対魔忍になりたかったのにどうして鬼殺なんだ!?   作:Meat Toilet

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あけましておめでとうございます。
前の話はフライングしてしまいました。常なら予約投稿下後に前書きとか考えていたのですが、予約したと思ったら西暦を変えておくのを忘れて中途半端な時間の投稿となってしまいました。



第7話

 絶対に無惨は赦せない。

 私がひささんに怒られ、義勇に変態扱いされるのも師範や長兄に拳骨されるのも私が対魔忍されないのも全て鬼舞辻無惨とかいう頭も体も無惨な野郎のせいだ。

 とりあえず、あれもこれもそれも全て鬼舞辻って奴の仕業なんだ。おのれ、ゆ゛る゛さ゛ん゛! 

 ひささんの長いお説教が終わり、一休みがてら縁側でお茶を啜る。

 全く生きにくい世の中だ。ちょっとくらいおねショタしたっていいじゃない。だって人間だもの。やれ慎み持てだの何だの言われたところで、こちとらくノ一で対魔忍だぞ。寝取られ系ヒロインだぞ。本職がA○女優だなんて言われた女だぞ。どうせ100年も経てば、私のあられもない姿が世の中に出回るのだから、今更だろう。むしろまだ衆目に晒されてない対魔忍の裸体を見れるんだから、喜べよと言いたい。

 

「酒がほしい」

 

 やけ酒だよ、コンチクショウ! 

 神は私にどれ程の試練を与えるというのか。対魔忍に出てくるような鬼が出てきてくれたら、万歳突撃して嬉々として捕まってあげたい。そして、抵抗空しくエロエロな目に遭わされ、快楽堕ちしたい。純愛系のノーマルなエロも好きだけど、やはり凌辱の限りを尽くされるくっ殺プレイも乙なものだ。その点では、次兄に関係を強要された時に上手く演技できなかったのが駄目なんだろう。いきなりだったから心の準備が出来てなかったし、いざやるとなったら急に怖くなって緊張してやらかしてしまった。今では後悔してる。もっと上手く回避できたのではないかと。

 そんな後悔を胸にお茶を飲んでほっこりする。

 月を見ながらのお茶なので、月見酒ならぬ月見お茶だ。どうせなら、私はワカメ酒したい。

 

「……何をしている?」

 

 お茶菓子に手をつけようとしたら、義勇が現れた。

 

「おや、寝なくていいのか? 早寝早起きは三文の得だよ」

「……俺は子供じゃない」

「お姉さんからしてみれば、皆子供だよ」

「……何歳なんだ」

 

 女性に年齢を聞いたら駄目だろう。

 

「15くらいだ。君は見たところ14くらいかな。お姉さんと言って差し支えないのでは?」

「……お前は姉さんじゃない。姉さんと言うな」

 

 確かに。

 しかし、こうも頑なに否定されたら意地でも認めさせたいものだ。炭治郎くんからは「俺は長男です」という謎理論を出されてお姉さん呼びはされなくて、他の子はきちんと姉呼びしてくれてたのにこれは一体。恐るべし謎の長男理論。くっ、姉ビーム撃てるようになれれば、姉になれたのにと思わずにはいられない。

 

「酷い子だ。歳が上なら、お姉さん振ったところで問題ないだろう。何がいけない?」

「俺の姉さんとは全然違うからだ」

「そりゃあ、違うね。私は君のお姉さんは知らないからね。どういう人だったの?」

「……姉さんは、もういない」

 

 まあ、大体は察しがつく。鬼に食われたのだろう。だから、鬼殺隊に入った。姉の仇討ちもそうだが、これ以上自分と同じ苦しみや悲しみを減らすために。

 鬼殺隊に入る人間の大半が大事な人をある日いきなりなんの前触れもなく鬼によって殺され、それまであった幸せな生活を失った人間が大半だ。私のように初めから他人のためにしか動いてないのは希少だろう。そもそも、最終選別ですら生き残れるか怪しいのに初任務ですら死ぬ可能性のある仕事だ。下手したら、誰も生き残らない可能性の方が高いのが、鬼殺隊の危険なところだ。まだ軍隊の方が生存率が高いだろうと思うくらい、鬼殺隊の死亡率は高い。人的資源のゴミ処理場かと言いたい。

 どんな形であれ、人のために動こうとする想いがあるのは良いことだ。

 

「そっか。その感じだと家族は鬼によって奪われたから鬼殺隊に入ったんだろう」

「秋山は……」

「私は特にそういうのは無いな。強いて挙げるなら、ホンの数ヶ月って短い間だったけど本当の家族のように受け入れてくれたある一家が平穏な暮らしが送れるようにするためにかな」

「……そうか」

「ああ、信じなくていいよ。給金が良かったのが大きいし、後は自己満足が大半だ。結局、私の与り知らぬところで鬼に襲われてたらどうしようもないからね。守ってるつもりになって戦ってるの」

 

 太平洋戦争時代の日本軍人みたいなものだろう。国のため、家族のために戦って生き残って帰還したら、家族が空襲や原爆で焼け死んでたようなものだ。それと同じ事をしている。まあ、私の場合は死なせてしまうと理解して動いてるから心持ちとしては最悪だ。

 鬼舞辻無惨の手によって奪われる命があり、回避するためには全集中の呼吸を習得する必要があった。でも、習得したら当然ながら鬼殺隊へ入らないといけない。鬼を殺すために得た力を私利私欲のために使うのは厳禁だからだ。あと約7年の間に無惨を殺せたらいいけど、東京に行ってしらみ潰しに捜したところで見つからないだろう。雲隠れされたら、それこそ目も当てられない。ツチノコみたいな野郎だからね。

 

「まあ、皆それぞれ大なり小なり事情を抱えてるんだ。君だけが辛い思いした訳じゃない。色んなものを背負って生きていくのが人間のすることだ。泣き言の1つや2つくらい言いなさい。情けない行動かもしれないけど、吐き出さないと体は大丈夫でも心はどんどん疲弊していくからね。吐き出したくなったら、いつでもおいでね」

「……お前は違う」

「そっか」

 

 立ち去っていった姿を見送り、私はお茶を飲み干す。

 違う、という言葉にこめられた意味はなんだろう。裏があるように思われてるようであれば、そこは勘違いであると伝えたい。私ほど裏表の無い素晴らしい人間はいないだろう。

 もしくは姉と間違えてしまって以降、混同でもしているのを否定しているのだろうか。

 

「ふむ……」

 

 誰かに誰かを重ねるのは悪いことではないと思う。前世の私なんて……いや、思い出すのはやめよう。私は対魔忍好きの女だった。それだけだ。

 そうだ、何を感傷に浸ってるんだ。

 

「よし!」

 

 夜這いしよう! 

 

「静かに寝てくださいますよね?」

「うひゃっ!?」

 

 突如現れたひささんによって出鼻を挫かれた。いや、冗談だからね。

 

 

 

 

 




対魔忍したいのも理由の1つだけど、それを馬鹿正直に話せばドン引き待ったなしなので最もらしい戦う理由の1つです。
欲望に正直な某クルセイダーが羨ましい。

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