ヤンデレだらけのクリスマス   作:四月朔日澪

9 / 10
すぐ書き上げるといって3ヶ月も経ってしまいました。

そういえば、最近やっと竹宮ゆゆこ先生の「心臓の王国」を読み終えました。旧統一教会問題などを織りまぜた衝撃作でした。おすすめです!

それでは久しぶりのifストーリー後編です


【IF】ヤンデレとの家族生活 後編

翌日-某私立大学 構内

 

 講義が終わり、俺は片付けをする。あまり偏差値が高くはない私立大学なだけあって、学生達は講義が終わると早々に教室を出ていく。講義中も後方の席にジュウシマツのように固まり、スマホをいじっている。騒がしくされるはマシだが...

そんな学生が多い中、講義後に俺の元に駆け寄ってくる学生もいる。

 

「先生」

「あぁ永井さん」

この間スターバックスで偶然出会った女子学生だ。永井さんは講義の後、毎回質問にやってくる。この大学では珍しく勤勉な大学生だ。

 

「先生、今日の授業で聞きたいことがあるんですけど」

「申し訳ないんだけど、このあと用事があって。また今度でもいいかな」

「移動しながらでもいいです!学校まで一緒していいですか?」

 

まぁそれなら、と光輝はパソコンをカバンにしまい出る支度をする。

歩きながら永井さんの質問に答える。質問自体は1分ほどで終わり、永井さんは「これからどこに行かれるんですか?」と聞く。

 

「実はこれから高校生の娘の三者面談があってね」

「先生娘さんがいらっしゃるんですね!三者面談ってことは3年生ですか?」

「ああ。すぐ近くの女子高に通っているよ」

「へぇあの学校に通ってるんですか!娘さん賢いんですね。私も先生の子どもだったら勉強とか教えてもらったんでしょうね...ってごめんなさい!変なこと言っちゃいましたね」

 

永井さんは慌てて謝る。別に謝ることじゃないよ、と俺が宥めてると正門の前に1人ぽつんと立っているセーラー服姿の少女がいた。少女は俺の姿に気がついて「お父さん」と声をかけてきた。

 

「由稀、来ていたのか」

「うん。遅いから」

由稀は少し不機嫌に見えた。

永井は由稀に挨拶をすると、由稀は軽く会釈をした。

 

「お父さん、あと少しで私の番だから」

「ああ、ごめん。それじゃあ、永井さんさようなら」

「はい、先生。さようなら」

永井は軽く手を振って光輝と由稀を見送った。

 

 由稀の高校は私が講師をする大学から歩いて行けるほどの距離にある。所謂お嬢様学校というところで学校の前の道には送迎の品川ナンバーの高級車が立ち並んでいる。

 

「ねえ、()()さっきの人パパの教え子?」

「そうだけど」

「へぇ。なんかパパに馴れ馴れしかったね。私のクラスにもいるよ、ああいう子。先生に媚び売って評価あげてもらおうとしてる子が、あの(ひと)もきっとそうだよね」

「別に永井さんはそういうのじゃないと思うけど」

「そ、別にどうでもいいけど」

 

由稀は光輝と二人きりの時だけ光輝を「パパ」と呼ぶ。これは光輝と由稀だけの秘密である。

由稀は光輝と手を繋いで学校までの道を歩いていた。二人きりの時だけ由稀は俺に甘えてくる。普段つれない態度の由稀とは別人のようだが、きっと普段由佳も俺も家にいないので淋しいのだろう。

 

「本当はねパパと早く会いたくて来ちゃったんだ。だから気にしないでね」

「こっちこそ遅くなってごめん」

「大丈夫!あの人が無理に付いてきたからだよね。私分かってるから。」

由稀が向ける視線は由佳そっくりだった。こういう所も親子で似るんだと思った。

 

-某女子高校教室

 三者面談では成績の話と今後の進路の話が出た。成績の方はとても優秀で親としては鼻が高い。模試の方もMarchがA判定と進学先でも特に問題はないと担任の先生が言っていた。ただ、由稀の進路希望調査を見ると第一志望は私が講師をしている大学であった。第二、第三希望もマンションから近い大学が書かれていた。

先生としては由稀の将来のために、もっと目標の高い大学に進学することを勧めているようだった。ただ、由稀はあまり学歴には興味がないらしく自宅から近い大学に通いたいという。

 

「お父さんは大学の先生をされるんですよね。由稀さんの進路についてはどうお考えですか?」

先生が私に話を振ってきた。

「私は由稀がやりたいことをさせてあげたいと思っています。お母さんも同じ考えです。今の時代、学歴が全てではないですし、彼女には自分のやりたいことを突き詰めて欲しいと思っています。」

 私の言葉もあってか、由稀の進学予定は私が講師をしている大学へと決定した。内心では、由稀の学力であればもっと上の大学を狙ってほしいとも思っているが、由稀にその気がないのであれば無理強いさせたくない親心が若干ながら勝った。そういえば、由佳が慶応を退学したときも俺は続ける方向で説得はしたが、

「別に私はミツが入ってほしいと言ったから入っただけだから。でも、もういいでしょ。私、ミツとお嫁さんになるのが夢だもん。ね、」

 

光輝は首を縦にふる他なかった。慶應義塾大学という世間からすれば誰もが羨むような学籍を棒にふるほど俺との結婚を夢見ているのだとすれば俺はそれに答えるしかなかった。

無論、由稀の進路に対して由佳の気持ちは「由稀の自由にしなさい」というものだ。自分が自由にしてきたからなのか放任主義なのかは分からないが、由稀に由佳の仕事を継がせようなどは特に考えていないようだ。

我が家の実力者がそう考えている以上光輝は自分の意見を圧し殺す他なかった。

 

-大学内駐車場

 

 学生で活気のあるキャンパスから離れたところにある職員用の駐車場は閑散としている。アスファルトの地面と建物に囲まれて陽も当たらない殺風景なこの場所で由稀は光輝の腕をとっていた。

 

「やっと二人きりになれた!もうはなさないんだからっ」

「こらこら車に乗れないだろ」

「はーい」

由稀は意地悪そうに笑い、助手席に座る。そして運転席に座る光輝の腕に再び自分の腕を絡ませた。

 

「ねぇパパ」「どうした?」

「さっき言ったよね。私の好きなようにすればいいって」

光輝はああ。そうだよ、と返すと由稀はそっか。とはにかむ

 

「じゃあ、私パパと結婚する!」

「え?」

光輝は唖然とする。それもそうだ。娘がまだ年もいかない幼児であればまだ好意的に受け取れる。ただ、由稀は18歳だ。

「ずっと夢だったんだ。パパと結婚して赤ちゃん作って3人で楽しく暮らすの♪」

「由稀、冗談でもそんなこと..」

「え?私一言も冗談なんて言っていないけど」

由稀は光輝に鋭い目線を向ける。光輝は蛇ににらまれたカエルのように固まる

「私本気だよ?パパだってあんな暴力女嫌だよね?パパをあんなに縛り付けて..私にも言うんだよ?パパにあまりベタベタするなって。私はパパのこと好きだから嫌だ、って言ったらね私のこと殴ったんだよ。ほら」

由稀がスマホを見せてきた。そこには中学生の制服を着た由稀と由佳が映っていた。何か激しく口論をしていて、しばらくすると由佳が由稀に手をあげていた。それは懲罰的な体罰では片付けられないもので由稀は「ごめんなさいごめんなさい」と連呼していた。

光輝は愛娘にこんな暴力を振るっていた由佳にショックを受けた。光輝の目には一筋の透明な線がはしった。

「ねぇパパ、もうこんな女の言いなりになるのやめよう?あの女のせいでパパが苦しむ姿、もう見たくないの。パパを教授にしてくれる所があるならそこに住もうよ。今より暮らしは貧しくなるかもしれないけど、私頑張って働くからさ」

由稀は身をのりだし、光輝の肩に手をおき体重をあずける姿勢になる。

「だからパパ、卒業したらあの女捨てて私のお嫁さんになってよ..」

由稀は顔を光輝の顔に近づける。光輝は首を横に逸らす。

「由稀、父親と娘は結婚できないんだよ。それに血の繋がった娘をそんな目でみることなんてできない..」

「そっか。パパは知らないもんね...私パパの子じゃないんだよ」

「何言って..」

「知らないよね。あの女がパパじゃない男とそういうことしてたって...やっぱり血は争えないね。お婆ちゃんも不倫してたらしいしね...もし疑うならDNA鑑定してもいいよ?パパとは血が繋がってないのは本当だから」

俺は状況を飲み込めなかった。由佳が浮気をしていた...?あれだけ俺と他人との関係を断ち切ってきた由佳が俺に隠れて浮気をしていたのか...姉やさよちゃん、俺の夢でもあった研究者としての道...俺は由佳を愛しているからこそこれを捨ててきた。

そして俺に残されていたものは由佳と...

 

「ねえパパ、私はパパのものだよ?ずっと一緒だから。もう離さないよ?私はあの女と違ってパパのこと縛らないから。パパのお姉さんや妹にも会わせてあげる..一緒に暮らしてもいいよ。パパが望むなら私仲良くするからさ」

由稀は光輝を抱きしめる。光輝は由稀の胸の中で嗚咽を鳴らしていた。

「だから、パパ。あの女と別れてね」

 

俺はかつて、自分の教え子と過ちを犯してしまった。そして、今血が繋がってないとはいえ、自分の愛娘と過ちを犯そうとしている。

 

光輝は由稀から離れて顔をあげると、二人はそのまま唇を重ねた。




ご覧いただきありがとうございました。
本当はこのあと、由佳にバレて再び束縛されて「ミツは私から逃げられないんだから」...endって感じにしようと思ったのですが、前編でわりと光輝への同情の声が多かったのでハッピーエンド(?)にしました。

まぁあくまでif√ですのでそうはならなかったんだ。ならなかったんだよ。由佳ファン。だから、この話はここでおしまいなんだ...
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