性別反転が好きなマイノリティだっていいじゃない。 作:菊池 徳野
みんなは、酒は飲んでも呑まれるなよ!
ボシュッというちょっと間抜けな音を立てて射撃の的に穴が空いた。中心からおよそ20センチ上にズレた着弾点を見て若干眉を潜め、じっと自分の足元を見る。
「命中はしたけど、この距離からなら5センチくらいのズレじゃなきゃまずくない?」
『No problem.(問題ありません。)』
初めて射撃をしたなら当てられただけいいと思うが、リリィというデバイスの補助を貰いながらの射撃でこの程度というのは、何とも歯がゆいものがある。次はもう少し下を狙って撃ってみようか。
「先程と同じように、追加の修正はなしで射撃する。」
なるようになるかと何も考えないようにして、先程と同じように頭の中で引き金を引く。今度は音よりも先に視覚で命中したのを確認した。
『You are wonderful.(素晴らしい腕前です。)』
「ありがと。でも、スコープか何かでお互いに視界をリンクしないと暫くはスナイピングは無理かもね。」
ぽっかりとど真ん中に空いた穴を眺めながら、そうリリィに言うと、アタッチメントの一覧を表示してくれる。
リリィの性能があまり良くないのか、それとも私の才能がよろしくないのか、はたまたノウハウが不足しているだけなのか。なんにせよ誤差修正を自動で行えるようになるか、修正が要らない程にリリーを使い慣れるかするまではスコープか何かで補助をする必要があるだろう。
ひとまず、丸型スコープ付けてスナイピング練習かな。最終目標は腰うちで命中率5割、スナイピングで百発百中である。
さて、私がこうして射撃訓練を行っているのには理由がある。先日のなのはとの接触で、当分の方針は『さくせん:みんなとなかよく』に決まった訳だが、彼らと近くで関わっていく以上これから起こる事件に関わらない訳にはいかない。そして事件と関わるのなら生活に使えるような魔法を覚える程度では済ます訳にはいかない。
これからなのは達と行動を共にする以上、魔法と関わらない選択はない。というか魔法を使えないでいるリスクが大きすぎるのだ。
魔法少女とか、リリカルとか、可愛らしい言葉が並んでいるがその実、なのはの世界は世界滅亡や死と隣り合わせの修羅の世界である。
というのも、なのは本編の危険さはもちろんの事バックボーンとなっているリリちゃ箱の世界が成人向けなこともあり、かなり容赦がない。それこそちょっとした魔法を扱える程度だと、サクッと誘拐されて殺される様な事が起こりうるので、いくら『なのは世界』とはいえ自衛の手段は必要であるし、自ら事件に首を突っ込む事になる以上強さを求める事は必須になってくる。
そのための射撃訓練である。
それに現状、野良のフェイトと出会うのは極めて難しいと思われるので、なのはとの交流が主な行動となる。しかしなのはが魔法に目覚めてない現在できる事は限られている。
それなら今のうちに予習しておいて事件までに魔法に慣れた方がいいだろうと考えた次第である。
ちなみに私のデバイスであるリリー曰く、私の魔力量は一般より多いめらしい。将来的にこのままならAランクまでなら行けるんじゃないかとのことだ。
そして、自由に動き回りながら仲間の邪魔にならないように銃をぶっぱなす格好良い立ち回りはお前の処理能力じゃ厳しい。という事を優しい言葉で言われた。
うちのデバイスはイエスマンなだけでなく、上げて落とす事も得意らしい。はい…私もそう思います。
しかし、適性が分かってるならやる事も自然と決まってくる。取り敢えずは射撃訓練を優先し、その後に近接戦闘に手を出せばいいだろう。
幸いにも飛行適正自体はあったので、そういった点での足でまといにはならなそうである。
「ん?あれ、なのはじゃないか?」
ぱすぱすとアホみたいに射撃に勤しんでいたら、覗いていたスコープの端に見知った後ろ姿らしきものを発見した。
当たっては距離をとりを繰り返していたが、少々離れすぎていたらしい。人の気配がないのは先に確認していたが、私から人影が見えているという事は誰かから見られる可能性があるということである。恐らく豆粒よりも小さくしか映らないだろうが、あまりよろしくはない。
というか、このスコープ精度いいな。ここから街までかなり距離があるのに。
「訓練切り上げて一旦公園に向かおうと思うけど、認識誤認の結界とか張れる?」
『Of course.(もちろんです。)』
さすがに街中を無策で飛び回るわけには行かないので、ちょこっと細工をして行くことにしよう。練習ついでに空の散歩と洒落こもうか。わりと距離があるので、もしなのはがこのまま公園に向かうならゆっくりしていると待たせてしまうことになるだろう。
優先すべきはなのは達、訓練は二の次三の次である。何なら先に着いて、なのはを出迎えたら喜んでくれるかもしれない。うん、それがいいだろう。
ふわり、と重力を緩和するように着地する。スカートタイプのバリアジャケットはスースーしてまだ慣れないので地面に着くと少しほっとする。どうやら予定通りなのはよりも先に着いたらしい。
「じゃあ、少しの間待つとしようか。」
バリアジャケットをささっと解除してリリィをペンダントよろしく服の中にしまい、最近の定位置となりつつあるベンチに腰掛ける。ま、普段は待たせる側なので定位置と言いつつなのはが座っている場所なわけだけど。
そんなどうでもいい事を考えていると、公園の入口になのはの姿が見えた。あ、驚いてる。いやぁ、驚いた顔も実に可愛い。
「やっほー。今日は何して遊ぼうか。」
足をぷらぷらとさせながら、軽く挨拶。や、別に待ってないよ、本当にさっき着いたとこ。奇遇だね。
なーんて白々しくも偶然だと言えば、素直なことになのはは疑うこと無く信じてくれた。ええ子や。私、この純粋な子の目を濁らせようとしてるのかぁ…。堪んねぇなぁ…(良心の呵責)。
それでも私はやると決めたのだ。あの時私は神様に誓った、私のやりたい事をやるのだと。一度決めたら止められぬ、中途半端な誓いでは無いのだよ。
いや、まぁ、今は忘れよう。少なくとも幼少期は仲良くして幸せな思い出を作るって決めたんだから。
いくらそうしておけば、最期の時に後悔の念が大きくなって濁りも格別になるっていう下準備の意味があると言えども、楽しんでいいんだ(本音)。疑われても困るし(建前)。
おや?そういえばなのはさん、その手に持ってる本はどうしたの?はい。あー、うん、なるほど。私を待つ間に読もうと思ったのか。そっかー。
ごめんな?(良心の呵責)。ごめんね(未来を見据えて)。
とにかく遊ぼうか。身体に引っ張られてるのかなんなのか、遊び始めると時間を忘れて夢中になれるから。
今日は街の散策でもしようか。いつもより時間もあるし、私あんまりこの辺詳しくないし。
とりあえず、今を楽しむとしよう。
復帰のご挨拶と今後の展開についてを活動報告に上げましたので、良ければご覧下さい。
取り敢えず次回からアニメ本編行ければと思います。我ながら、本当に見切り発車しかしないな。