家に入れるときは殆ど毎日だ。ちなみに、セシリアの長い髪はタオルで纏めてある、アレだけ長いと結構手入れも大変なんだと、改めて思い知らされた。
「うふふ、この辺りなんかも、痒くありませんの?」
背中から手を回して、腰の辺りをまさぐられる。準備は万端なのだが、それはそれで面白くない。
「んっ!? んっ、んむぅ……」
肩の横に頭を乗せていたので、キスをするのも簡単だ。
「……生意気な事を言うやつは、こうだ」
「っはぁ、生意気で、ごめんなさいですの」
髪を纏めているタオルを剥ぎ取る。
「やっぱり、セシリアの髪は綺麗だな」
「殿方はいつも、褒めてくれるんですのよ。その気も無いくせに」
セシリアを押し倒すと、扇状に広がって艶やかな髪が彼女の肢体をより際立たせる。
「今のセシリアを見て、昂らない男はいないさ」
「……そう思うなら、行動で、ね」
浴槽から出て、シャワーを浴びる。少し熱いくらいが今の状態には丁度いい。
「セシリアは……」
「Ah……seem to bad」
浴槽からだらりと頭と右腕だけ出している。
「セシリア、あー、Cecilia? Come she outside?」
「Help、Ⅰ need your help」
手だけを上げて、そんなことを呟く。全く、柄にもなく強がってみせるからそうなるんだ。
「I‘ts 3 times in outside、a bathtub and 4 times.The sum total is 7 times.Are we foolish?」
「馬鹿言ってないで、ゆでダコになるぞ」
風呂場から抱えあげると、年頃の女の子らしく軽いかと思ったら、どうにも水気を吸った髪の毛は想像以上のようだ。
「Uh……I poor octopus.」
「はいはい、重いんだから暴れないの」
重いという言葉に、反応する。
「……レディに対して失礼ですのよ」
失礼だからどうだというのだ。この状況において礼儀も何もあったものじゃないと思うのだけれど。お姫様だっこするにも力がいるんだから。
「それで、何か悩んでるんじゃないんですの?」
脱衣所でセシリアを椅子に座らせて髪をドライヤーで乾かしていると、突然そんなことを言い出した。
「……何でそう思う?」
この世界のことで悩みなんか、一つもない。IS学園に通いながら、偶に休みでだらけた生活をするのも悪くない。
「顔に書いてありますわ。玄関で迎えて下さった時から、ずーーーーっと」
それでも、俺には関係ない話だ。
「自分の事となると我がままですわね、いつもそうですわ。私達がそうやってたら、無理矢理にでも踏み込んでくる癖に……一体、何時になったら、私の事を信用してくださるの?」
セシリアの髪を乾かすには時間がかかる。
「……暇つぶしだと思って聞いてくれ」
別の世界で起こったことを、夢だという前置きを置いて伝える。
「……それはまた、難儀な問題ですわね」
相手は白式や紅椿、恐らくはそれ以外のISの能力もほとんど兼ね備えていると考えて良いだろう。
「勝ち目がないんだ、だから諦めた方がずっと早い」
「普通なら、そうですわね」
「普通なら?」
「一夏さんは諦めてないんでしょう?」
違う、諦めたからこんなところにいるんだ。逃げてきたんだよ。
「代わりますわ」
セシリアはそう言ってタオルで髪を巻き始める。そうして俺を椅子に座らせた。
「い、いや、俺はいいって」
俺も乾かすつもりであったが、人の手を借りないといけない程長くはない。
「いいですの、まず敵との戦力差を埋める方法を考えて下さいな」
俺の反論は受け付けないらしい。
「装備、コンディション、それらを整えた後、出来ることはただ一つ」
「出来る事?」
「特訓ですわ。練習、シミュレーションでもいいですの」
そんな事をしてどうなるというのだ。あれだけの戦力差で、全力の零落白夜でさえ通用しなかった相手に、どうしろと言うのだ。
「出来るようになるまで、するんですのよ。幸いな事に相手の戦力は大凡想像できる訳ですし、時間の許す限りそれを行えば……万に一つの勝機が見つかるかもしれませんの」
「それで、万に一つか……」
「一夏さんなら、それで充分ですわ」
そういうとドライヤーの電源を落とす。セシリアの長い髪と違って、俺の方は一分もすれば乾いてしまう。
「さぁ、食事にしましょう。運動も勉強もたっぷりしましたので、お腹が空きましたわ」
「……そうしよう」
そうか、万に一つくらいは、勝機があるのかもしれない。篠ノ乃束という化け物に対抗する手段が、一つくらいは。
長々と読了ありがとうございました。
今回はセシリア回です。もしも、一夏がセシリアを選んだとしたら、という世界線のお話です。
こういう風な妄想をされている方は結構いるんじゃないかな、と思います。ただ私のつたない文章では面白みもないと思いますので、是非をそういった小説をご存じの方は教えて下さいorz
多分お察しだとは思いますが、ヒロイン全員分ありますのでそこまでお付き合い頂ければ幸いです。
もしも、ここまで全部読んでいらっしゃる方がおられましたら、最大の感謝を。