性別反転が好きなマイノリティだっていいじゃない。 作:菊池 徳野
人の領域に収まらない人間というものを甘く見ていた。
当然手加減はしてくれていたのだが、あくまでそれは寸止め。ミクロのレベルでの正確な動きと直前まで止まらない勢いは、正面から受けた場合ガチの打ち合いと何ら変わらずこちらの竹刀を打ち据えてくる。
あの後永遠とも思える間、涙目になりながらも確認という名のイジメを耐え抜き、竹刀を握る握力も無くなった頃合いになってようやく解放されることとなった。
自分からお願いしておいて途中で音を上げるのはどうだろうかという謎の責任感と、恐怖に身が竦んで途中放棄の選択肢が頭から抜けていたので何とか乗り切れたが正直二度目は勘弁してもらいたいところである。
手がボロボロになってしまったせいで
「なのはには適当に言い訳して今週のイベントに参加しよう」
とか考えていたのに杖を持つにも手が痛すぎてどうしようも無いので強制的に一週間のお休みを享受する羽目になった。
ジュエルシードの事件はそのほとんどが初めの一週間に起こり、残りはフェイトとアースラ絡みになるので参加できないとなると私の影が一層薄くなってしまう。ただでさえなのはとは疎遠になりつつあったので『まほうをしってるおさななじみ』というおいしい立場を実質失うのはとてもつらい。(つらい)
フェイトがライバルをクロノが道を示す先駆者の立場を担う以上、私の出る幕というのはあまりにもないのである。添え物といっても過言ではない。
現在は血まみれの手で竹刀を振るわけにはいかないので、見取り稽古(見えない)をする程度で暇な時間は公園で借りてきた本を読んで過ごすという少し前のルーティンによく似た生活を送っている。3日もせずに公園の住人に逆戻りである。
とはいえ少し変わったこともあった。
原作と違って一人で動いている訳ではないからか、若干愚痴っぽいなのはという珍しいものを拝むことができた。力任せだとここが大変だとか、サーチャーの精度があんまりよくないから早く復帰してくれだとか、とにかく役得としか言えないなのはの様子が観察できたのである。
これが培ってきた信頼ってやつですよ!やっぱ幼馴染がサイキョーね!
などと愚痴を聞きながらウキウキしていたら、邪念が漏れていたのかほっぺたをぐりぐりされた。可愛すぎる抗議の仕方に天に召されるかと思った。
とはいえちゃんと相談にはのるようにしたし、サーチャーでの捜索は私の方でもやっておくようにしたのでふざけているとは思われていないはず。あぁ^~他愛ない日常の音ぉ~。
あ、私いろいろ悩んだ末みんなの日常の象徴になってやることにしました。
日常の象徴ってなんぞやとお思いの方もいるでしょう。例えば仲のいい幼馴染が事故死したとしますね。(物騒)
葬式とか出て遺影とか見て。それでも実感がわかないせいでよくわかんない状態になるわけです。でも、ふと面白そうな話を見つけて誰かに連絡を入れるわけですよ。誰に?
ふらっと出かけて行った先で自分は買わないけど好きそうな商品が目に入ってくるわけですよ。誰が?
長期休みに入って予定を立てようとするじゃないですか。去年は何してたっけな…となるわけですよ。もうわかりますよね?誰と何してた?っていう。
人間、嫌なことは忘れがちです。しかし人間は振り返る生き物です。幸せな思い出ほど脳裏をかすめやすく、それを思い出すことでダメージを受けることもあるわけです。それを乗り越えられるか逃げて傷が癒えるのを待つか、それは人それぞれですがどちらもとてもおいしいです(^q^)。
私は三人の日常を侵食します。
好きな食べ物、思い出の場所、初めての経験、共に頑張ったこと、そのすべてを共有し記憶のすべてに紐づけてみせます。なのは達の活躍を近くで見たいので無理ですが、例えるなら地球に帰ってきたら必ず連絡を入れる気になる仲程度の友好関係を結ぶつもりです。
その関係が突然消えてなくなるわけです。はやてくんは想像しにくいですが、なのはやフェイトは素晴らしい曇り顔を見せてくれるはずです。仕事一筋でプライベートがおろそかになるタイプなのは原作で分かっています。ペットロス以上のものは得られると確信をもっていいでしょう。
日々の日記や写真の一枚でも出てきた日にはさらにドン!てな感じです。
幸せが壊れる時にはいつも血の匂いがするととあるキツめのヤバい漫画でも言っていましたが、アレです。
なんとなく私の行動方針は理解していただけたと思います。
ハーレム?奴さん、死んだよ。あれは普通の人間が手を出していいもんじゃなかったんだ。と言いますのも、あれは天然、カリスマ、ギャップ萌えといった様々な要因を持った王者にのみ許された代物でした。
かくいう私も恭さんの天然クールな覇王のオーラに当てられて危うく陥落するところでした。可愛い美人とか反則です。
まぁそれは置いておきましょう。大切なのは私にできることは何か、ですから。
三人の(顔を曇らせる)為に、私の出来る(限りの邪悪な)精一杯を尽くしたい。うーん、我ながら嘘なんて一つもない綺麗な言葉に見える。献身的な幼馴染に見えなくもないな!
目下の問題となるジュエルシードは着々と集まっているし、フェイトとの再会もそう遠くは無いでしょう。なのはが私の仇討ちに燃えている様子は非常に男の子でよろしいのですが、状況を先に進めるためにもなのはにはさっさと負けを経験してもらいたい所です。
何も出来ない状態で待つのが退屈だからじゃないですよ?ホントダヨ?
「デバイスから手を離し跪きなさい。」
なんて軽く考えて思考停止してた罰ですかね。
「此方は時空管理局、クロノ・ハラオウン執務官です。貴女が現在起こっている事件の関係者であるという話が出ています。抵抗はオススメしません。」
フェイトとの再会よりも先になーんでアースラが来てるんですか?私が何したって言うんです!
「そちらのデバイスは紛失届けが出ている。悪いが無理にでも同行してもらう。」
リリィをそっと地面に置いて両手を挙げて、相手を刺激しないように指示に従って相手を見つめ返す。優位に立った瞬間口調が地に戻る青二才の言うことに従うのは不本意ですが、抵抗するメリットもないので大人しく従います。
怯えた振りもいいですが、ここは内心を隠さずさらけ出してやりましょう。見ろよこの動揺しきった混乱フェイスをよ!
「…状況の説明を求めます。」
「それについては艦へ移動後に詳しい事を伝える。ただ今は、君は我々魔法を使う者達の法律に触れた可能性があるという事を理解してくれればいい。」
拾ったデバイスに所有者が居るとか知らんもん!!
憐れ私はアースラ艦に引っ立てられる事となりましたとさ。BADEND。
いや、終わらんよ?