しかし、文章推敲するとか出来んは……面倒くさいorz
第七話
( ゚∀゚)o彡°おっぱい!おっぱい! 悲しみ、傷ついた一夏は、シャルルの優しさを受け入れることが出来ず、自分を傷つける。その苦しみを抱え、もがいている一夏はとある少女と出会う。( ゚∀゚)o彡°おっぱい!おっぱい!
気付くと、白いベッドの上だった。何故、こんなところに、自分の部屋でもないのに。
「……っ!?」
思い……出した。錯乱した俺は押さえつけられて、妙な薬を打たれたのだ。
「なん……なんだよ、これはっ!?」
悲しいはずなのに、簪さんの最後を鮮明に思い出す事も出来るのに、涙も出ない。それどころか、妙な高揚感すらある。
「気分はどうですか?」
見覚えがある、確か女医だか、何かだったはず。一度か二度しかあったことがないので、余り気憶にはないが。
「薬の影響で、吐き気や気分が悪くなるかも知れません」
「何を……したんですか?」
「精神安定剤……と言えば聞こえはいいですが、睡眠薬と同じです。脳内を無理に変えようとすれば他の症状が出る事も珍しくありませんし、量を間違えれば脳にダメージを与える可能性もあります」
「そんなものを……」
それを聞かされると、さらに気分は悪くなった。自分の中に良く分からないものを入れられている事も、そんなことを平気でする軍も全てが気持ち悪い。
「……で、でも、仕方なかったんです。そうしないと、危険な状況だったんです」
掴みかかろうと体を起こすと、右手が痛む。痛々しい程に捲かれた包帯、自傷したことを思い返す。
「……無理にでも抑えないと、それよりもっと酷くなっていたかもしれません」
彼女に当たっても意味がない、それよりももっと、話を聞きたい相手がいる。
「駄目です、まだ動いてはいけません!」
制止する声も無視して、医務室を抜け出した。
「楯無さんっ!」
彼女の部屋の扉が開くと、椅子に座って忙しそうに作業をしているのが見える。
「……まだ安静にしとくべきじゃないのかな」
酷く疲れた表情をしている。
「そんなことより、簪さんが!」
「少し声を抑えなさい、怒鳴らなくても聞こえるわ」
少しうんざりした様子で、目線を逸らした。
「……過去に戻れる方法は、分かりますか?」
ガタッ、と楯無さんが立ち上がる。
「過去に……ですって」
「言ってたじゃないですか、前例があるって……特定の条件が揃えば、一定の時間に巻き戻される、って」
シロガネ部隊での異邦人、特異点と呼ばれた人間は何度も歴史を繰り返していたのだ。
「……ふふっ、あはははっ」
「何が、おかしいんですか!?」
その高笑いすら、今は腹立たしかった。
「いいえ、それは見逃していたと思ってね。そうね、過去に戻れたなら簪を助けてあげて頂戴」
「だから、過去に戻る方法が!」
「なにもしなくていいのよ」
「……へ?」
拍子抜けした。何もしないとはどういうことだ。
「特異点の観測時点を過ぎてなお、観測が続いている場合、例えその対象が生命活動を停止していたとしても、初期の観測時点に戻されるの。つまり、観測者が生きていて、なおかつ、観測が続けられていればいいのだから、あなたは何もしなくていいの。いえ、何もしない方が良いかもしれない」
何もしない方が……良い?
「現時点で特異点が誰……いや、もしかしたら人ですらない可能性もあるわけよね。それを下手に探すよりかは良いかもしれない、ってこと」
何もしない事が、簪さんを助ける……方法?
「……私も忙しいの、話がそれだけなら帰ってもらえる?」
何も言えず、楯無さんの部屋を後にするしかなかった。
「……ちか……いち……一夏」
誰かの声が聞こえる……これは?
「……一夏……まだ帰ってないのかな」
まだ疲れの取れない体を起こして、扉を開く。
「シャルか、どうしたんだ?」
「あ、帰ってきたんだね。大丈夫なの?」
大丈夫? 何が? 人が死んで大丈夫? オレハマモレナカッタノニ?
「……今、中に入ってもいいかな?」
少し気に食わなかったが、断る理由もなかったので部屋に入れることにした。少し部屋を見渡すと、シャルはベッドに座った。
「男の子の部屋に入るの、はじめてかも……なんてね」
軽い冗談なんだろうが、それも気に障る。
「……何か用なのか?」
「簪教官のこと……聞いても良い?」
駄目だ、なんて言えない。手招きされて、シャルの横に座る。
「簪さんは……俺と話してる途中で」
「最後に、何を話してたの?」
シロガネ部隊のことは話せない。話したとしても、理解してもらえないだろう。今なら、気が狂ってると思われるかも、それでも良いかもしれないが。
「簪さんの過去話かな。俺が落ち込んでるのをみて……それで」
そっと、あたたかいものに包まれる。これは、なんだろう?
「そのまま、続きを……」
そう言われて、抱きしめられていることに気付いた。あたたかいのは、シャルの体温だった。
「簪さんは……昔は楯無さんの陰に隠れて、自信を持てなかったって。過去をやり直したいと思ったことが……何度もあったって」
「そう……そうだったんだね」
少しだけ、シャルの腕が強くなる。温かみが少しだけ、増した気がした。
「でも、でもな……楯無さんが言ったんだ。過去をやり直しても、何度やり直したとしても……『正しいことだけの世界』は……訪れないって……どれだけ努力しても……」
この暖かさに包まれても、涙は出てこない。優しさを感じても……薬の効果は、切れてくれない。
「……そう、だね」
不意にシャルの体重が預けられて、支えきれなくなった。ベッドに押し倒される。
「な……にを?」
「心の……痛み止めだよ。傷ついた心が……これ以上傷つかない様に」
そっと、シャルの指が俺の胸に伸びる。まるで腫れものを扱う様な指は、柔らかくて、感じた事のない感触だった。
――一夏って、あたたかいね――
「一夏って、あたたかいね」
こんなときにも、デジャブが出てくる。出なくていい、と叫びそうになる。
「全部、忘れて……」
全部、忘れる。そうすれば、楽になれる、ズキズキと痛む頭痛から解放されるのか?
「……嫌だ!」
「っ!?」
どうやら俺はシャルを突きとばしたらしい。胸元のはだけたシャルは、ベッドの端で腕を打ったらしく、少し赤くなってる。
「……頼む、出ていってくれ」
シャルは腕を抑えて、苦い表情になる。
「……ごめん」
そう言ってそっと立ち上がった。静かに部屋から立ち去るのを見送って、自分の情けなさに腹が立った。
「くそっ!」
殴りつけた壁は頑丈で、右腕の包帯に血が滲んだ。
部屋を出て角を曲がった途端、誰かに掴まれる。
「誰!?」
ドン、と掴みかかられたまま壁にぶつけられた。背中に衝撃がきたが、それほど強く叩きつけられた訳ではないようだ。
「今、一夏の部屋から出てきたよね」
鈴音だった。
「どこまで、見てたの?」
「残念ながら、一夏の声が聞こえたから出てきただけなのよね……随分と機嫌が悪そうだったけど?」
ギリリ、と胸倉を絞めあげられる。
「色仕掛けでも仕掛けたの? ねぇ、傷心の男に振られた気持ちはどう?」
人が気にしているところざっくり抉りに来たようだ。まぁ、鈴音からすればこれほど気に入らない相手もないだろう。
「……まぁ、最悪だね。幾ら経験が少ないって言ったって、悪くない演技だと思ってたのに」
戦場ではそういう関係は珍しくもない。傷をなめ合いでもしなければ、多くの人間は正気を保つことすら出来ないのだ。特に関係を持たなかった人達が一度の戦闘の後にそういったことをする、というのは当然とは言えないが、咎められるようなことじゃない。
「慰めにもならないっていうのは、キツイんだね」
締めあげられる痛みが、心地よかった。仲間を出し抜く様な真似をして、姑息な手段を使って、得られた結果がコレだ。気味の悪い同情なんかより罵声を浴びせられる方が余程良い。
「聴きたいんだけど、どうしてそんなことしようと思ったの?」
「どうしてって……心の痛み止めだよ。珍しくもないでしょ?」
痛み止め、比喩的な表現をしているが要するに、考えるのを止めるのだ。獣のように腰を振っている間はそれに夢中になって考えるのを止めて、終われば疲労に身を任せて眠る。そうすることでショックな出来事に向き合わずにすむ、彼にもそれが効くと、思っていた。
「忘れるっていうのは、NGワードだったみたいだね。簪教官のことを、悲しんであげられない事、死んだ事をなんとも思っていないように感じてしまうのが、耐えられなかったみたい……薬のせいだっていうのに」
「ふ~ん、そうなの」
突然手を離される。壁にもたれかかる形で、へたり込まずにすんだ。
「どうしたの? 鈴音の怒りはそんなもの?」
「私の怒り、ねぇ」
挑発のつもりだったが、余りこたえていないようだ。
「掴みかかった時はまぁ、何してくれてんだってのはあったけど、事情を知ってしまえばなんてことはないみたいだしね」
「……へ?」
「メンタルケアとかになると、私よりよっぽど上手くやるでしょ? 色仕掛けとかでもいいからさ、ほら、珍しくもないんだし」
一体、何を言ってるんだ?
「今の一夏が見てらんないのは皆同じなの、それくらい分かりなさいよ」
「いや、それだったら自分が……ってならないの?」
少し考え込んで、答えた。
「ならない」
驚きで、声にならない。
「別に異性として見てないつもりはないんだけどね。それでも私は、心の傷に正面から向かい合うっていうのは苦手だし」
鈴音は少し、ばつの悪そうな顔をしていた。
「苦手って」
そういう問題なんだろうか。
「あいつが戦えないっていうなら、私がその穴を埋めるまで。勿論、戻ってくるまでの間だけど」
「……いなくてもいいってこと?」
一夏がいなければ、IS部隊が機能するかは分からない。調整無しで完璧に動けるのは彼の機体だけなのだ、正式な作戦に参加するのはまだ難しいだろう。
「あいつの性格ならすっとんでくるでしょ、前線までね」
そう言って、背中を向ける。自分の部屋に戻るようだ。
「じゃーね、一夏のこと見といてあげてね」
本当に、行ってしまった。拳の一つや二つは覚悟していたんだけど。
「いや、殴られたかっただけかな」
馬鹿やった自分を戒める何かが、欲しかったのだ。手っ取り早く痛みを味わえる暴力なら、なおさら。
「……背中で語るって、あ~いうのなのかな」
頬を一度叩いて、気を取り直す。今日の結果は悪かったが、最悪じゃない。鈴音の言う通り、一夏の一挙一投足を見逃すわけにはいかない。
「後悔させてやるんだから」
気がついたらまた、楯無さんの部屋のあるフロアに来ていた。何か用がある訳じゃなかったが、他の誰とも顔を合わせたくなかった。
「この部屋は?」
いつも閉まっている、と言ってもオートロック形式なので開いているほうが珍しいのだが、その珍しく開きっぱなしの扉があった。好奇心に誘われて、部屋の中を覗こうとすると、扉の中に通路が続いているのが分かった。隠されている、と言う訳ではないのかもしれないが、見えないと気になってしまう。
「……一夏?」
背後から、声が聞こえた。どこか懐かしい、女性の声。振り返る。いつ以来だろうか、その艶やかな黒髪を見るのは。
「……久しぶりだな」
基地の制服に身を包み、見慣れた姿よりも少し幼く見える。背は俺よりも小さかったが、頭一つ分も差はなかったはずだ。俺の背も少し伸びているかもしれないが。
「何をしている?」
その後ろから、楯無博士が現れた。睨み返し、言葉を返す。
「そんなことより、どうして箒がここにいるんですか?」
少し驚いた顔をする楯無博士。
「……何の話? まさか、こいつを元恋人と見間違えたの?」
「とぼけないで下さい! 俺が箒を見間違えるとでも!? 確かに少し幼いけど、それでも、箒の顔を忘れたりはしない!」
楯無博士は箒の存在を今まで隠し続けていたのだろうか。俺の事を陰で笑いながら。
「……待て、少し落ち着け」
考え込んでいるようだ。どうした、ばれたことに焦っているのか。
「落ち着いていられるかっ!」
「分かっている、お前の言っていることが本当なら、怒るのはわかる。こっちも不測の事態なんだ」
「何が不測の事態だ! 俺に箒は見つけられないとでも思ってたのか!」
「……彼女は、確かに篠ノ乃箒なんだな?」
「当然だろ!」
「勘違いや混乱からじゃないな? 彼女だと証明する手段はあるか?」
箒だと言う証明? そんなものがないと、楯無博士は箒だと分からないのか。
「……箒じゃなかったら、俺の名前を呼ばないでしょう」
「……信用するよ」
長々と読了ありがとうございました。
マヴラブオルタネイティブでは割と気に入っているシーンの一つです。悲しみを悲しみとして感情にすることが出来ないなんて、想像しただけでも興奮してしまいます(錯乱)
ただ少し違うという部分があるとすれば、ISのキャラクターならどうなるかな、と考えて書いているという点でしょうか。
勿論、私がそれを語るほど知識があるわけではないのですが、そういう風に考えるんだなぁ、位に思っていただければ幸いです。
まだまだ先は長いので、お暇な方はお付き合いくださいorz