なんだかんだでこの子も好きです、いや、ISのメインキャラで嫌いな子いたっけかなぁ?(白目)
第三話
BETAが来た!(登場するとは言ってない)思春期の少女たちの心は複雑な模様! 振り回される一夏! ハーレムルートのフラグ回収は順調のご様子!?
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――緊急事態発生! 緊急事態発生!――
ISのチームは緊急のアラームにより、収拾される。
「こ、これは!?」
「落ちつけ織斑少尉、前戦基地とはいえ、直接この基地までBETAが侵攻することはまずないと考えていい」
業務連絡のために簪さんが現在の情報を伝える。
「前戦はここではないので、第2種警戒待機を敷いています。現在、BETAの軍勢は前線部隊が応戦していて優勢ということです」
簪さんの報告に楯無さんが口を挟む。
「ISチームは待機でいいわ。どうせこっちまで来ないだろうし、第2種待機状態もなし、通常待機で……」
「そんな! BETAが来るかもしれないのに何のためのISですか!」
鈴音が吠える。突然の声に楯無さんが顔をしかめる。
「来ないって言ってるでしょ、話を聞きなさいな」
「……すいません」
楯無さんが睨みつけると、鈴音も黙る。
「でも、いいんですか?」
流石に簪さんも全く警戒しないのはどうかといった表情だ。
「チームワークの中途半端なこの面子じゃ防衛位しかさせられないわよ。どの道同じになるなら経費は安い方がいいでしょう」
そう言って出ていってしまった。
「はぁ、あれでいいのかしら……とりあえず、通常待機で、頼むわラウラ少尉」
簪さんの呆れた様子に敬礼で返すラウラ。
「了解しました」
「鈴、どうしたんだよ……」
機嫌が悪い鈴音に話しかける。
「別に、どうもしないわ」
怒りに満ちた、やり場のない感情が彼女の中をめぐっている。
「どうもしないなら、当たり散らすような態度は止めろよ」
怒りに満ちた彼女の眼がこちらを捉える。
「……何が?」
彼女の苛立っている雰囲気は、俺でも分かる。随分と長い間ISで訓練しているが、これまで一度もBETAと戦った事はない。基地として優秀なのか、進撃の手が緩まっているのか分からないが、そのおかげで鈴のフラストレーションは爆発寸前だ。
「お前の言いたい事は分からなくもないけど、BETAが来ないのは良い事だろ?」
良い事だ。それは間違いない。傷つく人も犠牲になる人たちも、皆を守る事が出来ているのだから。
だから、間違いでは、ない。
「私の……言いたい事?」
ゾクリと、背筋を指す、彼女の冷たい声。
「……あぁ」
それでも、彼女は、表情を変えない。
「そうね、BETAは人類の敵だもの。言わずと知れたことだものね」
彼女は、ゆっくりと遠ざかっていく。歩くような速度で、離れていってしまう。
「あぁ……早く、早く殺したい」
昼食時、いつものように合成鯖の味噌煮定食を頼むとセシリアとシャルが待っていた。
「遅いですわ、ラウラさんと鈴音さんはお先に済ませてましてよ」
「一夏は遅いんだから、早くしないとお昼休み終わっちゃうよ?」
トレイをテーブルに置き、椅子を引いて二人の対面に座る。
「悪い悪い、二人も先に食べてて良かったのに」
セシリアとシャルは顔を合わせて、溜め息をつく。
「はぁ……いいからもう食べますわよ」
「そうだね、何も期待はしてなかったよ」
なんだろう。待っててもらった事はありがたいが、そのことで何かするべきだったんだろうか。
「……それで、鈴音さんの調子はどうですの?」
「俺が言っても、何も変わらなかったよ」
思い出し、湧きあがる苛立ちを白飯をかきこむことで発散させようとする。
「今のところは目立ったものはないけど、流石にまずいよね」
それは分かっている。
「でもなんで、あそこまでBETAに執着してるんだ?」
そこに詳しく振れたことはなかった。今回のように問題にならなければ、BETAを改めて敵視する理由など、必要ないからだ。
「……鈴音さんは、家族をBETAに殺されてますわ」
おおよそ予想はしていたが、言葉にならないものがあるな。
「ラウラはドイツ、セシリアはイギリスで直接侵攻を受けた地域じゃないし、私はその前から米国に移住してるから、特別な感情を抱き難いけど……彼女のいた中国は最前戦でもあったから」
こんな話は、何度か聞いた。ここの基地に来てから身内がBETAに殺された、という話には縁がないという訳にはいかない。
「言いたい事が分かるなんて……軽く言っちゃいけなかったか?」
感情としては理解できる、そう思っているけれど、彼女はそれを望まないのかもしれない。
「間違いではないと思うよ」
シャルも食事を続けながら、客観的な事実を告げる。間違いではない、それだけだ。鈴音の心には全く響きもしないというだけだ。
「そもそも、私達はデータ取りで、攻戦防衛はお仕事ではありませんわ。必要とあればというだけなのを履き違えてはいないでしょうね」
それはまぁ、1ヶ月もここで訓練していれば分かる。実戦にいち早く対応できるようにと訓練されている兵士たちと比べれば、内容が違いすぎる。先を越されて戦場に向かう兵士が鈴音を更に駆り立てているのは想像に難くないが。
「だけど、鈴はそう思ってないだろうな」
元の世界でも、一番義理人情に厚い性格だったと思う。同じ幼馴染でも箒とは違ってより姉弟のような、どこか世話になりがちな記憶がある。そんな彼女だからこそ、身内を襲った事に対する感情も人一倍になってしまったのだろう。
「……本当にそれだけかな?」
シミュレーターで仮想BETAとの訓練が行われる。
「ちょっと鈴音さん! 援護を……」
セシリアとの連携を無視し、突撃する。独断的な行動とは裏腹に最後のBETAの討伐に成功する。
「……鈴音さん、先ほどはどういうことですの?」
シミュレーター機から出て、セシリアが鈴音に詰め寄る。
「途中で高度5000を超えたでしょ、セシリア」
「うっ……でも今回に高度制限はなかった訳ですし」
確かに今回の訓練に高度制限はなかった。だからと言ってむやみに飛び回るのは良くはない。だが、状況次第では問題ない高さでもあり、セシリアの機体特性から高度を確保するのは重要なことでもある。
「状況を判断するのは個々によるでしょ。想定高度はなくとも、無闇に飛び回るのを後衛にするのは得策じゃないから」
そこでラウラも口を挟む。
「少々口は悪いが、今回は鈴音の方が正しい。実戦で勧められない行動は訓練でも控えろ」
「それは……そうでしょうけど」
セシリアが言いたいのはそういうことではない。だけど、呼び止める事も出来ず、鈴音は去ってしまう。
「ラウラさん!」
セシリアの怒りはラウラに向けられる。
「鈴音の態度も、と言っただろ。休憩時間はそう長くないぞ、一夏少尉」
どうしてここで俺の名前が出るのだろうか。
「一対一じゃないと話せない事もあるだろう。この面子の中ではまとも……かどうかはともかく、話しやすいのはお前だ」
そこは素直にまともと言って欲しいけど、ラウラは高圧的な態度も相まって、今回の様には合わないんだろう。セシリアは話す分には良いんだろうけど、さっき喧嘩したばかりだし、となるとシャルルでも良いと思うんだけど。
「やっぱり一夏の方がいいんじゃないかな」
どうにも乗り気ではないらしい。話す事だけで見ればシャルの方が上手いとは思うが。
「……女性と仲良くなるのは一夏さんの方がお上手でしょう?」
どこかしら棘のあるセシリアの言葉。まぁ、前科があるから不安で仕方ないが、自分以外で満場一致では従うべきだろう。
「言うほど鈴音は不和を起こしたいという訳じゃないだろうからな。そこまで不安がらなくても良いと思うぞ」
他人事だと思って、鈴音がどこに行ったかすら分かってないっていうのにな。
外に出て、桜の木がある丘で鈴は佇んでいた。
「ようやく見つけた。こんなところにいたのか」
険悪な様子はなく、どこか後ろめたい様な雰囲気だ。
「……セシリア、怒ってた?」
やはり、先ほどのことを気にしているみたいだ。
「ショックを受けてた、って意味では気にしてたけどな。怒ってはいないよ」
そっか、安心した様な顔をした。
「……ねぇ一夏、あなたは大切な人を失ったこと、ある?」
大切な人、例えば家族、恋人、親友そんな話を幾つも聞いた。だけど、俺はどうだろう。元の世界に戻りたいとは思うけど、その足掛かりすらつかめていない。
「私はね、両親をBETAに殺されたの」
「ああ、聞いたよ」
それがどんな辛いことだったのか、想像も出来ないが。
「それは許せないんだけどね。でも、聞きたいのは最近苛々してる原因でしょ?」
「なんだ、そこまで自分で分かってるんじゃないか」
彼女は元々直情的な部分もあるが、判断力が低い、常識がないなんてことはない。むしろ、思いやりのある優しい一面もある。
「……両親がね、飲食店を経営してたの」
そうだ、彼女の両親は日本で中華飯店を経営していた、のは元の世界の話だったか。こっちの世界でもそうだったのだろうか。
「って、食糧難のこの時代によくやるな」
此処に来て初めて鈴音が笑った。
「馬鹿みたいでしょ、それも世界各地を周りながらよ。自分たちが口にするものを確保するのだって楽じゃないのに、皆の喜ぶ顔を考えると、やめられないってさ。そのおかげで色んな人に慕われてさ、私がこんなところにいられるのも両親のおかげ」
誇らしげに語る彼女に影を差す寂寥感があった。
「いい人達だな」
やっぱり、俺の知ってる鈴音の両親のようだ。子供の頃の俺にも随分と優しくしてもらった。それだけじゃない、料理を教えてもらって、家事のやり方を学んで、そうやって人にやさしくする方法を教えてもらった。思い出せば思い出すほど、感謝し足りないくらいだ。
「……それに比べて、私は何やってるんだろうね」
「えっ」
「私がISのパイロットに志願したのは、航空権を取り戻すためよ。そうすれば、人々の移動も楽になるし、食糧事情の解消にも別の解決口を見いだせる。助かる人の命も数え切れない……はずなのに」
彼女は結果を出す為に来たのだ。世界中にISの能力を知らしめ、文字通り世界を救うために、考えて、闘っているのだ。だが、眼に見える結果はなく、焦りばかりがつのる。自分よりも良いISを使っている俺がやる気なさそうに見えるのも原因の一端だろう。とはいえ、直接何もされてないBETAに何かしらの感情を抱くことも出来ずにいる。
「両親だけじゃない、ここに連れて来てくれた人にだって申し訳が立たないのに。その人たちはね、私が元気でいてくれるだけでいい、ってさ。なんでこう、こんな時代だっていうのにお人よしばっかりかなぁ……」
そっと鈴音の横に座る。瓦礫の街だけど、海だって見える。絶景とは言えないが、どこか懐かしさを感じさせるいい風景だ。
「……俺はさ、違う世界から来たんだ」
「は?」
頭がおかしくなったんじゃないかっていう目で見られる。そうだよな、そういう反応になるよな。
「とあることがあって、俺を知ってる人が一人もいなくなったんだ。知ってる景色も無くなって、世界で独りぼっちになったんじゃないか、って勘違いするくらい」
「あぁ、そういうことね。何があったのよ」
「さっぱり、何があったのかも全然分からないんだ。分かってるのは、家族も仲間も親友も、ここにはいないってこと。残ってるのは白式と着ているものぐらいだった」
鈴音も沈んだ表情になる。きっと彼女は思い違いをしているんだろうけど、言っても分からないだろうな。それに嘘は言ってない。
「あんたも……大変だったのね」
「まぁ、大変だったとは思うけどな。でも今は、仲間がいる」
「……」
「大切な人の事、忘れた訳じゃないし、仲間も大切だしな。目の前はまだ真っ暗で先は見えないけど、手探りで歩いて行くのは……嫌ではないと思ってる」
鈴音も、そう思って欲しい。
「なにそれ、馬鹿みたい」
そう言った彼女は、何処か柔らかな表情に見える。
「馬鹿って言った方が、馬鹿なんだってさ」
――人の欠点を探して貶す、それで優越感に浸るのは誰にでもあることで、恥じるべきことだ。頭では、分かってるんだけどな――
再び脳裏に浮かぶ言葉。大人びた箒の顔と知らない場所。どうしてこんなことを思い出すのか……
「頭で分かってもどうしようもない事よね。何の解決にもならないって、分かってるのにね」
そう言って、彼女は勢いよく立ち上がった。
「セシリアに謝ってくる。一夏はどうする?」
思い出そうとすればするほど、深く沈んでいく。どうあがいても、頭痛がするだけで、成果はなかった。
「……少し涼んでから、俺も戻るよ」
「あっそ……ありがと」
軽やかな足取りで横浜基地へと戻っていく。頬を撫でる風は、思い出のものよりほこりっぽく感じるのはこの世界だからなのか、それとも美化しているからなのか、それすら分からなかった。
「セシリア、頭出てる!」
「し、知ってますわ。これくらいなら問題ありませんわよ!」
「一夏、サポートお願いできるかな」
「ん、了解」
「順調だな、ミッション終了、シミュレーター停止」
ラウラの号令でシミュレーターの電源が落ち、全員がシミュレーターから出てくる。
「まだ少し連携には難があるが、概ね良好といったところですね。これなら、基地外任務の方も問題なく出来ると思います」
「あぁ、火山の活性化の話ですね」
あまり良い話ではなさそうだ。
「現地の人々の救出に向かってもらいます。翌日一二○○にて出撃なので、ミッションの再確認と機体のメンテナンスを怠らない様に、以上です」
「敬礼!」
敬礼の後に簪さんは退出した。
「既存の戦術機に比べると、連携はないと考えていいな」
「これでも、結構頑張ってる方なんだけどね」
訓練期間が短いとか、個性がどうとかではなく、機体の統一性がほとんどないのだ。共用出来る装備も数えるほど、開拓者が自分たちということで実地試験にこぎつけるまで時間がかかってしまった。
「けど、ようやくISで外に出られるのね」
退屈だったと言わんばかりに伸びをする鈴音。
「……真っ青よ、セシリア」
「な、何をいってらっしゃいますの!? 私は……」
明らかに強がるセシリアをからかう鈴音。
「はいはい、ならシミュレータでも結果を出すのね」
セシリアが反撃できずにたたらを踏んでいると、視線がこっちに来た。
「期待の新人さんもいる訳だし、楽しみね」
それを言うなら全員がそうだと思うのだが。
「まぁ、ISの性能が発揮される様なミッションではないがな」
救助任務と言えば聞こえはいいが、ようは使いパシリみたいなものだ、と楯無さんは言っていた。言い方は悪いが、そういう見方もあるのだろう。飛行訓練と運転確認を兼ねた雑用みたいなものだ。
「ん、どうした?」
覗きこむようにして鈴音がこっちを見ている。あまりにも凝視しているから無視も出来ない。
「……ちゃんと進んでたんだなぁ、ってね」
「疑ってたのかよ?」
「褒めてんのよ」
「……そっか」
なんにせよ、鈴音の調子が戻っているのはありがたい。
「なんてね、冗談よ」
気付いたら各々部屋を出て行っている。鈴音もまた、部屋を出るところだ。
「っ、馬鹿にしやがって」
「馬鹿に馬鹿って言って何が悪いのよ」
追いかけると笑いながら行ってしまった。馬鹿と言葉にしても、貶す訳でもなく優越感を得るためでもなく、どこかやさしい言葉になっていた。まるで馬鹿と言われていた両親のような、憧れる存在に近づける事を願うかのような。
「……考え過ぎだな」
馬鹿には馬鹿と言う意味以上はないだろう、普通に考えて。
長々と読了ありがとうございました。
まだまだ先は長いので、暇を持て余しているお方はよろしくお願いします。