対魔忍になりたかったのにどうして鬼殺なんだ!?   作:大栗須

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第3話

 触手責めの起源を知ってるだろうか。

 江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の『蛸と海女』という春画が起源とされているらしい。その後、様々な成人向けマンガ等のアダルトコンテンツで猛威を振るうメジャーなジャンルだ。対魔忍アサギでは、この触手が井河アサギや井河さくら、八津紫に絶大な力を振るった。勿論、原作のガワと中身が本物の秋山凜子にも力を遺憾なく発揮してOVAではトドメを決めたのがこの触手だ。確かそうだった。最早何十年も前の話だからうろ覚えだ。

 ともかく私の思い描く触手というのは、軟体動物のようにウネウネとしたものだ。

 だから、目の前の鬼が許せなかった。

 

「何故手なんだ」

「おい、娘。そこの狐を寄越したら食わないでやるよ」

「……何故?」

「鱗滝の弟子だからだ。俺をこんな檻に閉じ込めたアイツの弟子は皆殺しにしてやるって決めてるんだ」

 

 ああ、あの手鬼か。なるほど、監禁放置プレイされているから愛情表現をしているんだね。愛されてるね、鱗滝さん。

当然、そんなブラックジョークは心の内に留めておく。普通に考えて殴られるだろう。

 

「では、こっちから質問。何で手なんだ。蛸みたいな触手じゃないのか?」

「そんなの答える必要ないだろうが! 早く! さっさとそこの狐をヨコセェー!!」

 

 なんてせっかちな鬼だ。行き過ぎた愛情表現は嫌われる原因だぞ。その点、私は相手の話を聞くし、過度な愛情表現はしないとてもイイ女です。

 手だらけの鬼は激昂して無数の手を向かわせ、私が片っ端から捌いていく。鬼って硬いらしいが、サクサク斬れて気分がいい。

 ひたすら手が飛んでくるだけならば、ただひたすら切り落とすだけで終われるだろう。

 不意に地中から気配を感じるも、この一瞬の内に全てを決めれると確信する。

 一瞬、触手を想起して大興奮していた。すぐに後悔した。

 触手とは粘液で女を発情させ、先端から白く濁った汁を迸らせないといけないのだ。断じて手ではない。

 手じゃないんだ!(血涙)

 地面から手が出てくる瞬間、私は踏み込む。

 

 シィイイイイ。

 

「壱の型」

 

 ──―霹靂一閃 神速

 

 通常の霹靂一閃から更に速度を増した一閃により、手は私を捉えることが出来ず、逆に鬼の頚が宙に舞っていた。

 

「オノレェッ! 鱗滝鱗滝鱗滝鱗滝ィー!! キサマのせいでオレは──―!!」

 

 聞くのも嫌になる呪詛を撒き散らして消えていった見た目オークの鬼に私は悔しい気持ちで一杯になる。

 なんで触手じゃないんだ。なんで手なんだよ。触手は何処に行った? 神は私にいつまで試練を与えるんだ。

 見た目にも騙され、攻撃方法にも騙され、性的嗜好にも騙されてスリーアウトだよ。お前、ショタコンじゃなくてジジコンだったのかよ。神は私に試練を与えるのが好きなようだ。ガッデム! 

 静かになった森の中で私は、一人のショタの頭を膝に乗せる。

 なんということでしょう。あどけない寝顔を見ているだけで、この藤襲山にいるクソ鬼を一人残らず狩りとれる気になれるのです。ああ、鼻血が止まらない。よし、鬼を狩ろう。

 ゴシゴシと鼻を拭きながら、ショタが起きるまで寝顔を脳内に焼き付けるためにジッと見つめる。

 と、そこへ。

 

「おい」

 

 狐の面を着けた珍しい髪色の少年が話しかけてきたのだ。

 

「なんだ?」

「礼を言いたい。ありがとう、義勇を守ってくれて」

 

 珍しい髪色のショタだ! いけない、情熱が止まらない! 

 落ち着け。私は寡黙なクールビューティを通しているんだ。決して表に感情を出してはいけない。出していいのは、中に出すときだけだ! いや、何言ってるんだ。

 

「礼を言われることではない。貴方は?」

「錆兎だ。俺ではどうすることも出来なかったから、守ってくれてありがとう」

「どういたしまして」

「義勇を頼む」

「わかった」

 

 君も近くにいていいんだよ。ほら、お姉さんはショタかロリが近くにいるとメチャクチャ頑張れるの。ちょっとサービスしてくれたら、普段の倍は頑張るよ? 鬼の首魁だって殺せちゃうよ。お願いだから、行かないでぇー。

 結局、珍しい髪色のショタはスッと最初からいなかったように姿を消した。いやいや、手鬼と遭遇してたのかよ。助けられたらよかったかもしれない。いや、全ては後の祭りか。

 

「姉……さん……?」

 

 人違いです。 

 

「こんな夜更けに気を失うのはいけない。死にたいのか?」

「……誰だ?」

「秋山凜子だ。君の名前は?」

 

 宇髄の姓を使ってもよかったが、家を出たし勘当されてるだろうし宇髄家の人間としていられないだろうから旧姓を扱っておこう。

 

「冨岡……義勇だ」

「冨岡、か。提案なんだが、その足だと戦うのは厳しそうだから私が最後の日まで守ってあげよう」

「何故そんなことをする?」

「たまたま見かけた。放っておけなかった。それでいい?」

「…………」

 

 何も言わないということは了承したという事なんだろう。それに動く気配がないし、まるで猫を相手にしたような気分だ。そもそも、動こうとするのを力づくで押さえているから、動けないだけなのかもしれない。

 猫は可愛い。そこにいるだけで癒やされる。個人的にはマンチカンかスコティッシュフォールド、ラグドールも好きだ。モフモフしたい。甘やかしたい。

 

「では、暇潰しに話をしようか」

「必要ない」

「お姉さんの言うことは聞きなさい」

「お前は姉さんじゃない」

「では、何ならいい?」

「何でもいい」

「では、お姉さんで」

「やめろ」

「じゃあ、何ならいい?」

「俺に構うな」

 

 そして、立ち上がろうとしてよろめいたので私がすかさず抱き留めてあげる。

 

「今は休むことに専念しなさい。今の君では鬼の餌になるだけだ」

「余計なお世話だ」

「そんな事言うのであれば、力ずくでも引き留めるまでだ」

「俺に構うな」

 

 減らず口を叩くので、無理やり押さえつけることにした。

 対魔忍はエロさえ無ければ優秀なので、幼気なショタを取り押さえるくらい造作もない。

 ジタバタと抵抗する冨岡の顔を思いっきり胸元に押し付ける。それでも藻掻くのなら、窒息させて意識を狩り取ろうと思った。でも、急におとなしくなったのでこれ以上の追撃はやめておいた。

 前世でも思ったけど、男の子って胸に顔を埋めさせてあげると急におとなしくなるよね。スケベ心が満たされるということなんだろう。

 などと考えていたら、冨岡のお腹が空腹を訴える。

 

「お腹が空いた?」

「空いてない」

「天の邪鬼め。ご飯はきちんと食べなさい。ほら、鮭おにぎり食べる?」

「食べる」

 

 食べるんかい。いや、それが正しいんだけどね。

 膝の上に座って渡されたおにぎりをモクモクと食べる冨岡が、すこぶる可愛い。悪いことをしたくなる。

 全部食べてしまった後、口の周りにご飯粒をつけてる姿が目に入って苦笑いしてしまう。

 

「そんなにご飯粒つけてたら、勿体ない。汚く食べてたら嫌われるよ」

「俺は嫌われてない」

「好かれないから、口の周りを拭いてあげるからこっちを向きなさい」

 

 ちゃんと言うことを聞くあたり、可愛げがあってよろしい。ただどことなくショックを受けてそうな雰囲気を醸し出していたから、少し言い過ぎたかもしれない。悪いことしたね。

 それからは特に鬼の襲来はなく、冨岡を弄り倒して終わった。

 

 

 






錆兎、すまぬ。
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