紅閻魔サンタのクリスマス   作:悲傷

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ま、間に合った!
24日以内に1話は上げたいと、急いで書きました。
推敲できてないので、駄文とぐだぐだ展開でスイマセン!

2020/12/26
修正


第1節

 あちきには分からないでち

 

 お金が欲しい

 地位が欲しい

 

 誰よりも強くなりたい

 誰よりも美しくなりたい

 

 皆なにかをもとめているでち

 

 争ったり、奪い合ったり、競ったり……

 

 それは良い事でち

 それを繰り返してきたからこそ、人は強くなってきた

 それが世の理だと、トト様の元で学んだでち

 

 欲しい物や夢に向かって頑張る人をあちきは素晴らしいと思うでち

 そういう人たちをあちきは応援したい

 

 ただ……ただ……

 

 あちきには、その人たちの気持ちが分からないでち

 

 毎日白いお米が食べられる

 毎日お仕事がある

 毎日お風呂に入って、暖かい布団で寝られる

 

 これ以上に幸せなことがありまちゅか?

 これ以上の幸せを欲しいと思ったことが無いのでち

 

 なんでそんなに必死になって求めるのでちか?

 

 分からない

 あちきにはやっぱり、分からないでち……

 

 

 彷徨海カルデアベース。

 人理漂白の難を逃れたカルデアのスタッフ達の居城。大西洋のどこかにあるこの施設は、汎人類史を守る最後の砦だ。

 同時に戦いに戦いを積み上げてきた歴戦の戦士と、人類史に名を残してきた英霊たち……サーヴァントたちが住まう家でもある。つまり、彼らにも肩の力を抜く時間があるということだ。

 1人の少年が廊下を歩きながら、隣にいる紫髪の少女に話題を振った。

 

「今年もやってたね、この季節が」

「はい、クリスマスですよ。先輩!」

 

 少年の名は藤丸立香。100人を超えるサーヴァントを使役する、人類史最後のマスターだ。

 少女の方はマシュ。藤丸のパートナーだ。

 藤丸は廊下の十字路に着くと、曲がり角の先を覗き見た。

 右側の廊下では、ジャックとナーサリーがはしゃいで駆けまわり、エウロペがそれを見守っている。その更に奥ではぐっちゃん先輩が「人間の祭りなど何が楽しいのでしょう」と言いながら、項羽の手に抱き着いている。

 左の廊下では、アルテミスが小熊のオリオンを胸に抱きしめ、巨体のオリオンの腕に抱き着いている。それを見ている少し寂しそうなブラデマンテがいた。きっとロジェロのことを思っているのだろう。だがヘクトールとパリスを見つけるとそちらに走っていった。

 ここに来るまでにも、多くのサーヴァントたちが賑やかに談笑している様を見た。皆、今年もクリスマスを楽しんでくれているらしい。どうかいい思い出を作ってもらいたいと藤丸は思う。いや、心から願う。

 彼らはサーヴァントである以前に、ここまでの過酷な戦いを共に乗り越えてきてくれた、かけがえのない仲間たちだ。いつ戦いが起きるかは分からないが、せめてこういうひと時くらいは大事にしてもらいたい。

 

「皆さん、思い思いの時間を過ごしていますね。皆さんにとって、良いクリスマスになればいいのですが……」

「そうだね。となると……」

「どうしましたか?」

 

 藤丸が「ん~」と意味ありげに腕組みを組んだ。マシュは尋ねてはいるが、答えは分かっているという顔だ。

 

「やっぱり、あれが一番大事だよね!?」

「そう、あれですよね!」

 

 頷くマシュの肩では、白い毛むくじゃらの奇妙な動物が「フォウ」と声を上げた。

 

「フォウさんも気になりますか。今年のサンタクロースは誰がなるか?」

「フォウフォウ!」

 

 フォウと呼ばれた動物は高い鳴き声を上げ、右前足を上にあげた。可愛らしいそのしぐさに、藤丸とマシュは軽くはにかんだ。

 クリスマスに付き物のサンタクロース。ここカルデアでは「サーヴァントたちの誰か一人が代表して、今年のサンタになる」と言う恒例行事がある。藤丸とマシュにとっても、今年は誰がやってくれるのだろうかと楽しみでしかたない。

 廊下を進む足の速度と反比例するように会話が弾んでくる。

 

「去年はカルナだったよね。初の男性サンタクロース!」

「普通、サンタは男性がするものですが、却って新鮮な体験でした」

「つまり、カルナが今年のサンタを選ぶわけだけれど……どうやって選ぶんだろ?」

「ボクシングとか、フットワークで決めそうですね……」

 

 サンタなのに、なぜかボクサーになっていたインドの大英雄を思い出す。

 とたんに2人の顔に暗い影が落ちた。

 

「それにしても、なんでサンタは皆こう……一癖も二癖もあるんだろう?」

「サンバになったり、羊に跨ったり、薬を弾丸として撃ちこんだり……」

「フォウ……」

 

 フォウに引っ張られるように、藤丸とマシュは頭を俯けた。

 

「たまには、平和なクリスマスがあっても……」

 

 と藤丸が言いかけたときだった。それをあざ笑うかのようにどでかい悲鳴が上がった。

 

「いやあああああああ!!」

「どうかお許しおおお!!」

 

 悲鳴は二つ。どちらも女性の物だった。

 とたんに藤丸とマシュに緊張が走った。

 

「今の声は、清姫と巴さん!?」

「あのお二人がですか!?」

 

 マシュが驚くのも無理はない話だった。

 片やお坊さんの丸焼きを作ったバーサーカー。片や戦場を駆けた鬼の血を引く女武者。そんな二人がそろって悲鳴を上げたのだ。

 余ほどの事態が起きている。そう考えたときには、藤丸は全力で走り出していた。1分もしないうちに現場に辿り着く。そして落胆した。

 

「ああ、そういうことですか……」

 

 とマシュも深く頷いた。

 現場は廊下が交差するT字路だった。何の変哲もないT字路だ。変わった点があるとするなら、あちこちに焼け焦げた跡があり、スプリンクラーが働いた証として水浸しになっていると言うことくらいだろう。

 そんな惨劇未遂現場には4人のサーヴァントがいた。

 正座しているのは先ほど悲鳴を上げた清姫と巴御前。涙を浮かべて頭を垂れていた。その近くには部外者を装いつつも、ハラハラと様子を見守っている玉藻の前。そしてこの場の中心にいる、こじんまりとした少女だった。

 

「清姫、巴御前! なんであちきが怒っているのか分かりまちゅか!?」

 

 バーサーカーと鬼女武者が、少女の言葉にビクリと肩を震わせた。この強力な英霊2人を上から叱りつけている少女は、舌切り雀の紅閻魔だ。雀で鬼で閻魔の義理娘で、舌足らずの「でち」口調で、料理の達人で、大太刀振り回す居合の達人で、閻魔亭と言う神様たちが集う旅館の女将であり、舌切り雀の伝承になっているとかいう属性てんこ盛りのサーヴァントだ。

 ちなみに、この場にいる3名とマシュの料理の先生でもある。

 

「け、喧嘩をしたからでしょうか?」

 

 清姫がガタガタと目を逸らしながら呟いた。藤丸追跡レーダーを常備している彼女だが、今はすぐ近くにいる事に気づく余裕すらないらしい。

 清姫の答えに、紅閻魔は首を横に振った。

 

「いいえ、喧嘩をするのは仕方のない事でち」

「あ、なら!」

 

 立ち上がろうとした巴御前を、紅閻魔がジロリと睨んだ。瞬時に巴御前は正座に戻った。

 

「喧嘩をするにしても、やり方を考えるでち。例えば、こんな風に辺りを火の海にしないとか」

 

 藤丸は焼けこげた跡を見た。やはり清姫と巴御前が炎をまき散らしたらしい。大火災にならなくて良かった。これは紅閻魔先生にみっちりとお説教をしてもらうべきだろう。

 

「おや、マスターではありませんか」

 

 玉藻の前がようやく気づいて声をかけてきた。紅閻魔も頭を下げた。

 

「これはご主人。お騒がせしているでち」

「いえ、紅閻魔先生。ありがとうございます」

 

 藤丸とマシュも倣って頭を下げた。清姫と巴御前が子犬のような目で助けを求めてきたが、今回は無視することにした。2人には反省が必要だ。

 

「あの紅閻魔先生、確かお正月が近いからと、閻魔亭に戻られていたはずでは?」

 

 マシュもスルーした。最近の彼女は時々厳しいよなと藤丸も思う。

 

「用事と言っても、向こうの状況確認だけでち。ご主人たちのおかげで、閻魔亭にはお客様が戻ってきてくれまちた。お正月も予約でいっぱい。平等(びょうどう)や魔猿たちがしっかりと準備をしてくれていたでち」

 

 平等とは紅閻魔に仕えている奉公人ならぬ、奉公雀の一羽だ。閻魔亭の従業員として残っているらしい。

 

「で、先ほど帰ってきたらこの有様でち……」

 

 清姫と巴御前を見ると、玉藻の前に救援の視線を送っていた。当の玉藻の前は素知らぬフリと視線を横に逃がしていた。この紅閻魔の怒りを買う。九尾の伝承の一端でもある神霊の彼女でも、それだけは避けたいらしい。

 だが助ける気は無くとも、早く終わらせる気にはなったらしい。

 

「ところで紅閻魔先生、2人が喧嘩をしていた理由とはなんだったのでしょ?」

「そうでちた。確かどっちがトナカイになるか……でちたか?」

「え?」

 

 藤丸が変な声を出した。トナカイになる。なんだか変な、そして嫌な事が起きそうなキーワードだった。

 

「こちらです……」

 

 巴御前が一枚の紙きれを差し出した。受け取った紅閻魔の頭上から、藤丸たちも覗き込む。それはポスターだった。全体的に赤いその紙に書かれている文字を、藤丸は読みあげた。

 

「サンタ大会?」

 

 黒い文字で大きくそう書かれていた。

 

「ルールを見てくれますか、安珍様」

 

 清姫の病気を藤丸は無言でスルーした。

 

「えっと……最低二名以上のペアで参加すること。代表者一名をサンタ役とし、残りはサポートをするトナカイ役とする……ってところ?」

「はい、その通りです!」

「いつかのサマーレースみたいですね……先輩……」

 

 迷惑駄目神、イシュタルの陰謀を思い出した。あの時もチーム戦だった。そういえば、最後はなんで監獄大脱出になったのだろう。

 紅閻魔もポスターの内容を見て、首を力なく横に振った。

 

「ようやく分かりまちた。清姫も巴御前もサンタとして参加したい。けれどトナカイ役が必要だから……」

「はい、安珍様にサンタになった私を見てもらいたかったのです!」

「巴はサンタになってゲームを沢山欲しかったのです! あの袋の中から、あんな名作、こんな名作のゲームをわんさかと。そしてガネーシャ殿や刑部姫殿と……」

「もう一度怒鳴られたいでちか?」

 

 スクッと立ち上がった二人を、紅閻魔の静かな一言が沈めた。正座へと戻る2人の様は、塩をまかれた青菜のようだった。

 藤丸もこの2人に言いたいことがあるが、それは紅閻魔が代わりにしてくれた。

 

「清姫、サンタは多くの子供たちにプレゼントを配る人でち。お前さまは自分の為だけにサンタになろうとしてるでち。それではサンタは務まりまちぇん。刑部姫からサンタの衣装を借りるだけで我慢するでち」

「うう……正論過ぎて言葉がありません……分かりました」

 

 紅閻魔の言うことが尤もだと藤丸も頷いた。清姫の態度を見て、紅閻魔が少しだけ笑みを浮かべる。子供の面倒を見ている母親のような物だ。だがすぐにそれは呆れに変わる。

 

「で、巴御前はなんでちたっけ?」

「はい先生! 先ほども言った通り、サンタになってゲームを好きだけ手に入れたかったのです」

 

 紅閻魔の頭上で烏が飛んだ。珍しく硬直している。

 藤丸が恐る恐ると横から尋ねた。

 

「えっと、巴さん。もしかして、サンタになったら、ゲームとかを沢山仕入れられるから……」

「はい、そうです! 毎年プレゼントは一つまで。ゲームも一つまで。ですがサンタになれば幾らでもゲームを仕入れられる! そうすれば余った分を私がいただいてしまっても問題はありませんよね。兵糧は蓄えこそすれど、いずれは消費しなくては……」

「巴さん、それはできないかと……」

 

 玉藻の前が耐えかねたように呟いた。彼女の目の前では、紅閻魔が笑顔のまま震えている。

 

「え?」

 

 心底分からないという顔をする巴に、マシュは疲れた顔で説明した。

 

「サンタさんが用意するプレゼントは、あくまで子供たちのためのものです。自分の為には……」

「……もしかして、ダメなのですか?」

「ダメです」

「そんな……」

 

 がっくりと肩を落とす巴御前。だがそれはこちらの台詞である。

 頬の血管を#型に浮かべながらも、なんとか笑みを保っていた紅閻魔がとうとう口を開いた。

 

「清姫よりもなお性質が悪いでち……お前たち二人とも、よ~~~く反省するでち!」

「「はい……」」

 

 2人の返事が重なった。

 

「御主人、あちきの弟子たちが大変ご迷惑をおかけしまちた」

「いえ、紅閻魔先生が謝ることじゃ……」

 

 悪いのは清姫と巴御前であって、紅閻魔ではない。だが責任感が強い彼女のことだ。藤丸の予想通り、紅閻魔はその言葉を受け取らなかった。

 

「いいえ、弟子の不始末は師の責任でち。ゆえに、この2人は閻魔亭に連行するでち。人手も欲しかったでちからね」

「「ひえっ!」」

 

 また2人の声が重なった。

 クリスマスの賑わいに参加できず、閻魔亭で労働。可哀想だが、これぐらいしなければ罰にはならないだろう。藤丸は良心を振り払い「ゴルドルフ所長には話をつけておく」と答えた。

 

 

 

 玉藻の前に2人の連行を任せると、藤丸は再度ポスターを見た。

 

「それにしても、いつの間にこんな大会が開かれていたんだろう?」

「例年のサンタ騒動でしょうか?」

「以前、エミヤ様からも『関わってはいけない』と忠告されまちたが、カルデアのクリマスは一体どうなってるでちか?」

 

「さあ?」と藤丸は肩をすくめた。それは考えてはいけない問題だ。

 

「それにしても、カッコいいデザインだな……」

 

 サンタ大会と書かれたタイトルの下には、少し小さい字でメッセージが書かれていた。

 

「えっと……

『今年のサンタは誰だ?

本来ならば例年に倣って俺が決めるものらしい。

だが、生憎と立候補者が多すぎる。

ならば戦って決めろ。

我こそはサンタと思う者たちよ、集え、競え、サンタという栄光を勝ち取れ。

勝者が現れるその時を、俺は待つ。

カルナより』

……え?」

 

 ポスターの主の名を見て、藤丸は眉をひそめた。

 

「先輩、これは……」

「マシュも思った?」

「はい」

 

 マシュの目に怒りの色が混じった。

 

「これはカルナさんらしくありません」

 

 カルナはアルジュナと武芸を競い合った英雄だ。己の誇りのため、大切な人への侮辱を許さぬためなら、彼はその武を惜しみなく振るう。

 だが同時に、彼は弱者に己の物を分け与える施しの英雄だ。いくらサンタの席が一つしかないからと言って、他人に戦いを煽るようなことはしない。

 

「あちきもご主人とマシュと同じ考えでち」

 

 紅閻魔も頷いた。

 

「紅閻魔先生って、カルナと仲良かったかな?」

「いいえご主人。あちきはカルナ様のこと、詳しくは知りまちぇん。でちが、このような事をするような方とお見受けしまち」

 

 紅閻魔は舌切り雀の話の元になった人物だ。同じ施しの英雄として、似たような物を感じていたのだろう。

 

「カルナに限ってこれはあり得ない。何か異常が起きているのかも……」

 

 藤丸はポスターをもう一度よく見た。開催場所に目がついた。藤丸も良く知っている、現代日本のとある都会だった。

 

「おそらく、微小特異点ですね。レイシフト先なのでしょうか」

「それならゴルドルフ所長とダヴィンチちゃんが把握しているはず……」

 

 と言った直後、まるで見ていたかのように通信が入った。空中に画面を開くと、困った顔のダヴィンチが映った。

 

『やあ藤丸くん、マシュ。悪いけれど中央管制室に来てもらえるかな?』

「やっぱり、何かあったんですね。すぐに向かいます」

『うん、ゴルドルフくんの胃腸が破裂しないうちに、速やかにね』

 

 ゴルドルフ所長の様子を聞いて、もう確信できた。

 

「御主人、あちきも同行させてもらいまちゅ。カルナ様のことはあちきも気になるでちから」

 

 と言うが、紅閻魔の本音はマスターの力になりたいだろう。目の前で任務を言い渡されたマスターを見て、「それでは頑張ってください」と留守番を選べるような人ではないのだ。

 

「紅閻魔先生、ありがとうございます」

 

 礼を言うと、藤丸たち3人は中央管制室に向かって走り出した。

 どうやら、今年のクリスマスも穏やかにとはいかないらしい。




続きは明日からも書いていきたいです!
初めてのFGO二次創作だから、キャラが動かし辛いのなんの…。
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