対魔忍になりたかったのにどうして鬼殺なんだ!? 作:Meat Toilet
感化されて胡蝶カナエが過激派へ鞍替えするか、不死川実弥が穏健になるかのどちらかだと作者は思います。
しかし、対魔忍的に考えると不死川実弥のご立派様によって胡蝶カナエが調教されて快楽落ちした結果と捉えれ―――おや、誰かが来たようだ(ドスッ)
上弦を倒した功績とか日頃の鬼狩りの労をねぎらうため、休みを与えられた。
先ず不死川にカナエとのあれこれをセクハラするついでに突っついてやった。
「なんでテメェが知ってますか?」
「話し方がめちゃくちゃになってるぞ」
分かりやすく狼狽した不死川は真っ赤になっておはぎを握りつぶしてしまった。彼の兄弟子の粂野匡近が、しょうがないなーといった感じで自分のおはぎを渡して宥めていた。
「手際がいい。不死川の扱いが上手いな」
「鳴柱様に褒められるとは嬉しいです。ほら、実弥。もう知られてるんだから、観念した方がいい」
「だがよォ、匡近」
「逃げ場はないから諦めろ」
共に死線を潜り抜けた猛者同士、同門ということもあって不死川が観念するのは早かった。
どうでもいい事だけど、粂野と私は話が合う。同じ弟好きということが、理由に上げられよう。まあ、私に弟がいないので何とも言えない所があるのは仕方ない。何故、触手好きの人間はいないのだろう。箱豚とか素晴らしいと思わん?
粂野は下弦の壱との戦闘で大怪我を負って第一線を退き、不死川を支える役回りをしている。その下弦の壱は粂野にトドメを刺そうとして、いきなり死んだらしい。奴の懐には大好蛸触先生の聖典があり、もしかしたら鬼舞辻無惨がタイミング良く粛清したのかもしれない。任務地で鬼が無残な死体になっていたなんて報告があったので、もしかしたら大好蛸触先生の聖典を持っていれば粛清対象になるのかもしれない。南無。
はてさて、ポツリポツリ語り始めた不死川は今にも口から火を吹きそうだった。
照れ隠しにおはぎをこれでもかと食らう姿には、鬼よりも恐ろしく感じられた。
正直、思想面で食い違いが発生しそうなのに付き合うに至る過程は何なのかと思えば、意外と共通点はあったのだ。
家族思いという一点だけだったが。
カナエはしのぶちゃんを想い、不死川は弟を想っている。その点だけは共通している。
だが、それだけではどうしようもない隔たりがあるのは事実なのだが、これは粂野の尽力のおかげもあって不死川がマイルドになったのだ。鬼に対する過激的な憎しみが薄れ、若干取っつきやすくなった。
男は女ができると変わるらしい。
カナエとズブズブして体と体で突き合った結果、不死川は大人になったということだろう。
無論、こんな事は言えないので無難に返す。
「若気の至りだから、そういう行為はしてもいいだろう。責任取れないなら避妊だけは絶対にしておけ」
「責任取るに決まってんだろォ?」
「だからって婚前交渉するなクソ馬鹿破廉恥男! 下半身で動いてんじゃねーよ! そういうのはさっさと結婚してからにしろ! あの音柱だって結婚してから致してるんだぞ! 責任を取るから何だ! そもそも責任を取らせなきゃならない行動する時点でおかしいだろうが! 節度を持って行動しろ! 節度を!」
「……ごめんなさい」
「鳴柱様、流石に言い過ぎだと思います」
心折れそう、なんて口にした匡近は笑顔だった。愉悦してるのかな。
私も言い過ぎたと反省しておはぎを奢ってあげた。
知りたいことは知れたし、ここは解散となったので私は久々の休みを満喫する。
といっても、特に何もすることがなかったので、手編みでマフラーを作ってみたものの誰に渡そうかと考え、いつもノースリーブでいる長兄に押しつけようとして向かったら嫁三人衆と大宴会を催していたので諦めた。その内腹上死するんじゃなかろうか。
さて、そんなこんなでせっかく作ったマフラーをどうするかと悩み冨岡に上げようと思ったものの、そこまで上等な代物でないので上げられない。手作りのモノって誰かに上げようとするのってなんだか気恥ずかしい。
そうだ、師範に押しつけよう。羽織が塵になったので、師範に新たな羽織を貰うついでだ。
そう思い至ったが吉日。私は久々に師範の下へ向かった。
誰かを連れて行こうと思ったものの、皆任務中だったりと予定が合わなかったので一人旅だった。
そして、奇妙な出会いが幕を開けた。
「結婚してください!」
黒髪の男の子が一人でグズってたから、ちょっと心配になって声をかけたらいきなり求婚されたのだ。ふむ、アリだな。
しかし、手当たり次第感が感じられる。そういうのは後悔しかしないので、ここは歳上のお姉さんとして優しく諭してあげよう。
「結婚はできない。好き嫌い云々は抜きにして、先ず君の年齢が結婚するだけの年齢に達していない。あとは互いに知り合ったばかりで何も知らないのに過程をすっ飛ばして結婚なんて出来ないだろう」
「え、俺のこと好きで声をかけてくれたんじゃないの?」
「君だって幼い女の子が目の前で泣いてたら声くらいかけるだろう? それと同じだ。好意と勘違いするならいいが、結婚を迫ってしまったら相手からの好感度は最低になってしまう。女好きなのはいいけど、先ずは相手に好感を抱かせる人間にならないといけないぞ」
女がナニに好感を抱くかと問われれば、無論ナニに決まっているだろう。
汚ッサンやチャラ男が何で対魔忍みたいな美女をモノに出来るかといえば、女に好感を抱かせるナニを持っているからだ。男が女をオトすには、やはりナニは大切だ。ナニが小さければ、満足できない。なんでオークとか汚ッサンみたいにナニのデカい男がいないのだろうか。
マジカルチ○○は幻想でしかなかったのか。
「で、知らない人にいきなり求婚した君は私を幸せにすることができるの? そもそも、きちんと定職について養っていけるの? 私に働かせて自分は家でぐーたらして寝て過ごすつもり?」
「うっ、それは……」
「結婚するということは、その人を一生かけて愛情を注いで養っていくことだぞ。今の君には、はっきり言って同じようなことを他の人にしたところで誰も君に魅力を感じないし、むしろ体よく利用するおもちゃとしてしか扱われないだろうね」
「そんなこと言われたってぇ! オレは1人なんだから仕方ないだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ボロボロと泣き喚き始めやがった。
びええ、と泣いて足下に縋りつくみっともないガキは「頼むから結婚してくれよぉぉ」とみっともない恥を晒す。
どうしたものかと悩んだ末、私は妙案を思いついた。天啓が降りたのだろう。
「君は家族が欲しいのかな?」
「……うん」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃにしながら男の子は頷く。
「どうしてか聞いてもいい?」
涙ながらに語った内容は同情を誘うものが多かった。
捨て子だという。物心つくか否くらいの頃に捨てられ、孤児院で暮らしてたら耳の聞こえが良すぎるせいで気味悪がられ、追い出されて1人で生きてきたのだという。名前はそのついでで知ったのだが、彼は「我妻善逸」だった。
あれ、善逸って金髪だったハズ……ああ、あれは雷に打たれた後だったか。じゃあ、雷に打たれてもらおうか。確かに彼は孤児だったな。心の中はドス黒かったけど、あれも親に捨てられて裏切られ続けて悪意に晒されてきた末の真っ黒だと思えば、理解するし同情もする。それで女に騙されるって、どういう事やねんって思う。童磨タイプと思える。
既に何人かの女性に騙されてるようだけど、師範に拾われる前だったか。
嘘発見器みたいな耳をしてるんだから、もう少し賢く生きろと思う。まあ、そうやって生きられないから汚い高音を撒き散らす情けない男の子になったんだろう。達郎だってしっかりしてるぞ。寝取られがあった後にヘタレ化するがな。それさえ無ければ優秀なんだぞ。
事情は知ったので、ここからが本題だ。天啓への布石は完了した。
「じゃあ、お姉さんが君のお姉ちゃんになってあげよう」
「姉?」
「そう、お姉ちゃんだよ。今日から君のお姉ちゃんになる秋山凜子だ。よろしく、善逸」
また汚い高音を撒き散らして泣き喚いて抱きついてくるものだから、どうしたものかと悩んだが、とりあえず抱き上げて一緒に師範の家へ向かうのだった。ちなみに『姉ちゃん』呼びだった。
「凜子。お主ついに拐かすまでなったのか?」
クソジジイが酷いことを言う。
「善逸、この人はクソジジイって人だから敬意を持って覚えてね」
「えっ、はい?」
「変なこと教えるでないわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
善逸同様、汚い高音を撒き散らす師範は善逸にきちんと自身の名前『桑島慈悟郎』を名乗って変なことを吹き込む。
私と親しくなる人間は、皆揃って私を変態扱いしている。まるで人を歩く十八禁みたいな卑猥な扱いしやがって……スケベなのは不死川か甘露寺蜜璃だろうと思う。私はこう見えて身嗜みには気を使う女なのだ。まだ誰も精通させてねぇよ。
悪いことは言わんから、奴の弟になったらアカン。
そう諭すクソジジイこと師範には、甘い菓子をプレゼントしないでおこう。
「ところで、師範。羽織って貰ってもいい?」
「話に聞いておったが、また羽織を駄目にしたのか?」
「上弦が出てくるものだから、羽織を身代わりにして生き残れた。師範の羽織は私の命を繋いでくれる大事な消耗……大切な羽織だ」
「今、消耗品って言いかけなかったか?」
「気のせいだ」
善逸がジト目を向けてきたが、誰も傷つかない優しい嘘は大切だと思う。
「師範の羽織をください。なんだかんだでお気に入りの羽織だから、くれなかったら手作り和菓子をあげないぞ」
「ワシがそんな物で釣られる人間と思っとるのかっ?」
「では、師範はいらないということで。善逸は食べるとして、弟弟子……獪岳くんも食べるということでいいかな?」
「は、はい!」
師範の隣に正座していた弟弟子……獪岳は、いきなり話を振られて慌てて頷いた。
最近、師範が弟子入りを許した男の子は才能はあるもののクソガキっぽいところがあってわからせがいのある子だった。アニメでは桃食ってるところしか知らないけど、桃が好きなのかもしれない。緊張からか、何か粗相しないように気に入られるようにする猫を被るのは良いことだ。
ということで、用意した桜餅を食べさせてあげた。師範も手をつけようとしたから、ギュッと抓る。
「イタタタタ!」
「イタズラな手だな、師範。誰が手を出していいと言った?」
「酷くないかぁ!? ワシは師範じゃぞぉ!?」
「知らんがな。早く羽織を寄越せ、クソジジイ。桜餅はその後だ」
「どこで育て方を間違えたんじゃろう」
「師範に育ててもらった覚えはない」
「刀の扱いは教えたじゃろうが!」
「その点に関しては感謝している。師範のおかげで柱になれて上弦の鬼を倒せたりこれはそのお礼というか何というか……師範には感謝しているのでこのマフラーをあげます。手作りだぞ」
「なんと師範思いの良い弟子じゃ……ワシはお前を誇りに思っとるぞ」
なんて現金なヤツだ。どさくさ紛れに桜餅まで手をつけてるし、もう抓るのも面倒なので放置した。
なんの話かちんぷんかんぷんの善逸のため、私が説明してあげよう。
自慢したくないけど、こう見えて上弦を倒したんだぞ。セクハラしたとは伝えていない。
「──―といっても、鬼なんて半信半疑だと思うので簡単に言うと私は今日を生き残れるか怪しい死にやすい職場で半年に一人は死んでいる重要な役職に就いているとても偉い人だということを覚えてほしい」
「え、死んじゃうの?」
「さあ、どうなるかわからんね」
で、ここで泣き喚いて抱きついてきた。
ちょうどお腹のところで慰めようと頭を撫でてあげようとしたら胸が邪魔で出来んかった。
この泣き喚き方、どうにも既視感があるんだよな……ああ、須磨さんだ。あの人も涙脆くて愚図りやすいんだよね。あれで歳上なのに、私に泣きついてくるので困る時がある。そして、年増というレッテルを貼ったのは許せん。
「やだやだやだ! 死んじゃやだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
うむ、うるさい。
「泣き喚くのは勝手だけど、善逸ならたった1度の与えられた命をただ生きていくためだけに使って終わるのか? 私はそんなの嫌だから、こうして鬼を狩っている。善逸は何がしたい? まあ、もしかしたら鬼殺隊に入って頑張れば女の子にモテモテになるかもしれないぞ」
「そんなワケあるか!」
「師範、口を挟むな。おすわり!」
「ワシは犬ではない!!」
「じゃあ、何者ですか? 馬鹿者ですか?」
「言うに事欠いて罵倒するでないわぁぁー!!!」
「うるさい」
「表に出ろぉ、凜子ぉー!! お前のその腐った性根を叩き直してくれるわぁぁー!!!」
「後で吠え面かいても知らんからな。私が勝ったら、師範には牛鍋で牛肉抜きにして食わせてやるからな」
「やれるものならやってみろ!!」
かくして師範との戦いの火蓋が切って落とされようとした。
「俺、鬼殺隊に入ろうかな」
「やめとけ、グズ。テメェみたいなのが入るのは目障りだ」
「酷くない!?」
近くでは、善逸が酷い言葉を浴びせられてた。
何はともあれ、互いに木刀を構えた上で私と師範は同時に型を繰り出すのであった。
ある日の無惨様
無惨「今度から大好蛸触というヤツの本を持つヤツは殺す。ヤツだけは絶対に正体を突き止めて私自ら殺してやる」
無惨は激怒していた。必ず自分と似た名前を使った小説を書いた異常者を殺すと決めた。
千年も復讐のために追い回してくる異常者と名前をもじっただけでネタにしてエロ本を書く卑猥な変態、どっちがマシに見えるのだろうか。
どっちも嫌だけど、まだ復讐してくる方が楽かもしれない。