性別反転が好きなマイノリティだっていいじゃない。 作:菊池 徳野
8月中はたぶん忙しくてまた投稿頻度落ちます。あしからず。
「首の皮一枚、腕の皮一枚…。次元震マジこわぁ。」
夜、適当におばあちゃんにはユーノに教えて貰った認識阻害で誤魔化して家に帰った後、濡らせないからと右腕を洗わずにいたので、何となく痒い気がして包帯取ったら出血もせずに脈打つ筋肉がこんにちはしてたで御座る。
やぁやぁ我こそは!とか言い出してきそうだったので速攻でちゃんと巻き直して念仏唱えて布団被って寝直したよね。
残念ながら朝起きた時に夢じゃなさそうな痛み方してたから覚悟決めたけどさ。
知ってるかい?人の皮膚って豚肉の脂身みたいな多重構造してて、筋肉との間には細かい血管や脂肪組織やコラーゲン繊維なんかが詰まってるんだよ。だから普通は筋肉が「やぁ!」みたいな感じで綺麗に見えずに血まみれになってる筈なんだよ。
まさか皮膚が透明化したとか自分の右腕限定で透視能力に目覚めた訳でもなかろう?
早速昼間にアースラに行って、なんでこんな異常な怪我になったのかリンディさんを初めとして大人達に聞いて回ったのだが、曖昧な言葉だけで教えてくれなかったのでユーノを問いただすことにした。
安静にしてればいいとか知らない方がいいとか、滅茶苦茶流したそうにしていたのを食い下がって聞いたところ、私の右腕の皮膚は次元震の光に接触した拍子に魔素に分解されたらしい。こう、微細振動によって削り取られるが如く。それ故に傷口は何事も無かったかのようにのっぺりしていると。
じゃあ、出血しないにしてももっと激痛が走ってもおかしくないんじゃないかと突っ込んだら、「理由不明」だそうだ。
…はぁ?
次元震を観測した事はあっても、飲み込まれた人間がどうなるかは結果だけしか分からず推測の域を出ないらしい。次元震による負傷者自体が少ないそうだ。次元災害は生存者自体が珍しいと言われていて、今回の次元震は小規模だが、大きいものだと世界を滅ぼすらしい。
そういやロストロギアってそんな危険なものでしたね。
私の腕も本来触れていない所にも負傷が波及しているので被害がその程度で済んで、もっと言えば腕が無くなっていない事を喜んだ方がいいとの事らしい。
つまりあと少ししっかりと光に包まれていたら今頃利き腕が無くなっていた可能性があったらしい。ユーノが半笑いで教えてくれたが、確かに笑うしかない情報である。
「これがゾンダー疑似体験。がんぎるがんごぉぐふぉぉ…。」
リンディさん達がどことなく視線を合わせてくれない理由が判明したと同時、どこで聞いていたのかクロノが目の前にやってきて、「だから君は暫くの間アースラで療養。」と一言言ってバインドらしき魔法を私の首やら関節やらに巻き付けて来た。
その間にユーノは出撃に出てしまい、ゲートが閉まるまで拘束される事になったのである。思い出したら腹たってきたな。
『Master, Wake-up harry.(寝ぼけてないで起きてください。)』
このまま光を浴びて新人類に目覚めてやろうかと腕に魔力を込めていたら、いつになく切れ味の良いツッコミをリリィから入れられた。
いや、実際は回復力促進とかしないかと思って試してたんだけどさ。復帰早々辛辣ね、リリィ。
「おはようリリィ。調子はどう?」
『System all green.』
「見た感じ傷も残ってないし、大丈夫みたい。じゃあ、今日からまた一緒に頑張ろう!」
『No problem.』
リンディさんやアースラクルーの監視の元なのは達の出撃の見送りを行っては治療の経過を見る生活もこれで終わりである。リリィの回復を待つという理由もあり、半軟禁の様な地獄の日々だったがようやく自由に動けそうだ。
せっかくのなのはの活躍を近くで拝むこともできず、魔法を使うこともできず…何のためにここに居るのかと駄々を捏ねてもクロノに医務室に放り込まれ、私の小さな反逆の灯火は露に消えた。
まったく小さな反逆程度許してくれてもよかろうに。
しかし、そんな日々も今日までだ。
リリィは完全復活、私の腕も痛みを感じない程度に治った。そして負傷中に少しだけ仲良くなったクロノにも治ったら出撃してもいいと言質をもらっている。
現在、私たちの手元に存在するジュエルシードは10個の大台に乗り、アースラのメンバーも捜索に力を入れてくれているとはいえ、やはりと言うべきか発見が遅れフェイト達に先を越されてしまった物も出て来ているのが現状で、ほぼほぼ原作通りにフェイトも順調に集めているらしい。
お前関わっておいて原作から増えたの1個かよ!という感想も聞こえて来そうではあるが、正直原作とあまり差異が出ていなくてほっとしているのでオールOKである。
推定15個。それが現在確認されている所在が判明しているとなっているジュエルシードの数である。つまり残るジュエルシードは6個。原作の通りであれば後は海の底に眠っているはずである。
このジュエルシード騒動も終焉が近付いてきている。これ以上動けずに見守っている訳にはいかない。
既に捜索に行き詰まってから数日経過している。ある意味私の療養期間はちょうど良かったのかもしれないが、『一緒に行動して好感度を稼ぐ』という目的は達成できなかったので復帰は早い方が良かったのだ。
地獄の日々とは言ったが、私は医務室とデッキを行き来する程度で治療という名目で軟禁されていたので「がんばえーなのキュアー」と画面越しに応援していただけだが、進展が無い状況に疲弊しているなのはの姿は私に結構な栄養を提供してくれたように思う。
そのせいで1度間違えて「お疲れ様」って言うところを「ありがとう」って言ってしまってかなり無理矢理誤魔化した事もあるが、それは置いておこう。
ここで、1つ問題がある。
思えばなのはとフェイトがぶつかり合ったのは私がアースラに取り押さえられた日くらいであり、このまま海上で大捕物が始まった時、何が起きるのか想像ができない。
これは由々しき事態である!
原作ファンとして、なのはとフェイトの友情が育まれる機会が減る事は望むところではないというのもある。だが何よりもここで問題なのは、フェイトを見殺しにする事をなのはが許容する可能性がある事である。
原作にあった、あんなにボロボロになってるのに放っておけない!とリンディやクロノの静止を振り切って海上に飛び出すシーンはなのはの善性を示すと同時に後のフェイトとの友情を強固な物にする一助となるとても重要かつ大切なシーンである。
だがそれ迄の積み重ねが無くては人というのは己の身の危険を省みずに戦場に身を投じる事はできないのである!少なくとも私は知らない人のために命は投げ打てない。
実は私がベッドに転がされている間にフェイトと関わる事があったとか、私の想像以上になのはが良い子だったりしないだろうかと思わない訳では無い。というかこの悩み方前もした気がする。
まぁ、結論としてはフェイトを助けるために最悪の場合私が飛び出すしかない、という事である。
荒れ狂う海に前衛のいない遠距離担当が飛び出して行って何が出来るの?と言われると何とも言えないがたぶん私が飛び出せば芋づる式になのはもユーノも出てくる筈である(希望的観測)。
そうなれば私が参戦するだけで原作に大きな差異は出ない。むしろ足枷になってクロノの邪魔をすればジュエルシードの数を原作に合わせる事も可能かもしれない。
それに特等席でなのはとフェイトのいちゃこらを眺めていられると考えるとむしろありなのかもしれない。どうせ皆から無茶する奴みたいなレッテルを貼られているのだし、アースラから飛び出すぐらいした方が期待に応えられるだろう(やけくそ)。
こうしてリリィも復帰し腕の痛みがひいた以上、なんだかんだフェイトとのタイマンの経験が1番多いわたしが前線に出ていかないのもおかしな話である。
もうモニター覗いてるだけの存在ではない。
そうやって精神的なウォーミングアップを行って、海上で問題が起こっても大丈夫だと考えていた私は、実際問題が起きてアースラ内が騒然としていた時、若干ウキウキしていたぐらいである。
「要ちゃんはここに居て!」
それだけになのはとユーノが念話している様子を見た時は笑い出しそうになってしまった。なのはが飛び出そうとしている後ろをついて行こうと待ち構えていたのに…。
なんで止めるんです?
「待ちなさいなのは君、勝手な行動は許可できません!」
「ごめんなさい。でも、放っておけないんです!」
思わぬ制止の言葉にぴしりとその場に固まって動けない私を放置して、勝手に話は進んでいく。ユーノがなのはのバックアップを行ってるのが夢かなにかのように思えてくる。
待って待って。私もう復帰してる。バリバリ戦えますよ?
なのはの事は任せてじゃないんだよユーノ?耳着いてないんかゆーのぉぉぉおお!?
「なんて事だ…。」
頭を抱えるクロノに同調するように私も頭を抱える。なのはのまさかの裏切りに本気で頭痛がし始めた。
なんでこんなことになったのか、慢心、環境の違い…。
「艦長、私も行きます。2人が出てしまった以上、2人の安全を優先すべきです。」
「そうね。ではクロノ執務官、なのは君とユーノさんのバックアップを優先して。ジュエルシードの確保は最悪二の次で構いません。」
「待ってください!!」
いや、今は悩んでいる時ではない。1度出遅れた以上、ここで動かなければお留守番は必至。
これ以上蚊帳の外に居続けるのはマズイ!なんとか理由を付けて無理矢理にでも着いていかねばならない。
「私も連れて行ってください。数は力です。ジュエルシードの鎮圧もその後の行動についても私が行った方が利があります。」
「君は病み上がりだろう。それに守る対象が増えた方が困る事もある。業腹だろうが彼らの言う通りアースラで待機だ。」
「貴方たちが勝手に決めた病み上がりでしょう!この場で1番地球での戦闘経験が多いのは私です!それに遠距離の私が守られないといけない状態って前衛が壊滅してる時くらいじゃないですか、それなら救助要因として動ける人員が必要です!」
パッションで乗り切れ私!理由になってない気もするが考えてはいけない。こういう時はノリと勢いで乗り切るしかないのだ。クロノの言葉を真っ向から潰してるようで論点をすり替えて対処だ。
ほら、時間ないよ?アースラが一般人見捨ててもいいの?
「友達が危険な所にいるのを見てるだけなのはもう嫌なんです!」
情に訴えかけるように言葉を絞り出すが、これもまぁ本心には違いない。
「…同行を許可します。ただし、クロノの指示に従う事。危険と判断したら直ぐに逃げる事。ちゃんと約束できるわね?」
「はい!」
「クロノ、指示は先程と変わりません。3人の事任せましたよ。」
「了解。」
私の訴えの中に思うところがあったのか、リンディさんから許可が降りた。元々出撃するつもりだったのでさっさとゲートまで行ってユーノ同様ゲートをさっさと開く。
クロノが頭を抱えている気がするが気にしない。ユーノのおかげで地点登録はしなくていいのでとても簡単だった。善は急げですよ、クロノさん。
そしてそのまま何も考えずゲートに飛び込むと、結構な高所から落ち始めたので肝を冷やしたが到着するまで考える時間が出来たのだと思い直し気持ちを落ち着けることにした。
考えるのはジュエルシードの対処法もそうだが、先程のやりとりの方が気にかかる。
どうにも情に絆されたという感じではない気がするのだ。先程のリンディさんの目を思い出すと、なんというか品定めされている様ななんとも言えない感覚があった。
何となくだが前々からリンディさんが私を見る目はユーノやなのはを見るそれとは毛色が違うような気がしていたのだが、今回でハッキリしたといったところか。
…やっぱり信用されてないのかなぁ。たぶんだけど地球の近くを航行していたのも原作みたいに偶然って感じじゃなさそうだし。
少なくともアースラの中にいる時に無茶なことはしていないつもりなのだけれど。
「…寒くない?リリィ。」
『I have no life.No problem master.(機械は寒さを感じないんですよ?)』
「ふふっ。調子はバッチリだね。」
とにかく悩んでいても仕方ない事を悩んでいる程、私は戦える人間ではない。照準、偏差、魔力量。考えることは山のようにある。
結局スコープを覗き込んだら忘れてしまう悩みなど、放っておいたらいいのだ。
「リリィ、滞空制御よろしく。」
『OK Master.』
「私は一発の弾丸…。」
風の声も草原の輝きも私は知らないけれど、この言葉のように射撃に吸い込まれるような感覚を私はとても気に入っている。
「…ねぇ、やっぱり曲射にしていい?なのは君とフェイト君の間通して撃ち込みたい。」
『Congratulation Master.When do you got humanism?(人らしい感情の獲得、おめでとうございます。)』
私は怒っています。ええ、それはもう推しとか友達とか危険度とか関係ない程度には。
申し訳ないが、冷静なスナイパーは性にあわない。やっぱり私はトリガーハッピーが向いている。
「一発決めたら後は普通にやるから、操縦権はその後任せる。」
『Aye aye ma'am.』
なんだかんだ言って、私は守られる側の人間ではないと二人の頭に実践で叩き込んでやる!残念ながら相手は不定形なので見た目は微妙だが、ある意味遠距離からの妨害がどれだけ頼もしいかあの二人に見せるには充分だ。
うおおおおぉ!推しに仇なす者は死ぬがよい!
後は一騎打ちと対プレシア戦で無印は終わりですね。とりあえず1部を終わらせるまでは走り抜けたいです。
感想、誤字報告感謝です。
各話の細かい描写の修正や書き足しは無印書き上げてから行います。