性別反転が好きなマイノリティだっていいじゃない。   作:菊池 徳野

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主人公のスタンスがブレてないか心配です。


雲がゆくのは

適当なビルの屋上に腰掛けて、ぷらぷらと足を遊ばせながら一人静かに時を過ごす。

何かを考えるわけでもなくぼーっと時間を無駄にして、雲の形に何か特徴を見つけては物思いにふける。そんなある意味いつもの時間が帰ってきたのである。

 

私にとってのジュエルシード事件は終了したのだ。

 

それは海上での一戦が終わった現在において、私が介入して大きく変化がありそうなシーンが無くなったということと、原作との差異が少ない以上座して天命を待つ他ないという能力の限界という大きなふたつの理由からである。

 

もし介入したとしてもなのはの代わりに一騎打ちしたところで勝てるかどうか分からない。何より2人の友情を深める邪魔をしたくないという、いちなのはファンとしてその辺の大筋にちょっかいを出すのは個人的なポリシーも相まって嫌ということもある。

結果として何か行動に移す気が失せているという訳だ。

 

とはいえこのままぼーっとしているだけで無印が終わる訳では無い。大きな仕事が終わっただけで戦闘する機会が無くなった訳では無いのだ。

 

これから始まる一騎打ちの後、私達はプレシア・テスタロッサの所に乗り込み色々あって無印はその幕を閉じる事になるだろう。

しかしその前に、原作通りならアースラの戦闘要員(笑)が討ち入りして返り討ちに合ってしまい、イベント戦のような最終戦が幕を開けることになる。それはつまり戦闘要員が不足した状況でやむを得ない出撃が予想されると思っておいて間違いないだろう。

 

私にはフェイトを助ける為に飛び出した二人を追いかけて飛び出していった前科があるし、リンディさんに切った啖呵の内容も鑑みると何も言わずとも出撃メンバーに編成されていておかしくないし、私としてもありがたい。

 

そしてなのは達と共に出撃し、フェイトとなのはのサポートとして無人機だかゴーレムだかを少々処理して私の役目はおしまい。なのはとフェイトは幸せなキスをしてめでたしめでたし、と言った具合である。

 

今までの事を考えたらなんとも楽な仕事である。

多少なりとも気が緩んだとて誰にも文句は言わせるつもりは無い。私の役目は終わったのだ。さながら今の私は背景である。

 

 

青い空高いビル、結界の張った空間。ここに来る前に用意してきたおにぎりを齧りながらビルの屋上からの景色を堪能する。

普通なら怖くてこんな状態で食事なんか出来ないが、飛べるということは偉大だ。

シンプルに魔法を便利だと感じる経験は割と少ないような気がする。な?アルフ?

 

「いや普通に危ないから、それ。せめてバリアジャケットくらいは出しとけよ。」

「アルフはおにぎり食べる?おかかかしぐれ煮しかないけど。」

 

否定的な意見は求めてない。そんなこと言う口はおにぎりで蓋しようねー。

お、おかかにしたのか。アルフが持つと同じサイズのおにぎりでも半分くらいに見えるね。改めて自分が子供になったということを自覚したよ。

あとアルフってかなりタッパあるよね。話してて首痛いわ。

 

「呑気なのは知ってたけど、フェイトとあの子が戦うって時までブレないなお前。」

「まぁ、究極的には無関係ですし。」

 

首の痛みを嫌って視線も遣らずに答える。これについては、まぁそのままの意味である。

 

ユーノを助けたいと言うなのはの手伝いをしている以上、ユーノが許可出してるなら最悪フェイトがジュエルシードを持っていっても私としては問題ないからね。管理局に属してる人間じゃないし、何より私は無責任な子供だからどうなっても責められない。流石に地球滅亡は阻止したいけどさ。

 

「案外冷たいのな。」

「そういう事にしておかないとアルフ達が困るでしょうに。」

「…あー。」

 

これ以上は胸の中だけで閉まっておくが、私だってなのはが危ない事しようとしてるのを黙って見ている状況は、良いとは言いづらい。それを無理矢理納得させて乱入も多対一の状況を作るのも止めて傍観者として観客として応援している。そういう()()()()()というスタンスを崩してはならないのだよ。

 

…ということにしておくと私の心象も悪くないじゃないかなって思うわけです。口にはしないけど。

 

とはいえアルフも理解はしてくれたのか、私の建前的な意図自体は汲み取ってくれたらしい。

 

「怒っても仕方ないからね。どうせなら楽しまなきゃ。」

「…強かな奴。」

「そう言いながら、海では不機嫌だったじゃない。」

「要は単純だからな。あまり賢い事を口にすると後で恥をかくぞ。」

 

ちゃっかりとアルフ相手に策謀を巡らせていたらユーノとクロノの2人から余計な茶々を入れられてしまった。

うるさいぞ外野。2人ともおにぎりでも食べてなさいよ。

 

「要って意外と家庭的だよね。」

「初めて食べる味だが美味しいな。肉味噌とは違うんだな。」

 

呑気なのはみんな一緒らしい。悩んで解決しないことは悩まないのが得策らしいよ?だからアルフもゆっくりしていきなさいな。

 

「ストレスは溜まらないだろうが、それじゃあ成長も期待できそうにないな。」

 

人が場を和ませようとしてる時にクロノはなぜつつき回そうとするのか。

 

そんな事言うならクロノはどうしたのさ。いつもならピリピリしながら横槍がないか警戒でもしてるでしょ?

いいの?呑気におにぎりなんか食べてて。

 

「彼らの勝ち負けに関わらず横槍が入らない筈がない以上、それは予定通りのことに過ぎない。彼らの勝負に決着が着くまでは敵方も此方も何も出来ないし何も起きない。それに今日の私は君たちの護衛で前線に立つわけじゃないからな。」

 

しれっとそう言って引き続き食事に戻るクロノに若干呆れるが、確かに理にかなっているし戦闘要員さん達が出張ってくることを考えればクロノがフリーでいることも納得はできる。少し不機嫌なのもその辺が理由だろう。

 

あまり会う機会が無いので詳細は不明だが、リンディさんとクロノ曰く「負傷した子供を前線に立たせ続けるのは鬼畜の所業!(意訳)」と言って大人のメンツを保ちたがる戦闘要員さん達が多いらしい。その子供の中にはクロノも含まれているらしく、リンディさんが説明してくれている間視界の端でクロノが苦虫を噛み潰したような顔をしていたのを私は目撃した。なんとも世知辛い話である。

 

それにしたって地道で危険のある長い作業は見なかった事にして最後の美味しいところだけ持っていきたいって何考えてるんだろうね?

前線で頑張ってた身としては面白くない冗談である。せめてクロノと同じくらい働いてから言って欲しい。まだ医務室で手当してくれたあんちゃんの方が心象いいぞ。

 

ま、どちらにしても私には名誉とかそういったものは不要なので休ませて貰えるならそれはそれでいいのだ。というか原作通りなら乗り込んだ先でばったばったと倒れる事になるのだし、そういうハズレくじくらいは引いてもらうとしよう。

この後負けたフェイトくんをアースラで預かる事になるなら様子が気になるとか言えば同行しない理由は適当に作れるが、戦闘員が出張るならその辺も気にしなくていいだろう。手間を省いてもらったと考えるとしよう。

 

 

クロノと二人、視線だけで会話をしていても仕方が無いので、特に戦闘要員さん達について触れないようにして、みんなに緑茶を差し出してやる。

ユーノは慣れたもので普段と変わらず美味しそうに飲み、クロノは信じられないものを見るような目でそんなユーノを見つめている。

いや、リンディさんの甘い緑茶が変なだけだから。ちょっと渋いけど普通のお茶だよ。

 

「そういや、昨日の夜フェイトくんと話してきたよ。」

「あぁ、結局行ったのか。母さん困ってたぞ。」

 

ズズーッと茶を啜りながらなんでもないようにそう言うとクロノから気にしていないかのように返事がくる。話を遠ざけようとしたこちらの意図を汲んでくれたようで、実にありがたい。

クロノとしても八つ当たりを気にしているのかもしれないな。

 

「約束通りアルフが無事だって伝えておいたよ。今日会えるとも伝えておいたからね。」

「お前…。」

 

時間は少し遡る。

 

海上での決戦が終わった後、ジュエルシードの捜索が無意味ではないかという話が上がるようになった頃傷だらけのアルフがバニングス邸で保護された。

それ自体は原作通りだったのだが性別が反転している影響かアルフの回復が原作より早く、管理局の監視下に入るよりもフェイトの元に帰ろうとして檻の中で暴れだしかねない状況だったため、やむなくなのはとユーノよりは多少口が立つからという理由で少しばかり私が交渉を行う事になったのだ。

 

私から提示したのは。

 

『管理局としても現地人としてもアルフを野放しには出来ないので解放できない。』

『フェイトには必ずアルフの無事を伝え、現在計画されている明日の一騎打ちまでは戦闘をしかけない。』

『アルフは管理局で身柄を拘束。不当な扱いはしない。』

 

以上の3点を管理局には言わずに勝手に決めて、アルフに条件を飲ませたのである。

クロノ達が居ないと納得しないかとも思ったが、意外とすんなり認めてくれたので意気揚々とアースラのリンディさんに報告したのだが、滅茶苦茶怒られる事になった。

 

しかしこちらも怒られるのはここ数日で慣れたもので、右へ左へ聞き流して適当に言いくるめていたらクロノが取り成してくれた。

というのも、現地人である私の主張には落ち度はないし提示した条件も不利なものでは無いから問題無いと。

 

その場にいたユーノもなのはも納得してくれた内容だと付け加えた結果、リンディさんの方が折れる形に収まった。ただアルフを護送した後アースラで少々お説教されたが、もはやノーダメージと言ってよかった。

 

なので私はしれっと大人しくしているフリをして、フェイトの所へ行ってきたのだ。

クロノに見つかった時にはヒヤリとしたが、

 

――子供の私は君がどこの誰と交友関係を結ぼうが口を挟むつもりは無いが、大人から見て君が悪いことをしているかどうかも子供の私には判断できない。だから母さんには黙っていてやる。

 

と言って見逃してくれたのだ。今思えばクロノも大人の身勝手に嫌気が差していたのかもしれない。

しかしぶっきらぼうながらも心優しい黒髪美少女なんてどこのエロゲのご出身で?『とらいあんぐるハート』?…あ、そう。

 

リンディさんは一騎打ちの始まる直前にアルフの無事を伝えるつもりだった様だけど、フェイトの不安を拭いたいというアルフの想いを無視するのもはばかられたので、クロノに一言伝えてから勝手にメッセンジャーになったのである。

 

回想終わり。

 

「それで、フェイトはなんて?」

「安心してたみたい。勝ったら連れていけばいいし、負けたら拘束されるから会えるって伝えたら笑ってたよ。」

 

まぁ、そんな感じで実はフェイトくんのコンディションは原作よりはマシという感じになっている。

 

その結果があの迷いない瞳をなのはに向けるフェイトくんなのだが、どうしようこれ。勝てるかなぁ…?

 

「フェイト…。」

「そろそろ始まるか。」

 

もしなのはが負けても大筋に変化はないと信じつつも、取り敢えずはなのはを全力で応援するとしよう。

想いは力になるって日曜のヒーローが言ってた気がする!

 

「頑張れー!なのはー!!」

 

声が聞こえるとは思わないけど、だからって声を上げない理由もないのだ。




次回、遂にニチャれるぞ要!(未定)
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