対魔忍になりたかったのにどうして鬼殺なんだ!? 作:Meat Toilet
後書きにお知らせがあります。
その任務が言い渡されたのは唐突だった。
『カァー! 至急、那田蜘蛛山へ向カエ! カァー!』
本当はもっと長く喋っていたけど、簡単に言ってしまえばそんな事を鎹鴉が喋っていた。
ちなみにしのぶと蜜璃が一緒である。しのぶは那田蜘蛛山で被害が拡大しているので治療も兼ねての同行で、蜜璃は私の監視役を兼ねての同行である。最近になって気づいたのは監視役が義勇から蜜璃にすり替わっていることである。まあ、義勇と四六時中一緒にいれば快楽に溺れた爛れた関係になるのは確実なので仕方あるまい。快楽に屈しないのが対魔忍の本懐だというのに、お館様には情緒が無くて困る。そして、蜜璃も別な意味で危険だということを知ってほしい。
先行して鬼退治してきてもいいけど、ダメだってさ。きちんとペースを合わせて向かっている。
確か、那田蜘蛛山って下弦の伍がいるんだっけ。下弦の伍ってショタ系の鬼だったな。くっ、私では相性が悪い。しかも、拘束してくるのだから縛られたらナニされるんだろう。お前も家族になるんだよされるのかっ? そうなのかっ? おのれ、下弦の伍! なんて素晴らしいヤツなんだ!
まだ見ぬ下弦の伍に期待しながら、那田蜘蛛山へ向かう。
「凜子さんは蜜璃さんと鬼の対処をお願いします。私は負傷者の治療を優先します」
「ん、了解。ちなみにしのぶってまだ処女?」
「いきなり何を言い出すのよ! 自分が……じゃないからって……!」
「何を勘違いしてるか知らないけど、私は処女だ」
時が止まった。
何を言ったのか理解できず、しのぶはフリーズした。
「だから、私は処──―」
「聞こえたわよ! 変な嘘つかないで!」
「残念ながら、処女のまま鬼になるといくら散らされても再生するようだ。永遠の処女ってなってみると、挿れる度にちょっと痛みが走るんだけど、何か処女破られても痛くないようにする薬とか方法とか無い? これは同じ処女仲間のしのぶにしか相談できないんだ」
「知らね」
「蜜璃は──―いいや」
「私にも聞いてください!」
「蜜璃を汚したくないの」
「凜子さん」
「おい、私はいいのかよ。変態」
キャラが恐ろしいことになってら。これは早く那田蜘蛛山へ到着しないと大変だ。
そんなこんなで那田蜘蛛山に到着し、しのぶと別れて私と蜜璃が鬼を狩りに行く。
今更考えついたことがある。
「私が蜜璃を抱えて移動すれば早いんじゃないか?」
「妙案ですね! でも、そうなると戦いが……」
「大丈夫! 私に任せて蜜璃にはちょっとだけお姫様になってもらう」
「え──―きゃぁっ」
そうして思いついたのが、横抱き……俗にお姫様抱っこというやつである。明らかに戦闘効率が悪い。私は両手が塞がり、蜜璃は借りてきた猫状態。見事にしくじった。
しかし、だ。
対魔忍というのは、圧倒的に不利やどう考えても罠だろうと分かっていても飛び込んで凌辱の限りを尽くされて最後には敵を打ち倒すのだ。つまり、これは敢えて自分に不利な状況を与えて対魔忍プレイを楽しんでいるのだ。大丈夫、最終的には何とかする。
「か……」
蜜璃がボソボソと何か呟いていたが、妙な不安が過る。なんというか、誰かの性癖を歪めたような気がしてならないのだ。まあ、私が誰かの性癖を歪めるような事なんてした覚えは一度もないので大丈夫だろう。
鬼の捜索を開始すると、すぐに見つかった。
鬼ではなく、鬼殺隊の隊士で……私とかつて協同で任務を行って胸に対して物凄い嫉妬の目を向けてきた尾崎さんだ。更に隣には真菰がいる。
別に鬼になったとかではない。
「見ないでぇ。お願いだから私を見ないで」
「うぅ……穴があったら入りたい……」
涙ながらに懇願する彼女たちを私は蜜璃を降ろし、二人揃って死んだ目で眺める。
近くでは鬼殺隊の野郎どもが血の池に沈んでいた。なんて酷いことをしやがる。
「こんな……恥ずかしくて……」
「お願い、見ないで……」
鬼殺隊の女性隊士って均整の取れたボディラインなので、その肢体を強調するように扇情的に魅惑的に魅せる見事なまでの亀甲縛りをしていた。最早、芸術的とすら言える。眼福とすら言える。
くっ、なんて高度な戦術を取るんだ! これでは、女に免疫のない鬼殺隊の野郎どもには絶大な攻撃力を発揮しているぞ。那田蜘蛛山でこんな行動をする鬼っていたか?
周囲の気配を探ると、すぐ近くに鬼の気配がした。
「蜜璃は二人を降ろしてあげて。私は鬼を──―」
「凜子さん、捕まっちゃいました……」
そこには駿河問いという縛り方にされた蜜璃がいた。せっかくの巨乳なんだから、亀甲縛りにしろよ。誰が、こんなのを望んだと言うんだ! なんで私にやらないんだよ! そこは平等に私にもやるところだろう!? お前らそれでも鬼かよ!
などと心の中で叫んでいると、一際大きな気配がした。さっき感じた鬼の気配と一緒だ。
ゆっくりと向かってきたヤツは、本を興味深そうに読みながら糸を弄んでいた。
私はどうやら鬼になって目が悪くなったらしい。おかしいものを見ているようだ。
何故、私が書いた本を下弦の伍が読んでいるんだ?
ヤツは私が緊縛プレイをこれでもかと注ぎ込んだネタ本を読みながら、ボソボソと「やっぱり亀甲かな」と呟いた。
とりあえずムカつくので斬りかかったら、糸で防がれた。
「危ないじゃないか。もう少しで頸を斬られるところだったよ」
「なんでこの娘たちを縛った? さっさと解放しろ」
「嫌だね。僕はまだ探求で忙しいんだ。これは家族を作ることよりも大切なんだよ。僕は今まで家族に執着してきたけど、この本のおかげで真の繋がりを知ったんだ」
本を掲げるのをやめてほしい。恥ずかしくて死にそう。後、身バレしたらどう責任を取るんだよ。読者がいてくれるのは嬉しいけど、こんな変態を生み出すために本を書いたんじゃない。
「それで人間の女性を縛るとか何を考えている?」
「だって鬼なんて年齢を偽った年増の集まりだもん。僕の姉さんや母さんなんて見た目は若いけど、実年齢は十数年以上は生きているオバサンなんだよ。そんなのを縛る方が頭おかしいね。ね、オバサン」
「よし、いい度胸だクソガキ。思う存分ワカラセテやるよ」
今更、下弦の鬼に苦戦する女じゃないのでここは楽勝だ!
私に勝ちたければ、触手を連れてこい!
結果。
「くっ、殺せ……!」
アニメで禰豆子ちゃん拘束されたような状態で、より淫靡になって吊るされている対魔忍がいた。私だった。
「ザコだね、オバサン」
どうしよう。ワカラセられたのは私だったかもしれない。くっ殺!
山にいる下弦の伍ファミリーは既に討伐済みであることを了解の上でお願いします。
変態の敗因、恥じらい。