霧幻旅【秘封倶楽部】 作:萩崎紅葉
ちょっと早いけど年越しやります。
「なんでここに...。」
12月31日の夕方。
蓮子、メリーの2人は夏楓の家に遊びに来ていた。
「いいじゃない。夏楓の家広いんだし。」
「年越し蕎麦も買ってきたのよ。」
なんだかなぁ...と夏楓は思った。
家の広さなら蓮子の方が少し勝っているだろうし、メリーがわざわざ年越し蕎麦を買ってくる理由が分からない、まさか自分の家に泊まろうとしているのでは...と少し不安になる夏楓であった。
「じゃあ僕が準備するから、2人は座っててよ。」
夏楓は2人をコタツへ案内すると、台所で夕飯の支度を始めた。今日のメニューは豪華にカニ鍋。1人でゆっくり楽しもうと思っていた夏楓だが、材料にも限りがある。豪華に、とはいかないようだ。
「夏楓、私家にリストバンド(※1)忘れてきちゃった。今から取りに行くんだけど、何か買ってきて欲しいものとかある?」
蓮子が言った。京都でリストバンドを忘れると、施設は何も利用できなくなってしまう。
「じゃあ、カニ鍋セット、ってやつ2人分買ってきてよ。コンビニでも売ってると思うからさ。」
蓮子は一旦家に帰った。一方その頃メリーは、夏楓の手伝いをしていた。
「カニ鍋なんて久しぶりだわ...。」
「僕も。一人暮らしだと、鍋ってあんまりやらないんだよね。」
夏楓は高校生の時から京都で一人暮らしをしている。
蓮子もそうだが、京都は一人暮らしをする学生が多い。別に学生の街だとか、隔離された街だとかそういうのでは無い。
京都には有名な学校が集まりやすい上、セキュリティに関しても問題がないので親も安心できるからだ。
「夏楓ー!」
「あ、帰ってきた。」
蓮子が買ってきたカニ鍋の材料を使い、3人分のカニ鍋が完成した。
「いただきます!」
「美味しそうね!」
3人は炬燵で紅白歌合戦を見ながらカニ鍋を食べた。
「来年も、いろんな事したいね。」
「そうね、そろそろ月旅行にも行きたいわ。」
「何それ。夫婦みたい。」
そう言って3人は笑った。蓮子もメリーも夏楓も今年は実家に帰省しない。たまには友達と過ごすのもいいな、と思った夏楓だった。
「はいこれ。」
「シャンメリーよ。私達まだ19だし、お酒飲めないからね。」
(シャンメリーって、クリスマスの飲み物だったような...。)
蓮子とメリーが出したのはノンアルコールのシャンパン、シャンメリーと呼ばれるものだった。
「じゃあちょっと早いけど、乾杯しようか!」
「私、グラス持ってくるわ。」
こうして2151年の秘封倶楽部の活動は終わりを迎えた。廃墟で深い穴に落ちたり、蓮台野から冥界に行ったり。色々なことがあったが、夏楓にとってはどれも素晴らしい思い出となったのだ。
『乾杯!!』
(※1)リストバンド
アップルウォッチの進化版的なやつ。
京都の人はみんなこれ付けてる。
物買ったり家の鍵閉めたり。生徒手帳代わりにもなる。
(原作には出てこない)
これを忘れた蓮子。家の鍵も閉め忘れてます。