対魔忍になりたかったのにどうして鬼殺なんだ!?   作:Meat Toilet

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長らくお待たせして申し訳ありません。

ちょっと言い訳させてもらえるなら、エロを書いたら書き終わったという達成感から『止まるんじゃねぇぞ……』してしまいました。
今回は音柱視点からの冨岡さん視点で参ります。拙いですが、よろしくお願いします。




第35話

 宇髄天元は今日ほど緊張から吐きそうになる日は無いと思った。

 義理とはいえ、妹が2年ぶりに姿を見せるからだ。それも鬼になって。

 天元にとって妹の凜子はある種の鬼門だった。

 幼い頃、物心がついた頃くらいに引き取られてきた1歳違いの義妹はとても子供らしくない子供だった。教えなくても何でもそつなく熟し、所作も完璧、性格も器量も良くておまけに容姿も優れてる。その立ち振る舞う姿に何度も見惚れることがあった。絶対に嫁にする、なんて内心で思っていた己を今では殴りたい。

 完璧に振る舞っているように見せかけ、本当の彼女はとてつもない変態だった。それも百年の恋も冷めるような酷いものだった。極めつけは風呂場での一件。絶対に墓場まで持って行くと誓った天元の男としての自尊心を粉々にしたあの一件だけは、今でも自身を不安にさせてくる。

 

 しかし、それだけならまだ良かったかもしれない。

 

 会議にて、凜子が鬼舞辻無惨との戦闘の末に鬼となった話題では「現段階で何もしてこないなら手を出さない方がいい」という消極的な思いで中立となったが、凜子がお館様に宛てた文を読み上げられた時にそれはもう凄く焦って反対した。彼女の気性を知っているからこそ、絶対に決定的な対立だけは避けようとした。

 というのも昔の話だが、凜子は天元の何人かいる内の特に仲のよかった妹を修行中に殺している。これはその妹が修行に熱が入りすぎて殺そうとした際に起きた悲劇だった。

 不意討ちだったにも関わらず、凜子は音も立てず一瞬の内に妹の首にクナイを刺して終わらせた手際はあまりにも綺麗で、素早く無駄を一切省いたものだった。極めつけになんの感情も映していなかった。

 

『殺しにきたから殺してしまった。普段なら殺す気がないのが解ってるから加減はできているが、今回ばかりは無理だった。あの娘には悪いことをしたと思っている』

 

 問い詰めた時に語った内容は至極単純なものだった。

 殺そうとしてきたから殺した、ただそれだけの理由で仲が良かった相手ですら殺せてしまうのだ。

 普段の稽古などで手合わせしても、手加減されており、下手したら上弦ですら手加減していたかもしれない女を殺すなんて無理だと確信する。まだ鬼舞辻無惨や上弦の鬼と闘ってた方がマシだ。

 つまり、今この場にいる殺気を隠そうともしない柱の内の誰かが斬り掛かろうものなら、一瞬の内に惨殺されるだろう。そうなれば、瞬く間に鬼殺隊の最高戦力は義妹によって皆殺しにされるだろう。

 本気を未だ見たことない天元は凄惨な未来を予期し、冷や汗が止まらなかった。

 

「頼むから何も起きないでくれ」

 

 なんて祈りながら、宇髄はお腹に手を当てる。キリキリと胃が悲鳴を上げていた。

 流石の天元でも、妹が人食い鬼となったのなら殺す気ではいる。しかし、理性を保って人を食わずにいるなら話し合いの余地があるなら話は別だ。あれに殺意を持って近づこうものなら、一瞬の内に肉片に成り下がる。危険性を説いたって身内の証言なので聞き入れられず、唯一胡蝶姉妹と甘露寺蜜璃が納得するも、同じく反対に回ったであろう不死川は頭では理解していても、体が鬼を狩ろうとしている。

 相手の慈悲に任せるくらいしか思いつかなかった。ぶっちゃけ諦めた。せめて嫁だけは殺さないでもらおうと天元は腹を決めた。

 

 そして、運命の時が訪れた。

 

 ちょうど二十歳になる頃に鬼となったからは関係ないが、義理の妹ながら相変わらずとんでもない色気を放つ美女だった。そして、蘇るトラウマが天元の男を派手に蝕む。

 末代までの恥だの何だのと言っていたが、所詮ただの強がりで嫁がいなかったら勃ち直れなかった地味な男である。

 鬼となったにも関わらず、容姿は人間だった頃と何一つ変わらない義妹の登場に会議の場で最後まで反対していた柱と途中で反対に回っていたハズの不死川が殺気立つ。

 そして、悲鳴嶼と不死川と天元を除く男の柱が軒並み前屈みになった。悲鳴嶼は盲目であるが故に難を逃れ……ようとして涙も流さずひたすら念仏を唱え、カナエは顔を赤くしながら不死川の目を塞ぎ、しのぶは真っ赤になった顔を覆い、蜜璃は魅入っていた。

 何かの血鬼術ではないことは確かだ。

 トラウマに蝕まれていたのもあったかもしれない。嫁達で見慣れていたのもあるかもしれない。

 唯一、マトモに動ける天元は事の元凶を半目になり見据えるや、ゆっくりと立ち上がって歩み寄ってゲンコツを冨岡諸共お見舞いした。

 

「……っ!」

「うギャッ!」

 

 冨岡は悲鳴にならない声を上げ、凜子は呻き声を上げる。

 遊女のように着物を艶やかに着崩し、そこらの谷より深い胸の谷間を魅せつけ、生白い流麗な脚線美をこれでもかと魅せつける姿は吉原で花魁やってそうである。いっそ清々しいくらいに破廉恥でスケベではしたないにも関わらず、本人のずば抜けて整った容姿と均整のとれた体のおかげで似合いすぎてこれで欲情しなかったら男じゃないだろう。

 

『鳴柱と接触してはいけない』

 

 多くの鬼殺隊の人間は鳴柱である秋山凜子とは、その先触れを守って誰も近寄らなかった。過去に共闘した村田を始めとした男性隊士や女性隊士が率先して広めた結果だ。

 なまじ無駄に色気があり、女性的魅力に溢れ過ぎるのが問題だった。過去に縫製係が着せたスケベな隊服を着ていた時なんか、見かけた隊士の殆どが行動不能となったくらいだ。

 その女が自身の魅力を最大限に使い、艶やかな登場をするものだから女性経験の無い男の柱は軒並みノックダウンした。女ですら色気に充てられている。

 

「痛いじゃないか、長兄」

「もっと普通に来い、この地味妹。冨岡、妹になんて格好させてやがるっ?」

「……俺は止めた」

「……派手に流されてんじゃねぇよ」

 

 戦わずに無力化するなら、これ程効果的な事は無いだろう。

 これで鬼と一目で分かるような姿をしていれば良かったかもしれないが、人間だった時と全く変わらない姿形をしていればどうにもならなかった。そもそも、水のように流されやすい冨岡に止める役は無理だった。

 とにかく、お館様がそろそろ来られる現状で痴女を対面させるワケにいかない。

 

「おい、馬鹿妹。さっさとちゃんと服を着ろ」

「ふっ、鬼は遊郭にも出没するのにこの程度の露出で何を恥ずかしがる必要がある? 私は恥を忍んで武装もせずこんな破廉恥な姿で現れたのだ。むしろ良い刺激になったのでは?」

「なってねぇよ! お館様が来られるんだぞ!」

「お館様はきっと海よりも広い心で理解してくれるだろう」

 

 そういう問題じゃないだろう。怒りを通り越して呆れるばかりだった。お前、お館様に忠誠を誓ったんじゃなかったのか? いや、誓っているからこそ独自の基準の信頼なのだろう。時と場所を考えろ。

 

 俺の決死の覚悟を返せ。

 

 天元は内心で嘆きながら痴女の格好をした義妹の乱れ切った服装を整えさせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 冨岡義勇視点

 

 お館様の屋敷に辿り着いた時のことである。

 

「これは正攻法だと間違いなく攻撃してくるな」

 

 懇願されてしまったとはいえ、性行為に及んでしまった鬼になった想い人がそんなことを呟く。

 冨岡にとって彼女は責任を取らなければならない相手だった。

 初めは姉と間違え、ついで湯上りの女性のあられもない姿を(相手から迫られたとはいえ)見てしまい、更に(誓って何もしてないとはいえ)不可抗力で脱がして裸体を見てしまって、ついこの間に至っては(仕方なかったとはいえ)越えてはいけない一線を越えてしまった。

 やってしまったのだから責任を取らなければならない。そうでなくても、未婚の女性の素肌を見てしまったので必ず責任は取らねばならない。男ならそうするべきで、ここで無責任なことをすれば錆兎に顔向けできなくなる。

 会議で最後まで中立を保ったのも、男なら最後まで責任を取らねばならないから……もし凜子が人食いしていなくても討伐の命令が出れば自分が頸を切るつもりであったからだ。出来ることなら、このまま穏便に事が丸く収まればいいと考えているが、当の本人は好戦的でとてもじゃないが自分では説得が不可能で歯痒くて悔しかった。

 何とか穏便に済ませる方法を思案していたところで屋敷の中で他の柱が臨戦態勢に入ってることで絶望する。完全に戦う気満々の状態だということが窺え、自分ではどうにもできないことを悟って無力感に苛まれる。

 そうして打ちひしがれていた冨岡を後目に、おもむろに凜子は着ていた服を着崩し始める。

 

「な、なにをして──―!?」

「これはだな──―」

 

 諸事情により着物を着ていた凜子は、露出しながら答える。

 

「先ず鬼殺隊にいる多くの隊士は異性との付き合いなんてしたことの無い連中が大半だ。柱とて一部を除いて異性と話すことはあっても付き合ったことない人間ばかりだ。つまり童貞と処女の集まりだ」

「…………」

 

 その言い方はあんまりじゃないか? 

 

「ここで色気があり、それはもう素晴らしい肉体を持つ私が遊女のような相手を悩殺する格好していけば男の柱は前かがみになって動けなくなるだろう。女性だけなら、話し合いで何とかしてみせよう」

 

 その自信はどこから出てくるのか。

 冨岡は疑問に思ったが、時折理解できないことを口走るので聞くだけ野暮かもしれない。

 そんな事より、いっそ破廉恥ではしたないと思われる行為なのにも関わらず、かなりの色気を放って見惚れてしまう程の美女の初めての相手が自分だと思うと妙な優越感がある。

 

 男にとって初めてを共にした女性というのは、特別な意味がある。昔の女を忘れられないように初体験は忘れられず、乗り換えた後でもなんだかんだと再会したらその女とよりを戻して浮気に走る。ちなみにここで忘れていけないのは胡蝶しのぶだ。

 凜子がいない2年という歳月の間、空いた穴を埋めるように胡蝶しのぶは(意図せず)冨岡の隙間に入り込んだのだ。これは言葉足らずの冨岡のフォローをしてきた凜子の不在が大きく、なんだかんだと医者ということも相まって次に接触の機会の多い彼女にお鉢が回ってきただけだった。嫌々だったが、円滑な会議のために頑張った。

 そして、なんだかんだと気づいたら不思議なことに憎からず想う相手となっていた。

 原作のカップリングを考慮するなら、凜子がしのぶから冨岡をNTRしたことになるが、こちらにおいてはワンチャンしのぶが凜子から冨岡をNTRするという鬼そっちのけで昼ドラが始まるかもしれない。しのぶの出方次第では。

 

 閑話休題。

 

 流石の冨岡も黙っていられない。憎からず思っている相手が素肌を見せるのは、自分だけでありたいと思うのは当然かもしれない。

 

「……服を整えろ」

「流石にお館様が来たら整える。急場しのぎだ。感じるだろ、殺気が。普通に行けば殺し合いだ。丸腰でも何とかなるけど、ここは穏便に事を済ませるべきだ」

「他の奴に見せたくない」

「…………ここは我慢してくれ。後でいくらでも上書きされてやる」

 

 顔を赤らめ、凜子は服を着崩したまま歩いていく。

 説得してもダメだった。もし、これで柱が問答無用で襲いかかるようであれば全力で守ろう。

 冨岡はそう決めて凜子の隣を歩く。

 そして、彼女の義理の兄から鉄拳制裁をされるのだった。

 

 

 

 

 

 

 




三人称視点でしたが、ここで痴女柱さんがどんな考えをしていたか考えてみましょう。これは君たちが変態度を計る問題だと思ってほしい。

???「ボクと契約して変態になろうよ」

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