ボーカロイドの恋模様   作:睡眠

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ペットは捨てられる。
ボーカロイドも、捨てられる。
一緒ですね。
一緒だからこそ良い。


ゆかりさんの現実逃避

今日は土曜日だ。僕のようなホワイト企業に勤めれば、大体休みが得られる。学生諸君のことは知らん!が、その休みが嫌になっている自分もいる。何故か。一歩も外に出れないからだ。理由なんてのは、なんとも恥ずかしいことに、ボーカロイドだ。捨てられてなんかもう色々とやばいことになってるボーカロイドだ。それが怖い。何故か。耳をすまさずとも聞こえるこのインターホンの音が全てを物語っている。まあ壊してるから音出ねえけど!

 

『マスター?マースーター?』カスカスカス

 

「こわっ…警察に報告してもなんて言われるか…無駄だな」

 

『マースーター!締め出すなんて酷いですよー!』カスカスカス

 

それでも尚律儀にインターホン前を退かずに扉へ行かないのはまあ良いことだ。引っ越すことも考えたが…駅近物件は失いたくない。駅近と言えるか微妙な距離だが。

 

「マスターマスターって…マスターじゃないってのに」

 

『マスター!!』ゴンゴン

 

「インターホンぶっ壊す気かよ…やめてくれよほんとに…」

 

出会いは今年の三月。そこで警察に送った。はずだったのに、何故かこちらへとやってきた。型番同じのゆかりさんで、番号も一緒。警察が送りましたよーって印もついてる。どこで電源を確保して、どうやってここへ来てるのかもわからん。誰か助けて…

 

「ってわけだから来週お前の家泊まらせてくんね?」

 

「だが断る」

 

「zo○mで聞いてやってんだぞ!」

 

「z○omで聞くやつがあるかぁ!!」

 

「まあ、それは置いといてだな」

 

「その壊れたボーカロイドだろ?警察に言えよ」

 

「言って帰ってきてんだから怖いって」

 

「怪奇!あなたのゆかりさんは、こんなことになっていませんか…?」

 

「ちょっと待ってろ、お前の家に地雷置きに行くわ」

 

「ゆかりさん連れてくんな」

 

ゆかりさん。そのボーカロイドにも旧式だとかがある。その中でも嫉妬深い奴もいるんだが…友人が持っているのはそれだ。怖いんだなこれが。嫉妬ってこえー!って思うくらいには怖い。ストーカー型ゆかりさんもあったな。しかしあのゆかりさんは違うと思う。

 

『マスター?プリン潰したのは悪いと思ってますからぁ。学習してますからぁ!』

 

「お前プリン潰されたの?」

 

「んなわけねえだろ」

 

「迷える子羊よ…プリンを、潰しなさい」

 

「アーメン」

 

「で、来週の金曜日に俺の家に来ると」

 

「おうよ!」

 

「…わかった。良いだろう。夕飯お前な」

 

「わかってるよ…」

 

次週 土曜日

 

「持つべきものは友だな」

 

「感謝しろよー?俺が」ピンポーン

 

「私が出てきます」

 

「ま、待てい!俺が宅配頼んだんだよ。ピザ食おうってさ!」

 

「お前晩飯作れよ!!」

 

「う、うるせーい!」

 

『ピザはよ取れ』

 

「ああこりゃ失礼…お疲れ様っす!これ代金ね」

 

「…つーかこの家にも来たらあいつ等々終わりだろ」

 

「終わり、というよりもですが」

 

「言うなよそんなの。言霊って知ってっか?」

 

「検索します」

 

「そんなものに縋るくらい疲れてんのかお前」

 

「おうよ」

 

「まじか。全くピザと言いボーカロイドと言い、変な奴だよお前は」

 

「繋がりが見えん…」

 

「ヒットしました。言霊とは」

 

「いや良いよそれは」

 

「とにかく!あのゆかりさんはここには来ない!言霊の」ピンポーン

 

「…見ましょうか?」

 

「一応お前隠れとけ」

 

「言われなくてもそうするわアホ!」

 

お願いここに来ないで!ピザ屋であって!ピザ!お願い!どうか、ピザで…ピザ…ちょっとピザ食いたくなってきたな。ピザ食いてえ。ピザ食いたい。ピザ食うしかねえわ。でも安全が第一であって…友人の声が聞こえないな。まさか…いやないな。キックボクシング県大会優勝してるあいつが。ないない。

 

「…おい」

 

「なんだよ」

 

「誰だった?」

 

「お前の」

 

「嘘だろ…」

 

「地雷じゃねーよ、ホーミング弾だよ…」

 

「鍵、閉めてた?」

 

「あったりまえよ。音を立てずにそーっとな。だからどうか帰ってくれると良いんだがな」

 

「ちょっとカーテン怖い」

 

「神経質だな」

 

「失礼だな。あらゆる可能性を視野に入れて全てを徹底的に無くす…うらは」

 

「俺のゆかりさんが入れ替わってたり」

 

「するわけねーだろ」

 

「だよな!」

 

「…え、何今の」

 

「何って、尋問だよ」

 

「何言ってんだお前」

 

「とにかく。俺達全員ここから出られないんだから…どうするべきだと思う?」

 

「マスタ」

 

「却下」

 

「何故ですか」

 

「死人出そう」

 

「ここお前の家だから警察呼べば良いじゃねーか!」

 

「それだ!!」

 

数時間後

 

「…警察来ねえな」

 

「悪戯って思われてんな」

 

「なんでよ」

 

「☆俺☆」

 

「遊戯王みたいな配置やめろ」

 

「ま、待て!落ち着け!!」

 

そうだ。こいつみたいにボイロ買うか。そうすりゃどうにかなるだろ。よし。善は急げだ!近くのボーカロイド屋で買いに行くしかねェ!!…買えねえけどよ!!どないしよ!ど、どないしよ…?どうにもならんな…?ならんか…

 

次の土曜日

 

「と言うわけで買った」

 

「何を?」

 

「初音ミク」

 

「ゆかりさんにしろよせめて」

 

「お前とは道を違えたのだ…」

 

「もはや君とは違う道を歩んでいると言うことか…フッ」

 

「と言うわけでミックミクにしてやんよ!」

 

「こんにちは、マスター」

 

「いやーよかった!さて友人よ!」

 

「名前で呼べ」

 

「これであのゆかりさんに」

 

『マスター!!!!!!!!!!!!』

 

「っ」

 

「今のって…」

 

「ゆかりさんだな」

 

「マスター…これは」

 

『別のボーカロイド買いましたね!?』ガンガン

 

「嘘だろそこまで」

 

『出てきてくださいマスター!!』

 

「やべーんじゃねーか?」

 

「み、ミクさん…」

 

「へ?えぇ!?マスター!?」

 

『今の声初音ミクですね…5億歩譲歩して、ゆかりさんなら良かったのに…もう許す範囲を超えてますよマスター!!!』ドンッドンッ

 

「やばいんじゃないかこれ…」

 

「ま、窓から外に出ましょ!マスター!」

 

『おい!!』

 

「っ」ビクッ

 

『マスターと呼んで良いのは私だけだ!!お前が呼ぶな!!』

 

「な、なんですか、あれ…」

 

「に、逃げ失せい!」

 

近場の公園

 

「ふー…」

 

「大変でしたねマスター」

 

「そりゃあもう…多分あのままだったら」

 

「玄関の扉危なかったですねぇ。修理費算出しましょうか?」

 

「追い打ちやめて血反吐出る」

 

おそらく家を探していなかったら友人宅へ行く。その道中に公園はない…フッ。我ながら策士だな。策士すぎて策に溺れない。そもそも。いやぁこりゃあ実行犯の役割奪われちゃいますな!全く俺がどうしてこんなに頭いいのか説明するとだなー!

 

「…ぇ?」

 

「マスター?」

 

遠目に見えたのは幻覚だろうか。いや、幻覚じゃない。ゆかりさんだ。片手に…バットを持っている。あれが木製とかプラスチックなら納得はいくが…ぶっ壊れたところを自分を人間と言い張る為なのか包帯で巻いている。早く逃げなくては。逃げて警察に駆け込んで…それで…

 

「に、逃げ失せい!」

 

「マスター!?」

 

「ぶっ壊れたボーカロイドなんだ、人間の脚力に」

 

「知らないんですかマスター。ボーカロイドが遅い原因は体内に積まれた物です。故障しているものを捨てた私をあの出来損ないと比べないでください」

 

「お、おのれぇい!」ブンッ

 

「でも安心してください。私があの出来損ないを壊してきます」

 

「あ、おい待て」

 

「ま、マスタ…助けて…」

 

「や、やめい!!」

 

「私に命令…」

 

「そ、そうだい!仮にもマスターの命令なんだから」

 

「なら尚更です」バギッ

 

「あぐっ」

 

「木の下に埋めて桜でも咲かせましょうか。ホログラムみたいになりそうですけど」ペギャァッ

 

「やめろおい!やめろ、やめて!」

 

「ぃ」ピギッ

 

「あ、ぁ…」

 

「マスター。私が無料で手に入るのに、何故私ではなくミクを選んだのですか?教えてください」

 

「嘘だろ、俺の給料が…」

 

「マスター?」

 

「け、けいさ」

 

「っ!」バギィッ

 

「痛っ…!」

 

「仮にも自分の所有物なんです。警察になんて言いませんよね?」




初音ミクさんかわいそう?
いいえ。
ゆかりさんかわいそう。
です。
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