対魔忍になりたかったのにどうして鬼殺なんだ!? 作:Meat Toilet
猗窩座がセクハラされて死亡した。
「君も女の子だから、はしたない言葉を使うのはやめなさい」
お館様が言うことを要約すると、そういう事になる。
懇々と長々と静かに説教されて更に正座させられてもいるから、足先から痺れてきて感覚がなくなってきた感じがする。なんでお館様は平気なんだろうか。やはり、夜中にあまね様に搾ってもらっているからなのだろうか。正座位というヤツだな。いけないけない、私は産屋敷の人たちでは変な妄想をしないと決めているのだ。他は竈門家の人たちだ。長兄? もう手遅れだよ。
今更ながらに思うのは、お館様って褌履いてるんだろうかというものだ。あまね様はノーパンノーブラは確定事項として扱うが、男性の下着事情はどうなっているのか疑問である。やはり褌だろうか。まさか女性と同じくノーガード戦法というワケでもあるまい。押さえるものが無いと激しく動いた際にブルンブルンご立派様が連動して大変なことになるだろう。服装的にはみ出さないとはいえ、ポジションはしっかりと据えておくに越したことは無い。でも、褌って脱衣するのって大変そうだな。それに比べて私は絶対回避の技を使うので上は物凄く脱ぎやすくしている。その代わり耐久性は通常の隊服に比べて弱く、切れやすいのでうっかり鬼の攻撃を食らおうものなら、露出プレイが始まるアダルティな服に改造している。果たしてお館様は褌を履いているのか、何も履いてないのか、大穴で女性用の下着を履いているかどっちだろうか。
「凜子、聞いているかい?」
「はい、聞いております」
「そうか。君はもう少し変態的な思考をするのは自重するべきだと思うね。お嫁の当てが無くなってしまうよ」
「大丈夫です、お館様。あくまでも、鬼に対して表に出しますので一般の人や鬼殺隊の人間に気づかれないように振舞います」
「それでも、よくないよ? さっき、私が褌を履いているかどうかって考えていただろう?」
「けふ」
バレてしまったようだ。何故、分かったのだろう。お館様の表情を窺い知ることは出来ない。どこまでも穏やかで怒っているようには……あかん、目が笑ってない。
落ち着け、私。本気になる前に即時撤退を図るんだ。ええと、どうしたものか。とりあえず誤魔化すんだ。
「いえ、私はお館様はどんな褌を履くのか気にしていました。赤か白か虹色か……名家の生まれなら奇抜な色合いの褌を履いてるのかと思ってました! お館様は何色ですか?」
「白色だね」
「穢れなき白ですか。お館様にピッタリですね。清廉潔白、父性に溢れた高潔なお方です」
「そう、ありがとう。ところで、どうして私の褌の色を気にしたんだい?」
「……そもそも、履いてるのかと思ってました」
「うん、君の中で私はどんな扱いになってるんだい?」
ここで同じ穴の狢だ、なんて言おうものなら私にも履いてない疑惑に晒されるので他の隊士が抱いてるであろう印象を述べるに留める。
ということで、帰っていいですか? まだ駄目だって。
「凜子。この先何が起こると思う?」
お館様に分からないのであれば、私に分かるハズがないだろうと思う。そういうのを期待した訳ではないんだろう。
「何も起こらないかもしれないし、何かが起こるかもしれない。私には分かりかねます」
「私は兆しだと思う。百年に渡って討伐されなかった上弦の鬼がついに欠けた。凜子。君の為した功績は素晴らしいものだ。君ならあの鬼舞辻無惨を倒せるかもしれない」
まあ、千年ものの骨董品レベルの童貞に倒される私ではないのでぶっ殺すことは出来るかもしれない。問題はヤツは面倒くさい拗らせ方をした童貞なので引きこもったまま童貞を死守するかもしれないということだ。私も大分拗らせてる方だが、それでもあっちの方が磨き上げてる気がする。
あんな整った顔してるクセに童貞とか……きっと女にいい思い出が無かったのだろう。なんかガッついて失敗してそうな顔してるし。
「実際に戦ってみないことには分かりませんね。それでは、私はこれで」
「ところで、こんな本を買ってみたんだ」
まだあんのかよ、と思ったら穏やかな笑顔のお館様が大好蛸触先生の書いた鬼辻舞シリーズの第一作目だった。既刊は2巻である。
「お館様、あまね様と右手は別ということですか?」
「全く違うよ。単刀直入に聞くけど、大好蛸触という人物は君だよね?」
「お館様、私はまだ未成年です。そのような官能小説は知りませんし書いたこともありません。なんですか、自分の性癖を他人のせいにするつもりですか?」
「もう裏付けは取ってあるからね」
「くっ、バレてしまったか。お館様、もしかしてこの本に書かれてることをあまね様にしようとして拒否されたから私にやろうとしてるんですか? なんて鬼畜! 外道! くっ殺せ!」
「君は何を言ってるんだい?」
素で返されたので、舞い上がったテンションが急降下した。
お茶を飲んでから、私は至って平静を装って答える。
「私が一部の界隈を賑わせている新進気鋭の官能小説家の大好蛸触先生です」
「私が何を言いたいか分かってるね?」
「ムラムラして書きました。後悔してません。だって酷くないですか? 触手があってゴリラみたいな体格の見るからに屈強な鬼がいるのに女を犯すどころか殺して食いに来ようとする。ムカつくんです。少しくらい食欲じゃなくて性欲を垣間見せてくれたってイイじゃないですか。こっちは容姿に自信があるのに性的な目で見られなくて困ってるんですよ」
「君はもう口を閉じて戦うべきだね」
「酷くないですか!?」
鬼畜だわ。そういえば、ふうまのお館様も鬼畜だったので『お館様』というのは鬼畜でないといけないのかもしれない。
長々とお館様による説教が開始され、人間性が無くなりそうになりながら乗り切った。かゆ……うま……。
ようやく解放され、重い足取りで蝶屋敷へ向かっていた。
すれ違う隊士が足を止め、私を無遠慮に見てくるのを気にせずカナエを捜す。この視線……殆どが容姿に見惚れるばかりのもので、次いで胸とか尻とか女性的魅力のある部位に注目される。チラ見なんだろうけど、意外とこういうのってバレバレなんだよなー。にこやかに手を振ってあげたりすれば、顔を真っ赤にして逃げていった。
そんなこんなで案外すぐに見つかった。庭先でカナヲちゃんに稽古をつけてあげている姿があったからだ。
「カナエ!」
「あっ、凜子さん。無事でよかった」
「私はそう簡単に殺られないよ。カナエこそ、怪我なかった?」
「大丈夫。あの時、凜子さんがすぐに来てくれたので助かったわ」
「流石のカナエでも、上弦は死を覚悟したか」
「ええ、勝てないとすぐに思い至ったわ。あの時は本当にありがとう」
素直に感謝の言葉を受け入れるのは辛かった。これで不死川とフラグを建築してなかったら、迷わず死ぬまで傍観してた可能性があるからだ。あとはお館様の釘刺しも効力があった。
そんな事よりも。
「すまない。稽古中だったか」
「気にしなくて大丈夫よ。カナヲも凜子さんに会えて嬉しいと思ってるハズよ」
「本人はそう思ってなかったら辛いだけだから、ここは本人にも聞いてみよう。カナヲちゃん、私に会えて嬉しい?」
無言で無表情のカナヲは程なくしてカナエが渡したコインを弾く。
表が出た。
「いいえ」
幼女にきらわれた。つらい。死にたい。私は貝になりたい。
やはり抱きつき過ぎたのが原因なのかもしれない。可愛いから抱きしめた、私は後悔していない。しかし、振り返ってみればカナヲは嫌がっていたかもしれない。
「巨乳族の私より貧乳族のカナエの方が良いらしい」
「私こう見えて意外とある方だよー?」
「揺れる程のモノは無いだろう。この俎板洗濯板断崖絶壁女め」
「なんで上弦と戦って死ななかったのかしら、この人。胸ばかり栄養が偏って頭が足りてないのかしら。一度、カチ割って見てあげるわ!」
「くっ、村田ァ! 私を守れぇ!」
「無茶な!」
カナエが木刀を振りかざし、ちょうど近くを通り過ぎようとした村田をガードベントして防ぎきった。
「理不尽な……」
ガードベントは使用不能になったので万事休すかと思われた。
その時だ。
「…………」
カナヲが間に入って止めてくれた。そして、私に抱きついてくる。
カナエが「胸なのっ? やっぱり胸なのっ?」などと喚いていたが、渾身の勝ち誇った笑顔を見せてやるとカナヲも真似してドヤ顔を見せたところでカナエは崩れ落ちた。まあ、1つ補足しておくとカナエは胸はある方だと思われる。大体CからDくらいだと思われるが、まあ対魔忍からしてみれば貧乳である。Y豚はメス豚なので除外。
「カナヲちゃんは可愛いから私の妹にしちゃおうかな」
「それは嫌」
「コインすら投げずに決められたよ……」
稽古という雰囲気ではなくなったので、私は縁側に座ってカナヲちゃんを休ませてあげようと膝枕してあげる。カナエがムスッとしながら隣に座ってきたが、そんなに貧乳を気にしているのだろうか。ちなみに村田は隠に回収してもらった。
「カナエ、ある偉い人が言っていたことがある」
「なに?」
「貧乳は希少価値だ。皆違って皆良い。人の良し悪しは外見から入ることが多いけど、最後はやはり内面だ。カナエは不死川と夜な夜な腰を使った運動してるんだし、胸の大きさが決め手となったワケでもあるまい」
「言い方! ……って、なんで凜子さんが知ってるのっ?」
「むしろ、気づかれないと思ったか? うっかり結合してるところを見たんだから仕方ないだろ?」
「そんな……誰にも見られてないと思ったのに……」
バレバレだわ。
顔を真っ赤にして火が出そうになるくらいになってるカナエは、あわあわと言い訳をしようと口を開いたり閉じたりしている。
さて、どんな言葉が出るかと待ち構えていれば馴れ初めという惚気話だった。
看護師と患者の関係からスタートして話をするようになってから、会議とか任務で一緒になっていたらいつの間にか関係を持ってしまっていたんだとか。ふとした仕草とかおはぎが好きなところとか云々と赤裸々に語られ、口から砂糖を吐きそうだった。意外と強引なところがあったとか言われても、何と答えれば良いのか解らない。私も触手やオークについて語ればいいのだろうか。
「凜子さんはいないの? もしかして冨岡くん?」
「なんの話だ?」
「だってこの間、冨岡くんと一緒に寝たって真菰さんが話してたわ」
あながち間違ってないのが辛い。間違ってないから否定が難しい。傍目には、既に行為に及んだ男女のように捉えられても仕方ない状態だったので何とも言えない。朝起きたら義勇をパンツは履いてたものの裸で抱きしめていたなんて、寝惚けていたで済まない事案だろう。
「あの時は──―」
誤解を解くために懇切丁寧にどんな行動をしていたかを話した。寝ていたのは事実なのでどうにもならないけど、私はまだ処女だし義勇に貰われた訳でもないということを知ってもらわなければいけない。
「冨岡くんが憐れで仕方ないわ」
「据え膳を野外で食わせてる破廉恥がよく言う」
「なんで見てるのよ凜子さんの馬鹿!」
「カマかけただけだ」
「わぁーん! 凜子さんなんてキライ!」
そう言って膝にダイブしてくるのはどういう事なんだろう。謎の行動である。うん、私って慕われる要素あったかな。
というか、割と声大きめで騒いでいたのにカナヲちゃんは膝枕で心地よさげに眠ったまま起きてなかったのだ。そして、カナエが加勢してきたのにも関わらず起きない。やっぱり対魔忍だから、膝が柔らかいのかもしれない。これぞ対魔忍のなせる業!
あっ、これアカン。二人同時に膝枕させるのって血行に良くない。でも、あれから日々進化している私は二人程度では動じなくなったのだ。
「あーっ、姉さんもカナヲもズルい! 私だけ除け者にする気!?」
ふぅ、3人目は辛いな。3人同時に相手するのは得意だから、何なら5人くらい来ても問題ない!
しのぶちゃんも加勢し、カナエの隣に入り込んできた。遠慮というものを姉妹は知らないようだ。これで頭を撫でなかったら拗ねるし、撫でろと訴えてくるので始末に負えない。まだカナヲちゃんの方が……無言の圧力だったなー。アオイちゃんは、甘えたがりなので丸まってくる。三人娘は普通なので塩梅だな。
強欲な輩を甘やかしたツケを支払われ、私は後で不死川に抗議してやろうと誓った。
お館様は鎹烏の報告で戦闘の一部始終を知り、流石に女の子が口にしていい言葉ではないのでお説教しました。
結果は散々たるもので、それでも根気よく凜子の性格を矯正しようと話し合いの機会を設けます。
尚、無事に大好蛸触先生の本があまね様に見つかってしまって夫婦の不和の原因になってしまったかもしれないし、なってないのかもしれない。
気になるのは、産屋敷の輝利哉くんって女装してるけど下着ってどうしてるんだろう?
褌を履いてるのか、はたまた何も履いてないのか……おや、誰か来たよ―――ゴシャッ!!
皆はエロ本を書く時は年齢制限を守りましょう。