性別反転が好きなマイノリティだっていいじゃない。 作:菊池 徳野
投稿が遅れて申し訳ありませんでした。ウマ娘に浮気してました。
どうしてイレギュラーは発生するんだろう。
黒髪のクール系正統派魔法少女クロノちゃんにしょっぴかれたあの後、無抵抗のままに居たらリンディさんの所に連れていかれた。バインドは解いてくれたものの内心
「尋問室とか連れてかれないんです?危険では?」
と何故か私の方がどぎまぎする展開になっていた。
しかもクロノはさっさとどこかに行ってしまって、完全に私1人アースラで浮いていた…。いや、この部屋もアースラから浮いているので私と部屋が浮いているのが正しいか。
無機質な屋内で和製お茶会セット広げてうっそりと微笑む美女が一人、オマケに何故か桜が舞う執務室(仮)。
美人はなんでも絵になるという言葉があるが、この光景に美術性を感じろというのは酷というものである。あと、鹿威しうるせぇ!
「…一応私がジュエルシードを集めている理由は以上ですが、正直私は協力者の協力者という立場なので何があったのかとか、細かいことは分かりかねます。」
経緯についてはありのままかつ知っている筈の内容を嘘はつかないように説明した。転生云々については一切喋っていないが、流石にこれは誰にも言うつもりはない。疑われている事実はとても心臓に悪いのでさっさと無罪放免になりたい故の完全降伏スタイルだが、リンディさんの顔色はあまり宜しくなさそうである。やはりリリィの件が響いているのだろうか。
「なるほど、貴女がロストロギアを探していた理由は分かりました。では次に貴女の所有しているデバイスについてです。」
「はい、リリィの事ですね。」
気分は大岡裁きである。もちろん裁かれるのは私で、越前守は目の前で甘〜い緑茶を啜るリンディ・ハラオウンその人だが。
「そのデバイスをどこで手に入れたの?」
簡単な質問のように聞こえるが、どこでと言われても困る。神様からの贈り物だと思って拾って使っていました。とか言い出すのは流石に正気ではないし、幾分昔のことなので私自身しっかりと覚えていないのだ。
「いつだったかは覚えていませんが、リリィは道端で拾いました。」
「拾った?」
「はい。綺麗だったし、何より私に話し掛けてくれたので。」
少し説明としては雑だが、嘘ではない。
ある意味一つのボーイミーツガール。あの頃魔法が本当にあるのかちょっと疑っていた私に魔法の存在を示してくれたのがリリィであり、転生したばかりの私にはどんな物よりも素晴らしい福音だと喜んだ記憶がある。
新規契約もリリィの方から誘ってくれたし、今思えば会ったばかりの時からかなり自我の強いデバイスだったような気がする。
前の持ち主の影響だったのかな。
「拾った場所は分かるかしら?」
「私のいた孤児院の近くの川でした。孤児院の場所を覚えてないので調べないと駄目ですが。」
身寄りの無いというのは将来的にミッドチルダに行く事になるならちょうどいいかもしれないと、あの頃は考えていたような気がする。まぁ、愉悦を考えると近づかない方がいい気もしていたのでシンプルに不運を恨んでいた気もするが。
それに結局身内は居たのでなんか事情があったのだろう。私の記憶5歳からしかないから知らんけどな!
「使い方はリリィが教えてくれました。魔法使いになるなら自衛の手段は必要だって。私も魔法に興味があったし、今回のジュエルシードが引き起こしているような危険なものとは知らなかったので…。」
魔法が危険な事は十分に理解していたが、態々魔法のある世界に転生したのだしせっかく使えるのなら使いたくなるのが人情というものだろう。流石に正直に言うと信用されないかもしれないので黙っておくが、子どもなら誰でも魔法に憧れるものである。没問題メイウェンシィ、問題ないさ。
「続けてください。」
「その後はリリィに使い方を学びながら、空飛んだりシューター飛ばして射撃練習したりしてました。他に魔法を使える人を見たのは先程話したフェレットのユーノが初めてです。」
言えることはそのくらいだろうか。これで駄目なら後はなのは達を呼ぶくらいしか私には手札がない。
「…貴女が巻き込まれただけの一般人であるということは理解しました。手荒な真似をしてしまってごめんなさいね。」
「あ、いえ。緊急事態みたいでしたし、そんなに気にしてませんから頭を上げてください。」
そう言って頭を下げるリンディさんを手で止めながら、私は頭の中で『勝訴』の二文字を掲げて踊り狂っていた。
しかし、何故こんなに早くアースラが動いていたのだろうか。冷静な部分で色々と理由を考えてみるがこれだろうという物は思いつかない。まさか私たちの与り知らぬところで次元震が起きていたわけでもないだろうし。
『艦長、結果の反応を確認。クロノ執務官が戦闘中の魔導士を目視で確認したとのことです。』
「映像を回してちょうだい。」
『か…ん長、魔導士を二人とリンカーコアの反応を複数確認しました。武力制圧の許可をください。』
あら、物騒。なんて考えている場合ではない。
私が捕まっている間に物語は着々と進んでいたらしい。場所を見るに子猫がジュエルシードに飲まれた話だろうか。若干なのはの世界は派生作品も併せて時系列が曖昧なところがあるので確実ではないが、なのはとフェイトによる初会合初戦闘には違いなさそうである。
「少し落ち着きなさいクロノ執務官。あなたの連れてきた彼女の話によると白いバリアジャケットの少年は魔法を知って日が浅いようですから、介入時にパニックを起こしてこちらに被害が出ても困ります。」
『そんな悠長な!』
「クロノ執務官。相手の規模がわからない以上今は時空管理局の存在が割れることの方が損害となり得ます。ロストロギアが複数散らばっているのなら、相手を捕縛する機会はまた来ます。今は耐えなさい。」
『…了解。』
これがアースラを任される艦長の風格かぁ。アニメで見ていた時の緩いイメージとは違った合理的で正確な判断。若干怖い。
しかし、意外と慎重な選択にちょっと驚きである。フェイトを捕まえるならかなりチャンスのような気もするし、弱った相手を倒すのが兵法の基本ともいう。
「なのは!?」
映される通信映像の端で、撃墜されて墜落していくなのはの姿が見えた。初の対人戦、私が戦ったと伝えていたからってフェイトが格上である事実は変わらなかったという事だろう。それは知っているつもりだった。
だがそれが分かっていながらも、友人が空から墜ちていく姿を見るのは心臓によろしくなく、全身から血が引いていくゾッとする感覚を覚えたことを私は
何故その恐怖心を安堵を持って受け止めてしまったのか。自分の正常な精神を私は嫌悪してしまったのか。それは私の生前の残滓を感じてしまったからである。
私は愉悦がしたくてこの世界に来たにも関わらず、友人の心配をして友人を無くすかもしれない事体に心から恐怖したのだ。そんな一般的な感情を持っている事実に私はほっとしたのだ。
そこは気を引き締めて然るべき部分では無いのか?
バカバカしい。反吐が出る。普通のままでどうして狂人の領域に立てるというのか。愉悦は遊びじゃないんだぞ!?
嫌な感じがする。口の中に唾液が溜まって飲み下せない。
つい右手を口元に当ててしまう。
「今の男の子が貴女の言っていたなのは君ね?」
口元に当てた手を退かさぬまま頷く。
まさかとは思うが、変に勘ぐられないように気持ちを切り替えた方がいいだろう。信用されたかどうかもまだ分からないのだ。
「クロノ、その子を回収して帰還して。一応医務室を空けておくけれど、自分で歩けるようならそうしてもらいなさい。」
フェイトが撤退したのを見届けて、なのはの回収を指示するリンディの姿をどこか遠いものに感じながら、私は自分の感情と向き合うことに必死だった。
なのはが倒れた事を心配する事は構わない。だが、その姿を見て恐怖を感じる事は想定外だった。
仮面を被るのは得意なつもりだ。唾も嫌悪も無理矢理飲み込め。
「安心して、貴女の友人は大丈夫よ。クロノ執務官が無事なのを確認してくれたから、心配しなくてもいいわ。」
青い顔をして固まっている私を見て勘違いしたのか、リンディさんが優しく話し掛けてくれる。先程までと違ってどこかアニメで見た時のような母親の顔をしているような気がする。
思わぬ形での信用のされ方だが、ここは子供の姿であることを喜ぶとしよう。
「はい、よかった。よかったです…。」
一旦思考は切り替えよう。もしかすると心の中に愉悦と恐怖が同居していても大丈夫な例があるかもしれない。成長とともに心が強くなる可能性もある。とにかく今は今の状況を利用しなくては。
「よかったら、なのは君に付き添ってあげてくれないかしら。今からクロノがこの部屋に来るわ。その時、一緒にこちらの事情についてもお話ししたいの。」
「…分かりました。」
完全にリンディさんはこちらを心優しい女の子か何かと勘違いしている。 なのはと会わせて不安を取りさろうとしているのがいい証拠だ。
思わずいい流れを引き込んだのだ。攻めるなら今しかない。
「あの、リリィについてなんですが…。」
「え?あぁ、安心して。そのデバイスは紛失届が出ているようだけれど、話を聞く以上問題は無いわ。事実確認にまたデバイスを借りる事になるかもしれないけれど、持ち主も他にデバイスを使っているみたいだから。」
お?これはもしかしてリリィ貰っちゃっていいんですか?いいんですね!?
「じゃあ、リリィと離れ離れにならなくてもいいんですか?」
「ええ。調べたところ所有権も既に放棄していると考えて良いでしょうし、何より貴方にデバイスも懐いてるみたいだから、何かあっても私の方で口添えしておくわ。」
や っ た ぜ
完全勝利"S"!!
主人公「私は愉悦…愉悦を求めて、愉悦…。(瀕死)」