霧幻旅【秘封倶楽部】 作:萩崎紅葉
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「ふー、ついたついた。」
「なんか疲れたね。早く家に行こう。」
秘封倶楽部の3人は蓮子の彼岸参りのついでに夏楓の実家に来ていた。京都から東京までは卯酉新幹線1本で行けてしまうのだが、鎌倉までは2回乗り換えなければならない為、3人は疲れきっていた。
夏楓の実家は鎌倉の中でも山の方、田舎にある。駅に着いたとしてもそこからかなり歩かなければならない。
「はぁ、なんでこの時代に歩いて行かなければならないんだろ。」
「そうね、バスとかあったらいいのに。」
「人口の減少で予算が足りないんだよ。きっと。」
(あ、懐かしい...。)
見えてきたのは夏楓の母校だった。人口が減少してしまった為、近くの学校と合併されてしまい、今は誰も使っていない廃校となっていた。
「それにしても、人が少ないわね。」
「関東なんて、どこもこんなもんだよ。あ、もうそろそろで着くよ。」
見えてきたのはかなり大きい、洋風の家だった。壁はレンガでできており二階建て。黒い屋根には煙突が着いている。
すると、庭のところに立っていた女性が夏楓に話しかけた。
「おかえりなさい。待っていたわ。2人とも、こんにちは。」
「さぁ、3人とも行こう。」
「こんにちは、ありがとうございます待っててくださってたみたいで...。」
「あらいいのよ。みんな疲れたでしょう。ゆっくり休んでちょうだい。」
建物の中もかなり良い雰囲気の家だった。華やかさとはまた違う、シンプルだからこその美しさが感じられた。
「そういえば、夏楓の部屋ってどうなってるの?」
「別に、普通だよ。本だらけだけどね。」
3人は2階に上がり、1番奥の夏楓の部屋へ向かった。
「うわ、ホントに本だらけなのね。」
「どのジャンルもあるように見えるけど、科学の本が多いのね。」
「うん、姉さんが学者だったんだ。その影響。」
窓の葉の隙間から、白い何かが見えたような気がした。霧島家の、庭の奥の森。
メリーは目を凝らすが、よく見えない。
(なにあれ...。)
「どうかしたのメリー?」
「ううん、な、なんでもないわ。」
メリーは少し動揺しながら応えた。
「それにしても暗いわね。この木のせいで全然光入らないじゃない。」
「まぁ、夏は涼しいからありがたいんだけどね。冬は寒くて...。」
「秋は葉っぱが凄そうだわ。」
「ははっ!その通りだよ!」
夏楓は楽しそうに笑った。しかし、怪しい瓶を見つけたメリーはそれどころでは無かった。
(さっきからなにか変なものを感じるけど...なんなのこの家は...。)
「夏楓のお姉さんって、何の研究をしているの?」
「比較物理学。異世界...パラレルワールドについて京都で研究してたんだ。5年前に事故で亡くなったんだけどね。姉さんは研究熱心だったよ。」
「素敵な人だったんだろうね。きっと。」
「うん。尊敬してるよ。」
そこまで話すと、夏楓はドアを開けた。メリーはずっと下を向いて黙っていたが、夏楓がドアを開けた音で顔をあげた。
「そろそろ行こうか。母さんの紅茶が冷めちゃうしね。」
「うん。楽しみだなアップルパイ。って、どうしたのメリー、さっきからおかしいわよ?」
「ううん。なんでもないわ。」
そして、3人は1階へ降りた。