いつか一夏がホモの小説を書きたい(錯乱)
半分冗談ですが、この幼馴染?四人組の話をもうちょっと掘り下げたのってないですかねぇ?
第十六話
ヒロインが一人だと思ったか? 残念、今回は複数でした! しかしながら、エロエロビームは不発気味? 頑張れ一夏! 君なら出来る!
再び白い世界に意識が戻ると、楯無さんの姿が見えた。
「あ、一夏君じゃない、そっちの様子はどう?」
いかにも進展を期待している顔だ。何度か行き帰はしてるものの、然程進展と言えるようなものはない気はする。
「やることは決まりましたけどね、後どれだけかかるかはちょっと把握できないです」
「そう、じゃあお姉さんに話してちょうだいな」
これまで、四人との会話で思いついた事を伝える。
「なるほどねぇ……一夏君としてはあんまり進展はないと思ってるんだね」
「まぁ……結局具体的な解決策は見つかってない訳ですし」
大事なところは他人頼りだ。あまり個人的にも良い策だとは思っていないが、他に考えられることもない。
「言っておくけど、此処に来た時の一夏君と比べる全然違うよ? 小さくても着実に進んで行ってるから、うん、ちょっと大人になった感じがするな」
「大人になったって……なんですか、それ」
別に大人に成りたがっていたつもりはないが、それでもまぁ、少しずつでも進んでいるというのは感じているつもりだ。
「随分と、遠回りな気もしますけど」
「大丈夫だよ、さぁ、次行ってきなさいな」
そう言って楯無さんは手を振る。前と同じように意識が他の世界に落ちていく感覚。今度はどんな世界に行く事になるのか、そんなことを考えていた。
一夏君は躊躇うことなく次へと進んでいった。
「本当に、格好いいね一夏君は……進めない大人もいるっていうのに」
此処から抜け出す方法は、ある程度算段はついた。あとは一夏君が解決策を見つけ出すだけと言っても良い。
「……情けない、なぁ」
いつもの見慣れた部屋から飛び出る。半壊などしてなく、いつも通りの自宅だ。玄関で靴を履いて、扉を開ける。彼女はどこにいるだろうか。
「多分……神社だ」
ここからなら交通機関無しで、歩いても行ける距離だ。逸る気持が足を動かす。ものの数分で鳥居まで辿り着き、そこをくぐった先の本殿の近くにある道場、そこで彼女は珍しく巫女姿で掃除をしていた。
「……どうした、一夏じゃないか」
そこにいるのは間違いなく篠ノ乃箒だ。だけど、なんて声をかければいいのか分からない。
「お前の方から来るなんて珍しいな。こういう事があるなら、偶にする境内の掃除も悪くないな」
この世界では、ほんの数日ぶりだ。なんてことはない。それでも、彼女が彼女らしくあれる世界が、それを見る事が出来る事が、どれだけ特別なのか、考えずにはいられない。
「も、もしかしてこの格好か? これは、その、掃除をするならこの格好の方が……!?」
「箒……」
抱きしめる。竹ぼうきが音を立てて転がる。彼女がいることの喜びを、力いっぱい抱きしめる。
「どど、どうしたというのだ? いきなり、その、いや、駄目ではないが、その……」
「ごめん……ごめんな」
ただただ、俺は抱きしめることしか、出来なかった。
「……分かった。私で良いなら、好きなだけ、泣くが良い」
涙が枯れるまで、箒はただ、そばにいてくれた。
一息ついて落ちつくと、道場の横の居間に通される。ここはもうあまり使われてはいないので、物自体は少ないがきちんと掃除されていて、綺麗に整えられている。箒が気を使ってお茶をテーブルに置く。
「どうしたいきなり、今日の一夏は……特に変だぞ?」
「……特には余計だ」
どう切り出したらいいかは戸惑ったが、事情を話す。どれだけ信じてもらえるかは分からないが、兎にも角にも彼女のIS、紅椿が必要なのだ。ここで嘘を交えても仕方がない。
「分かった、紅椿を渡そう」
「そうか、そうしてくれると……えええ!?」
何のためらいもなく、左手首の鈴をテーブルに置く。
「え、い、いいのか!?」
「必要なんだろう?」
でも、いいんだろうか。流石に個人の要求だけでISの譲渡なんて出来るとは思えないんだが。
「まぁ、その辺りは大丈夫だ。確かにISをもつことの利益は大きいけど、どうにも紅椿は所有権のところで揉めているところはあるし、既存のISの発展のためなら味方の方が多いはずだ」
その言葉に、違和感を感じる。
「箒……お前」
「別に、私も考えていなかった訳じゃない。白式と紅椿の関係性もそうだが、そろそろISから離れてもいいんじゃないかと思ってな。IS学園に通うことで色んな人と出会い、味方になってくれる人も増えたし、何より隣にお前がいる。あれば便利だろうが、無くて困るものじゃ……なくなったんだよ」
元々ISの所為で不自由していた箒だ、そういった考えになってもおかしくはないのかもしれないが。
「束姉さんなら承知の上だ。それに、白式と紅椿には元々そういったコンセプトもあったようだしな。それと、これは私個人の意見だが」
そこで一度わざとらしく咳き込む。
「……これを渡す相手は、一夏、お前が良いんだ」
「箒にそこまで言ってもらえるなら、是非もないな」
俺は単純に嬉しかった。紅椿を渡してもらえた事じゃない、箒がこれからのことを考えていたこと、他の人に頼れるようになったこと、そういう信頼のおける人が現れていた事、何より自分を選びたいと言ってくれた事が、何より嬉しかった。
「姉さんなら、今すぐにでも来てくれるだろう」
そう言うと、俺の端末に着信があった。
『ハロー、いっち~、話は聞かせてもらったよ!』
「どこから聞いてたんですか」
『いっち~さえよければ、今からでも合体の作業に移りたいんだけど、大丈夫かな?』
そこでちらりと箒を見る。もはや我関せずとお茶をすすり始めてこっちを見すらしない。もしかして厄介事を俺に押し付けただけなんじゃ、とも思ったが、今は好都合なのでおいておく。
「こっちの方の研究所に一応申請だしてからにしますんで、後日予定が付き次第、連絡しますよ」
『ん、じゃあ、神社近くに必要なもの持って行っておくね。いやぁ、いっち~と箒ちゃんの成長を見ると、ボクちんも感動だなぁ』
「……そうですね。俺も久しぶりに束さんの顔が見たいですよ、その時には会えますか? 折角だし、千冬姉さんと合わせて、四人で食事でも」
『……うれしいね、どれだけ時間が取れるかは分かんないよ』
「あんまりお店とかいかないでしょ? 神社で鍋でも囲みましょう。俺も作りますけど、箒も上手くなったんですよ」
そこで、束さんの声が一度途切れる。もしかして切れたかと思ったが、そう言う訳ではなかったらしい。
『ほんっと……成長したね。大変なのはこれからになるかもしれないけど、お姉さんはいっち~のこと、応援してるからね。あと鍋はフグ鍋がいいかな』
「また難しい注文を」
『なんとかしてくれるでしょ?』
「勿論、最高の鍋にしてみせますよ」
『ひひひ、楽しみにしてるっ♪』
束さんの声は聞こえなくなった。あの人のことだ、明日にでもロケットがこの近くに着地していてもおかしくないのだが、こっちも準備しておかないといけないことはある。
『……お前はまたそんな身勝手な』
「いや、それは分かってるけどさ。ごめん、千冬姉」
『……手続き自体は箒の方からも進めていた事だ、そう時間もかからん。どうやってするか、だが束に任せるならどうとでもなるだろうが』
一拍置く、千冬姉からすると心配事は別にあるみたいだ。
『いや、まぁいい。手続きは私の方で済ましておく。どうせお前に任せる訳にもいかないだろうからな』
「ありがとう、千冬姉」
『それよりもだ。あの馬鹿を食事に誘うなど……どうなっても知らんぞ?』
「だ、駄目だった?」
『駄目ではないが、覚悟はしておけ。束は見た目よりもずっと大食漢だからな』
それで切れてしまった。どうやら忙しくなると思っていたら、ほとんどの作業を丸投げになりそうだ。
「一夏、終わったのか?」
「いや、千冬姉がやってくれるってさ」
そこでしかめつらをされる。
「まぁ、一夏には出来ない事だろうし、仕方がないか」
「どうせ俺は、計画性がないよ」
どうしたいかばかりで、どうすればいいのかなんて、考えていなかったつけを、身内に押し付けてばかりだ。いくらなんでもこれは、立場が無い気がするが、しょうがない。
「まぁ、手が空いたならゆっくりしていけ。なんなら稽古の相手になってもいいぞ?」
「それもいいけど、先にお茶を飲ませてくれよ」
やりたくないとは言わないが、それは別にIS学園でも出来ることだし、ちょくちょく箒に付き合わされている。此処に来て、って考えるとどちらかというとのんびりしていたい。
「ならば丁度いい、一夏に話してなかった事があったんだ」
箒は手もとの湯呑みを見つめながら、話しだす。
「篠ノ乃神社に纏わる話で、私達姉妹の名前の由来についてだ」
「名前の由来って……箒と束さん、の事か?」
「そうだ。元々、篠ノ乃神社には、色々曰く付きのものが集まりやすいんだ。逆に言うと、そう言う場所に建てられたらしいんだが」
「まぁ、水害が多い所に神を祀ったりすることもあるから、ここもそうなんだろうな」
とはいえ、そんなオカルトを信じている訳じゃないが。それでも、人々の信仰を集めていたというんだから、何かしらの由来はあるだろう。
「簡単に言うと霊魂、だな。神事の時に使われる箒っていうのは、そう言ったものを掃いて場を清めるものなんだ」
なるほど、つまりは箒がそこから名前をとられてる訳か。
「そういう由来だったんだな。ちょっと変わった名前だったけど、凄い名前じゃないか」
「……そう簡単ならいいんだがな。もう少し複雑だったんだ。魂を束ね、括りて箒と為さん、という伝承があってな。一本の木に魂を集めるだけ集めて、一本の神聖な箒を作り上げたという伝承があったんだ」
「そしてそれが今も受け継がれてる、と。そこでどうして、箒と束さんになるんだ?」
箒はさらに沈んだ表情になると、一息おく。
「私達の世代で魂を束ねるのは、小さな赤子だったんだ」
「な……?」
「いつからそう言う風習になったかは知らないが、何世代かに一度、幼少時の名を束、成人してから名を箒として伝承をなぞる、そうなっていたんだ」
「その所為で?」
箒は首を振る。
「それ自体は形骸化したものだったはずだ。だが、束姉さんのやってきたことは知っているだろう? 常人ならざる偉業を成す束姉さんを恐れて、次の子を箒と名付けた。そこで伝承は終わりだ、とね」
本来なら、束さんが箒の名を継いでいたはずなのだ。或いは、世界線によっては二人いないこともあったのかもしれない。
「私が知ったのも、つい最近の事だがな。随分と束姉さんには振り回されてきたと思っていたけれど、一番辛い目にあってるのは、姉さんかもしれないと思わないか」
次の子を箒と名付けた、それだけ聞くと別にどうということはないのだろうけど。この場合は違う、両親から捨てられたようなものだ。束ねる必要はなくなった、完成品は出来あがったのだ、としてしまったのだから。それなら、束さんはどこに行けばいい、神社に居場所なんてなかったはずだ、あの頃からずば抜けて聡いあの人なら、どうしてそういう扱いを受けていたのか、理解していたのかもしれない。
「もしかしたら、私が姉さんの居場所を奪ったのかも……しれないな」
「だったら、俺らで居場所を作ってやろう。その辺の事も食事の時に聞けばいいさ」
「……は?」
箒はぽかんと口を開ける。あまりにも愕然としているので、面白くて携帯でカメラを撮ってやろうかと思うぐらいだ。
「別にそれは箒の所為じゃないだろう? それに、恩返しなり謝罪をしたいなら、形にするべきだと思うし、そうじゃなくても束さんには世話になってるところもあるしな」
「そ、それはそうだが……もっと、こう、私は接し難くなったというか、そういうのがあったんだが」
箒が思う事も分かる。今まで恨んでいたような相手が、実は、なんて言われたら戸惑う事もあるだろう。でも、今から出来ることなんて限られてる、過去は変える事が出来ないし、相手を変えようなんて以ての外だ。なら、する事は単純だ。
「大事なのは、箒がこれからどうしたいか、だよ。それを中心に考えたらいい。ちなみに俺は、色々お世話になった分、恩返ししたいなとは思ってるけど」
「……そうだな、私もそう思うよ」
もう月が高くなり、職員室には自分一人しかいない。事情が事情なのでここで作業を続けているが、資料を纏めるのと提出ようのデータを作成するだけで、ほぼ丸一日使ってしまった。
「こうなるんだったら、山田先生も使っておくべきだったか……」
そうすればもう少し早く終わったかもしれないが、如何せん部外秘の情報が多すぎるのが痛い。作業を終えた解放感から背伸びをしていると、非通知で着信がある。
「私だ、作業は丁度終わったところだよ」
『知ってるよ~、明日から始めて、三日程度で終わらせるからよろしく♪』
「はぁ、随分と楽しそうだな」
いつもテンションが高いが、3~4割増しな声を聞いていると頭が痛くなりそうだ。
『それはですね~、なんと! いっち~がお食事に誘ってくれたからなのですよ♪』
「私からのデートは断る癖にな」
『ふっふっふ、大人の女性には色々と都合があるからね~、仕方ないね~』
まぁ、デートの部分はほぼ罠なので、当然といえば当然なのだが。しかし、一夏の奴、これを食事に誘うとは、大胆になったものだ。
『ちーたんも誘われてるけど、勿論来るよね』
「私はお前達ほど暇じゃないんだ」
『暇じゃないけど、来るんだ?』
この言い方には腹が立つ、がその通りだ。
「……行くよ、どうにも心配事が多すぎるからな」
『ちーたんは心配性だなぁ♪ でも大丈夫だよ、いっち~はちーたんの手を離れて一人立ちしてるみたいだし』
「馬鹿を言え、まだまだ半人前だ。保護者なしで何も出来ないさ」
『え~、そうかなぁ?』
分かっている。一人立ちは言いすぎだとしても、あいつは自分の考えを持つようになってきた。それに行動力もあるし、人望は何故か余らせるくらいに持っているから、結局は私がいなくても大丈夫なんだろう。
「それにな、いつまで経っても、姉は弟の事が心配なんだ。お前もそうだろう?」
『えへへ~、そうだよ~』
だからこそ、嬉しいのか。少し前まで、右も左も分からずにIS学園に翻弄されていたかと思えば、自ら問題に首を突っ込んでいく方になっている。多分、卒業するまでには本当に私の保護は必要なくなっているだろう。
『ちーたんは過保護だなぁ』
「お前ほどじゃ、ないさ」
『いっち~はしっかり者だからね。逆に箒ちゃんは甘えたがりだから、どうしても過保護したくなっちゃう♪』
「教師としては、あまりいい傾向とは言えんな」
『でも、いっち~と一緒なら、ちゃんと成長してくれるって信じてるよ』
そこまで愚弟を信用されても困るが、まぁ、見てる分には問題がある様には見えないしな。
「お前が思う分には勝手だがな、期待に添えなくても落胆するんじゃないぞ」
『うん、期待してる♪』
そこで通信は切れてしまった。全く、何のために連絡をしてきたのか分からない奴だ。
本当に翌日に束さんが来たし、白式と紅椿の合体の作業を始めてしまった。千冬姉も色々と雑務に追われているようだが、これに関しては概ね大丈夫と言っていた。
「絢爛舞踏、零落白夜の重複仕様能力。ダブルコアによる補助機能の向上、遠近戦闘においても既存のISとは比べ物にならない性能になりそうだよ」
「聞いてると本当にぶっとんだ性能ですね」
束さんは振り向かずに答える。
「そうでもないよ、向こうの世界で乗ってるのも同スペック程度じゃないかな。私が整備する以上完璧に仕上げるけど、他の世界線でも、これくらいのものは出来あがると思うよ」
「あ~、やっぱり知ってるんですね」
驚いてはいるが、どちらかというとやはりと思うところの方が大きい。なんならこれも束さんが仕込んだ事ではないかとすら、思う。
「束ねる力が残ってるからね~、それくらいは知ってるよ」
「じゃあ、どうやったら勝てるかも、知ってませんか?」
「この世界のいっち~には無理だけど、向こうの世界だと、複数の世界線の気憶を持ちこめるんだし、経験の量も莫大だから、そう意気込まなくても大丈夫じゃないかな? どういう結末にしたいかにもよるけど」
俺が何を考えてるかまでお見通しの様だ。それ位出来るとは思っていたが、いざそれを目の辺りにするのは正直驚く。
「これの使い方なんかは、言わなくても分かると思うよ。向こうの世界は勿論、こっちの世界だとボクより箒ちゃんやちーたんに聞いた方がいいと思うしね。ただ、ダブルコアに関しては扱いは少し難しくなるかもしれないね」
作業をする手を休めず、箒さんは喋っていた。普段よりどこか、真剣味が増している気がして、これ以上喋る気になれなかった。
「……箒ちゃんを、頼むねいっち~」
「任せて下さい」
間髪いれずに答えて、その場を後にする。鍋の準備をしなければいけないから。
テーブルの上に並ぶのは、フグ鍋、フグの刺身、鯛のあらだき、烏賊の刺身と天婦羅と揃えられるだけ揃えてある。
「……家庭でフグ鍋というのは大丈夫なのか?」
「テトロトドキシンで死ぬ様なたまじゃないだろう」
「そうだねぇ、即効性もないし、死ぬ前に完治しちゃうかな♪」
「お店の方で毒は抜いてもらってあるから、大丈夫だよ」
千冬姉と束さんの発現の人外じみているのは放っておくとしても、毒物をテーブルの上に広げるのは嫌だ、当然だろうけど。
「しかし、束だとこれじゃ足りないんじゃないか?」
「お米は2升炊いて貰ってるけど……」
あと〆用にうどんも用意してある。出汁の予備もあるはあるけど、店一つ潰したという伝説の持ち主には正直足りないとも思う。
「うん? 心配しないでいいよ、いっち~♪ 食べようと思えば全部食べられるけど、皆の分まで食べる気はないから」
「食べれるところは否定しないんだな、姉さん」
実姉の人外っぷりに頭を抱える箒。
「それこそ今さらだろう、そんなことより早く食べよう」
「お酒は食後でいいかな、千冬姉」
「……用意してるのか?」
焼酎と日本酒を幾つか。俺は果実酒の方が好きなので自分の趣味の物を一つ。ちなみに箒はあまり強くはないが日本酒が好みらしい。
「私はねぇ、いっち~が選んでくれたものならなんでもいいかな♪」
「束さんの眼鏡に適うかどうかは分からないですけど、幾つか選んできたんで好きなのをどうぞ」
「いや、一夏……お前達はまだ」
「あ、ビールの方がよかったかな、千冬姉は」
「日本酒で頼む」
千冬姉は即答だった。
「千冬さん、一応教師でしょう……?」
「言って聞く状況でもないだろう。束はともかく、一夏はこれで頑固だからな。どうせ無礼講だ、好きにすればいいさ」
そうして、宴会が始まる。
「束、ISの方は出来あがったのか?」
「うん、完璧だよ。現存するISの能力ならほぼ全て使える形にはしてある♪」
「AICとか、BT兵器ですか?」
「そうそう。もう少し踏み込んだ形でもいいんだけど、まだ時期じゃないかな」
そう言って、フグ刺しを美味しそうに頬張る。とはいえ何枚も同時に食べるものじゃないと思うんだが。
「踏み込んだというと、単一仕様能力のこと、か?」
箒が尋ねる。束さんが言うところが第二段階へのシフトのことを指すのか、単一仕様能力なのかはわからないところだ。
「結局のところ、ISの自立進化の結果だからね。僕としてはどちらも同じ事、ってことになるかな」
「確かに、突き詰めれば最適化を経て発現するものではあるのか」
納得した様に箒は頷く。
「興味本位なんですけど、束さんはどうしてISを作ったんですか?」
それには千冬姉が答える。
「あんまり当てにするなよ、こいつの返答は度々変わるからな」
「もぉ、人聞きが悪いなぁ。限定的な理由で作ってないだけだよ。ただまぁ、一つ上げるとすれば色々見えるようになればなぁ、と思ったからかな」
「色々……見える?」
「或いは空、或いは地中、或いは宇宙……それを見るために必要なメソッドとして開発したもの。それがISでしょ?」
ISのコンセプトとしては正しい。授業ではそう言う風に習ったと思うが。
「それじゃ、自己進化は何のために?」
「何のためだと思う?」
それは勿論、現状以上の物を作り上げる為だろう。だが、その先のビジョンが明確にあるのだろうか。
「そもそも、自己進化に意図的に関与する必要ってないですよね?」
その先の物が明確に意識出来ているのなら、直接それにアクセスすればいい。その手順として必要な工程なら外的な要因で成長させていけばいい。
「そもそも一夏、進化とはなんだ?」
「え~と、多様性と淘汰かな」
その環境に適応した種族が生き残る様に、様々な種に突然変異を起こし、より適応した種族が繁栄する。そうやって、変化し続けることが進化だと思う。
「そうだ。とどのつまり理想形を求めて最適化を進めていく作業になる」
豆腐をつまみながら、日本酒をあおる。飲酒は食後と言ったな、あれは嘘だ。
「つまり研究者としての目的とするなら、多様性がどこまで広がるか、ということ。結末としてどのような理想形になるか、ということ。あとはその過程が仮説通りかどうか、を調べる事が出来る」
「多様性、理想形……そして、仮説ですか」
「ISの研究者になるとそれが主目的になるな。開発部門になると話は別だが」
「開発になると現状の技術をどう活かすかになるのかな」
千冬姉は頷く。
「そうだな、研究で仮説を立て実証する。そして開発が実用化する、その間でも色々と問題が発生するのだが」
そこで千冬姉が束さんの方を見る。
「こいつに関しては、研究と開発のレベルが段違いだ。つまり、多様性と理想形に関してはある程度目星がついているはずなのさ」
「えへへぇ、褒めても何も出ないよちーちゃん♪」
話にならん、と酒をあおる。それもそうだ、単一仕様能力を発動した紅椿にも対応出来ているし、AICやらその辺に関してもお手の物だ。少なくとも現状に関しては多様性で彼女の掌を出ているようには思えない。理想形についてはなんともいえないが、多様性を把握している以上、ある程度想像はついている、もしくはビジョンとしてあるのだろう。
「なら、束さんは仮説の実証か、過程の観測の為に?」
「いっち~、重大な見落としがあるよ」
「……え、間違ってましたか?」
「それはね、僕が研究者であるという前提でなりたってる仮説。快楽主義者、あるいは無目的で作った可能性も否定できないなら、安易に推測を広げたとしても、真実に辿り着けないよ」
そうか、まずは束さんがどう考えているのか、それを知らなければ話にならない。
「そもそも、知識の探求を求めるタイプには見えないがな」
あくまで個人的な意見だが、と箒は加える。そうでなければ、ISを大規模で発表したり、少数の人間に固執することもない。目的はISを作ることや、自己進化の先にあるものではなく、ISがもたらす何かである、か。
「さぁ、いっち~にそれが何か分かるかな?」
「分からない方が良い。分かるとすれば、束と同じ段階に達したということになる」
「それは……どういうこと?」
「お前にこいつがまともに見えるか? 研究、開発者としては優秀かもしれんが、私はお前がこいつの様に非常識になって欲しいとは思わないぞ」
「……確かに」
箒、そこで同意するのは妹としてどうなの?
「ちーちゃんも失礼だなぁ。同じ段階になったからといって、常識を必ずしも失う訳じゃないでしょ?」
「お前は知ってて従う気がないんだろ?」
「当たり前だよ、法に守られる必要性がないんだもん♪」
さらっと怖い事を言うな、この人は。しかも、有言実行しているところがまた恐ろしい。
普段では聞けない話を聞きながら、夜は更けていった。朝目が覚めると二日酔いの箒と千冬姉はいたが、束さんの姿はなかった。
長々と読了ありがとうございました。
昼夜逆転の生活を送りながら適当に書いているので、中身は保障できません。
特に、ISの目的等に関する部分はすべて妄想の産物なのであまり深く考えずに見て下さい。もし、そうじゃねぇよというご指摘があればよろしくお願いします。
一応、物語はほぼ終盤ですが、まだ出来ていない部分があるのでもう少し続きます。
次回は最終決戦になります、これまで読んでくださっている方がおられましたら、最大の感謝を。