夜。
何故か外が騒がしい。
なんっだようるせぇな。
何度も寝返りを打つ。
さっきまで気持ちよく寝ていたというのに、どういうことなのか。
すると、誰かに身体を揺らされる。
...この野郎、どいつもこいつも俺の睡眠の邪魔をしやがって。
毛布を被る様にして顔だけ出す。
見ると、起こそうとしているのは二段ベッドの上で眠っているはずの薬草代わりだ。
「んだ、テメェこの野郎....殺されてぇか?」
「な、なんで睨むんですか!そ、外!外見て下さいよ!!」
睨まれてたじろぎつつも、窓を指さす薬草。
余りにも必死な様子を見て、ベッドから這い出る。
「テメェどうでもいい事だったらマジで売り飛ばすからな.....は?なんだこれ?」
見ると、町が燃えていた。
木造の建物には火が放たれて、燃えており下には粗末な服を来た人たちが暴徒と化している。
昼に見た人々で賑わっていた町はどこへやら。
そこには一つの地獄が広がっていたのだ。
「ま、まずいですよ!!早く逃げましょうよ!!」
慌てた様子で俺に言ってくる薬草。
...ここの宿は木造だ。
次に火を放たれるのはここかもしれない。
「そ、そうだな。....悪かったな睨んで。起こしたこと、一応感謝しといてやる。」
「は、はい....。ってそんなことより早く!」
急かす薬草。
クソ、ちょっと寝起きで頭が回らねぇな....。
必要な物をなんとか鞄に詰めると服を着替えて扉を少し開ける。
外に、既に暴徒が侵入しているかもしれない。
....いないな。
「行くぞ。後に続け。」
「わ、分かりました!」
元気よく頷く薬草を見て、外へと足を踏み出す。
下の階に降りると既に宿屋の主人は逃げているのか人の気配はない。
....客を置いて逃げるのはどうかと思うが、おかげで金を払わずに済んだ。
「え、えーとお金は.....」
「非常時なんだ。主人も逃げてるし誰も文句言ったりしねぇよ。払わずに行くぞ。」
そう言うと、彼女は自分に言い聞かせるように「そ、そうですよね...非常時ですもんね」と言って俺の後を付いてくる。
外に出ると、逃げ惑う人々。
そしてそれを追いかけて暴行を振るう奴隷や、逆に返り討ちに遭っている奴隷。
建物などに悪さをしていたり、略奪を行っている連中も居た。
「凄いですね.....。」
「抑圧されていた人間が弾ければ、際限がないからな。さっさとこの街を出るぞ...。」
「うぁあああああ!!!!」
薬草に答えていると、叫び声が聞こえる。
見ると、奴隷の子供がナイフを持ってこちらに飛びかからんとしていた。
「ッ!!」
「ぐぎゃぁ.....!」
咄嗟に棍棒を取り出して、振りかぶって奴の頭を打つ。
すると、奴は地面を転がり倒れる。
体はビクビク動いているので生きてはいるのだろう。
「なっ!?」
「正当防衛だ。良いから行くぞ。」
そう言って俺は彼女の手を引く。
彼女ももしあのままでは危険な目に遭っていたと分かるからだろうか。
それ以上、追及はして来ない。
そして城門を目指して隠れつつも、進んでいく。
そこで半ばに達した時、広場が見えた。
広場では一人の男が立っていて、演説のような物をしている。
周りには粗末な服を来た奴隷共が守衛のように彼を取り囲み守っている。
物陰に隠れてその様子を見ることにした。
『我々は今まで、豊かな者たちが更に豊かになるように踏み躙られてきた。今や、我らが立ち上がる時が来たのだ!従来の経済制度を破壊し、我らの新楽園を作ろうではないか!!同志諸君よ!我らには腐った現体制を叩き潰す権利がある....。』
「はいはい....典型的なスピーチですね。...奴隷反対派も大きく出たもんだ。」
俺はぼそりと呟く。
そして俺と同じく、その様子を見ると彼女は声を上げる。
「あ、...あれって!」
「は?...あー。昼話してた奴だな。」
よーく見ると広場の中央。
演説をしている男の隣に椅子があり、そこに縛り付けられている身なりの良い金髪の少年。
それは昼に俺たちを守衛の下に案内してくれたりした少年であった。
あー、アイツも捕まったか....
まぁ身なりが良い分、見るだけで富裕層って分かるもんな。
そりゃ狙われるわ。
運がないな。
『今隣にいるのは我らを苦しめた奴隷市場のレニングス家の者!我々は都に要求する!5時間以内に都の奴隷の権利を回復しろ!さもなくばこの貴族を血祭に挙げて、反乱の狼煙とする!』
「狼煙なら家燃やしまくってるから既に上がっているだろ.....。馬鹿らしい.....行くぞ。」
俺は周りを見渡し、迂回路を探す。
すると隣の薬草が袖を掴む。
「だ、駄目ですよ!あれだけ良くしてもらったでしょ!?助けましょうよ!!」
何を馬鹿な事を。
この状況を考えてみれば一番に優先すべきは何か分からないのか?
俺は呆れ顔で彼女に言葉をかけた。
「どっちにしろ案内されたところで有用な情報は手に入らなかった。それなら別に思い入れもない。そんなに助けたいならお前だけで助けたら?」
そう言えば、ユーサはどうしてるだろうか?
いや、アイツの事だし他の女連中が頑張って安全に避難しているところか?
なんにせよこんなところでむざむざ死ぬとは考えにくい。
「そ...そんな...、鬼!悪魔!人の心って物はないんですか!?」
「なんとでも言え....。俺は逃げる。」
そう言って足を迂回路の方向に踏み出した、その瞬間聞き捨てならないことが耳に入る。
『我々の思想にはこの街を去った勇者も理解を示した。神に選ばれし男が我らの活動を後押ししてくれたのだ。この時点で、我らの方に正義があるのは確定的に明らかだ!!!』
「....はぁ?」
おい、今アイツなんて言った?
勇者がどうたらとか言ったよな....?
言うわけないだろ....アイツが。
アイツは確かに奴隷と聞けば良い顔はしないが、こんな強硬手段を取るような人間ではない。
良くも悪く甘ちゃんなのだ、アイツは。
こんな街に火を放って暴動を招くなど良しとするはずがない。
風評被害も甚だしい。
「気が変わった....。アイツ、一発殴らなきゃ気が済まない....。」
「えっ!!?...あ、あれだけ逃げるって言ってたのに...どうしてです?」
彼女は俺が急に意見を翻したことで目を白黒させながら尋ねてくる。
だからこそ、俺は簡単に答える。
「アイツ、勇者の名前を使いやがった...。そんなの、パーティーメンバーとして見逃せるはずがない。」
俺がそう言うと、彼女は俺をまじまじと見つめる。
「えっ...パーティメンバーって....誰の?」
「誰ってこの話の流れで分かるだろ。勇者だよ。」
なんだコイツ。
俺が答えると、彼女は信じられないといった顔をする。
「えっ...それって冗談じゃなく?本当に?」
「...お前、舐めてんのか?こんな状況で冗談なんか言うわけねぇだろ殺すぞ。」
何がそんなに信じられないと言うのか。
今、どうするか考えようとしているから話しかけるな。
まずは奴隷が囲んでいるあそこ。
そこをどうにかしなければあの男に近づくことは出来ない。
流石に数で来られると厳しいからな。
...いや、アイツは人質を使って奴隷の権利を要求している。
ならばあの貴族を解放すれば奴の計画は滅茶苦茶になるんじゃないか?
「そんな...信じられない。こ、こんな人が勇者のパーティーメンバーだなんて...」
「うっぜぇ...いつまで言ってんだお前。お前の言う通りアイツを助けてやるって言ってんだ。黙って従え。良い事を思い付いた。」
街に入ったら道具を買い込む癖があって助かった。
手元には唐辛子爆弾。
少なくとも生き物相手なら投げりゃ成果を出す爆弾だ。
そんでもって近づくには....。
その辺を見回す。
すると装備屋が襲われているのが見える。
それを見て、男は笑みを浮かべた。
「行くぞ.....。」
「は、はい....。」
中を覗き見ると、奴隷の餓鬼どもが金になるかならないか分からない癖に武器や防具、金貨などを取っている。
「俺が一気に中に躍りでる。全員やったらここでお前用の目と口鼻を防護出来る装備を探すぞ」
「そ、それって....もしかしてまたアレを使うんですか?」
青い顔をしてこちらに問う彼女。
そういえば初めて会った時は俺が投げた唐辛子爆弾の中で喘ぎ苦しんでいた時か。
魔物に捕まっていた時だし、トラウマにでもなったのだろうか?
「そりゃあれ使ってりゃ大抵の生き物には先手取れるからな。なんだお前、文句あんのか?なら代案出してみろって。」
俺がそう言うと彼女は首を横に振る。
「な、ないです!こ、子供相手ですし....その気絶するくらいで。」
まだこんなこと言ってやがる。
そりゃ聖女様ならぶっ殺せとか言えないもんな。
甘いんだよなぁどいつもこいつも。
こんな状況下なんだから少しは人としての汚い所も出してけよ。
良い子ちゃんで居ようとされると面倒なんだよなぁ。
「生きるか死ぬかは殴ってみなきゃ分からん。」
そう言い残して中に入る。
するとガキの奴隷がこちらを一斉に見る。
店の奥に居るガキが弓矢を引こうとする...が、弦が硬くて苦労しているようだ。
もしまかり違って弓なんか撃たれたらたまらない。
足元に入れていたナイフを投げる。
子どもの頭にぶっ刺さった。
「おぉ、大当たり。」
「マーカス!テメェ....!!」
ガキの一人が剣を持って此方に走り出す。
...ま、ゴブの方が習熟してる分脅威なんだが。
「奴隷の餓鬼に剣が振れるなら...戦闘職なんか必要ねぇんだよぉ!!」
腰元のこん棒で殴る。
倒れた奴を踏みつけた。
「は....は.......」
残った一人が尻もちを着いている。
見るとひとりだけ店から抜け出そうとしていたようだ。
「おい、...ぶたれたくないなら非武装を証明して、伏せてろ。」
そう言うとその奴隷は過呼吸になりながらも首を傾げる。
ガキが.....話が分からないから怠いんだよなぁ。
「分かんねぇかなぁ...裸になって後ろ手に跪いてろって言ってんだ。」
そう言うと、その奴隷は恐る恐る服を脱いで手を頭の後ろに回して跪く。
どうやら女だったようだ。
小汚くて分からなかった。
まぁこれで制圧したと思った奴隷に一矢報いられるなんてことはなくなったな。
なら物品を物色するとしよう。
「これじゃない....これでもない。....これだ。」
ゴーグルを見つけた。
これで目は保護出来るな。
口元は防塵加工のスカーフじゃなくても濡らした布で覆えば行けるだろ。
てか何薬草代わりの装備をマジで探しているのか。
濡れた布で良い、良い!
さて...この奴隷はどうするかな。
俺が店頭から出て、その奴隷の前に立つと跪きながらびくっと肩を揺らす。
....待てよ、コイツはさっき他の連中がやられてるのを見ても反抗しようとせずに逃げようとしたよな。
もしかして....。
「おいガキ.....。」
「ひゃっ....ひゃい!!」
ガキは声を掛けると裏返った声で返事する。
どうやら怯えてるようだ。
だからこそ、やさしい声で声を掛ける。
「俺は何もお前を傷つける為に居るわけじゃない。...他の連中は俺がみんな倒しちゃったけど、君は俺が憎いかい?友達なんだろう?アイツら。」
俺がそう言うと彼女は首を横に振る。
「ぜ、全然!わ、私あの子たち知らない!こ、ここで偶然居合わせた知らない子達だもん!」
彼女は必死に否定する。
...まぁ本当は知っていようがどうでもいい。
重要なのはそこじゃない。
「ならさぁ...君だけ、助けてあげようか?辛いんだろ、奴隷なのはさぁ。」
そう言うと彼女はピクリと動きを止める。
「え...それって本当?」
食いついた。
「あぁ本当だとも。お兄さんの役に立ってくれるなら約束しよう。」
俺がそう言うと彼女は首を縦に振る。
「た、立つ!立つから!!お、お願いします!助けてください!!」
俺にそう懇願してくる奴隷。
これなら言う通り動いてくれそうだ。
「なら、あそこの広場にこれを二個投げ込んでくれないか?そうすれば君を助けよう。出来るかなぁ?」
俺が唐辛子爆弾を見せる。
すると彼女は首をブンブンと振った。
俺はあくまで柔和に見えるように笑みを見せる。
「...良い子だ。くれぐれも俺に投げようだなんて考えるなよ。俺は対策が出来ている。....そんな真似見せるならそこらに転がっているガキと同じ目に遭わすぞ。お前の軽い頭でも言っている意味が分かるよな?」
「は、はひゅ!!わ、わかりました!!」
頭を撫でつつ、耳元で脅すと首ががくがくなるほど頷く。
俺は唐辛子爆弾を持って走っていく奴隷を見て、店の外に出る。
すると薬草は俺をジト目で見ていた。
「下衆ですね....。」
「うるさい。良いからこれ使え。後、布は今着てる奴でもちぎって濡らして口に当てろ。」
それだけ声を掛けるとゴーグルとかけて、口元を防塵スカーフで覆う。
すると、赤い煙が上がった。
そこに走って突っ込んでいく。
連中は奴隷であるからか、粗末な服を着ており、防護している奴でも軽装だ。
ならば、その間に剣を滑り込ませれば楽に処理できる。
「がはっごほっ....目が目がァァあああ!!!ごぷっ!!?」
「見えない...目が開けられない.....」
一人二人にのあばらの間に剣を滑り込ませてかき回して引き抜くと血が面白いくらいに噴き出す。
今は俺は街を混乱に陥れているテロリストを鎮圧しているのだ。
俺が正しい。
だから何しても良いんだなぁ!!
「....人の所業と思えません。」
隣で薬草が愚痴るように言っている。
見ると、更に自分の衣服を破いて俺がやった奴の止血をしていた。
これ、あのままじゃ下着だけになりそうだな。
....まぁ、この作戦においてコイツのやることは実はそんなにないし、なんでもいいか。
あの貴族が傷ついていた場合の治療、もしくは俺が縄を斬っている間の肉盾だ。
まぁ回復魔法を使わないなら何していても別に良い。
それ使われるとすぐ相手が立ち上がって来るからな。
まずは演説していた奴の後ろに回って....。
「なんだこれは...クソっ!ブルジョワが!!!」
まぁだ言ってるよ....。
何か言っているのを無視して男の後頭部を棍棒で力いっぱい殴る。
「がっ!!ぐっ...そこにいるんだなぁブルジョワァァァ!!!」
倒れ込みながらも剣を抜こうとする手を足で蹴って、何度も頭に棍棒を振り下ろす。
棍棒に血が付き、服にも飛び散る。
そして振り下ろせば振り落とすほど体の動きは緩やかに、穏やかになっており遂にはビクビクと震えるだけになる。
とりあえず、コイツは無力化出来た。
それを確認すると、縛られているアイツの所へと行く。
「むー!むー!!」
布を噛まされて何ってるのか分からない。
取り敢えず頭の後ろの結び目を解すか。
そうだ!その前に。
「おい、薬草!」
「はい!ってわひゃ!!なんですかこれ、真っ赤じゃないですか!!」
俺は彼女に棍棒を投げ渡す。
彼女はそれを手にすると弾かれるようにして手から離す。
「放すなよ。もし起き上がりそうな奴が居たらそれでぽこっと頭を叩け。もし俺を叩こうとするなら....」
「し、しませんよそんなこと!すくなくとも一緒にここまで来たんですから少しは信頼してくださいよ!!」
彼女はそう訴えつつ、嫌々と言った様子で棍棒を持つ。
どうだか....。
信じられないが....まぁ、この状況で俺の頭を叩いても奴に利益はないか。
ならばとにかく目の前の結び目を解くか。
結び目を解く。
すると、彼は深呼吸した後に俺を見る。
「ぷはっ....まさか君が来てくれるだなんて、とても嬉しいよ。ごほっ...とても刺激的だね、好みだよ。」
「うるさい....俺はまだ助けると言った覚えはないぞ。」
なんか唐辛子で鼻と目をやられているはずなのに頬を赤らめているんだが....。
能天気な顔で礼を言っているし、何故だかイラっとする。
だからこそ、彼を不安にさせるようなことを言った。
しかし、彼は貴族であるなら逆に言えばこのまま俺が人質として金銭とか要求出来るんだよなぁ....。
まぁ、それをすると体制を敵に回してしまい、後がないのでしないけど。
しかし、俺の言葉を聞くと彼は逆に恍惚とした表情をする。
「あぁ...やはり君は僕が見た通りの人間だ。自分より弱い人間と分かると上から行くような感じ。それに私の貴族という立ち位置を利用しようとしているね?私にとっては理想的な人物さ。」
「おら、拘束解いてやるよ。かぁ~やさしいぃ~。俺優しいわぁ~!何分かってたみたいな口調聞いてんだ俺は人間の鑑だろうが、訂正しろ!」
何故か分かってたみたいな口調をそんな顔でされるとすごくイラッと来た。
コイツの想定内に振る舞うのが癪だったのだ。
すると、彼は笑う。
「そうか...ごめんね。私の目が節穴だったよ。許してほしい。」
...素直に謝られるとやりづらい。
そうだ、コイツに出会った時から感じていた感じ。
それはやりづらさなのだ。
まるで見透かしたかのようにこちらを見る目。
そして自分から責めるように言ってくる感じがどうにもやりづらい。
まぁとにかく俺はコイツを解放した後、どっか適当な所で床に転がっている首謀者に勇者の名前を出したことを後悔させられればなんでもいい。
後ろではえいっという声と共に打撃音が聞こえる。
おぉ、やってるやってる。
やればできるじゃないか。
虫も殺せないかと思ってたが、どうやら人の頭を殴る程度は出来るようだ。
しかし、それにしても....結び目が硬い。
どうすれば良い物か...。
俺が考えていると、彼は口を開く。
「今着ている服が切れても良いから剣で斬るってのはどうかな?」
....まぁそれしか方法はないだろう。
言われるがままというのはどうにも気が進まないが、それしかないならしょうがない。
「下手に動くなよ....体の方斬りかねないからな。」
「それならそれで構わないさ。」
彼の軽口を軽く流すと、彼の体を掴んで剣を縄と服の間に差し込む。
これ、結構服の方を切ることになるな。
それにしても....体が柔らかい。
まるで男とは思えない柔肌だ。
貴族だからだろうか?
切っていると縄も斬れたが、服も斬れた。
そして、服の断面から胸の方に何か包帯のような物が見える。
「....ありがとう。さながら君は私の王子様だな。」
「....男がする例えじゃないな。」
俺が言うと、彼は一瞬キョトンとした後に笑う。
「何がおかしい。」
「いやなに....君にも、中々可愛い所があると思っただけさ。」
気持ちわりぃ....
コイツもしかしてホモか?
身体もなよなよしてるしな!(偏見)
「そ、それでどうするんですか!!?」
薬草がこちらに声を掛ける。
そりゃ...どっかに隠れて腰を据えつつ、この男をごうも...後悔させるんだろ。
もし本当に勇者に遭ってるなら勇者について聞けるしな。
だが、その場所を探さないと....。
いや、待てよ。
そう言えば目の前にこの街について良く知っている奴が居るじゃないか。
「おい....。」
「なんだい?」
彼はこちらを見て、微笑む。
「お前、この街良く知っているんだろう?ならこんな状況でも邪魔が入らないような安置、どっかにないか?」
俺が言うと、彼は暫し考える。
...まぁないか。
こんな暴動が起きている中だ。
色んな場所が襲われているだろう。
身を暫く置ける場所なんかないのかもしれない。
「あるよ。知っている。」
「あるのか....、本当に大丈夫なんだな?その場所は?」
俺が問うと、彼は頷いた。
「あぁ。命を懸けても良いよ。」
「言ったな?....ならもし違ったらテメェをどっか別の都で売り飛ばしてやる。ほら、行くぞ。」
没落した貴族は高い値段で売れるからな。
俺は方針が決まった為、振り返って薬草に言う。
「わ、わかりました!そ、その...この子......。」
彼女がおずおずと声を出す。
なんだ....。
見るとそこには小汚いガキ。
そいつなんだっけ......
暫く考えていると、思い出した。
俺が爆弾を投げさせた奴か。
まだ生きていたんだな。
てっきり爆弾を投げた時とかに弓矢で射貫かれたものと思っていた。
しかし...コイツを連れていく意味はないしな.....。
そう思っていると、薬草はこちらを咎めるような目で見てくる。
....今は急いでここから離れないといけないし、薬草と口論している暇もないか。
「好きにしろ....。」
「あ、ありがとうございます!」
何故だか嬉しそうに頭を下げる。
何喜んでんだ?自分の事でもないのに。
まぁ後ろの薬草は良く分からんし、とにかく先を急ぐか。
倒れている首謀者を腕に担ぐ。
すると、貴族の彼は目を辛み成分でしばしばさせ、涙を流しながら先を行く。
「それじゃあ案内を始めるから、ついて来て.....。」
「はやくしろ」
俺が後ろからそう声を掛けると、身体をビクビクとさせる。
前から思ってたが、なんなんだそれ?
首を捻りながらも、俺たちは周囲を警戒しつつ、彼について行くのだった。