箒ちゃんヒロインにするなら過去話盛り込んだらいいと思うのに、原作にそんな気配が全く感じられない気がした! そんなことしたら、束さんの設定とか幼少時の設定がわかってしまうじゃないか(歓喜)
まぁ、ないんだろうなぁ(白目)
第八話
シャルルのπ乙の罠から逃げ出した一夏は、新たなヒロインのπ乙の罠にかかってしまうのか!?
そして、さらりと明かされるISの真実(という名の二次設定)ロリ箒とか誰得だよ!?
箒とは一度別れて、執務室で楯無博士と二人きりになる。離れる事に抵抗はしたが、この世界の箒の様子が少し変な気がして、話がすめば会えるという言葉を信じた。
「まず、彼女をお前に会わせなかった理由から話そうか」
「……はい」
「私が彼女を初めて会ったのは、突如爆発したハイブの中枢だ」
「どういうことです?」
「原因は未だに分からない。そのハイブは最早BETAの基地としての役割は果たしていなかったから、侵入するのは容易かった。そこで見つけたのは幾つかのG元素と呆けている彼女」
「彼女との意思疎通が出来た試しはほとんどない、その代わりに気紛れのように喋り、G元素の情報の為に、秘密裏に管理されていたの」
「意思疎通が……出来ない?」
そんなことを言われても、具体的な状況なんて想像できない。特に外傷があった訳でもなさそうだし、喋れないという訳でもないはずだ。
「そ、声は聞こえてるし、喋れる癖に、会話が成立しないのよ。問いかけには答えない。食事や最低限の生活を維持するのも難しい程に、ね」
「そんな……」
「まぁ、それでも人間の形をしているからね。手厚く保護して、この基地まで連れてきたというわけ」
「人間の形って、そんな言い方はないでしょう!?」
俺の反応も予想していたかのように、静かに対応する。
「調べてみるとね、体内からG元素が発見されたの」
「それって、ISに使われている?」
「そう、地球には存在しないG元素を体内に宿していること、ハイブで発見された事、G元素の知識を多量に持ち合せている事も合わさっている事もあって……彼女はBETAであると考えていた」
「な、箒がBETAだって!?」
楯無さんが額を抑える。
「今のところは織斑君の記憶だけが彼女を人間だという証明になっているの」
「そんな、それだけの理由で人間じゃないなんて……」
「それだけ、とは言うけどね。正直、今でも人間でないと思っているんだけど……けどまぁ、元人間であって、その経緯があるという可能性を考え付かなかったのは、悪かったと思うよ」
元人間、という言葉に引っかかる。
「……そんな目をしないでくれるかな。人権がないと言いたい訳じゃないよ。ただ、こちらも人間らしいコミュニケーションが取れないならそういった対応しか出来ないよ」
出来ないなどと、もしもBETAに襲われたショックでそうなっているだけなら、箒にどれだけの苦痛を与えているのかもわからないのに。
「それなら、私に考えがある。というよりも、それしかないと言っても良い」
「……考え?」
「そう、織斑君には特別な反応を示しているというのは聞いたよね。これは私達にはどうしても引き出せなかった反応なの。だから、君に彼女の情報を引き出してもらえると私としても助かる」
「俺に何かしろ、と?」
冗談じゃない、これ以上箒に酷い目をあわせたくはない。
「うん、一緒に生活してくれるだけでいい。君もIS部隊に居場所が無いと感じて此処に来ていたんでしょ? それなら、落ちつくまで彼女の部屋で過ごすといい、食事も届けさせる」
「……は?」
「ああ、彼女との同棲は初めてだったかな?」
「失礼します」
作戦会議室に入ると端末を操作している楯無博士が一人いるだけだった。
「5分前にきっちり集合、そういうところは扱い易くて助かるわラウラ少尉」
扱いやすいと言われて喜ぶべきか。ただ、上司からすると手のかからないのは利点だとおもうが。
「……下官として、あるまじき進言であることを承知のつもりです」
端末から目も離さず、意に介した様子もなく楯無博士は続ける。
「構わないわ。そういった不満はつきものだしね。ただ意外とするなら貴女が意の一番に言いだしたことぐらいかしら」
確かに、一夏が来る前までの自分であればこんなことは考えられなかったかもしれない。部隊として成果を出す事を重視する姿勢は変わってないつもりだが、隊員の精神状態にまで口を出す事など、無いに等しかった。
「……隊員からの進言からの行動です。自分個人の意見のつもりはありません」
「なるほどね、そういうことにしておくわ。で、肝心の要件は?」
「現在特別任務についている織斑少尉についてです」
「でしょうね。で、何を聞きたいの? 特別任務は機密情報だから内容については教えられないし、私から言えるのは、期間の決められているものではないから、現在進行中としか答えられないけれど?」
口に出すのも躊躇われる。此処に来るまでに何度も考え直した結論なのだ、今更変わる訳もないのに、気遅れしている。
「……それは事実でしょうか?」
「ええ、まぎれもない事実よ。2週間前に伝えたとおり、そのままね。あなた達が鵜呑みにしてないってことも、知ってるわ」
「私達は特別任務というのは建前で、既に織斑少尉が死亡している、或いは再起不能の状態になっているのを誤魔化す為の情報であるかもしれない、という考えです」
そこで初めて、端末から手を離しこちらを見る。
「どうして私がそんなことをする必要が?」
「IS部隊の士気に関わることだからです。私を含め部隊員全員と言っていいほど、織斑少尉の存在を特別扱いしています。先日の戦果も含めてでですが、彼がいるかいないかでは大きく変化すると考えていて、現状を誤魔化して伝えるには充分ではないか、と判断しています」
「なるほどねぇ、貴女としては死んでるなら死んだ、とはっきり言って欲しいというわけ?」
「……いえ」
ここからは自分個人の考え、だ。
「死亡した、と伝えると少なくとも部隊員に良い影響が出るとは思えません。なので、私も情報操作に協力すれば、現状の士気も落とさず作戦を続けられるのではないか、と進言します」
「なるほど。要は他の部隊員には内緒で自分にだけ本当のことを教えて欲しいって訳ね」
痛いところを突かれた。それが無いと言えば、嘘になる。
「あら、否定しないの?」
「取り繕ったところでどうしようもありませんから」
「正直なのは良い事よ。その姿勢は評価してあげる。でもね」
「私が妹を失った悲しみで、彼を慰み物にしてるという考えはなかったかしら?」
床を蹴った音が随分遠くに聞こえた。体の感覚はどこか夢の中を漂うように現実感がないのに、体の動きは適確で楯無博士を襟で締めあげている。
「……それは事実ですか?」
手に込める力に制御が出来ない。腕が痛むほど力を入れているのに少しも手を離そうという気にはなれない。
「冗談よ、そうしてるのならあなた達の前に姿を見せない理由がなくなるわ」
信用できるわけではなかったが、その言葉で少し冷静になれた。締めあげていた腕の力を抜く。
「……申し訳ありません」
流石に苦しかったのか、少しせき込む。
「いいわ、貴女の本音が聞けたから今のは咎めない。思うところがあるなら成果で見せなさい」
何一つとして解決はしていないが、それでも今は上官を信じる他にないのだろう。
「もう一度言うけれど、彼は今生きているわ。それに思っていたよりも任務の進行は良さそうだし、上手く行けばそう遠くないうちに戻ってくるかもしれないわ」
「……その言葉を信じろ、と?」
「ええ、そうなるとIS計画が次の段階に進んで、貴方達も前線に出る可能性が高くなるの。その時に準備が出来ていないなんて言い訳聞けないんだから、覚悟しておきなさい」
その自信に満ちた表情は嘘には見えない。騙されているのかもしれないが、騙されていたいと思う気持ちもある。
「……失礼します」
端末の画面にふと目を向ける。織斑少尉と篠ノ乃箒と呼ばれる少女が映っていた。
「次の段階、ね。本当に覚悟しなければいけないのは私の方なのかな……」
同棲一日目
「……参った」
最初は箒との同棲ということで戸惑っていたが、別の意味で予想を打ち砕かれた。本当にまともなコミュニケーションが取れないとは思っていなかった。
「……いちか」
かれこれ小一時間程、ベッドの横に座って偶に名前を呼ばれるだけの時間が過ぎた。箒の姿は簡易な病人服で長い髪をそのままにおろしている。元の世界とは似ても似つかない、か弱い少女のようだった。
「……いちか?」
「っと、悪い悪い」
例え「いちか」としか喋らないとしても、箒は箒だ。どうしてこうなったのか、出来るなら普通に喋れるようになって欲しいという事に関しては楯無さんに協力しても良い。こちらを不思議そうに覗きこんでいる箒に向き合う。
「……どうして、他の言葉を喋らないんだ?」
そう尋ねると、また無言になる。こうして見ると本当に喋る事が出来ないのではないかと思ってしまう程だ。そうこうしていると楯無さんから通話が入った。
『今から食事を持って行かせるが、他に必要なものはあるか?』
そう言われると迷う。何かあればとも思うけれど、その何かが分からない。現状の悩みをそのまま楯無さんに伝えると。
『そうだね、無理に喋らせなくても、YES、NOで答えられる質問をすればいいんじゃないかな。右手を上げればYES、左手を上げればNOって感じで』
「あぁ、成るほど。すいません、こんなことで躓いてしまって」
『いや、私達だとそういう状態にもならないからね。むしろ、箒ちゃんの方から対話の意思が見られるのは期待してるからね』
そうは言われても、この状態でも戸惑いばかりなのだけれど。とりあえずは、言われた通りにしてみよう。
「ほら、箒、あーん」
言われた通りに箒は口を開ける。スプーンですくったお粥を口の中に入れる。
「口を閉めて、良く噛むんだぞ?」
もぐもぐとお粥を租借する。まさか、自分で食べるということすらしないとは思わなかった。ご飯だと伝えても、まともにスプーンすら握れないとは。
「……まるで赤ちゃん育ててる気分になるな」
いや、そういった経験がある訳じゃないんだが。
――少しは私の苦労が分かった?――
また覚えのないデジャブが現れる。自分の手には赤ん坊が、目の前にいるのは鈴音、まるで自分たちが夫婦かのようだった。
『随分と手慣れているな、まさか子育てした経験でも?』
「ありませんよ。どうやって楯無さんは食事を食べさせてたんですか?」
『点滴を与えてはいたけどね。他人から与えられたものを口にしようとはしたことがなかったよ。これも初めてのことかな』
それが本当の事なら先が思いやられる。これで時折、ISの技術について流暢に喋り出したり、公式を壁に殴り書きしたりするらしいからどうしたものか。
『そうだ、言われていた竹刀だが、明日には用意できそうだ。生憎新品という訳にはいかなさそうだけどね』
「いえ、別にそれで試合をしようって訳じゃないから、構いませんよ」
それなら良かった、と通話は切れてしまった。あまり楯無さんがこの部屋に来たがらないのは、最初に二人で来た時、明らかに箒の態度が悪くなってしまったためである。
「なぁ、箒、スプーンの使い方は覚えたか?」
少し考え込んだ後、左手が上がる。どうにも先が思いやられる。
「それで、食事はとったのね?」
「まぁ、食べるには食べましたけど」
箒と同じ部屋で過ごしてからまだ数時間ほどだが、本当に赤ん坊に物を教えている感覚ではある。
「それでも、此処に来て急激な成長ね」
物覚えまで赤ん坊というわけではない。最終的には一人で食事をとることは出来るようにもなっていたし、「いちか」以外の言葉も喋るようにはなっていた。
「学習自体はしていたが行動に移すきっかけがなかった、という可能性もあるけどね」
「俺がそのきっかけに?」
「あなたがきっかけになった事は間違いないでしょうけど、それから覚え始めたと考えるとあんまりにも早すぎるでしょう? 一応、私達も何もしてこなかった訳ではないし、一般常識を教えようとはしていたわ。勿論コミュニケーションがとれていたとは言い難いけれどね」
確かに、教えてすぐできることかどうかと言われると怪しいものでもある。極度に物覚えがいいと考えるよりかは、出来るけどやってなかったという方が自然かもしれない。
「とはいえ、まだ推測の段階に過ぎないわ。もし、対話が出来る段階になった時、確認しても良いんじゃないかな」
「対話、か。それはもっと先になると思いますよ」
自分の言葉には反応してはいるものの、理解していると思える反応が返って来ない。暖簾に腕押し、糠に釘の感触だ。
「それでも、私達が考えていたよりもずっと進行は早いわ。期待しているのよ」
「って言われてもな。どうなんだ箒、お前は喋れない振りをしてたのか?」
横たわって眠る箒の頭を撫でる。こうして見ると中学生程度の見た目だが、言葉も満足に喋れないようには見えない。ましてや、ISの知識を蓄えているようには見えない。
「でも、俺達これくらいの時期に、顔を合わせた事ってなかったんだよな」
思い返せば、中学生時代には束さんが既にISを開発していて、その関係で箒は住む場所を転々と変えていたはずだ。かくいう俺自身も、千冬姉さんと共に各地を巡る事が多かったが。
「そう考えると、箒のこんな姿を見るのも初めてなんだな。なんだかんだ言って、俺も箒も結構波乱に満ちた人生を送ってたしな」
――あまり、良い思い出とは言えないけどな――
「そうだったよな。確か、剣道がめちゃくちゃ上手くなったのはいいけど、いつの間にか上達するためじゃなくて、ストレスを発散する為に変わっていってしまったんだっけ?」
――あの時の私は本当に未熟だった、
その所為でどれだけ人を傷つけたか――
「ははは、箒はそんな風に言ってるけど、子供の頃なんて皆そんなものだよ。傷ついて傷つけられて、初めて分かる。経験無しで分かることなんて上っ面だけなんだよ」
――私の場合は傷つけるばかりで、
気付くのが遅かったのが問題だったんだがな――
「……俺だってそうだよ。いつだって気付くのは誰かを傷つけた後で、取り返しがつかなくて」
――ああ、そうだな。無くしてから気付いて、
いつも後悔ばかりだ――
頬を涙が伝う、自分の所為で、自分の未熟さで多くの前線にいた人たちを見殺しにしたばかりか、簪さんまでも。
「……いちか、ないてるの?」
「悪い、起こしちゃったか」
こんな独り言で安眠を邪魔してしまうとは、申し訳ないばかりだ。
「いちか、かなしい?」
悲しい? そりゃ、勿論悲しいさ。でも、何より苦しいのは、悲しむ事も出来なかった事。とんでもない失敗をしたのに、誰からも責められなかった事、それどころか慰めようとしてくれていたのに。
「……馬鹿じゃないか、こんなの」
子供が駄々こねているのと変わらない。いい年こいて何をしているんだろう。
「いちか」
箒が抱きついてくる。腰にまわされた腕は柔らかく温かい。包まれる感触に安堵を覚え、涙が止まらなくなった。
「ごめんな箒……ごめんな」
どうして箒に謝っているのか、それすら分からなかったけど、とにかく悲しくて、悔しくて、辛かった。細くて小さな箒の体を、目一杯抱きしめた。
「俺、馬鹿だったよ。何にも分かってない子供なのに、何かできるんじゃないかって。白式だって、ISだって、俺一人じゃ何も出来ないのに」
期待をかけてくれる人に応える事が出来ない。応えようとして、喜んでもらいたいと思ってて、自分では出来ると思ってたのに。
「俺じゃ……ダメだったよ」
「だめじゃ、ないよ」
そんなことない。何も出来なくて、慰めようとしてくれた人の手を振り払って、顔を合わす事さえも避けてる。
「いちかは……だめじゃない」
ダメだったから、心が折れて立ち直れないから、もうBETAと戦う気力もないから。
「だってまだ、たたかってる」
――弱い自分を認める事、一夏から教わった事だ――
間違えても、何かを失っても、それが全てじゃないから。そんな自分にも出来ることはあるし、それこそ無くしたくないものなんて両手じゃ抱えきれないくらいあるし、望むものも合わせたらきっと、誰もがきっとその全てを手に入れることなんてできない。
――助けてもらったから、助けを求める声に気付く事が出来る――
失敗した事を認めるから、先に進めるんだ。そう言ったのはほかでもない、俺自身だったはずなのに。
「……いちか?」
「分かったよ」
簪さんを失った事を理由に、現実から目をそむける訳にはいかない。
それから箒は驚くべき速度で俺が教える事を吸収していった。楯無さん曰く、やはりインプットされた経験をアウトプットにつなげられていなかっただけで、自分と言うきっかけで次々と出来るようになっていってるというのは間違いではないのかもしれない。三日もすれば日常会話を行う事ができ、一週間たったころには着替え、食事は勿論、竹刀を振るう事すら出来るようになった。
「流石にここじゃ、試合までは出来ないけどな」
「一夏、独り言か?」
心の中だけで考えてた事が言葉に出てしまっていたようだ。
「いや、何でもない。それで、ちゃんとお昼は食べたんだな」
少しむくれて返事をする。
「食事ぐらい一人で出来るようになったって、一夏も知ってるでしょう?」
勿論知っている。が、時折それ自体を嫌がるような素振りを見せるから心配にはなる。ましてやそれが出来るようになってまだ一週間も経っていないのだ。
「食べてるなら良いんだ。ところでその竹刀、気にいってるんだな」
「まぁ、一夏から貰ったものだからな」
とは言うものの、俺が用意した訳ではないのだけれど。そもそも、俺が渡した物の幾つかは既に壊されて捨てられたものもちらほら。だからと言って何か不満があるわけじゃない。俺が用意した訳じゃないという事もあるんだろうけれど、明らかな拒絶のあとだからだ。何を欲しがっていたのかは分からなかったけれど、こうやった結果としてようやく話し合うことが出来るようになったのだと、思うから。無駄ではなかった、と思う。
「もう少し、上手いやり方はあったんだろうけど」
何処か少し、箒は不満げだ。竹刀を壁に立てかけると、ベッドへと腰かける。こちらをじっくり見ているのは、横に座れというサインだ。
「あ、そうだ。聞きたい事があったんだ」
「聞きたい事?」
そう言うと少し嬉しそうにこちらを覗きこんでくる。自分に対してはとても興味があるようだ。特に箒について期待したり、質問をするとなんとかして応えようとしてくれている。なんとなくだが、子供を持つとこういう感じなのだろうか。勿論、時と場合によるんだろうけど。
「ISの事、どうして知ってたんだ?」
「知らないよ」
間髪待たずに返された返事は予想外のものだった。
「私はISの事なんか知らない」
いや、箒から伝えられた情報を元に楯無さんが今現在のISを作り上げたと聞いてるし、公式を書いているのも少し見せてもらった。今作る事が出来るものよりはるかに高いレベルのものだというものだったらしいが。
「……誰から聞いたか知らないけど、その時のことは覚えてないし、思い出せないから」
「……そっか、それなら仕方ないな」
そう言われたら、これ以上聞く訳にもいかない。
「それともう一つ、聞きたい事」
「……」
何か言いたそうで、言いにくそうな複雑な表情。自分はどうしてもこの表情が苦手だ。特に箒がこんな表情をしているとなると、どうにも居た堪れなくなってしまう。
「晩御飯は何が良い?」
「……ハンバーグ」
合成の轢き肉なら、配給品にもあったかな。卵と玉ねぎと、ある程度材料が足りない分は発想でカバーするしかなさそうだ。
「分かった、なんとかするよ」
なんとかするのは主に楯無さんになるのだけれど、まぁ、その辺は大いに頼らせてもらう事にしよう。
「……はぁ」
盛大な溜め息は一体誰のものだったのだろうか。大凡それが相応しくない、大進撃中のIS部隊の一角からこぼれていた。
「気持ちは分からなくはないがな」
「……気付いてないかもしれないけど、ラウラもですわよ」
一日を通して見れば、少なからず誰かの溜め息を必ず聞く事になる。あれから、3日間瓦礫の撤去や救助作業に追われていたが、徐々に軍の足りない戦力をIS部隊が補うことになり、何度目かのBETA残党狩りを終えた所である。
「そうねぇ、なんだかんだ言ってBETA相手にするのもそんなに難しくもないしね」
「原因はやっぱり……」
2週間前から四人で動くことになっているIS部隊。活動自体に不備はないのだけれど、どうしても彼の存在がないことに違和感を感じてしまう。
「楯無博士もだんまりな訳だし」
「少し前までは……この四人のはずだったんだけどね」
落ち込んでいても仕方ないとは、頭では分かっていても、行動にする事が出来ない。
「なんだいなんだい、皆落ち込んでるねぇ」
食堂のおばちゃんが声をかける。毎日料理の受け渡しの時に顔を合わせているが、その明るさに彼女を慕う人間は多い。
「どっかの誰かさんの所為ですわ」
「誰かさんの所為で隊の士気が下がってしまって困っているんだ」
それを聞いて、きょとんとした表情を見せる。
「なんだい、さっき食事を取りに来てたのに、あんたたちとは顔を合わせてなかったのかい」
「そうですのよ、私達には顔も合わせて……」
数秒間沈黙が落ちる。
「えっ!?」
「なんか二人分の食事をもって行ったけど、てっきりあんた達の誰かかと思ってたんだけどねぇ……って聞いてないか」
食器も倒した椅子も何もかも放って四人とも走り出してしまった。どこに行ったのかも知らないままに。
「……若いねぇ」
長々と読了ありがとうございました。
デジャブの表現がおかしいと思うけど、どう直すべきか分からずとりあえず投稿。とりあえず分かってもらえたらいいんですが。
まだまだ先は長いので、暇を持て余している方がおられたらどうかよろしくお願いします。
挿絵とかって需要あるんですかねぇ?