Monster Maker ResurrectionRPG FAN SS- Monster Makers' Conflict-   作:Tale=Reaper

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 そして、旅立ちへ


プロローグ2:詩人少女の旅立ち(修正済)

 井戸から桶に水を汲んで顔を洗う。完全に目を覚まして、私が『リュミール』だと確認する。それが私の朝の日課だ。

転生者の私はこうしないと、今の自分が誰なのかが分からなくなることがある。

 でも、団の天幕で寝起きして顔を洗って目を覚ます日々も、今日で終わりだ。私は明日、旅立つのだ。

 『リザレクション』、それが今、この世界を席巻している現象だった。ある日突然、『お告げ』が届いて、それを遂行することで

失われたものがウルフレンドに帰ってくるという、謎の現象。黒幕は神か悪魔か、はたまた精霊か誰にも分からない。けれど、

世界が『冬』から脱却しつつある事、そのために必要な試練なのだという解釈で一致していた。

 

 長い冬の時代の終わり頃に私は転生した。親は分からない、物心ついた時には旅の一座の一員だった。

 旅の興行一座『エリミネッタ』の歌姫、それが今の私だ。私の一番古く一番印象深いの記憶は、ずっと昔の記憶だった。

 

 『乙女たちの戦争』という、今では伝説として語り継がれるずっと昔の争い。男と女が分かれて国の主権を争った戦い。

 吟遊詩人という他国に出向いて見聞きしたことを詩にする仕事上、女性とはいえ私への扱いは悪くはなかったけど居心地は良くはなかった。

 あの騎士ツチラトと出会うまでは

 彼とはその後も出会っては別れを繰り返した

 そして、あの滅亡戦争の後で、世界に召喚される『カード使い』のいた世界の一つへ私は転生した。それが先ほどの悪夢だ。

 『未確認生命体』と呼ばれる怪人たちが行う人間狩り、それに巻き込まれて私は死んだ。せめて囮になってでも助けた親子が無事であってくれればと願う。

 あの世界での死の後で、私はまたウルフレンドへ転生した。記憶を取り戻したのは、つい最近になってからだった。

 今もなお、『冬の時代』と呼ばれる不毛な悪夢の時代は終わっていない。もう千年ほど経つはずなのに。

 そして、転生したら私はまた会えると信じていた。でも、そこにはツチラトはいなかった。ボレソラン団長の話では、光も闇も、有名なネームドは

まだ世界にいないらしい。ネームドは時々見かけることはあっても大戦終結前ほどはいない。幸い、闇の軍団も同じような状態だった上に、主力の騎士団は

石化して海底に沈んでいたため、光の不在に好き勝手する奴はいなかった。だから、破壊もなければ冒険譚も無い。誰もが恐怖する悲報も無い代わりに、皆が希望を抱くような朗報も無い。

 『侵略者』もいなかった。これも団長から聞いた話では、あの戦争の後でセントーラは、崩壊して海中に没したそうだ。『侵略者』たちは生存者を回収して離脱した。

当然、世界各国は『侵略者』の報復を恐れた。特に、『侵略者』の顔に泥を塗る形で先頭を継続して滅ぼされた『フェニキス』の友好国は。しかし、

生き残ったセントーラの住人が『侵略者』を説得してくれたおかげで矛を収めてくれたらしい。

 『侵略者』のほうも、フェニキスも滅ぼしたことで留飲を下げられたことと、倒すべき目標が当面なくなったこともあるのだろう。

 だが、これでめでたしとはいかなかったらしい。他の光の勢力も世界の状況を考慮して和平を結んだものの、その後の対応がいけなかったそうだ。

 何をするかわからない相手でもあるのと、一部からの要望で『経済制裁』をしたところ・・・向こうの返答は対話ではなく武力行使だった。

 かくて、再び戦争は起こった・・・というのは定かじゃない、それは今までの苛烈な攻撃と比較したら、ひどく生ぬるいものだったらしい。

 当時すでに『侵略者』総司令が宇宙へ撤退していて、戦端を開いたのも残った司令官の独断だったそうだ。しかも攻勢を強めるどころか、相手の足元を見るかのような

手加減をしていた。それまでの評価が嘘のような、ただ押しては押し返すだけの、ひどく消極的な戦闘とも呼べない小競り合い。双方とも大した損害も出さないままソレが続いた。

その小競り合いの間に『侵略者』は侵攻先の各地から次々と数を減らしていき、最終的に残っていた司令官が姿を消して戦闘は自動的に終わった。

 つまり、『侵略者』は最初からまともに相手にする気など無かったのだ。引っ越しが決まったところに横槍を入れてきた勢力を邪魔しないよう追い払っただけだったのだろうというのが

団長の見解だった。

 こうして、空の上から来た招かれざる客人たちは深い爪痕だけを残していなくなった。

 ただ、団長の予想だと、置いて行かれた残党や本隊が帰還のために残した駐在要員、そして最初からこの地に根付くつもりだった移住班などがいる可能性が高いとのことだ。

団長の予想が本当なら、特に『本隊が帰還のために残した駐在要員』がいるとするなら、彼らはまたこの世界に戻ってくるつもりだということだろう。

 

 そして、「侵略者」がいなくなっても状況が好転したわけではなかった。先ほども述べたけど、悲劇もなければ喜劇もない不毛な時代なのだ。戦争で文明は崩壊していて、

ずっと昔に営まれていた暮らしをみんなが余儀なくされた。便利だった道具も、もう使えない。食糧難や疫病、自然災害やモンスターに怯える生活が当たり前になった。文明崩壊前は

活躍していた銃も火薬も、もう今は無い。唯一それらの文明を維持していたフェニキスは『侵略者』に完全に破壊されて、生存者どころか痕跡すら残っていない。

 一方で、断崖絶壁の向こうの孤島という地理的な条件のおかげで大戦の影響から免れた『レオスリック』も何故か同様だった。団長の推測では、大戦を二度と起こさないために

大戦で使われた兵器やその資料は処分されたのだろうということだ。

 

 あの世界に転生する前の話になるけど、私はウルフレンドに転生する都度、ツチラトを探す旅に出ていた。旅を続けるうちに大体は病に侵された。

そして病で死んだ私は、他の世界に転生したりもした。

 その転生人生の果て、大戦終結から約千年後の世界である今へ、旅の一団に拾われた子へ私は転生しているわけだ。

 どういうわけか、一座のボレソラン団長は、情報にやたら詳しい。まるで世界を空の上から見てきたかのような物言いをすることもある。不思議な人だ。

 そして最近、私は記憶を戻すと同時に啓示を受けた。『迷える闘士を助けよ』と。そのリザレクションはツチラトの救済かもしれない。また会える、今度こそずっと一緒にいられる。

そう信じて私は、また旅に出ることにした。

 団長に打ち明けたら、あの人はすべて悟っていたようで私の旅支度の荷物や路銀まですでに用意してくれていた。本当に彼女は不思議な人だ。思えば、これまでもこういうことは

あった。予言の力でもあるかのように、魔物の襲撃を避けたり、お祭り騒ぎの村に行き着いたり、私がこの一座に加わる前からそういうことがあったのだと他の団員から聞いていた。

 

「それじゃあ、行ってきます。」

「気を付けてね。」

  

 旅立ちの宴を開いてくれた翌朝、ボレソラン団長は母親のように私を送り出してくれた。他の団員たちの声援を背に、私はお世話になった一座を後にした。

 今は、不毛な時代だけど比較的安全でもあった。今ならまだネームドはまだ完全には戻っていないのだ。つまり、光も闇も完全に復活はしていない。

『侵略者』もいない。オークは国を失って、統率がなくなっているから大規模侵攻も無い。もっとも、ここはシャルトン半島のカスズの周辺だからオークの軍が来る事もないだろう。

 

 団の幕を去って数分後、思い出すのは一座の皆のことだった。苦楽を共にしてきた、家族のような人たち。特に団長の娘のあの子は私が赤ちゃんの頃からお世話してあげた妹分だった。

そういえば、おしめを替えてあげてもいたなと思い出す。私の旅立ちを知った後で泣きついてきて、宴の間に泣き疲れて眠ってしまった。あの子が寝ているのを確認してから旅立ったけど、

別れの挨拶くらいはするべきだったかな?

 そんなことを考えていたら・・・。

「リュミールお姉ちゃん!」

 私の背後から小さい子がぶつかって来た。

「え、なんであなたが!?」

 ぶつかってきたのは、一座のマスコットの軽業師の少女『ベステラ』だ。私がついさっきまで回想していたボレソラン団長の一人娘で、興行先の街での宣伝に一役買っている

11歳の可愛い妹分。団長の子供と言っても実の子供ではない、そもそも団長は独身だ。

(ただし彼女へ「行き遅れ」などと口に出す命知らずは団には居ない)

 ある日突然、団長が自分と同じ色の髪をした乳児を拾ってきたのを思い出す。彼女はその赤ん坊をヴィシュナス様から預かってきたという話だった。

「私もいっしょに行く!

 行かせて、ママの許可ももらったから!!」

 やられた、と私は悟った。思えば宴の間中、静かすぎた。泣き疲れて寝ているだけだと思ったのが私の誤算だった。そもそも、彼女が母親の団長に相談しないわけがないのだ。

 今朝も寝ているふりをして、ずっと機会を伺っていたのだろう。私は後ろ髪をひかれる思いでゆっくり歩いていたから、当然あっさり追いつける。ましてベステラは一座が誇る軽業師だ。

身体能力は大人顔負けといってもいい。それに団長が一枚噛んでいるとなると断る理由はなかった。団長が許可したということは『許可』というよりも、むしろ『連れて行って欲しい』という『お願い』だ。

 ボレソラン団長は、ただ娘に甘いだけの母親ではない。きっと何かをまた予見したんだろう。

 今、世界で起きている『リザレクション』は、良いことだけじゃない。光も闇も完全に復活はしていないが、あの悪名高い「闇の軍団」のネームドの何人かは、すでに復活して活動をしていると団長から聞いた。

こんな時代だ、正義や善より力ある者のところに人は集まる。たとえそれが、悪人であっても。

 私の旅にこの子が必要なのか、それとも私がこの子の旅に必要なのかは分からないけど、はっきりしていることは一つだけある。

 私は絶対に守り抜いて見せる、私を「お姉ちゃん」と慕う大事な妹分を。

 こうして私とベステラの、二人の旅は始まった。ウルフレンドのあちこちで事件に巻き込まれる大冒険になると知らないまま。

*

*

*

 笑顔でリュミールを送り出した後、合図をした。娘は手筈通り、すかさずリュミールの後を追いかけて走り出した。と思ったら踵を返して自分に抱き着き「いってきます」と言ってから走り去っていった。

 してやられた。不覚ながら少し泣いてしまった。あの子はあの年齢で、かなり聡い子に育ってくれた。ボレソランはそう思いながら私室に戻った。

 思い出すのは、前世の記憶だ。忘れることはない。それが当たり前と思っていたが、記憶を維持する転生者はネームドにおいても珍しいのだと知って驚いた。

 トラックで殺戮を繰り返す未確認からは助かったものの、後日、娘と買い物に出かけた時に鳥のような未確認に殺された。娘が空を指さすのと周囲の人間がバタバタ倒れるのとが同時。気が付いたら自分も娘も倒れていた。

 どういう縁か、この世界に一人転生して、しばらくしてから記憶を取り戻した。『ウルフレンド』というのは聞いたことがあった。転生前のあの世界にあった『モンスターメーカー』という作品の世界の大陸の名前だ。

 ハマっていたゲームだったことが幸いした。あのゲームの通りなら、誰を頼り誰を避けるべきかが分かった。そして記憶を取り戻した後で知識を頼りに『リザレクション』を完遂し、藁にも縋る思いで『導き』に従って

ヴィシュナスに出会えた。そして、また娘を授かることができた。旅の中で出会い仲間になったパーティーは、そのまま旅芸人の一座になった。

 でも、やることは終わったわけじゃない。あの時、自分と娘を投げ出して助けてくれた女子高生たち、あの子たちへの恩をまだ全部返したわけじゃない。

 それに、まだ恩人はリュミール一人しか見つかっていない。彼女の前にトラックからかばってくれた子も、その姉妹もまだ出会えていない。

もしかしたらこの転生しているかもしれないと思いながら探してはいるが、情報はまだない。

 色々と思い出しながらボレソランは机の中から『カードケース』を取り出した。この『カードケース』は、かつてヴィシュナスから一度は死に別れた娘と共に授かったものだ。中では自分の仲間のモンスターたちが

健康状態を最良に保ち維持したまま眠っている。

 『リザレクション』の旅路で仲間になったのは一座の皆だけではなかった。出会い仲間になったモンスターたちは、今も従い力を貸してくれている。

 ボレソランの団がうまくやっているのは、団長たる彼女が異世界からの召還者『カード使い』であるからだった。危険な魔物がいる場所、盗賊がいる道は斥候を放って確認し避けて通った。自分たちを狙う避けて通れない戦いのときは、

相棒たちを召喚したり使いをやって助けを呼んだりした。もちろん、一座の皆は元とはいえ腕利きの冒険者たちだ。並みの相手では敵ではない。そう、並の相手だけなら・・・。

 一度だけ襲来した、あの冷たい男を思い出す。あいつは明らかに娘を、ベステラを狙っていた。その時のことを思い出すと、今でも恐怖を覚える。そして犠牲になった『あの少女』のことも申し訳なく思う。だから『やつ』について調べ、

その弱点の道具も知識も蓄えていた。幸い、自分の世界の伝承にあったのと変わらないから、用意するのは容易かったが。

 そんな経緯を思い出しながら、ボレソランは『カードケース』を見た。

「どうしたのかしら?」

『カードケース』は淡い光を放っていた、何かを教えるように。

 

(つづく)




解説:「ボレソランとベステラについて」
北欧神話に出てくる巨人です
有名な巨人のユミルの一族にいる霜の巨人の「ボルソルン」
その娘「ベストラ」が名前の由来です

解説:「侵略者」
「宇宙商人」とのリンクが小説リザレクションであったので
「世界の外=宇宙から来たカード使いの組織」として出しました
「色々な異星人・異世界種族の寄せ集め」「高度に発達した文明を持つ」
「とある種族が中央にいる」と、いう設定が今のところです

解説:ボレソラン団長の前世
いわゆる「プレイしていたゲームの世界に転生した人」です
娘が転生していることを信じてアレコレ頑張り、見事にリザレクションをリザレクションが始まる前に達成するという
前代未聞の奇跡をやってのけました(滝汗)

ではまた
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