霧幻旅【秘封倶楽部】   作:萩崎紅葉

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彼岸帰航 ~ Riverside View

青木ヶ原の伝説




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「そうそう、こんな話知ってる?実は、ヒロシゲは最高速を出せば53分も掛からないらしいんだけど、わざわざ 53分になる様に調整したらしいよ?」

 

「一分一泊ね。その調子なら三週間で老衰だわ。短い旅ねぇ。」

 

「やっぱり、その辺は凝っているんだね。」

 

歌川広重の東海道五十三次。それが卯酉新幹線のテーマだった。ヒロシゲの名前や53分など、かなり凝っている。ちなみに、お土産やさんには五十三次せんべいなどが売っている。

 

 

 

 

「メリー、関東のお彼岸には変わった風習があるのよ。知ってた?」

 

「ええ?どういうの?」

 

 

「お墓参りと一緒にね。お墓の周りの結界のほつれを見つけて、冥界参りもするんだ。、お盆が冥界からご先祖様が帰ってくるだろう?だからお返しに彼岸には、こっちから挨拶に行くんだ。」

 

「そうなの?あらいやだ、何の準備もしていないわよ。何で言ってくれなかったのよ。」

 

「嘘だからだよ。」

 

「あら、でも折角だからやるよ?」

 

 

結局、どこに行ってもやることは変わらない秘封倶楽部だった。

 

卯酉東海道は、最も効率よく東京の人間を京都に運ぶ為だけに作られた。だから、駅は二つしか作られていない。卯東京駅と酉京都駅の二箇所だけである。

つまり、始点と終点以外は駅が無い。なので、鎌倉に行くには乗り換える必要があるのだ。二人が酉京都駅を出発して、すでに36分ほど経っている。

 

外の景色は、歌川広重が見て歩いただろう東海道、その物だった。どこまでもどこまでも美しい。空と海と、富士の山、五十三の宿場町...。

 

 

「あ、今……」

 

「どうしたの? メリー、急に怖い顔をして……」

 

「急に頭が重くなった気がしたの。2人は感じない?ここら辺の空間は少し他と感じが違うわよ。それに結界の裂け目も見える……スクリーン制御プログラムのバグかしら。」

 

「ああ、それはきっとここが霊峰の下だからだよ。少しは空気も違う、いや時空すらも異なるかも知れないね。過敏なメリーにはちょっと緊張が走るかも知れない。」

 

「なるほど、富士山の地下ね。なら判らないでもないわ。昔から富士の地下には冥界の入り口があるって言うもんね。でも、富士山って火山でしょう?そんな地下にトンネルなんて掘って大丈夫なのかなぁ。」

 

「心配性ね。そういう時はお酒でも飲んで考えるのをやめましょう?富士が世界遺産に認定された時に、休火山から死火山になったと断定されたでしょう?」

 

 

とにかく東京と京都を結ぶ事だけを考えて設計した卯酉東海道だったが、政府は霊峰富士の真下に穴を開けるという、畏れ多き事態だけは避けた。

 

卯酉東海道は、富士を避け、樹海の地下を走っている。ただ、樹海には古くから良くない言い伝えが多く、樹海の真下を走るというだけで新幹線の運行や乗客数に影響が出てしまうかも知れない。

 

そう考え、樹海の真下を走っているという事は一般には明かされなかった。

 

 

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