Monster Maker ResurrectionRPG FAN SS- Monster Makers' Conflict- 作:Tale=Reaper
スタートです
「ヤコブレイトが、メルキアに侵攻を開始しただと・・・?」
その情報に、キルギル王は恐れた
彼が王になったのは、ごく最近である
それも、『運が良かった』
ただそれだけが原因だ
先王は老齢になっても元気だった
しかし子宝に恵まれず、後継者も決めていなかった
側近らの要望に根負けする形で、先王は後継者を決める試験を行った
試験の最中、先王の子供が見つかったのだ
それが今、玉座を温めている男だった
すでに成人していた彼は、母である先王の元侍女から
常日頃、自分の父親が誰であるのか聞かされていた
しかし彼は、それを病に侵された母の妄想と思っていたらしく
母の病死の後もキルギルにも城にも顔を出すことなく
生まれ育った田園地帯で過ごしていた
先王が情報を知った時には、冒険者となり旅立った後だった
先王が彼を後継者に決定し、その捜索を命じたのと同時に
試験に合格者が出た
後継者を決定した先王にとって、もはや試験も合格者も邪魔者でしかない
「合格者を消し、試験を終わりにする」
側近らとの秘密の会議の末にそれは決定した
そしてそれが実行された直後、先王は死んだ
合格者に付き添っていた父親が、先王の心変わりを見抜いていた
そして、約束の反故を目の当たりにした瞬間
躊躇なく先王の首を刎ねた
突然の凶行に呆然とする側近らに構うことなく、
合格者一行は窓を割って脱出した
その直前に残されていた魔術を込めた宝石は、脱出の数秒後に炸裂
側近らは宝石の火炎魔術により全員が死亡した
その後は混沌としか言えない混乱の日々だった
後継者のことは先王と側近らを含む、ごく一部しか知らない情報だ
王位を望む連中がそれを口にすることはなかった
ライバルは一人でも少ないほうがいい・・・
彼はそれまでの天国から一転、暗殺におびえる日々が続いた
しかも、為政者とその閣僚全員がごっそり消えた事実は
キルギルとその周囲に一時的な無政府状態をもたらした
だが、後釜を狙う貴族・王の親類はそれを顧みることなく政争に明け暮れた
暗殺が本格的に横行するようになるまで、それほど時間はかからなかった
しかも王位が彼の手に渡ることは
競争への参加者全員が脱落しない限り望めない立場だった
王さえ存命なら、確実に彼は王だっただろう
王位を諦めて身を隠すか、あるいはゾラリアに行き有力者の後ろ盾を求めるか
それとも、闇の軍団に・・・・・
彼は悩んだ
あの日、「旅の占い師」を自称する赤い髪の女が彼を訪ねて来るまでは・・・
回想を終えて、王は考えた
あの女が来てからの彼の人生は順調だった
次々と暗殺や病や事故で消える競争相手
例の合格者とやらも行方は知れずだ
赤い髪の女の言うとおりにしただけで、ほぼ自動的に
一度はあきらめかけていた王位は彼に転がり込んだ
特別なことは何一つしていない
ただ会合に欠席したり、遠出を避けたりといった予定変更をしただけ
”偶然”オークの襲撃から生き延びたり、毒殺事件から難を逃れたり、
生存者皆無の落石事故から免れたりしただけだ
赤い髪の占い師がどこの誰なのか、彼は知らない
少なくとも敵ではないことが、唯一の安心材料だが、それで十分だ
そして、今のこの事態への対処方法も彼女から聞いていた
「キルギルを、この城下町を封鎖しろ!
誰一人として外へ出すな!」
もはや彼に、自分の頭で考えるというアタマは無かった
キルギルはケフルに唯一協力し『大戦』以前からオークを押し返しす協力をしていた都市である
この命令がどういう混乱をウルフレンドにもたらすかさえ
少し考えれば分かりそうなものであるのに・・・
同時刻ケフルでは伝説のオーク王グレードンの復活の話題で
戦々恐々としていた
今はリザレクションの時代だ
『炎の魔女』の復活、デーモンロードら悪魔族の侵略の再開
そして、悪魔の生贄になったはずの女闘士の帰還があった
闇の軍団も復活を果たしたのだ
過去に出現したヴィランネームドたちが蘇っても
なんら、おかしくはない・・・・・・
そうでなくとも、ブルグナからのオークの襲撃は絶えない
さらにヤコブレイトからの亡霊ドラゴンライダーの復讐が重なった
突然の悪天候で城壁を含めて多大な被害が出たのも痛かった
この悪天候が、ヤコブレイトの『気象兵器』としての能力などとは
人々はまだ知らない
この踏んだり蹴ったりな状況下で、悪夢のような知らせが届く
「キルギル王が、キルギルを封鎖しただと・・・!?」
ケフルの上層部は大混乱に陥った
現在、キルギルからの援軍・補給は出し渋りをし危機を直視しないメルキアにおいて
ほぼ唯一といってもいいケフルの生命線だった
「大戦」以前も同じだ、キルギルの協力がなければ、とっくの昔にメルキアは
もっと奥地までオークに蹂躙されていただろう
火薬が発明されるまではヒューマンの生息地は、ごっそり削れていただろう
そんな歴史があり、かつてはヒューマンだけでなく
エルフやシャーズらの連合軍を結成して対抗していた時期もあった
だが、「大戦」は、それ以前の歴史はすべてを変えた
傲慢なヒューマンは火薬という力を得ると、悩みの種だったオークの国を滅ぼした
脅威がなくなると、同盟していたはずのエルフやシャーズらにまで牙を剥いた
争いが争いを、憎しみが憎しみを生んだ
それは「大戦」へと結実し、世界は滅んだ
長い冬の時代が終わり、ようやくウルフレンドを含む世界は再生を始めた
だが、ヒューマンの愚行が生んだ業は消えなかった
シャーズにもエルフにも援軍を頼むことなどできない、虫が良すぎるというものだ
それ以前に彼らもまた復興の最中であり、そんな余裕などない
肝心のヒューマン社会の問題が最も深刻だ
オークの進軍が他人事であるかのようにどの都市も振舞った
オークを駆逐した火薬も銃も、今はもう無いのに・・・
援軍の派遣に腰が重い各地が頼りにならない今、
ケフルの支えは必然的にキルギルと街に来る冒険者が頼りだった
「ひょっとして、キルギルは陥落したのではないか?」
そんなウワサもケフルの中で流れ始めていた
グレードン王の恐ろしさは、その統率力だけではない
彼は、まさしくオークたちの歴史における革命児だった
ヒューマンの戦法・戦術・戦略を取り入れ自軍へ反映させ
ヒューマン国家のメルキアに辛酸を幾度となく舐めさせた
彼の傍らにヒューマンの学者がいた
あるいは黒い魔術師が、もしくは双方がいたという伝説もあるが
定かではない
ただ、彼が最もメルキア陥落に王手をかける位置にいた王であり
その後に続くオークの侵攻にも多大な影響を与えた人物なのは
揺るぎない事実である
*
*
*
私はリュミール、突然の戒厳令と封鎖に驚く吟遊詩人だ
ケフルへ続く方角の門の前は大混雑だった
ケフルへ増援に行く予定だった冒険者たちや兵士の志願者たちが
口々に不満と危機を訴えている
ウワサには聞いていたけど、オーク王グレードンの復活は
どうやら本当のようだ
だったら、こんな戒厳令で得をするのはグレードンたちだけだろう
援軍と補給が滞っている間にケフルを落とせば、
そこを足がかりにメルキア各地に侵攻するだけだ
などと考えていたら、
「うわああああああ!」
叫び声と一緒に誰かが飛んできた
「わぷっ!?」
私は思い切り、その子にぶつかって地べたに背中を打ち付ける
「あ、リュミール!
やっと会えたね!!」
「いたた・・・もう少し、感動的な再会を期待したんだけど・・・」
ぶつかってきた少女は、ドミニクだった
鍛えたせいか、以前より筋肉量が増えているのが体に触れて分かる
それより、早くどいてほしい
筋肉は脂肪より重いんだから・・・・・
「ドミニクお姉ちゃん、大丈夫!?
あ、リュミールお姉ちゃん!」
ベステラも一緒だった
この子はうまいこと人込みを避けながら軽い足取りで駆けてくる
軽業師として、だいぶ成長したようだ
「二人とも、心配かけたわね
私はこの通り大丈夫よ」
私はその場で経緯を説明した
そして・・・
「心配いらないわ、あなたの主を裏切りはしない
マリオン捜索は必ず果たすわ」
後ろを振り向きながら私は言った
「モンクと・・・・・あら?
その子供は、サーカスで見た記憶がありますよ?」
どうやら、ニコトエさんは私がいたエリミネッタ一座の興行を見たことがあるらしい
「なら話が早いわ、私はそのサーカス団で育てられたの
この子は、団長の娘さんで私の妹分よ」
「ベステラと申します
綺麗なお姉さん、よろしくお願いします」
・・・時々、この子のコミュ力と機転が怖くなる
「私は、ドミニク!
戦う僧侶だよ!」
私はドミニクを捕まえて抑えた
「頼むから、ここで震脚とかしないでちょうだい
衛兵に牢屋にぶち込まれるわよ?」
彼女の耳元で囁く
「なかなか、楽しそうなご友人方ですね」
ベステラの頭をなでながらニコトエさんは言った
寂しげに
「そういえばさ、マリオン探してるの?
ついさっきまでそこにいたよ」
私は糸が切れた操り人形のように倒れた
ニコトエさんは綺麗に仰向けに倒れる
「わー、二人ともどうしたの!?」
ドミニクが慌て始めた
「・・・最初から、あなた方にきちんと依頼すべきだったと
後でミッドガルダ様に進言しておきますわ」
「うん、私も想定外だったけどね」
少なくともマリオンはこの町のどこかにいる
そして封鎖されたキルギルからは彼は出られないだろう
あとは、マリオンを探してここから出るだけだ
後で聞いた話だけど
私たちの様子を監視していたミッドガルダは
後の反動が恐ろしい勢いで笑い転げたらしい
*
*
*
あたしは、アルボア
闇の軍団に雇われている、ベングの女闘士だ
あたしの頭じゃ、さっぱりな内容のキルギル攻略の話し合いは終わった
ホエイはこの場にいた別の悪魔と二言三言交わすと
「では、私は別件があるので」
そう言いつつ、あたしへ抱き着いた後で消えた
・・・いや、消えてほしくなかったな今だけは!
他のメンバーがこの場にいるとはいえ
ホエイ以外の悪魔と同じ部屋の中に、あたしはいる
しかも、ヴァンパイア・ノーブルとかいうアンデッドの王と
アイツには悪いけど、悪魔にはあまり良い印象がない
あいつらの王の生贄にされた恐怖も苦痛も精神に刻み込まれている
記憶が消えたところで、それだけは絶対に忘れることはないだろう
無視してくれるんならいいけど、向こうは明らかに
あたしを気にしていた
そいつは人の姿をしているけど、人じゃない
端正な顔立ちに貴族だと分かる服装、ホエイよりも白く美しい肌
視線を合わせちゃだめだと、あたしの頭の中で警鐘が鳴り続ける
怖い
魔王に食われた記憶がフラッシュバックする
なんで、あいつは肝心な時に、あたしの傍にいないんだろうかとさえ思う
そこのヴァンパイアがアイツにとって気心の知れた上司の可能性に賭けるしかない
ホエイの話しぶりから、悪魔同士は割と仲がいいことが分かっていた
だから、魔王のお手つきでアイツへの褒美でアイツの女である
あたしに手を出すようなことはないだろうと思いたい
「そこの女、彼の者のモノに手を出す気はないから
安心しなさい」
怯える子猫を安心させるような感じの声を、悪魔からかけられた
いや、まさしくそいつにとって、あたしは子猫同然だろう
それも配下のペットの
あたしにとって幸運なのは、少なくとも相手は
ホエイとは関係良好な悪魔で、あたしを丁寧に扱いそうだということくらいかな?
「あ、うん、はい」
あいまいな返答が口から出た、ヴァンパイアはクスリと笑う
まるで毛糸球にじゃれつく子猫を見る目で
目にハートマーク浮かべる勢いで来られるよりはマシかな?
誰とは言うまでもないけど
「すまぬ、アルボアは話すのが苦手だ
返答なくとも大目に見てほしい」
モンタズナ様が取りなしてくれた
「そのあたりは、あの骸魔---ホエイから聞いています」
あのバカ、やっぱり仲間内に自分の彼女自慢してたらしい
いや、あいつだけのせいじゃないだろう
「そうか、我よりもアルボアは有名か?」
なにせアイツに下賜されるまで魔王の食べ物だったんだから、あたしは
「まぁ、あのホエイが自分から選んだ相手ということでは・・・」
悪魔が発した言葉に、あたしは耳を思わず傾けた
「彼の者は、恋愛関連に興味を示さないことで有名だったのです
それが、最近になって急に恋愛するとか・・・
異世界に用意した保険まで潰されて
ずっと深海に封印されていたせいで、心境に変化でもあったのでしょうね」
別の世界にも保険用意していたのかよ、あいつ?
随分と用意周到なことで・・・
まぁ、悪魔自体がウルフレンドの外の世界から来た侵略者だから
そういうことしてても不思議じゃないけど
「さて、グラナールにアルボア、セシリアよ
一働きしてもらうぞ」
やっぱりまたコイツと組まされるのか
間にセシリアでも挟んでおこう、こいつグラナールのこと好きっぽいし
「私らも行くよ」
他の闇の三姉妹に長女イフィーヌが声をかける
奇しくも、かつての『水色の魔女』をめぐる旅と似た構成のパーティーが完成した
あの時との違いは、ミリエーヌがいないことと
メンバーがさらに増えていることくらいかな?
*
*
*
「そういえば、隠し子がいるとかいうお話は、ありましたね」
同時刻、別の場所
二つの影が会話をしていた
「そこまで知っていながら、放置していたのですか?」
「放っといても何もできないと判断しました
まさかあの生存競争を生き抜くとは思いませんでしたが・・・」
もう一つの影は言葉に詰まった
目の前の悪魔の判断は正しい、予測も適切だ
自分が介入したりしなければ、あの弱い後継者は早々に脱落していただろう
話しぶりからして、悪魔は自分の介入は知らないらしい
「あの場にはいなかったでしょうから、私の顔は知らないでしょうね
関係者に片っ端から記憶消去も施して、我々の痕跡は残らず消しましたし」
沈黙を話の続きの催促と受け取ったのか、悪魔は話をつづけた
介入に気づかれなかった事に内心ほっとしつつ、
敵意が皆無であることも確認できたのを喜ぶ
今はまだ、悪魔と対立すべき時ではない
この世界は「大戦」で一度死に、また生まれ変わったばかりだ
悪魔族の本格的な攻勢を受けたら、ひとたまりもないだろう
幸い、『炎の魔女の復活』と『ロードの敗北』は
それを招くには至らなかったようだが
「ただ、彼の玉座もいつまでもつか分かりませんね
グレードン王が復活した今になって封鎖など
オーク側にとっての利しかありませんから
いずれ、ケフルから刺客が来るなり、
足止めされた冒険者に討たれるなりしても、おかしくないと思います」
その可能性はもう一人の影---占い師も考えていた
もう少し使える男だと思っていたが、自分の操り人形になりすぎだ
あのランスロットとかいう貴族でさえ『自分で考える頭』は持っていたと
占い師は回想した
「それは困りますね
彼には、もっと長生きしてもらわなければ・・・」
占い師は、頭の中で思い浮かべた
もうすぐこの国の王になるはずの青年を
(つづく)
<解説>
カード「戒厳令」:
筆者が入手して文章見た瞬間に二度見したカードです
グレードン王:
筆者が大好き
「ドラゴンライダー」読者で彼の生き様に惚れたMMファンは
少なくないことでしょう
もうすぐこの国の王になるはずの男:
ぶっちゃけると、エンデ様です
『リザレクションRPG』に掲載されているリザレクション前日譚では
すでにその時点で『彼女』は”息子”を出産していることが明らかになっていました
ではまた