対魔忍になりたかったのにどうして鬼殺なんだ!?   作:Meat Toilet

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オークがたりないと感想で言われ、作者も常々思う毎日です。変態ばかり湧いてて困っています。


第25話

 それはまだ真っ白な何も書かれていない白紙のような美少女だった。

 どんな人間にもロリやショタの時代があったように私にも無垢で無知で汚れを知らず、何かのきっかけがあれば簡単に一瞬で汚れてしまう純粋な女の子の時があった。それもどこぞのラノベでメインヒロインやってそうな儚げで優しく、文武両道の才色兼備の完璧にして天才肌のモデル体型の美少女が前世の綺麗な私だ。おい、誰が今の私を汚いと言った? 

 

「拙僧、こんな美女のおっぱいを揉みたかったで御座る」

「とっても綺麗な女の子だね。きっと美味しいんだろうなー」

 

 野郎の欲望に染まり切った汚い視線を浴びても、キョトンとするばかりで戸惑いながらもぎこちない笑顔を浮かべる。

 

「ありがとうございます?」

 

 一人は完全にセクハラで、もう一人は食人的な感覚で見ているのに無垢な私は気づいている素振りを見せない。いや、気づいてないだけだろう。

 この頃の私は家族以外の男性と話すことなんて全くない完全素人JKだった。というのも、小中高大学に至るまで異性との接触なんて父親か兄か弟くらいなものでそれ以外は関わることはなかったからだ。生まれてこの方、社会に出るまで異性とのマトモな接触なんて無かった。私自身も興味が無く、剣道や華道、茶道などなど様々な分野に青春を捧げていた。

 

 清く正しく美しくあれ、というのが家訓だと父は言った。

 

 その父は、ブリーフ1枚で目隠しをされ猿轡を噛まされて真っ暗な夜道を母にニコニコと蔑んだ笑みで見下されながら四つん這いで散歩していた。ワンワンしていた。

 

 お前はあの道を進んではいけない、というのは兄の弁だ。

 

 その兄は、幼馴染で私が姉のように慕っていた女性に亀甲縛りさせられて鞭で打たれて無様に喘いでいた。ブヒブヒしていた。

 

 唯一、弟だけはマトモだった。しかし、私の下着を盗み、真っ白にカピカピになるまで使い込む見下げ果てた変態だった。

 

 家族は真の姿を隠していた。全て私という無垢な存在を汚さないためだった。

 そんな私が対魔忍にどっぷりズブズブになったのは、友達が原因だった。

 

『少しくらい娯楽を楽しむのもいいものだぞ。ほら、このアニメを見てみるといい』

 

 そうして渡されたのが対魔忍アサギのOVAだった。

 何故これをチョイスしたのか今でも解らないけど、あの友達がいなかったら今の私はいなかっただろう。友達は異種姦好きの変態だった。私の周りには変態しかいなかった。

 変態はお呼びじゃないんだよ。私に必要なのはオークや触手なんだよ。変態はもうお腹いっぱいだよ。

 

「きゃぁっ」

 

 そんなことを考えていた矢先、無垢な私に変態の魔の手が伸びていた。

 分裂した際、無垢な私は全裸だったので羽織を着せたまでは良いだろう。変態は構うことなく、無垢な私の程よく育った誰にも触られることなく綺麗で純白の穢れを知らない双丘を直揉みしやがった。

 汚されてしまった。まだ無垢で無知でオナニーやアナニーも触手姦もした事無いもう一人の私が汚されてしまった。

 いや、待て。

 

 これこそ、対魔忍の醍醐味ではないだろうか。

 

 処女で誰にも体を許したことがなく、オナニーやアナニーだってしたことない戦いに生きると誓って女として生きることをやめた女性が、媚薬で無理やり発情させられオークや触手のデカブツで徹底的かつ悲惨に凌辱されるのだ。何も知らない処女の肢体に『快楽』というあらゆる宗教で禁忌とされ、溺れることを赦されなかった業を子宮に刻み込まれ、底なし沼のように沈んで堕ちていき、やがて女を知ってメスへと至る。そこにはただ快楽だけをひたすら貪る女がいて、己の欲望のままに女を征服して蹂躙して悦に浸る醜いオスがいる。これこそ、猗窩座が常に求めている『至高の領域』だと言えるだろう。

 同時に思う。何故、鬼はいるのにオークがいないのだろう。対魔忍を犯すためにデカブツをこれみよがしに見せつけ、恐怖心を植え付け、あるいは敵愾心を引き出す。

 

『チ✕✕に負けない(キリッ)』

 

 そうしながら、

 

『こんなことで私は気持ちよくなったりしない!!』

 

 と続き、

 

『んホォぉぉ!! このおチ✕✕しゅごいのぉぉぉ!!!』

 

 になるのが素晴らしい一連の流れだ。

 この過程が特に重要で、快楽落ちしてからが面白いと嘯く糞の肥溜めみたいな輩がいたが、そいつは真の意味で対魔忍の良さを知らない。即オチ2コマはギャグや純愛として面白いが、エロコンテンツとしては失敗だと思う。メスガキが即オチするのは認める。

 私が思うに、やはり快楽責めが始まって犯されてから堕ちるまでの過程こそがエロの極みだと思う。

 強情で快楽責めされたからといって、なかなか堕ちずに感じてるのか感じてないのか解らない女が相手のデカブツで感じずにはいられなくなり、それでも耐えて耐え抜いて最後には単なる快楽を貪るメス豚だと子宮に刻まれ、完堕ちするのが至極だ。この一連の過程こそ、至高の領域だ。何やら恐ろしい殺気がしたが、気のせいだろう。

 鬼は私のことを変態呼ばわりするが、目の前の分針とかいう鬼は何なんだろう。ただのセクハラ坊主だ。鬼は全て鬼舞辻無惨のようなもので、もしかしたら彼も内心では人間の女の子のお尻を揉みたいとかおっぱいをパフパフされてあわよくば✕✕✕したいと思っているのかもしれない。

 

「好きでもない人の胸は揉んじゃいけませんよ。気に入ったからってそういう行為をするのは結婚してからしないといけません。スケベで悪いことする手ですね。こういう事はちゃんと好きな人としなきゃ駄目ですよ?」

「ひでぶっ」

 

 変態は死んだ。

 普通、痴漢行為をしてきた相手を笑顔で注意できる女性っていないだろう。私は対魔忍で行われてきたような凌辱地獄にはウェルカムだが、痴漢行為には断固として厳しい対応をしてきた。何故なら、痴漢は姑息だからだ。凌辱は捕まって抵抗する術を持たない女にオスの欲望をぶつけてメスへと至らせるが、痴漢はただ触るだけで体液をぶっかけるだけで終わるので駄目だ。エロ漫画やAVのような最後までする痴漢は、痴漢と呼ばない。

 沈黙して浄化された変態をY豚ちゃんは足蹴にして、頭に何発も銃弾を叩き込む。

 目の前で突如として行われた殺人行為に無垢な私は、血が飛び散った瞬間、気を失って倒れた。

 

「いきなり酷いもの見せるな。ほら、気絶しちゃったじゃないか」

「どうせ偽物なんだし、さっさとこの変態と童磨の頸を斬ってくれない? コイツが死ねば、その女も消える。いい加減、何とかしてくれない? アンタといい、コイツといい、童磨といい、もう疲れたわ」

 

 鬼って疲れるものだろうか? 

 というより、そもそもの疑問を口にする。

 

「変態は解るが、どうして童磨までも斬る必要がある? 仲間じゃなかったっけ?」

「それは俺があのお方の支配から逃れたからだよ。君の血がきっかけでね」

 

 答えたのは童磨だった。

 私の血は男の鬼を魅了するらしい。例えるなら、典型的な寝取られ系エロゲーみたいな稀血をしていた。決定的になったのは鬼舞辻無惨にお仕置きされた時だったのだという。自分を役立たず扱いしてくる野郎となんだかんだで仲良く、色々と話をしてくれる見た目は完璧な美女と比べたら、どっちにつくかなんて明白だろう。

 

「という訳で、これから俺は凜子ちゃんにつこうかな」

「そちらでお引き取り願えませんか? 雪風様」

「私だってお断りよ。さっさと変態諸とも処分してくれない?」

「酷いじゃないか、二人とも。泣きたくなるぜ」

「私はともかく、鬼殺隊が受け入れないだろう。直接の恨みがない鬼でも憎悪を向けてくるんだから、私が引き取ったら今度は私の立場が悪くなる」

「それじゃあ、恨みや憎しみを抱えた人たちを救ってあげようじゃないか」

「お前に救われるくらいだったら、厠に流してた方がいい」

 

 そもそも、ナチュラルに煽る男が鬼殺隊に入ったら毎日仲裁しないといけなくなるから、凄く面倒くさい。特に不死川あたりが面倒くさい。それ以外も面倒くさいが、とりあえずこれだけ言っておこう。

 

「童貞が移るから、こっち来んな」

「ここまで酷いこと言ってきた女の子は初めてだぜ」

「逆に聞くけど、童磨は生き延びて何をしたいの? 鬼舞辻無惨を倒すことになるけど、倒した後に何をしたいんだ?」

「そんなものはないよ。凜子ちゃんにだって無いんだから、俺にある訳がないだろう?」

「なんのために生きてるんだよ」

「そんなの考えたこともなかったなー」

 

 まあ、私も生きる理由は特にない。何故、オークはいないのだろう。触手はあるのに、犯しにこないのだろう。つくづく生き辛い世の中だ。

 そんな事をしみじみと感じていたら、Y豚ちゃんがしびれを切らして天井に向けて銃を撃つ。

 

「そんなどうでもいいことを考えてないで、さっさと変態と童磨を殺しなさい!」

「メス豚であり、メスガキか。業が深いな」

「さっさとしてくれない?」

「ていうか、そこの変態を殺すんだったら鬼舞辻無惨に殺してもらえよ。鬼の始祖なんだし、言う事聞かない馬鹿は殺しててもおかしくないだろう?」

「無駄に強いからよ。それこそ、私たちくらいにね。アンタを倒すために生かされてるようなものよ」

 

 ハンムラビ法典みたいな思考しやがって。変態には変態を当てようという馬鹿丸出しの考えは間違ってないけど、キワモノ過ぎて敵と味方にダメージ与えてどうすんだよ。恥を知らないのか? 恥ばかり晒してきたから、今更上乗せしても問題ないって考えてんのか。

 変態を成敗するのは賛成なので、Y豚ちゃんが正中線を押さえている間にトドメを刺そうと刀を構える。

 変態はそっと目を閉じ、覚悟を決めた顔をする。

 

「無垢な少女を汚した罪深き拙僧を一思いに斬ってくれ」

 

 曇りなき眼で懇願してきやがった。煩悩を捨て去り、悟りを開いて解脱した1人の僧侶がいた。

 きっと高名な僧侶だったのだろう。性欲に溺れたクソ野郎にも人としての心があることに感動を覚えながら、私は変態の頸を刎ねた。

 

「来世は真人間になることを祈るよ」

「どうでもいいから、次は童磨を斬りなさい」

「帰ってもいい?」

「撃ち殺すわよ?」

 

 鬼が支配から抜け出しても、得することなんて何もないな。どちらからも命を狙われるだけなので、大して利益にならない。

 大体、こうしてグダグダしているのに逃げ出さないあたりで自分が死ぬことを受け入れてるのかもしれない。もしくは体が痺れて動けないか。後者かもな。あの銃撃、一発でも受けてたら全身痺れて行動不能になってそうだったし。

 

「よし、童磨。短い付き合いだったけど、私が君を救ってあげよう」

「君が俺を救うのかい? あはは、初めて言われたぜ。真似しないでくれるかな?」

 

 どこに怒る要素があったのだろうか。

 

「救うか救われるか、殺すか殺されるかの関係だったのだから、こんな呆気ない形で終わるのも無情で一興かもね。だって、所詮はどんな形であれ鬼は全て死ななければいけないから。私は全ての鬼を救済したいの。童磨は人々を救ってきたけど、私は鬼を救いたいの。だって、あまりにも憐れじゃない? 哀しいじゃない? 悠久の時をひたすら人を食らうだけで終えていくのってつまらないでしょう? だから、私は救うの。救ってあげて永遠を終わらせてあげるの。なーんて誰かの受け売りっぽく言ってみたけど、なんか性に合わないから私は風の赴くまま気の赴くままに生きたいね。まあ、運が悪かったと思って来世を頑張って生きてね」

「そうか。君は俺と一緒なんだね」

 

 一緒にされたくないな。

 霹靂一閃でスパッと頸を刎ねられた童磨は、何も言うことなく静かに消え去った。

 残ったのは私とY豚ちゃんのみ。無垢な私は汚され、変態の消滅後に本当に消えた。消えなかったらY豚ちゃんに殺してもらうしかなかったけど、無事に誰も手を下さずに終わって良かった。

 

「ねぇ」

 

 Y豚ちゃんが話しかけてくる。

 

「どうしてアンタみたいな汚いのから、あんな綺麗なのが出てきたの?」

「人を汚い扱いしないでくれる? 私は誰のナニを受け入れたことのない綺麗な女だ」

「茶化さないで」

「はぁ」

 

 面倒くさい。

 

「綺麗だから綺麗なのが分裂した。それとも、汚いのが分裂してきてもよかったの?」

「収拾がつかなくなりそうだからやめて」

「精神的な問題を気にしなければ大丈夫。雪風が分裂した私を殺して私が童磨と変態を殺せば万事解決だ」

「仮にも分裂した自分自身なのに、よくも平然と殺せって言えるわね」

「だって自分じゃないから、別に死のうが生きようがどうでもよくない?」

「アンタ本当に人間?」

 

 失礼な。私はオークや触手などに犯され願望を持つピュアで一途な女の子だぞ。

 

 ──―ベベん

 

 不意に琵琶の音が鳴った。

 Y豚ちゃんの背後に襖が出現し、無限に続いてそうな和風な空間が広がっていた。アニメでも見てたけど、どこまで続いてるのかな。

 

「帰るのか?」

「当然でしょ。あのお方に命令されてないし、私は勝てない戦いをする程愚かじゃないの」

「そうか」

 

 頭対魔忍じゃないのかよ。

 

「じゃあね、また会いましょう。それと1つだけ面白いこと教えてあげる。

 猗窩座が女を食い始めた。

 童磨からちょっとくらい話を聞いてるんだから、この意味解るわよね? 女の柱、食われてなきゃいいわね」

 

 そうか。

 

「なんというか、負け続きで勝つために自分の主義主張捨ててたら本末転倒だね。まあ、鬼になった時点でどうしようもないから仕方ないか」

「アンタが狂わせたんだから、責任取りなさいよ」

「私、頼まれたら断れる日本人なので」

「なんで鬼の私がそんなことを考慮しないといけないのよ。まあ、いいわ。とりあえず伝えたから好きにやりなさい」

 

 そう伝えてY豚ちゃんは襖の向こうへいなくなった。

 

「そっか。カナエが猗窩座に食われるのか」

 

 私は誰もいなくなった寺院を出ていくのだった。

 




次回、三度目の正直。

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