対魔忍になりたかったのにどうして鬼殺なんだ!?   作:大栗須

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前田まさお氏が考案したミニスカートと胸元全開の隊服は確かにエロいと思います。しかし、あまりにも直線的だと思う。
エロというのは直球であからさま過ぎると、見る側の興奮を誘う分には良いけど万人受けは難しいだろう。
そこで私は対魔忍スーツというピチピチした服を推したい。
露出のレベルでいけば、前田まさお考案の隊服に軍配が上がるかもしれない。しかし、ピッチリスーツは露出することによるエロを求めた服装ではなく、ボディラインを浮き彫りにすることによって敢えて露出しないことによって出るエロさが私は素晴らしいと思う。





第5話

 2週間くらいしたら刀が届くらしい。

 それまでにすることは特に何もなく、どうせならと抜刀術を極めてみよう。具体的には、1つの突きで3度突かれているような状態を目指したい。要するに全く同時に1度の抜刀で3度の抜刀をした状態にしたい。

 上弦の参だっけ? 反応速度が尋常じゃなさそうだし、それを上回る速度で抜刀しなきゃだよね。頭対魔忍なので筋肉思考でやりましょう。

 しかし、これはあくまでも願望だ。実際に出来たことは『霹靂一閃 神速』と霹靂一閃の20連打くらいなもので、透ける視界の状態でようやく扱えるカウンター技だった。雷が通過していくような……落雷のようなというかそんな感じなのが雷の呼吸の型だが、このカウンターは立花道雪の雷切の逸話と某落第騎士の超電磁抜刀術を参考に編み出した。

 相手の攻撃動作を完全に見切った状態での超必殺カウンターなので、透けてる前提で更に動体視力も良くないといけないので下弦くらいは狩れても上弦でマトモに使おうとすれば確実に死ぬかもしれない。実際、透けてない状態で師範と手合わせしたら見事にしくじった。透けてたら、師範の木刀は粉々になった。一刀羅刹状態ですね。

 とりあえず、この型は通常の型とは違うので『零の型』とカッコよくカテゴリーしておこう。

 しかし、さすがに1度の抜刀で3度抜刀したなんてサーヴァントみたいな事は出来ず、こうなればもっと速さを極めるしかないだろう。

 

「凜子、励んどるか?」

 

 意気込みを新たにしていたら、師範がやってきた。

 木刀を納めて私は一礼する。

 

「まだまだ修行中の身。普通の鬼は倒せるかもしれないけど、それ以外では頚を切る前に死ぬのは必定なので鍛練あるのみ」

「お前の今の腕前ならば、柱になれるぞ。それでもか?」

「柱になることが目標ではなく、鬼舞辻無惨を倒すのが鬼殺隊の目標です。この呼吸法も全ては鬼舞辻無惨を倒すために会得したものであって、あくまで鬼を倒す手段と地位であるべきだと思う」

 

 ましてや相手は千年近く姿形を見せてない輩だ。現時点でどこにいるか解らないし、仮に解ったところで鬼殺隊の隊士が束になったところで勝つことは不可能だろうし、悟られて逃げられるかもしれない。対魔忍だからやりがちだけど、きちんと倒す相手の情報を得るのは大切だ。初見で相手にしたくないし、相手しても確実に仕留められるようにしておきたい。考えなしに突撃するのは対魔忍だけにしておけ。あっ、私じゃん。

 

「なら、尚更励まねばな」

「心得てます、師範。ところで隊服の件なんだけど、何故あれではダメだったのですか?」

 

 前田が持ってきた隊服があったのだけど、試着した後に素直な感想を述べたら普通の男性用の隊服と遜色ない隊服が後日送り届けられた。

 某乳柱……恋柱になる予定の女性用隊服のどこがダメなんだろう。私なんて原作だと対魔忍スーツ着ててエロシーンになれば、大事な部分だけ露出させられたただのエロスーツにさせられるし、それ以上の明らかに下着としての機能を果たしていないエロ下着のみで衆目に晒されてるんだ。

 つまり、私の裸体は秘密結社Lilithの手によって隅々まで多くのユーザーの欲望の捌け口にされるのだ。今更、こんな隊服の露出程度で恥ずかしいとは思わない。むしろ、少ないと思う。

 この隊服はスカートが短いし、マンガとかアニメならスカートで戦う女の子は人の足をぶった斬ってバラバラにしているけど、実際にスカート姿で戦うとなるとヒラヒラして邪魔になる。それに防御面が心許ない。動きやすいのは認めるけど、対魔忍スーツの機能性を知っている身としてはスカートよりピッチリスーツ派だね。

 まあ、もちろん機能的な問題を指摘したから普通の隊服になったのではない。

 

『これだと具が見えちゃう』

 

 実際はこう感想を口にした。

 師範も前田もフリーズし、たまたまいた長兄は口をあんぐり開けて目が点になっていた。そして、拳骨された。

 師範からも怒鳴られ、ついでに前田も怒鳴られて早急に普通の隊服が後日送り届けられた。防御面で心許なかったのでちょうどよかった。

 

「年頃の娘があんな服を着てはいかん!」

「あれくらいの露出でギャーギャー騒ぎ立てることは無いかと思う」

「バカもん! お前の常識は、世の中の非常識じゃ! 変態じゃ!!」

 

 そこまで言う!? 

 

「師範、動きやすさを重視すればあの隊服は素晴らしいものだ。確かに防御面では心許ないかもしれない。しかし、強力な鬼と戦うのであれば隊服は紙も同然なので回避に重きを置きたいのは当然だと思う」

「だとしても、あんなに肌を出すでないわ! 恥ずかしくないのか!?」

 

 恥ずかしい? 

 あれって恥ずかしいの範疇に入るのか? そういえば、この時代の感覚と令和を生きた人間の感覚が違うから師範の言うことも理解できる。しかし、対魔忍のピッチリスーツの方がエロいと思う。前田もまだまだ修行が足りないな。本当のエロとは何なのか教えてあげねば。

 

「師範、貴方の言うことは理解しました」

「解ってくれたか!」

「要するに隠すことによって滲み出る淫らな雰囲気が良い────」

「違うわ!!」

 

 ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 拳骨したァァァァァァァァァァァァ!! 

 

「良いか! そもそもお前はじゃな──―」

 

 正座させられ、長々と説教された。

 やれ慎みを持てだの何だの、それはそれは長くてクドい説教だったよ。念仏唱えてんじゃないかってくらい長かった。

 そんな説教は唐突に終わりが告げられる。

 刀鍛冶の人が来たからだ。

 ひょっとこの面を着けた侮れない男だ。肌が浅黒く、着物越しであるにも関わらず、鍛え上げられた体は称賛に値する。

 

「私、秋山凜子殿を担当することになった黒鉄塚弥生と申します」

「はじめまして、秋山凜子です。どうぞ、お入りになってください」

「……あらやだ、美しい」

「はい?」

 

 待て。今、何かおかしくなかったか? 

 

「羨ましいわァ。妬けちゃうわァー。こんな可愛い娘の担当になれて嬉しいわぁ」

 

 前世ならそれなりの数がいたであろうオネェ言葉の野郎が、まさかこの時代に既に存在してるとは。50年くらい時代を先取りしてるねー。下手に刺激して素を出させたら死にたくなるので、当たり障りのない返事で凌ぎきろう。

 居間へ通し、お茶を出そうと準備する。

 

「誰が変態じゃぁー!」

 

 野太い叫び声が聞こえた。誰かがやるとは思ったけど、まさか師範がやらかすとはね。

 お茶を持って居間へ入ると、涙目の師範と正座を崩して女性のような座り方をするひょっとこが視界に入る。絵面が辛い。カオスだねぇ。

 

「何が起きたか分かりませんが、あまり怒鳴るといけません。そこは笑って受け流すのが淑女の嗜みです」

「あら、ありがとうね。皆、私のことを男扱いして困ってたの。貴方のように女性として扱ってくれる人がいて、おまけに担当する剣士で嬉しいわ」

「その人たちはきっと見る目が無いんですね。黒鉄塚さんはとても女性的で素晴らしい方だ」

「うふふ、お上手ねぇー。よくできた娘で私が男だったら惚れてたわぁー」

 

 えっ、男だよね? 

 視線が黒鉄塚さんの下へ向かってしまう。ナニが何も無いハズがないだろう。骨格は男性だったし。貴方の酷使棒はどこへ行ったの? まさかお労しいことになったの? 

 

「あんまり乙女の恥ずかしい部分は見ちゃ駄目よん」

「ごめんなさい。一つお尋ねします。ナニが何も無いんですか? 割れてるんですか?」

「勿論あるわ。でも、私のは愛する殿方の初めてを貰うためにあるのよ」

 

 もはや何も言うまい。

 師範も得たいの知れない奴にビビってしまって、私の後ろに隠れてしまっている。

 

「ところで、刀を持ってきてくれたのですよね」

「こちらが私が打った刀よ。貴方のために最高に仕上げたわ」

「ありがとうございます」

「さあさあ、貴方の輝きを私に見せてちょうだい」

 

 そんな急かさなくても、と白い鞘から柄に手を掛けて刀を抜く。稲妻のようなギザギザの鍔がカッコいい。

 徐々に刀身の色が変わっていき、鮮やかな黄色に変わった。

 

「うん、普通だ」

「当たり前じゃ!」

 

 さもありなん。

 

「黒鉄塚さん、素晴らしい刀をありがとうございます。これからもよろしくお願いします」

「ありがとうね。凜子ちゃんみたいな娘の担当になれて嬉しいわ。あっ、でも、これだけは言わせてちょうだい」

「なんでしょうか?」

「刀折ったらテメェも折るからな?」

 

 ドスの利いた低い声でそう脅され、ちょっと漏らしそうになった。どこを折られるのだろうか。とにかく気をつけよう。

 黒鉄塚さんは帰り、ようやく静寂が訪れた。

 しばらく沈黙が続き、湯飲みを片付けようと立ち上がった時だ。

 

「チュンチュン!」

 

 雀がやってきた。身振り手振りで教えてくれた。

 

「師範、早速任務が来ました」

「行ってこい、凜子。お前なら出来る。辛くなったら、いつでも帰ってこい。歓迎するぞ」

「さっきまでビビってた年寄りの発言か」

「何故、お前は平気なんじゃ。いや、類は友を呼ぶというのはこの事じゃろう」

 

 あんなのと一緒にするな。

 

 

 

 

 




オネェ言葉は1950年頃に出てきたらしいので、彼女は時代を先取りしていることになります。

次回の更新は年明けの1月1日夜9時に投稿する予定です。
今年一年、お疲れ様でした。
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