本文中で童磨を侮辱するため、「童貞」という言葉が使われますが「童貞」という言葉が侮辱的な言葉として使われるようになったのは20世紀後半で明治後期や大正ではまだ「童貞」という言葉は褒め言葉として扱われてました。しかし、当小説では時代を先取りして「童貞」を屈辱的な意味合いとして扱わせてもらいます。
いいですか、本来は「童貞」という言葉は褒め言葉なんです。むしろ誇れることなのです。
だから、童磨は褒められて喜んでいます。
鬼の首魁である鬼舞辻無惨には、十二体の締まりの強い鬼がいる。
十二鬼月と呼ばれ、下弦の鬼が6人の上弦の鬼が6人という鬼の中でもエリート名器に分類される鬼舞辻無惨によって快楽堕ちした者たちだ。
下弦の鬼は柱が一人でも出れば討伐可能であるが、上弦となれば柱が数人掛かりで仕留められるどうかという強さで、私の目の前で朗らかな笑みを浮かべているこの男はその十二鬼月でも上弦に位置して、更に上から2番目の『上弦の弐』らしい。参の猗窩座よりも締まりが良いのだろうか。服ちゃんと着てるし。女の首を壺で生けてるし。これって普通の人間だったら発狂モンだし、鬼殺隊だったら激おこぷんぷん丸だろう。
やっべー、めちゃくちゃ帰りてぇー! 怪しい宗教に近づくだけでも危なかったのに、ノコノコ欲望の赴くままに動いた結果が上弦の弐との対面だよ。おいおい、死んだわ。いや、待て。ピンチはチャンスだって攻略本にあったから、これは逆にチャンスなのでは?
「俺は童磨。君の名前はなんだい、稀血ちゃん」
「秋山凜子だ。稀血呼びはやめろ。まさか鬼が宗教やってるなんて初めて知った。アーメンでも唱えてるのか?」
「俺が教祖で神だぜ。アーメンってなんだい?」
「キリスト教って知らない?」
「ああ、伴天連のことかぁー。神がいるって信じる女の子は美味しかったぜ」
「そこは触手責めだろう?」
「君は何を言ってるんだい?」
「ナニを言ってる」
童磨にとっての感覚は例えば「どこどこにあるステーキ店の肉は美味かった」というものだろう。
狂ってる、というのは人間側から見た価値観だろう。私からすれば、鬼殺隊も鬼も狂ってるよ。
「それは今まで食べてきた中で何番目くらいだ?」
「うーん、5番目かな。食べてるって表現はやめてくれよ。俺は救ってるんだぜ」
「死は救いだってか? 人間が生きていくには、まだ辛いかもね。娯楽は少ない。戦争は多い。スケベなことが出来ない」
「1つだけ同列にしちゃ駄目じゃないかな」
「童磨だって身に沁みて分かってるんじゃないか?」
「何の話だ?」
「だって、「童」貞を「磨」いたから童磨なんだろう。磨き上げられた童貞だなんて、無惨も無惨な名前を与えるなー」
「おいおい、流石にあの方が侮辱されたら俺は怒るぜ」
「怒ったらどうする?」
「うーん、殺してあげるしかなくなるな。でも、君は猗窩座殿が執心してる相手だし、俺が殺したら嫌われちゃうかなー」
「猗窩座と仲が良いのか?」
私のそう訊くと、童磨は飛びっきりの笑顔で頷いた。
「猗窩座殿は親友さ!」
「その親友ってコレ?」
小指を立てて見せたが、童磨は首を傾げた。
「どういうことだい?」
「恋人?」
「親しき友と書いて親友さ」
「なるほど、掘り合ったりしないのか。残念だ」
「人の言葉で話そうぜ」
失礼な奴だ。直接的な表現を避けてるんだから、こればっかりは仕方ないだろう。
じゃあ、本来の私を解放してやろう。
「尻穴を捧げたんだろう? 猗窩座の✕✕✕の具合は無惨よりもよかった?」
「女の子がそんな言葉を使っちゃ駄目だぜ? 堕姫ちゃんでも言わないよ」
「影で使ってるかもしれない。童磨が知らないだけで、もしかしたらその堕姫ちゃんはとんでもない下劣な言葉を使ってるかもしれないし、猗窩座と童磨のやり取りに顔を赤らめているかもしれない。男同士の友情なんて尻穴と精子の白い熱情さ」
「こんなに殺したい女の子は初めてだよ」
「それはありがとう。というかポンポン名前言ってるけど、私は鬼殺隊の人間だ。言いふらすかもしれないぞ」
「どうせ知られたところで君たちに殺せる訳ないだろう。あっ、凜子ちゃんなら勝てるかもね。なんたって猗窩座殿を圧倒したんだからね。まあ、俺を殺せるかは解らないけどね」
凄い剣幕だったよー、なんて苦笑する童磨は本気で思ってないことが窺える。
だいぶ怒ってる様子らしい。それで童磨が被害を被ったらしいが、なんというかザマァとしか言えない。怒りのスパンキングでもされたのかな。
「さしずめ童貞を捧げあった猗窩座との関係が拗れたから、私に抗議したいと言ったところかしら?」
「俺と猗窩座殿は深いところで解り合ってるから大丈夫さ。今日はたまたま猗窩座殿が言う女の子はどんな感じなのかなって気になってたから、こうして君から会いに来てくれて嬉しいなー」
「そうか。奥までズルっとヌルッと深く入ってるのか。それはよかった!」
「その解釈はあんまりだぜ」
勘違いさせるような発言をするのが悪いだろう。
というか、鬼殺隊の原則では鬼をサーチアンドデストロイしなきゃいけない。ベトナム戦争で米軍がやったことをそのままやらないといけない。人を食わなくても「とりあえず鬼だから殺しとこうぜ」みたいな考え方なので、私は例え勝てなくても童磨に挑まないといけない。
でも、敵意が無いからやり辛い。
OK、一旦落ち着くんだ。
「それで、会った感想はどうだ?」
「君ってとても美味しそうだね♪」
おいおい、アウトだわ。
「じゃあ食べようと思わないのか?」
「おいおい、俺は食べるんじゃなくて救ってやるんだぜ? そして、俺の中で永遠に生き続けるんだ」
「無限イキだとっ?………くっ、殺せぇ!!」
「なんでちょっと嬉しそうなんだい?」
一応刀を持って敵対する構えを見せるが、どうにも戦う気になれない。相手に殺気がないのが辛い。むしろ、胸に目が行ってる気がする。
こ、この鬼……視姦してやがる……!
「最近の鬼殺隊の女の子って皆そういう格好してるのかい? ちょっと触らせてくれない?」
「触るな。不倫になって猗窩座が悲しむぞ」
「猗窩座殿なら今は目を瞑ってくれてるさ。正直、こんなに大きな乳はなかなか拝むことが少ないからちょっとだけでも触りたい」
「……目に焼き付けておくだけにしておけ。その内、この格好はしなくなるからな」
「なら、早めに着替えた方がいいぜ。体冷やして風邪引いちゃ駄目だぜ」
「真面目か!」
「俺はいつだって真面目だぜ?」
「むっ、そうだったか。じゃあ、何か着るものくれない?」
「これなんかどうだい?」
メイド服だった。ギャグなの、これ?
「今着たら防御力低下するし動きにくくなるじゃないか! まだこっちの方が勝てそうだよ!」
「堕姫ちゃんに着てほしかったんだけど、頭吹っ飛ばされちゃったからね。君なら着てくれると思ったんだ」
「私なら似合うけど、今は着れないからな。それと、いい加減ふざけるのはやめようか」
「そうしようか」
長いやり取りだった気がする。どうでもいい会話をし続けていた気がする。
童磨はそれまで浮かべていた笑みを消し、凍てつくような冷めた顔をする。見る人を凍らせてしまいそうな感情のない目が、まっすぐ私を見据える。うへぇー、聖水出そう。
「……殺す」
「ふふふ。私を殺したところで、私の足跡を辿った鬼殺隊の人間が大勢で来るだろう。今度は柱が数人掛かりで挑むだろう。それは貴方も望むものじゃないだろう。それ以外もあるのかな?」
そこで。
「取引しないか?」
「鬼狩りが鬼と取引するのかい?」
「私は猗窩座を殺したい。貴方は私を食いたい。なら、私が猗窩座を殺した後で食いに来てくれない?」
「おや、猗窩座殿に勝つつもりかい?」
「もろちん!」
あ、噛んじゃった。
真面目モードの童磨が、すっかりふざけモードに戻っちゃったよ。
「それは反則じゃないかな?」
「とにかく! 私は猗窩座を殺す! もし駄目だったら、その亡骸は童磨にくれてやる。で、もし猗窩座を殺したら私を殺しに来い。全力で相手してやる。それでどうだ?」
「俺は死体を食べる趣味は無いんだけどなー」
「どうせ柱とか食べる時も殺してから食べてるんだから、死体になってからでもいいだろう?」
「確かにそうだね。面白そうだから、こっちからも条件を出していいかい?」
何を出す気だ?
「月に一度、血をくれないかな? 君が血をくれるなら、俺は人を食わないでおこうか」
「自己犠牲するのは好きじゃないんだが……」
「イイじゃないか。猗窩座殿を殺す前に俺が君を殺してしまわないようにするためだと思えばいいんだよ」
「理性飛ばして襲うなら、猗窩座だけにしておけ。この変態!」
「善処するよ」
誓約書を書いて母印も押し、取り引き成立ということでいいだろう。
鬼は信用できない。これが理性も知性も飛んだ本能に生きる鬼だったり、話し合いの余地がない価値観の違う相手だったりしたらどうにもならないけど、まだ話の通じる相手で良かったと思う。
あと、ついでにこれもお願いしておこう。
「鬼殺隊と戦ったら、まあ死なない程度に相手してあげて」
「戦うなとは言わないんだね」
「無理だろう。一応私からも釘刺しとくけど、あそこは鬼によって不幸になった被害者の集まりだからな。居場所がわかったんなら、殺しに行きたがるバカはいる。殺しに行くってことは死ぬ覚悟が出来てるってことだけど、本格的に殺しちゃったら取り引きそのものが成り立たなくなるから勘弁願いたいところだから、殺さないというのを最後の一線にしておこう。あっ、男の尻穴に熱情をぶつけるなら構わんよ」
「そんな汚い趣味はないよ。破ったらどうするつもりだい?」
「貴方が約束を違えるのか?」
「面白いね。気に入ったよ。君は俺が食べるに相応しい女の子だ」
素直に喜べないのは何でだろうね。
とりあえず、お館様とかに何て言い訳しようかな。お館様は何とかなっても、柱が面倒くさい。
私なら例え親の仇であろうと、大本を叩くためなら手を組んで利用するくらいにプライドも何も捨て去る自信がある。要は勝てば官軍。生き恥を晒しても勝てば、それで終わりだ。といっても、今はこんな室内で戦ったら死ぬので逃げの一手だ。
「じゃあ、猗窩座と決着がつくまでよろしくねー」
上弦の参に憎まれ、上弦の弐とは殺害予約の取り引き。早くやることやらないと妄想の中だけでエロいことをして終わりそうだよ。
前払いで血の味を知りたいと言う童磨に血を渡して、私は鬱々としながら帰路につくのだった。
童磨「猗窩座殿、早く決着つけてくれないと俺が横取りしちゃうかもしれないよ?」
童磨ってサイコパスだから、下ネタに動じなさそうだよね。
なお、某下ネタ女の血は童磨の中で他のどの稀血女よりも美味しかったらしい。