Monster Maker ResurrectionRPG FAN SS- Monster Makers' Conflict- 作:Tale=Reaper
「そうかい、そいつは面白くなってきたじゃねぇか!」
数多の魔族がひしめく悪魔の居城『ヤコブレイト』の中に特別に作られた一室で
かつての竜騎士の転生者であるヤン・ジシュカ将軍は笑った
彼にはたった今、ケフルがキルギルに攻め込む可能性を示唆する情報が届けられたところである
ただ攻め込むだけではない、ケフルは城を放棄してキルギルを最終防衛ラインにするという話だ
「ケフルを放棄したところで、事態が悪化するだけだと
地図を見れば分かる気がするけどねぇ?」
真っ赤なフードを被ったシャーズの女性が水晶玉の中から呟いた
「今も昔も人間なんてそんなもんだよビーリア
っと、今はヒクイドリ将軍と呼ぶべきだったかな?」
「どっちでもいい、呼びたい方で呼んでくれれば構わないよ」
二人は今後について話し合った
ケフルの放棄が確定すれば、そこを失うだけでは済まないだろう
ケフルの産地を含む広い範囲がオークたちに統合されることになる
それだけではない、オークたちは選択肢を手に入れることになる
そのままキルギルに攻め込むか
それとも、エルセアに行くかだ
ジシュカ将軍は後者を選ぶと踏んだ
グレードンは賢い王だ、船団もすでに編成済みと聞いている
海と陸からエルセアを挟み撃ちにすれば、あそこは落ちるだろう
「いずれにしろ、愚かな選択をしたな」
ジシュカ将軍は、かつての仇敵たちが墓地の中から己の行いを
ドラゴンライダーたちを滅ぼした罪に対する大きすぎるツケを悔いるのを想像しながら笑った
*
*
*
「これは、まずい」
グリンは一度ルフィールらと別れてブルグナに戻ったが
すぐに引き返してきた
そして告げた、「グレードン王は復活している」と
それに前後する形で、ヤコブレイトの襲撃が始まった
明らかにヤコブレイトはオークたちと協調していた
部隊を出しても悪天候で疲弊させられ、そこをオークたちに奇襲される
そんなことが続いていた
「オレ、もう戻らない」
そんな中でグリンは故郷を捨てることにした
アリクレールと侵略者の将校を討ち取り英雄となった自分が戻っても
グレードン王という古来からの大きな英雄が戻った以上、意味はない
なら、ルフィールたちの英雄であろうと彼は決意した
「グリン、いいの?」
「気にするな、誰も悪くない」
ルフィールたちがいるのは、ケフルの中だ
ここが放棄されても彼女らは残ることにしていた
負傷者や病人、幼い子供に妊婦に老人・・・
キルギルへの移住についていけない人々は大勢いた
さすがのケフル上層部も、家族を残していけない兵士たちの意思までは無視できない
決死隊としてここに残る決定をした兵士もまた少なくない人数いた
彼らヒューマンだけではない
グレードンに従わないオークたちや、ブルグナにいた他の種族も逃げ込んできている
当初こそ受け入れに困難を示したケフル上層部だったが、
『ケフルの放棄』が策として出てきた今、門を開放し受け入れていた
メルキアは彼らを受け入れない
ここが彼らにとって最後の砦になるだろう
死に物狂いで戦う決死隊は多いほど時間稼ぎになる
そういう思惑で受け入れたのだ
ルフィールたちには『見捨てられない理由』が、あまりにもケフルには多すぎた
*
*
*
私はリュミール、仲間たちとともにマリオンを迎える旅の吟遊詩人だ
「母が、私を探しているのですか」
「はい、とても心配していました」
言葉が片言になるのは仕方ない
あらゆる吟遊詩人の憧れのネームドが今目の前にいて
私たちは彼と会話しているのだ
「しかし、母は、ミッドガルダは・・・」
「分かっています、だからこそあなたに彼女に会ってほしいんです!」
私は説得を続けた
状況はかなり危機的だ
私一人の問題じゃない、メルキアが滅びるかどうかという所まで迫っている
ドミニクからルフィールちゃんたちがケフルに言っていることを聞いて、
私の決意はなおのこと固まった
ケフルのケフル放棄を断念させるには、キルギルの封鎖を解くしかない
最悪、ミッドガルダに王を脅してもらうことも手の内に入れることにした
仮に闇の軍団の誰かが王の背後にいても、魔女ミッドガルダに勝てる奴はそうそういないだろう
「分かりました、母に会いましょう
ですがその前に、私はキルギルの王に会わなければなりません」
「ありがとうございます、私たちも護衛として付き添います
危険は承知の上です!
でも、あのグレードンに蹂躙されるほどの危険ではない、違いますか?」
マリオンが何かを言う前に私は畳みかけた
「分かりました、自分の身は自分で守ってください」
マリオンは笑いながら私の同行を許可してくれた
*
*
*
あたしはアルボア、闇の軍団に仕える女闘士だ
「これは、まずい」
そんな言葉が主の口から洩れるのは珍しいんだろう
イフィーヌが少し慌てた様子で主へ問いかけた
「いかがなさいました、ディオシェリル様?」
水晶玉を覗き込んでいた赤い髪の魔女は、イフィーヌへ言った
「マリオンが、王の城へ行こうとしている
説得をするつもりだと思うわ」
さすがに「力づくで止めよう」などという無知なバカは闇の三姉妹にはいなかった
万が一でもマリオンに傷一つつけようものなら、ミッドガルダは本気で怒るだろう
ディオシェリルも恐ろしいけど、あのミッドガルダは桁が違った
神代の頃から存在するネームドだ
それに加えて浮遊城とハーピィの軍団は闇の軍団であっても脅威として十分過ぎる
復活間もない闇の軍団には、まともに戦っても勝ち目はないだろう
そうなったら、あたしは逃げる
おあつらえ向きに、ホエイの息子(義子らしい)の奥さんが浮遊城に身を寄せているという話だ
あいつの名前とかを出せばミッドガルダの城の中に匿ってくれるだろう
「アルボア、あんた逃げようとか思っていないよね?」
「どこへ?」
イフィーヌの突然の質問で、あたしの思考は中断した
そして恐ろしく間抜けな返答をしちまった
けど・・・
「違いない、ディオシェリル様を裏切ったら
あの悪魔の加護も無意味だと分かっているようだね」
全然そんなことは思っていないんだけど、一応頷いておいた
その「悪魔」は今この場にはいない
ディオシェリルと一緒にいたかと思えば、今は彼女と別れて別行動中だ
「マリオンは仕方ない、放置しましょう」
ディオシェリルはそう決断を下すと、策を話し始めた
「それって、バレたらまずいんじゃ・・・」
「バカだねドローネ、バレなきゃいいのさ!」
ろくでもない策を思いついたらしい
あたしはイヤリングの宝石を通して、モンタズナ様がこれを知ってくれることを祈った
*
*
*
キルギルの城門に一組の男女がいた
「通ってよし」
禁じられているのは出すことである、入れることは禁止されていない
臆病なキルギル王は食料も兵力も集められるだけ集めようと躍起だった
だから・・・・・・
「簡単に入れたな、おっちゃん」
「ああ、オレも拍子抜けしたぞ」
二人は旅の親子という話だ
一人は赤い髪の若い女性商人、もう一人は鍛えられた筋肉の壮齢の戦士
元冒険者の父親が行商人として成功した娘を護衛している、そんな筋書きだった
「すまないメアリ、できればお前を巻き込みたくなかったが・・・」
暗殺ギルド手配の宿の部屋で、男は口を開いた
ここなら聞き耳を立てられる心配はない
情報を漏らす者はギルドが始末してくれる
最も安全な場所だ
「かまへんで、どうせウチらがしくじったら
ケフルの孤児院にいるあの子らの命も危ないんや」
詳しい人間なら、片方は商人メアリだと分かるだろう
もっと詳しいなら、彼女のかつての名前も知っているだろう
赤い髪の暗殺者「ブラッディ・メアリ」の名を
そこまで行きつけば、もう一人の男の素性は自ずと判明する
「キルギル王を一刻も早く暗殺し、ケフルへの往来を取り戻す
それが今回のオレの仕事だ」
その名前を聞いただけで裏社会の誰もが怯え、
目の前に立つだけで貴族であっても死を覚悟する男、
暗殺者ゴランは依頼内容を暗唱した
(つづく)
<解説>
解説:すぐに引き返してきたグリン
公式の流れです
英雄になりたての彼では、グレードン王という
伝説の英雄の知名度には勝てなかったようで・・・
解説:暗殺者ゴラン
公式でメアリさんの育ての親です
モンスターメーカーのコミック第二部で明らかになった
メアリさんの素性にも登場していました
暗殺した相手に子供がいた場合、引き取って育てており
メアリさんもその一人だったとか
それでも彼女は暗殺者ゴランを実の父親のように慕っていました
いうまでもなく、相当数の弟妹を養うことになっています(これも公式)
ではまた