霧幻旅【秘封倶楽部】   作:萩崎紅葉

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レトロスペクティブ京都

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4

 

 

 

ふと窓の外を覗いて見ると、カレイドスクリーンの映像も富士山から遠ざかり江戸の方向を映しているのが見えた。

 

 

「もうすぐ東京かしら...。やっぱり物足りないわね。」

 

「確かにね。でも着く前に疲れなくて良いじゃん。」

 

「そう焦らないの。まずは実家に着いてから彼岸の墓参りを済ませて、荷物を置いてから見学に行きましょう?」

 

「あれ?冥界参りに行くんだっけ?」

 

「東京は、京都に負けず劣らずの霊都だから、きっと楽しいわ。メリーと夏楓と一緒なら。」

 

 

アスファルトで固められた地霊の罪も時効を迎え、東京の道のそこら中にひびが入っていた。

 

環状線も一部が草原と化し、葉っぱもなく、茎と赤い花弁だけの奇妙な花が道を覆いつつある。人口の減少と共に、自動車という前時代的な乗り物も減っていた。道がどうなろうと不便な事は無かったのだ。

 

派手な格好の若者達が、独自のルールを形成している事が特徴的な東京。町奴や旗本奴、火消しが暴れる町の様に……。

 

────東京は昔の姿を取り戻しつつある。

 

 

 

「京都と違って東京は田舎だから、懐かしい物が沢山あるんだよ。」

 

「閉塞感ある狭くて高いビルの中で遊ぶテーマパークとか、超大型ショッピングモールとか。」

 

「良いわねぇ。その洗練されていない庶民的な娯楽がまだ残っているのね。」

 

「その辺、京都は厳しいからなぁ。...娯楽と言えば新茶道とかしかないし。」

 

「あら、お茶は好きよ?あの茶室の密室さ加減が。」

 

 

東京にはその昔、食のテーマパークが流行った時代があった。全国各地から美味しいと評判の店を持ってきて、一箇所に集めただけという何とも風情の無いテーマパークだったが、それでも東京の人間には大好評だった。

 

東京には、江戸時代の頃から、闘食会と呼ばれた死をも恐れない食の大会があった。それを考えると、現代の東京で食のテーマパークが流行るのも当然の事である。

 

江戸の血を確実に引く東京の街。

 

本でしか見た事の無い、時代を超えた街、東京に近づくにつれて、メリーの気持ちがますます高揚した。

 

 

「富士が小さくなっていくわ。もう東京は目の前ね。」

 

「2人の話を聞いていたら、なんだか楽しみになってきたわ。東京が。」

 

「でもね、京都に比べるとやっぱり、精神的に未熟な都市って感じは否めないなぁ。」

 

「結界の切れ目もほったらかしだしね。千年以上も霊的研究を続けてきた京都とは大違いだから。」

 

「あ、スタッフロールよ。こんな風景まで作者の権利を主張しようとするのねぇ。」

 

 

窓の外の景色に文字が浮かび上がっている。

53分のカレイドスクリーンの映像が、終わりを迎えようとしていた。

 

 

 

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