霧幻旅【秘封倶楽部】 作:萩崎紅葉
夕方、メリーは1人で森に来ていた。塀で囲まれているため、森に入るには庭の奥の扉を使わなければならない。何年も使っていないのか扉はかなりボロボロになっていた。
「まぁ、夏楓も何年も帰ってきてないみたいだし、仕方ないわね…」
扉を開けると、冷たい風がメリーを襲った。
そこに広がるのは、華やかな庭の雰囲気とはかけ離れた鬱蒼とした森。
メリーが森に足を踏み入れてから2分ほど経った頃、霧がもやもやと立ち込め、彼女の方向感覚を奪った。
メリーは怯まず進むが、5分経つ頃には完全に迷ってしまっていた。
「この森、こんなに広かったっけ……?」
森に入ってから30分なのか2時間なのか、時間の感覚もよく分からなくなるぐらいにメリーは疲労していた。
外から見た時はこんな風に見えなかったのに……と思いながら歩いていると、緑色の木々に囲まれた1本の枯れ木を見つけた。
「こんなところで、何してるの?」
「か、夏楓?!どうしてここに…」
後ろからメリーの手を掴んだ夏楓は、彼女にそう聞いた。夏楓の瞳が怖くて見てられなくなったメリーは、急いで逃げようと嘘を考える。
「結界の気配がしたから見に来たんだけど勘違いだったみたい。この森結構怖いし、そろそろ帰ろうかな」
「嘘。この木を見に来たんだろ」
その言葉で、メリーは眉を下げた。夏楓はまた真剣な面持ちで話した。
「……僕が小学生の時に枯らしたんだ」
「枯らしたって、なんで…」
「それは僕にも分からないけど、君がある日突然結界が見えるようになったのと同じだと思うよ。きっとこれが僕の能力だ。」
夏楓が優しく木に触れるが、何も起こらない。
「木を枯れさせる程度の能力?」
「いや、多分もっと何か…凄い能力のはずさ。メリーと蓮子と並ぶぐらいにはね。」
「例えば?」
具体的なことを言わない夏楓にメリーは聞いた。
「生命力、もしくは死を操る程度の能力…いや、運命に干渉する程度の能力なんてのもありえるかもしれない。制御できてない時点で欠陥品だけどね」
夏楓の能力でできることは今のところただ1つ、木を枯れさせることだ。だが制御できていない為いつ能力が発動するかは分からない。
「さぁ、蓮子も怒ってるしそろそろ帰ろうかな。君が家を出てから3時間以上経ってるよ。」
「う、嘘?!」
「ホント。あと、この話内緒にしといてくれるかな。もっと能力について分かるまで」
「ええ」
夏楓はメリーに右手を差し出した。これは手を繋げという意味なのだろうか、でも違ったらどうしよう…とメリーが困っていると、夏楓がメリーの手を取って歩き出した。
真っ赤に染まったメリーが見た夏楓は、頬がほんのり赤くなっているようだった。
お久しぶりです